200年級ニートが魔王討伐という名目で厄介払いされる話

盈月

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第二章 遺恨編

遺恨ⅩⅥ 回想『魔族襲撃事件』②

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 翌日、ジューダス魔王城内特設闘技場。中央の円形の武舞台を囲むように観客席が併設されており、正面最前列が主賓席として用意されている。その主賓席には魔王ネカルク、鴟鴞爵フラーヴ、守賢将デステールが招待され、着席している。

「しかし、このような至近距離で戦いが見られるようになるとはな。デステールよ、本当に結界は大丈夫なんだろうな?」
「ご安心を。我々も控えておりますゆえ、万が一にも陛下の安全が脅かされることはございません。他の方たちは……まあ、避けられぬ自分を恨んでいただきましょう。」
「まあ、それもそうか。今日は存分に客として楽しむとしようか!」

 闘技場裏、選手控え室。既に満員で最高潮の盛り上がりを見せる観客席をよそに、ラムディア達は神妙な面持ちで集中していた。

「いよいよ、御前試合ね。」
「はい。」
「魔王様と現職の四天王のお二人の前、無様な戦いはできないわね。」
「デステール様が来てんのか……」
「あたしも負けないわよ!フラーヴ様にいいところ見せなくちゃ。」

 四人はそれぞれ、おもいおもいの方法で試合に向き合っている。

「それにしても、試合まで暇ね……」
「まあ、私たちがこの試合のメインディッシュみたいなものですからね。そりゃ一番大事なトリの2試合になりますよ。」

 カトレアは槍を拭きながら答える。

「それに、よりによってラムディアとなんてね。セリバとなら遠慮なくボコボコにしてやるのにね。」
「あん?お前、逆に毎日俺にボッコボコにされてるだろうが。弱虫カトレア!」
「あら、あれが私の全力だと本気で思っているのですか?おめでたい頭してますね。」
「上等だ。試合まで待つ必要はねえ!息の根止めてやらァ!」

 セリバがそう言った瞬間、一触即発の二人に拳骨が振り下ろされた。

「ぐぇ!」
「いたっ!」
「二人とも、ストップ!体力は試合までとっておくのです!もう、心配して控え室に来てみればこんな日まで喧嘩してしまうなんて……」

 二人が振り向くと、そこにはゼーレンが立っていた。

「「師匠……」」
「喧嘩するくらい元気なら何も問題はいらないわね。全く、心配して損したわ。」

 揃ってしょんぼりする二人。

「試合運営は大丈夫なんですか?」

 ラムディアはゼーレンに尋ねた。

「今は問題ないわ。さっき開会式が終わって第一試合の準備中ね。まあ、もうすぐ戻らないといけないのだけど。」

 ゼーレンは四人の頭を順番に撫でる。

「それじゃ、みんな。あまり緊張せずにいつもの稽古の通り、頑張ってくるのよ!」 

 ゼーレンはそう言って、急いで控え室を出た。
 四人はしばらく黙ったまま、調整に勤しんだ。

 ゼーレンが控え室を出て2時間ほどが経過した。試合会場を映す投影魔法のモニターを見ながら、セリバが沈黙を破った。

「今って、何試合目だ?」
「7試合目ね。あたしらの試合は9試合目だから、そろそろ出番ね。」
「ああ……。」

 セリバは立ち上がり、控え室を出る。

「あれ?もう行くの?」
「ちげえ、用足してくんだよ。」
「あら、そう。ごゆっくり。」

 ロマリアはそう言って、セリバを見送った。
 闘技場内男子トイレ。窓から外を見ながら、セリバは頭を整理していた。

(そうか……ロマリアと試合か)

 セリバもラムディアやロマリアにも決して引けを取らない実力者である。稽古の組手の戦績も全くの五分であり、セリバ自身も決して二人に劣っているとは思ってはいなかった。しかし、

(俺は、あいつを斬れるのか……?)

 セリバは迷っていた。普段の稽古では問題なく打ち込むはずなのに、魔王やデステールが見ている試合でロマリアを攻撃することへ躊躇が生まれていた。そしてその迷いが、彼の唯一の劣等感を肥大化させる。

(そもそも、ラムディアもロマリアも……カトレアでさえ、次期四天王がほぼ内定している。俺だけが未だにデステール様に認められていない……。俺は本当に、あいつらと肩を並べられる資格があんのか……?)

 セリバは少し熟考した。しかし、すぐに

「うおおおお!」

 と、思い切り壁を殴った。壁はガラガラを音を立てて崩れさる。

「……俺は負けん。ロマリアはおろか、デステール様だって超えてみせる!!」

 そう、決意を誓った。すると、セリバの後ろからパチパチと音が聞こえる。振り返ると、迷い込んだ人間の男が一人、拍手していた。

「人間……なぜここに!」
「いいねぇ。若い魔族の心の叫び!お兄さん感動しちゃったよ。」
「誰だ......?一体、いつから……」

 言い終わらぬうちに、セリバの後頭部に強い衝撃が走る。

「がは……!」

 足元に、セリバの頭に当たったであろう長方形のレンガの塊が転がる。セリバは倒れ臥し、その頭からどくどくと血が溢れ出す。男は笑顔でしゃがみ、セリバの顔を覗きながら言った。

「どうも、ネオワイズ盗賊団です。それでは、しばらくおやすみなさい。」

 男――ラルカンバラ・ネオワイズはそう告げて、男子トイレから去っていった。
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