200年級ニートが魔王討伐という名目で厄介払いされる話

盈月

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第二章 遺恨編

遺恨ⅩⅢ ラムディア急襲

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「そんなこと、させません……!」

 広間奥の壁まで飛ばされたアムリス。ガステイルの力も借りながら何とか立ち上がり、ラムディアに向かって聖剣を構える。

(ただの蹴りでこの威力……この魔族ひと、強い!)
「剣翁!そいつは何者だ!アンタなら知ってんだろ!?」

 ガステイルが声を張り上げてゼーレンに問う。ゼーレンはラムディアから目を離さずに答えた。

「彼女は『戦乙女』ラムディア・ストームヴェルン。アタシが魔都にいた頃の弟子の一人よ。」
「ちょっと待てよ、『戦乙女』ってことは……!」
「お察しの通り、私は魔族四天王が一人、戦乙女ラムディア・ストームヴェルンだ。」

 予想通りであって欲しくない返答に、ガステイルは思わず本音が漏れる。

「おいおい、いくらなんでも幹部クラスがホイホイ前線に出て来すぎだろ……どうなってんだよ!」

 ラムディアはアムリスに強い視線を向けたまま、ゆっくりと間合いを詰めていく。

(この間合いなら……俺が先手を取る!)
「奔れ炎気……『火炎の弾丸フレイムシュート』!」

 ガステイルがラムディアに向けて指をさし呪文を唱えると、その指先から炎の弾丸がラムディアに向けて発射された。ラムディアはバックステップで間合いを取る。

(『火炎の弾丸フレイムシュート』は初等魔法……射程範囲なら頭に入っているわ)

 しかし、ラムディアの思惑と異なり、『火炎の弾丸フレイムシュート』が炸裂した。

「なっ!?」
(何故当たった!?初等魔法の射程は魔力量の影響はほとんどないはず……。ギリギリ届いた感じもなく、ここまで射程に余裕があるわけがない!それに、当たった瞬間の物理的衝撃は何……?)
「……偽装した、別の魔法だと思った方が良さそうね。」

 ラムディアはそう呟き、炎と煙を払う。

「はぁぁ!!」

 その煙に乗じたアムリスが、ラムディアに突撃する。流石のラムディアも不意打ちには対応しきれず、避けきれず手傷を負う。

「……随分と、姑息な剣士もいたものね。」
「……」

 そのままラムディアとアムリスが斬り結ぶ。しかし、

「うぐっ……」

 時間が経つにつれ、二人の地力の差が明確に表れる。アムリスはラムディアの攻撃を受けきれず、ダメージが蓄積していく。

「援護します!」

 ガステイルも『火炎の弾丸フレイムシュート』で援護する。ラムディアも弾丸を斬って対応する。

「ちぃっ!」
(流石に遠距離攻撃は鬱陶しいわね。意識配分は3:7でエルフ寄り、聖剣の乙女は時間の問題ね。それに……今、弾丸を斬れた感触があった。斬った瞬間に魔法が霧散したことを考えると……)

 ラムディアは間合いを取り、ガステイルを見て言った。

「なるほどね。貴方がさっきから使ってる魔法、物質に魔法を込めて飛ばしている魔法ってところでしょ。」

 ガステイルは神妙な面持ちで答える。

「……ああ。物質を核として魔法を偽装して射出しているってのは当たりだぜ。」

 ラムディアは勝ち誇るように笑みを浮かべた。

「魔法の炎に斬る感触なんて無いものね……。それで、まだやるつもりなの?」
「どういう意味だよ。」
「そのままの意味よ。そこの聖剣使いの小娘は満身創痍、貴方の魔法も所詮初見殺し。タネが分かった以上私には通用しない。勝ち目のない戦いなんて、続けるだけ無駄じゃない?」

 ラムディアの言葉を、ガステイルは一笑に付す。

「ハッ!お前が先にアムリスに手を出しておいてか?」

 ラムディアの表情から笑みが消える。

「殴りかかるだけ殴っておいて自分だけ勝ち逃げするつもりかよ。随分と俺らのことなめくさってくれてんな。その程度なら人間を恨む理由なんてのも、くだらねえ理由なんだろ?」

 ラムディアはガステイルを睨みつける。

「……いいわ。そのくだらない挑発、乗ってあげる。私の優しさを受け入れなかったこと、後悔しなさい!」

 そう言ってラムディアは低く構え、跳ぶ力を太ももに溜めている。ガステイルはそれを見てニヤリと笑い、

「いいや、俺たちの勝ちだぜ!ラムディア・ストームヴェルン!」

 ラムディアに手を向ける。

「再び駆けろ!『潜む弾丸バレットハイド』!!」

火炎の弾丸フレイムシュート』に使われた3発の魔法の核が、再びラムディアを襲う。ラムディアの意識外からの弾丸と破片は、彼女の四肢を貫いた。

「ぐああっ!」
「アンタの推理は正解さ。俺は属性魔法を弾丸に乗せて射出する魔法を使ってる。ただ、アンタは可能性をひとつ見落としたのさ。」

 力を込めていた太ももを撃たれ、うつ伏せでうずくまるラムディアに、ガステイルは告げる。

「今まで撃たれた弾丸が全て、俺の魔力で構築されたものだってことをね。まさか自分の魔法のマイナーさが強みになるとは思わなかったぜ。アンタのその速さは厄介だからな、射出する魔法をブラフに足を削らせてもらったぜ。」
「ぐっ……うぅ……」

 ラムディアは力を振り絞り、なんとか立とうとする。しかしそこへ、アムリスが立ちはだかり、剣を振りかぶる。

「改めて、チェックメイトだ。ラムディア・ストームヴェルン。」

 アムリスが聖剣を振りおろそうと力を込めた瞬間、

「待ってちょうだい。」

 沈黙と不干渉を貫いていたゼーレンが制止した。ゼーレンは倒れたラムディアに歩み寄り、

「貴女の負けよ、ラムディアちゃん。分かったなら、剣を一度収めなさい。」

 ラムディアはしばらく歯を食いしばりながら、ゆっくりと剣を収めた。ゼーレンはアムリス達に向き直り、

「アムリスちゃん達も、この場は一旦手打ちにして欲しいの。アタシも師匠として、どちらかが死んでしまうなんて結末は嫌なのよ。」

 と懇願する。ガステイルは

「まあ、俺は命を奪うことにはこだわりませんが……アムリスはいいの?」
「……条件があります。そこまで人間を恨む理由が知りたいの。勝者に命を奪う権利があるなら、私はその代わりにこの理由を追求する権利が欲しいわ。」

 ゼーレンはラムディアの方へ視線を向ける。ラムディアは口を閉ざしたまま、何も語らない。ゼーレンはため息をひとつつき、言った。

「そうねぇ。アタシも25年前のから、いい加減前に進まなきゃいけないのかもね。」

 ガステイルとアムリスは息を呑む。

(25年前……剣翁様が魔族領からエリフィーズに戻った時の話ってことか)
「結論から言うわ。ラムディアちゃんは自身の体質……妖精種ニンフェリムに起因する人間からの迫害で、一族と仲間を殺されたのよ。」
「に……妖精種ニンフェリムですって!?」

 ラムディアはうつ伏せのまま、拳を強く握り戦慄かせていた。
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