200年級ニートが魔王討伐という名目で厄介払いされる話

盈月

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第二章 遺恨編

遺恨Ⅲ 謁見

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 アムリスが合流した次の日、一行は女王ヴェクトリアに謁見していた。

「此度のイェーゴでの一件、誠にご苦労であった。魔族四天王の撃破だけでなく、有力魔族の一種スパイン・ホーネットのコロニーの殲滅、及びアタラクシアとの協力関係の締結までこなすとは、大義であったぞ。」

 ヴェクトリアは玉座から立ち、傅くアムリスの元へ歩み寄る。

「して、この者が噂の聖剣の乙女殿か。」
「じょ、女王様!お初にお目にかかります。アタラクシア教会の修道女、アムリス・ミレアと申します。」

 緊張しているアムリスに、ヴェクトリアは微笑みかけながら、

「そう畏まらなくともよい。聞けばそなたは、王都に来るのが初めてだというじゃないか。聖剣の乙女殿の眼には、どう映ったかね?」

 アムリスは一瞬考えながら答える。

「僭越ながら申し上げますと、市場もよく賑わっており、街の隅々まで女王陛下の統治が行き届いているため、城壁内部は民の安全が保証されている素晴らしい街だと存じます。ただ……」

 アムリスは言葉を選び、言い淀む。

「遠慮は要らぬ。言ってみよ。」
「かしこまりました。私が今まで訪れた町や村はいずれも、フォーゲルシュタットほどの防衛機構は無く、毎日のように魔物との争いがありました。ですがそれ故に、村人一人一人がそれぞれ魔物と戦える力を身につけております。しかしここの民と兵士たちは、陛下に与えられた平穏をただ享受しているだけに見受けられます。」

 居並ぶ女王の臣下たちはざわめき始める。女王は値踏みをするような目でアムリスを見つめたまま、

「そなたはつまり、人民が平和ボケをしていると申すのじゃな?」

 圧をかけるようにアムリスに問うが、アムリスは動じない。

「言葉を選ばず申し上げますと、そうなりますね。」

 二人は暫し無言で睨み合う。臣下のざわめきは大きくなり、隣でずっとやりとりを聞いているアルエットとルーグの緊張も最高潮になっていた。しかし、それら全てを押し流すような笑い声が謁見の間に響いた。

「アッハッハッハッハッ!」

 笑い声の主は他でもない、女王である。

「気に入ったわ!アルエット、この子置いて行きなさいよ。」

 突然の提案に、アルエットは腰を抜かす。

「は、はぁぁぁぁ!?いやダメですよ母上!アムリスは私たちと旅立つんですから!それにそんなことして教皇様になんて言われるか……」
「冗談よ。あんたももうちょっと余裕持ちなさいよね。」
(こんな状況で余裕もクソもないでしょうが……!)

 女王の前では相変わらずペースが乱されるアルエット。ヴェクトリアは意に介さず再び玉座に座る。

「さて、茶番もここまで。本題に入るとしよう。」

 アルエット達は固唾を飲み込み、再び場を緊張が支配する。

「前に中立種族の協力を要請するために檄を飛ばしたと伝えたな。」
「はい。魔王討伐の勅命と同時に。」
「エルフからの返答が来たのだ。」
「エルフ……!」

 エルフとは、神の直系子孫とも言われる種族である。寿命は一般的には7~800年とされ、個体や条件によっては1000年生きたエルフもいると言われている。持っている魔力の質も高く、人間と違い道具による媒介などを用いなくとも多様な魔法を扱うことができる。自然を好み、その破壊を嫌うため基本的には人間にも魔族にも干渉せず、中立する種族として認識されている。

「女王陛下、その返答というのは……」

 ルーグが先に口を開く。ヴェクトリアは懐から紙を広げる。

「まずはアルエット王女殿下と会って話がしたいとのことだ。というわけで、エリフィーズに行ってもらう。」

 アルエットは、言葉にならない悲鳴をあげた。
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