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第一章 陰謀編
陰謀ⅩⅠ 真相
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カトレアの悲鳴で我に帰ったアルエット。
「伏せて!!」
全員慌てて頭を下げる。圧縮された空気の塊がすぐ上を通過する。空ぶった攻撃が壁を破壊し、轟音と共に崩れる。それを見て、アルエットの疑問は全て解消された。
「あなた、魔族でしょ。何者?」
村長は高笑いをし
「ご名答……人間の王女アルエット・フォーゲル!!」
そう言うと、人間の皮を剥いで魔族の正体を現した。顔の側面、首から下が爬虫類のような緑色の鱗で覆われた舌の長い魔族。ヘビと竜のちょうど中間のような見た目をしている。
それにしても、知らないうちに魔族の間で有名人になっているらしい。勘弁してくれ。
「貴様……セリバ!!!」
激昂したカトレアが飛び出す。しかしセリバはいとも容易く躱し、カトレアを押さえつける。
「はは、相変わらずだな!弱虫カトレア!!」
「ぐうっ……くそぉっ!」
カトレアは必死にもがくも、手負いなのもあってまるで歯が立っていない。
「さて、邪魔が入ったけど改めて。俺はセリバ。守賢将デステール・グリードの腹心だ。」
「デステールだと!奴が来ているのか!」
「いや、今回は俺一人さ。ダンナに話でもあったのかい?」
「いいや、一発殴りたいだけだから気にしないで。それで、今回の黒幕は貴方なのね?」
「そうだね。」
「いつから!本当の村長さんはどこ?」
アムリスが食い気味に尋ねる。
「……少なくとも、君の知っている村長とやらは全て俺だ。本当の村長はここだぜ。」
セリバは先程剥いだ皮をぴらぴらと見せびらかす。
「まあ、そんなことだろうと思ってたよ。村長と最初の被害者とやらを殺して村長に化け、罪を蜂に擦り付ける。そうやって対立ムードを作り、トドメに修道士を一人殺し、今度は蜂に化けて村長の拉致を演出。狙い通りに蜂と人間が争い始めた……という目論見でしょう。」
「人間共が勝手に聖剣の乙女をスパイ扱いしたのはある意味想定外だったがね。嬉しい誤算だったよ。」
「許せない……人の命をなんだと思っているの!!」
飛び出そうとするアムリスを、アルエットが制する。
「おおっと、残念ながら、今日はアンタ達と戦うつもりはないんだ。アンタ達の相手はコイツ。」
セリバはそう言って、暴れるカトレアを再度地面に押し付ける。
「離せ!!」
「コイツ、女王蜂の婆さんがくたばったら新女王蜂としてそのまま四天王に昇格することになっててよ。でもよ、おかしいと思わねえか?最高幹部である魔族四天王が、妖羽化もできない弱虫の小娘ってよ!」
「妖羽化……?」
「ああ、俺たち魔族の強化戦闘フォームさ。高まる魔力を最適化できる姿に変化するんだ。」
「なんだよそれ……」
「でさ、俺は優しいから一計を案じたわけ。このまま弱っちいままで四天王になって身内から虐められるくらいなら、ぱぱっと強くなっちまおうってな。そこでこれよ!」
セリバはそうやって、懐から何かを取りだした。
「うっ、心臓!?」
セリバの手に握られていたのは、真っ赤に蠢く心臓であった。
「やめて……それだけは、それだけはやめて!お願いだから……!!」
それを見たカトレアが、一層強く抵抗するも簡単にねじ伏せられる。
「コイツは、そこで寝てる女王蜂の心臓だ。魔族の魔力は心臓に集まる。コイツを食わせりゃ、弱虫カトレアでも妖羽化に必要な魔力が手に入るってわけさ。さてと」
セリバは馬乗りになっているカトレアの首を捻り、強引に心臓を押し付ける。カトレアも抵抗し、口を頑なに開かない。
「んーー!んぅー!!!」
「おい、大人しく口を開けろよ。」
そう言ってセリバはカトレアの腹を殴る。カトレアは耐えきれずに口を開いてしまい、心臓を無理やり突っ込まれてしまう。
「もが……」
「ほら、飲み込めよ!」
ごくり。
その瞬間、カトレアの体の周りを凄まじい魔力が渦巻く。カトレアの体がまるで脱皮途中の虫のように皮膚を突き破り、より虫の姿に近い新たな体が剥き出しになる。だが、変化はそこで終わり、渦巻いた魔力は霧散した。
現れたカトレアの体は、人の体に近い胴体から虫の手足が出ており、幼さの残っていた顔も右目とその周りだけ蜂のものに変わってしまい、口も人間の口の中から蜂の大アゴが生えている、悍ましいものだった。
「アウ……ア……ゥア……」
脳も萎縮しているようで、言葉すら喋られなくなっている。それを見たセリバは、心底ガッカリした様子で
「繭すら満足に作れねえのかよ、使えねえ。」
と吐き捨てる。
「これが……こんな不気味な姿が妖羽化……?」
「おいおい、勘違いすんなよ。本当の妖羽化はこんな馬鹿みたいな格好してねえよ。ま、所詮使い捨ての駒だし、あいつら処理してくれればなんでもいいか。」
「ウゥ……」
カトレアは武器を持ち、アルエット達と正対する。
「二人とも気をつけて……あんな姿でも魔力が桁違いに大きい、かなり強くなってるわ!」
アルエットはルーグとアムリスを促し、臨戦態勢を整える。
