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第二章 遺恨編
遺恨ⅩⅣ 『妖精種』
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「妖精種って、あの……」
「そう。人間の女王が血を飲んだっていうアレよ。」
『妖精種』――上質な魔力を持ち、その魔力を含む血液を飲めば永遠に近い命を得られるという、魔物や魔族の突然変異種。ラムディアがその一人だというゼーレンの告白に、アムリス達は驚きを隠せなかった。
「ラムディアちゃんは『玉帝月兎』という魔物の突然変異種よ。人間にはあまり聞き馴染みのない種だと思うけど、魔族領だといろんなところで見ることができる、ウサギの魔物なの。」
「魔物……?でもこの人は、魔族なんでしょ?」
「ええ、玉帝月兎は今でも普通の魔物だわ。だけど妖精種として高い魔力と魔族に近い見た目を持って生まれたラムディアちゃんだけ、魔王様から血の祝福を受け魔族になったのよ。」
この世界の魔物はあくまで自然発生した生物であり、人間領や魔族領問わず多数出没する。その魔物のなかでも魔族領で頭角を現し、魔王にその実力を認められた者は魔力を込めた血を分け与えられることがある。それが血の祝福であり、魔物が魔族になるときに必要な儀式である。また、混ざった魔王の血は子供以降にも受け継がれていくため、魔族の子孫は未来永劫魔族として認められる。
「100年と少し前くらいかしらね。玉帝月兎の妖精種が生まれたという話は、魔族領だけじゃなく人間領にも響き渡ったわ。当時はもう既に人間の女王が妖精種の血で寿命を伸ばした後だったから、話を聞いた人間達は狂ったように玉帝月兎を乱獲していったわ。」
「そんな……。」
「ある日、アタシは魔王に呼び出されたの。あのときのことはなかなか忘れられないわね……」
105年前、魔都ジューデス。魔王ネカルク・アルドネアの玉座の間にて、ゼーレンは跪いていた。魔王の隣には一人の少女が、魔王の服の袖を掴んでいる。
「魔王様、その子が……」
「ああ。玉帝月兎の妖精種だ。」
少女は無言で、ゼーレンの方をじっと見つめている。
(絶望と不信に満ちた瞳……無理もないが。まだ幼いはずなのに、なんて顔をしてるのよ)
「生まれてから今まで、人間から逃げ続けてきたらしいが……数日前、ついに逃げ切れずに捕まってしまったらしいのだ。」
魔王の言葉に、ゼーレンは驚愕した。
「なっ……!」
「まあ落ち着け。この娘は無事だ。ここにこうしていることがその証だろう?」
「はは……あまり驚かせないでくださいよ。」
「相変わらず、お前の敬語には慣れんな……。だが、真に驚くべきはこの先だ。報告を受けた余が到着した頃にはもう、人間の屍の山が転がっておったのじゃ。」
「……魔族とはいえ、10歳程度の娘が人間を皆殺しですか。」
「少なくとも10人はいたであろうな。人間から奪った刀を持ってまま、血の海の真ん中で佇んでおったよ。」
「ふむ……。まさか、私を呼んだ理由というのは」
「この娘をお前に預けようと思う。」
「ああ、そうですよね。」
「うむ。この娘が自力で安心を手に入れられるだけの力を与えてやって欲しい。」
魔王ネカルクはニヤリと微笑む。ゼーレンはため息を一つついた。
「そんなこと言って、いつも通り裏でなにか企んでるのでしょう?」
「心外だね、余がまるでいつもお前を騙しているみたいに言うじゃないか。それにお前も、人間を皆殺しにしたって辺りからニヤニヤが堪えきれておらんぞ、気持ち悪い。」
ゼーレンは慌てて、ヨダレを拭き取る。
「はしたないのう。」
「うるさいわね。とにかく、その子はアタシが貰っていいのね?」
「もちろん。将来の幹部候補にまで育て上げてくれればいい。」
「随分、理想が低いのね。この才能ならその程度、100年もかからないわよ。」
ゼーレンとネカルクは二人して不気味に笑う。
「この子の名前は?」
足元で怯えているラムディアに気付いたゼーレンが、ネカルクに質問した。
「ラムディアだ。ラムディア・ストームヴェルン。」
「そう……おいで、ラムディアちゃん。」
ゼーレンはラムディアに目線を合わせ、両手を広げてラムディアを迎えようとする。ラムディアは困った様子でネカルクに視線を投げる。
「どうした?お前の新しい父親だぞ?」
ラムディアはネカルクの裾をより強く握り、顔を真っ赤にして俯いた。
「父親より母親の方が嬉しいんじゃないの?」
ゼーレンの不意打ちに、ネカルクは珍しく照れる。
「ええい、うるさい!もう……ほら、いい加減離しなさい!」
ネカルクは無理やりラムディアを引き剥がし、服の背中部分を掴んで
「ん」
ゼーレンに無造作に押し付け、足早に自室に戻って行った。ゼーレンはくすりと微笑み、
「それじゃ改めて。これからよろしくね、ラムディアちゃん。」
