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第二章 遺恨編
遺恨Ⅰ エルフの住まう里
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「ハァ……ハァ……」
王都から遠く離れた森の奥深く。一人の青年がなにかに追われるように走っていた。
「くそっ……しくじった。まさかスケアクローの巣に突っ込むなんてな。」
青年はちらと振り向く。その魔物、見た目はかなり人の姿に近いものの、ピンと伸びきった腕と対照的に垂れた手首、そしてその指から身体の半分ほども伸びている鋭利な爪が特徴的であった。移動方法も凄まじい脚力で跳躍するというもので、風変わりな見た目も相まってこの世界の魔物としてはかなり異質な存在であった。ちなみに、人型であっても言葉を発する能力を持たず、スパイン・ホーネットのような高度な社会的構造を持たない存在は魔族ではなく魔物と扱われる。
「おいおい、さっきからこいつら増えてねえか……?こんなにいなかっただろ!」
スケアクローは獲物を発見し興奮すると独特の魔力を発する。それを探知した別のスケアクローがおこぼれを貰うために次々と寄ってくる。といっても、百匹以上はいるような大群にはそうそうお目にかかれないが。
「痛っ!」
青年はついに、木の根に躓いてしまい、スケアクローに追いつかれてしまった。スケアクローは横薙ぎに爪を振り回すが、青年は慌てて下に避ける。背後にあった木はいとも容易く切断され、ズンと音を立てて倒れる。
「しまった……塞がれちまった!」
青年を追い詰めたスケアクローが腕を振りかぶる。青年は覚悟を決め身体にぐっと力を込める。そのとき
「大丈夫だよ……『赫き鉛の跳弾』」
青年の後方からその声が聞こえた瞬間、全てのスケアクローが力なく崩れ去った。青年は後ろを振り向くと、先程倒れた木は何処へか消え去り、その向こうに一人の少年が立っていた。
「おいおい……マジかよ」
青年は驚いた。魔法の精度ではなく、少年の見た目にである。先が長く伸びた耳、青い瞳、ブロンドのサラサラな髪。
「あんた、エルフだな」
「ここから先は聖域だ。人間よ、何ゆえ立ち入ろうとする?」
青年はエルフの少年に向けて、土下座する。
「一生のお願いだ!エリフィーズに連れて行ってくれないか!!」
エリフィーズとは、エルフ達が住まう里であり、この森のどこかに位置すると噂されている。
「だから、なぜかと聞いている。」
「ああ、すまない。ついつい興奮してしまってな……。俺は考古学者のラルカンバラって言うんだが、この付近の森でよくフィールドワークをしているんだ。それでこの間、こんなものを拾ってな。」
ラルカンバラと名乗った青年は、懐からロケットを取り出す。
「それは……ミューラーさんのロケットか」
「ミューラーさんって言うのか!!」
ラルカンバラは、エルフの少年に勢いよく迫る。
「この投影魔法の姿を見たときからビビッと来たんだよ!ああ、この人が俺が今まで追い求めていた運命の人だってよ!そうか、ミューラーさんと言うのか。いい名前だぁ……」
ラルカンバラはロケットを開きながら熱弁する。少年は困惑しながら、
「あの、その人は……」
「なぁ!ミューラーさんに会わせてくれよ!この湧き上がってくる想いを伝えられたら俺はそれでいいんだ!」
(この人、他人の話を聞かないタイプだぁ……)
「なーあー、たーのーむーよぉ!」
肩を掴んで少年の身体を前後に揺らすラルカンバラにイライラしながらも、少年はしばし悩み、ため息をついた。
「仕方ありません。やや不本意ですが、一応恩人でもある貴方にお礼を言わずに追い返すのもエルフの名折れ。数日ならば滞在を許可しましょう。」
ラルカンバラは大声で喜ぶ。
「よっしゃ!ありがとうな!!じゃ、改めて。俺はラルカンバラって言うんだ。よろしくな!!」
ラルカンバラは手を差し出す。エルフの少年は応えることなく、