「せいぜい頑張れよ、弱虫カトレア」
セリバはそうほくそ笑み、カトレアの後ろに下がった。
「伏せて!!」
全員慌てて頭を下げる。圧縮された空気の塊がすぐ上を通過する。空ぶった攻撃が壁を破壊し、轟音と共に崩れる。それを見て、アルエットの疑問は全て解消された。
「あなた、魔族でしょ。何者?」
村長は高笑いをし
「ご名答……人間の王女アルエット・フォーゲル!!」
そう言うと、人間の皮を剥いで魔族の正体を現した。顔の側面、首から下が爬虫類のような緑色の鱗で覆われた舌の長い魔族。ヘビと竜のちょうど中間のような見た目をしている。
それにしても、知らないうちに魔族の間で有名人になっているらしい。勘弁してくれ。
「貴様……セリバ!!!」
激昂したカトレアが飛び出す。しかしセリバはいとも容易く躱し、カトレアを押さえつける。
「はは、相変わらずだな!弱虫カトレア!!」
「ぐうっ……くそぉっ!」
カトレアは必死にもがくも、手負いなのもあってまるで歯が立っていない。
「さて、邪魔が入ったけど改めて。俺はセリバ。守賢将デステール・グリードの腹心だ。」
「デステールだと!奴が来ているのか!」
「いや、今回は俺一人さ。ダンナに話でもあったのかい?」
「いいや、一発殴りたいだけだから気にしないで。それで、今回の黒幕は貴方なのね?」
「そうだね。」
「いつから!本当の村長さんはどこ?」
アムリスが食い気味に尋ねる。
「……少なくとも、君の知っている村長とやらは全て俺だ。本当の村長はここだぜ。」
セリバは先程剥いだ皮をぴらぴらと見せびらかす。
「まあ、そんなことだろうと思ってたよ。村長と最初の被害者とやらを殺して村長に化け、罪を蜂に擦り付ける。そうやって対立ムードを作り、トドメに修道士を一人殺し、今度は蜂に化けて村長の拉致を演出。狙い通りに蜂と人間が争い始めた……という目論見でしょう。」
「人間共が勝手に聖剣の乙女をスパイ扱いしたのはある意味想定外だったがね。嬉しい誤算だったよ。」
「許せない……人の命をなんだと思っているの!!」
飛び出そうとするアムリスを、アルエットが制する。
「おおっと、残念ながら、今日はアンタ達と戦うつもりはないんだ。アンタ達の相手はコイツ。」
セリバはそう言って、暴れるカトレアを再度地面に押し付ける。
「離せ!!」
「コイツ、女王蜂の婆さんがくたばったら新女王蜂としてそのまま四天王に昇格することになっててよ。でもよ、おかしいと思わねえか?最高幹部である魔族四天王が、妖羽化もできない弱虫の小娘ってよ!」
「妖羽化……?」
「ああ、俺たち魔族の強化戦闘フォームさ。高まる魔力を最適化できる姿に変化するんだ。」
「なんだよそれ……」
「でさ、俺は優しいから一計を案じたわけ。このまま弱っちいままで四天王になって身内から虐められるくらいなら、ぱぱっと強くなっちまおうってな。そこでこれよ!」
セリバはそうやって、懐から何かを取りだした。
「うっ、心臓!?」
セリバの手に握られていたのは、真っ赤に蠢く心臓であった。
「やめて……それだけは、それだけはやめて!お願いだから……!!」
それを見たカトレアが、一層強く抵抗するも簡単にねじ伏せられる。
「コイツは、そこで寝てる女王蜂の心臓だ。魔族の魔力は心臓に集まる。コイツを食わせりゃ、弱虫カトレアでも妖羽化に必要な魔力が手に入るってわけさ。さてと」
セリバは馬乗りになっているカトレアの首を捻り、強引に心臓を押し付ける。カトレアも抵抗し、口を頑なに開かない。
「んーー!んぅー!!!」
「おい、大人しく口を開けろよ。」
そう言ってセリバはカトレアの腹を殴る。カトレアは耐えきれずに口を開いてしまい、心臓を無理やり突っ込まれてしまう。
「もが……」
「ほら、飲み込めよ!」
ごくり。
その瞬間、カトレアの体の周りを凄まじい魔力が渦巻く。カトレアの体がまるで脱皮途中の虫のように皮膚を突き破り、より虫の姿に近い新たな体が剥き出しになる。だが、変化はそこで終わり、渦巻いた魔力は霧散した。
現れたカトレアの体は、人の体に近い胴体から虫の手足が出ており、幼さの残っていた顔も右目とその周りだけ蜂のものに変わってしまい、口も人間の口の中から蜂の大アゴが生えている、悍ましいものだった。
「アウ……ア……ゥア……」
脳も萎縮しているようで、言葉すら喋られなくなっている。それを見たセリバは、心底ガッカリした様子で
「繭すら満足に作れねえのかよ、使えねえ。」
と吐き捨てる。
「これが……こんな不気味な姿が妖羽化……?」
「おいおい、勘違いすんなよ。本当の妖羽化はこんな馬鹿みたいな格好してねえよ。ま、所詮使い捨ての駒だし、あいつら処理してくれればなんでもいいか。」
「ウゥ……」
カトレアは武器を持ち、アルエット達と正対する。
「二人とも気をつけて……あんな姿でも魔力が桁違いに大きい、かなり強くなってるわ!」
アルエットはルーグとアムリスを促し、臨戦態勢を整える。
「せいぜい頑張れよ、弱虫カトレア」
セリバはそうほくそ笑み、カトレアの後ろに下がった。
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