と、ラムディアの頬に軽くキスをする。しかしラムディアは悲鳴をあげ、ゼーレンの左頬を思いっきりビンタしてしまうのであった。
「そう。人間の女王が血を飲んだっていうアレよ。」
『妖精種』――上質な魔力を持ち、その魔力を含む血液を飲めば永遠に近い命を得られるという、魔物や魔族の突然変異種。ラムディアがその一人だというゼーレンの告白に、アムリス達は驚きを隠せなかった。
「ラムディアちゃんは『玉帝月兎』という魔物の突然変異種よ。人間にはあまり聞き馴染みのない種だと思うけど、魔族領だといろんなところで見ることができる、ウサギの魔物なの。」
「魔物……?でもこの人は、魔族なんでしょ?」
「ええ、玉帝月兎は今でも普通の魔物だわ。だけど妖精種として高い魔力と魔族に近い見た目を持って生まれたラムディアちゃんだけ、魔王様から血の祝福を受け魔族になったのよ。」
この世界の魔物はあくまで自然発生した生物であり、人間領や魔族領問わず多数出没する。その魔物のなかでも魔族領で頭角を現し、魔王にその実力を認められた者は魔力を込めた血を分け与えられることがある。それが血の祝福であり、魔物が魔族になるときに必要な儀式である。また、混ざった魔王の血は子供以降にも受け継がれていくため、魔族の子孫は未来永劫魔族として認められる。
「100年と少し前くらいかしらね。玉帝月兎の妖精種が生まれたという話は、魔族領だけじゃなく人間領にも響き渡ったわ。当時はもう既に人間の女王が妖精種の血で寿命を伸ばした後だったから、話を聞いた人間達は狂ったように玉帝月兎を乱獲していったわ。」
「そんな……。」
「ある日、アタシは魔王に呼び出されたの。あのときのことはなかなか忘れられないわね……」
105年前、魔都ジューデス。魔王ネカルク・アルドネアの玉座の間にて、ゼーレンは跪いていた。魔王の隣には一人の少女が、魔王の服の袖を掴んでいる。
「魔王様、その子が……」
「ああ。玉帝月兎の妖精種だ。」
少女は無言で、ゼーレンの方をじっと見つめている。
(絶望と不信に満ちた瞳……無理もないが。まだ幼いはずなのに、なんて顔をしてるのよ)
「生まれてから今まで、人間から逃げ続けてきたらしいが……数日前、ついに逃げ切れずに捕まってしまったらしいのだ。」
魔王の言葉に、ゼーレンは驚愕した。
「なっ……!」
「まあ落ち着け。この娘は無事だ。ここにこうしていることがその証だろう?」
「はは……あまり驚かせないでくださいよ。」
「相変わらず、お前の敬語には慣れんな……。だが、真に驚くべきはこの先だ。報告を受けた余が到着した頃にはもう、人間の屍の山が転がっておったのじゃ。」
「……魔族とはいえ、10歳程度の娘が人間を皆殺しですか。」
「少なくとも10人はいたであろうな。人間から奪った刀を持ってまま、血の海の真ん中で佇んでおったよ。」
「ふむ……。まさか、私を呼んだ理由というのは」
「この娘をお前に預けようと思う。」
「ああ、そうですよね。」
「うむ。この娘が自力で安心を手に入れられるだけの力を与えてやって欲しい。」
魔王ネカルクはニヤリと微笑む。ゼーレンはため息を一つついた。
「そんなこと言って、いつも通り裏でなにか企んでるのでしょう?」
「心外だね、余がまるでいつもお前を騙しているみたいに言うじゃないか。それにお前も、人間を皆殺しにしたって辺りからニヤニヤが堪えきれておらんぞ、気持ち悪い。」
ゼーレンは慌てて、ヨダレを拭き取る。
「はしたないのう。」
「うるさいわね。とにかく、その子はアタシが貰っていいのね?」
「もちろん。将来の幹部候補にまで育て上げてくれればいい。」
「随分、理想が低いのね。この才能ならその程度、100年もかからないわよ。」
ゼーレンとネカルクは二人して不気味に笑う。
「この子の名前は?」
足元で怯えているラムディアに気付いたゼーレンが、ネカルクに質問した。
「ラムディアだ。ラムディア・ストームヴェルン。」
「そう……おいで、ラムディアちゃん。」
ゼーレンはラムディアに目線を合わせ、両手を広げてラムディアを迎えようとする。ラムディアは困った様子でネカルクに視線を投げる。
「どうした?お前の新しい父親だぞ?」
ラムディアはネカルクの裾をより強く握り、顔を真っ赤にして俯いた。
「父親より母親の方が嬉しいんじゃないの?」
ゼーレンの不意打ちに、ネカルクは珍しく照れる。
「ええい、うるさい!もう……ほら、いい加減離しなさい!」
ネカルクは無理やりラムディアを引き剥がし、服の背中部分を掴んで
「ん」
ゼーレンに無造作に押し付け、足早に自室に戻って行った。ゼーレンはくすりと微笑み、
「それじゃ改めて。これからよろしくね、ラムディアちゃん。」
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