「……ガステイル」
とだけ伝え、エリフィーズへと歩き始めた。
王都から遠く離れた森の奥深く。一人の青年がなにかに追われるように走っていた。
「くそっ……しくじった。まさかスケアクローの巣に突っ込むなんてな。」
青年はちらと振り向く。その魔物、見た目はかなり人の姿に近いものの、ピンと伸びきった腕と対照的に垂れた手首、そしてその指から身体の半分ほども伸びている鋭利な爪が特徴的であった。移動方法も凄まじい脚力で跳躍するというもので、風変わりな見た目も相まってこの世界の魔物としてはかなり異質な存在であった。ちなみに、人型であっても言葉を発する能力を持たず、スパイン・ホーネットのような高度な社会的構造を持たない存在は魔族ではなく魔物と扱われる。
「おいおい、さっきからこいつら増えてねえか……?こんなにいなかっただろ!」
スケアクローは獲物を発見し興奮すると独特の魔力を発する。それを探知した別のスケアクローがおこぼれを貰うために次々と寄ってくる。といっても、百匹以上はいるような大群にはそうそうお目にかかれないが。
「痛っ!」
青年はついに、木の根に躓いてしまい、スケアクローに追いつかれてしまった。スケアクローは横薙ぎに爪を振り回すが、青年は慌てて下に避ける。背後にあった木はいとも容易く切断され、ズンと音を立てて倒れる。
「しまった……塞がれちまった!」
青年を追い詰めたスケアクローが腕を振りかぶる。青年は覚悟を決め身体にぐっと力を込める。そのとき
「大丈夫だよ……『赫き鉛の跳弾』」
青年の後方からその声が聞こえた瞬間、全てのスケアクローが力なく崩れ去った。青年は後ろを振り向くと、先程倒れた木は何処へか消え去り、その向こうに一人の少年が立っていた。
「おいおい……マジかよ」
青年は驚いた。魔法の精度ではなく、少年の見た目にである。先が長く伸びた耳、青い瞳、ブロンドのサラサラな髪。
「あんた、エルフだな」
「ここから先は聖域だ。人間よ、何ゆえ立ち入ろうとする?」
青年はエルフの少年に向けて、土下座する。
「一生のお願いだ!エリフィーズに連れて行ってくれないか!!」
エリフィーズとは、エルフ達が住まう里であり、この森のどこかに位置すると噂されている。
「だから、なぜかと聞いている。」
「ああ、すまない。ついつい興奮してしまってな……。俺は考古学者のラルカンバラって言うんだが、この付近の森でよくフィールドワークをしているんだ。それでこの間、こんなものを拾ってな。」
ラルカンバラと名乗った青年は、懐からロケットを取り出す。
「それは……ミューラーさんのロケットか」
「ミューラーさんって言うのか!!」
ラルカンバラは、エルフの少年に勢いよく迫る。
「この投影魔法の姿を見たときからビビッと来たんだよ!ああ、この人が俺が今まで追い求めていた運命の人だってよ!そうか、ミューラーさんと言うのか。いい名前だぁ……」
ラルカンバラはロケットを開きながら熱弁する。少年は困惑しながら、
「あの、その人は……」
「なぁ!ミューラーさんに会わせてくれよ!この湧き上がってくる想いを伝えられたら俺はそれでいいんだ!」
(この人、他人の話を聞かないタイプだぁ……)
「なーあー、たーのーむーよぉ!」
肩を掴んで少年の身体を前後に揺らすラルカンバラにイライラしながらも、少年はしばし悩み、ため息をついた。
「仕方ありません。やや不本意ですが、一応恩人でもある貴方にお礼を言わずに追い返すのもエルフの名折れ。数日ならば滞在を許可しましょう。」
ラルカンバラは大声で喜ぶ。
「よっしゃ!ありがとうな!!じゃ、改めて。俺はラルカンバラって言うんだ。よろしくな!!」
ラルカンバラは手を差し出す。エルフの少年は応えることなく、
「……ガステイル」
とだけ伝え、エリフィーズへと歩き始めた。
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