200年級ニートが魔王討伐という名目で厄介払いされる話

盈月

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第二章 遺恨編

遺恨Ⅱ 酒癖

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 アタラクシアの関所にて、客間に通されたアルエットとルーグ。テーブルに向かい合うようにして二人は椅子に座っていた。

「アムリスさん、ほんとに来れるんですかね?」

 出された菓子を頬張りながらアルエットは応える。

「心配いらないよ。彼女が約束を守らない子に見えるのかい?」
「そうは思いませんけど、アムリスさんじゃなくてアタラクシアが離さないでしょうよ。」
「ふっふっふ……。ルーグ、そういうのはなるようになるのだよ……。」
(またなんか隠してるよこの人)

 ルーグの白い目をよそに、アルエットは茶菓子を食べ続ける。

「ルーグも見ただろう?アムリスのあの使命感に満ちた目を!彼女はやってくれるよ!きっと。」

 アルエットは立ち上がり、拳を突き上げる。ルーグは変わらず冷めた眼差しで見つめる。

「……何を?」
「……」

 ルーグの問いかけに、アルエットは固まったまま言葉に詰まる。アルエットは咳払いをしながら椅子に座り直し、再び菓子に手を伸ばすが

「いてっ」
「いくらなんでも食べ過ぎです。」

 ルーグに手を掴まれてしまった。

「最近、食生活が乱れていますよ。街でも買い食いしすぎです。」
「ぐぅ……完璧な脱走だと思ったのに。」
「城下の人間については俺の方が詳しいに決まってるじゃないですか。」
「もう!ルーグのけち!いけず!甲斐性なし!独身!!」
「独身って……貴女の方が年季入ったぼっちでしょうが!!」
「うるさい!!だって、これから王都を出たらこういうの食べられなくなるんだから!今のうちに食べておかなきゃでしょ!!」
「だからといって、ここの関所のお客様用の菓子を平らげる勢いで食べる人がありますか!一国の王女としての自覚はどこにいったんですか!」
「うるさーい!ルーグのばかー!!」

 アルエットは駄々をこね続ける。

(に、243歳児、めんどくさい……)

 ふと、いくらなんでも普段と様子がおかしいことに気付いたルーグ。菓子を一つ手に取り口にする。途端にルーグの顔が青ざめていき、

「……酒が入ってる、これ。」

 アルエットは酒に弱い上に酒癖が悪い。彼女に仕え始めた頃からそれを思い知っているルーグは、先のイェーゴ村の祭りのときでも、彼女が酒を飲まないように常に目を光らせていた。

「ルーグ、ばかたれ!」

 アルエットは突如ルーグに飛びかかり、腕に噛み付いた。

「いだだだだだだだだ!!」
「まだまだぁ!」

 アルエットはルーグの顔を引っ掻き、つねり、ビンタし、舐め回す。

「いでっ!こら、ちょちょちょ、いい加減にっ……!」
(ちくしょう……なんで200年も生きててアルコール消化酵素がクソザコなんだよ!!)

 突如ガチャリ、と戸が開く音がする。

「はっ、まずいっ!」
「遅れてすみませ……」

 アムリスは客間に入った瞬間、絶句した。そこには押し倒されたルーグに馬乗りになりながら彼の顔を弄ぶアルエットの姿があった。

「あああアムリスさん!違います!誤解です!」
「まだ私何も言ってませんけど……」

 アムリスはそう言って、冷めた目で見下ろす。

「何も言ってないですけどその顔が全てを物語ってるじゃないですか!」
「それなら、そういうことなんじゃないですか?」

 ルーグを弄ることに夢中になっていたアルエットが、ようやくアムリスに気付く。

「ルーグ!その女、誰よ?」
「お前は今は黙ってろォ!」
「ルーグさん、そんな趣味が……」

 ドン引きするアムリス。埒が明かないと判断したルーグは、彼女に叫ぶように言う。

「アムリスさん!解毒魔法をお願いします!アルコール抜くやつ!!」
「え、ああ、はい!」

 アムリスが呪文を唱え、解毒魔法を展開する。アルエットの目の焦点が合い始める。

「あれ、なんでルーグの上に乗ってるんだろ……うぅっ!」

 アルエットの顔が真っ青になり、両手で口を塞ぐ。ルーグがその行動の意味を察したときには、もはや手遅れだった。

「おええ……」

 こうして一行は、思わぬ形で足止めを食らってしまった。
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