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第二章 遺恨編
遺恨ⅩⅦ 回想『魔族襲撃事件』③
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セリバが去った控え室にて、ラムディアとロマリアが会話していた。
「それで、結局昨日はセリバに首輪つけたの?」
「えぇ!?」
ロマリアは赤面する。
「もう、今更恥ずかしがることないでしょ!」
「うぅ……同性なのにセクハラしてくるよこのウサギ……。」
「で!どうなのよ!」
ラムディアの押しに負けて、ロマリアはしぶしぶ白状する。
「首輪は買ってもらったわ。でも、御前試合の前日にやることじゃないって怒られたから……」
「ふむふむ……というか、ほんとに頼んだらやってくれるんだね。」
「うん。かわいいよね。それで怒られたから、じゃあせっかくだし御前試合であたしが勝ったら今晩好きにさせてよって頼んだら……。」
ロマリアの顔が真っ赤になる。
「キャー!!!」
ラムディアはテンションが最高潮になり、ロマリアに抱きついた。
「あんた……よくやったよ!あんた!!」
「うぐ……ラムディア、苦しい。」
「静かにしてください、淫乱ウサギ。」
「なっ、い、淫乱じゃないもん!!」
ラムディアは慌ててロマリアから離れる。
「でもさ、それなら絶対アイツに勝たなきゃね!」
「ロマリアなら余裕ですよ、余裕。」
「あはは……二人とも、ありがとね。」
三人は一息ついて、飲み物を口にする。投影魔法のモニターを見ると、ちょうど第8試合が始まった頃合いだった。
「セリバ、遅いわねぇ。」
「便秘かしら、変なものは食べさせてないと思うんだけど。」
「ロマリア、汚いです。」
「まあまあ、そろそろ武舞台の裏に行って準備しときましょ。セリバもそのうち来るでしょ!」
「......」
楽観的なラムディアに対し、眉をひそめて何かを考えているロマリア。
「どうしたの?」
「え!ああいや、ちょっと嫌な予感がしただけ。大丈夫よ!行きましょう!」
ロマリアはそう言って、懐から出したふたつの鉄の塊に血を垂らし、
「導け、『武器変化』」
と唱える。鉄の塊は二振りの剣に変化し、それを腰に差してロマリアは控え室を出た。
(武器変化……クラウディの秘伝の魔法まで使うなんて、ロマリアも本気ね)
「というか、どんだけセリバに首輪つけたいのよ……」
「生まれて初めて、アイツに同情します。」
「あはは、そりゃ今日はとんでもないことが起きるかもね。」
「ふふ……でしょうね。」
「それじゃ、私たちも行こうか。」
ラムディアとカトレアも控え室を後にした。
闘技場内武舞台。第8試合はとっくに終わり第9試合の始まる時間を大きく過ぎている。武舞台に立っているのはロマリア一人であった。
「どういうこと……セリバは何をしているの!?」
裏でラムディアが慌てふためく。試合を見に来た群衆も動揺を見せており、それは主賓席の魔族たちも同じであった。
「デステール、お前の部下が随分と遅刻しているようだが?」
「さぁ、腹でも壊したんですかねぇ?」
魔王ネカルクはみるみる不機嫌になり、
「……興醒めだな。帰るぞ、フラーヴ、デステール。」
「承知しました。」
「分かりましたよっと。」
席を立ち上がるネカルクとフラーヴ。それを見たロマリアは
「お待ちください、陛下!フラーヴ様!!」
と叫ぶが、聞く耳を持たず一瞬で姿を消した。
「あららぁ。残念だね。」
デステールはロマリアに笑顔で言い放った。
「まあでも、こうなっちゃったら仕方ないよね。ああ言ってることだし、僕も帰らなきゃ。」
デステールは懐から謎の塊を取り出し、足元に投げ捨てる。
「この結界の核だけは置いていくから……あ、そうそう。君の対戦相手に伝えておいてくれよ。帰ったら殺すってさ。」
「ひっ……はい。」
デステールの変わらぬ笑顔の中の恐怖が、ロマリアの心臓に刻まれた。
「それじゃあね。試合頑張ってね。」
デステールもそう言い残し、姿を消した。
「どうなってるのよ!セリバちゃん、どこにいるの!?」
ゼーレンはロマリアに駆け寄り、問い詰めた。カトレアとラムディアも追って武舞台に登る。
「分からないです……トイレに行くと言ったきり、帰ってこなくて……」
「トイレ?トイレなのね!分かった、アタシが呼んでくるから!」
ゼーレンは急いで武舞台から出て、内部のトイレまで駆け出した。
「一体何が起きてるの……?」
「分かんない……セリバは大丈夫なの?」
「とりあえず、師匠が連れてくるはずです。」
「……いや、あたしも行くわ。」
「「えっ!」」
「結局二人揃わないなら意味ないのでしょう?だったらあたしも行く。二人は待っててちょうだい!」
ロマリアはそう言って武舞台の出口に走り出した。しかし、
「あぶなーい!!」
「うぐっ」
出口に駆け込む直前、急にドアが閉まる。ロマリアは駆け込む直前に腕を捕まれ、挟まれずに済んだ。
「閉まっている途中のドアに駆け込んじゃ危ないじゃないか!それに……」
ロマリアは自らの腕を掴んだ男――ラルカンバラ・ネオワイズの顔を見上げる。
「え、人間……?」
ラルカンバラはロマリアを意に介さず、ラムディアを見て舌なめずりをする。
「ようやく捕まえたんだ。妖精種ともども逃げられるわけにはいかないのだよ……『クラウディ』のダークエルフちゃん。」
「それで、結局昨日はセリバに首輪つけたの?」
「えぇ!?」
ロマリアは赤面する。
「もう、今更恥ずかしがることないでしょ!」
「うぅ……同性なのにセクハラしてくるよこのウサギ……。」
「で!どうなのよ!」
ラムディアの押しに負けて、ロマリアはしぶしぶ白状する。
「首輪は買ってもらったわ。でも、御前試合の前日にやることじゃないって怒られたから……」
「ふむふむ……というか、ほんとに頼んだらやってくれるんだね。」
「うん。かわいいよね。それで怒られたから、じゃあせっかくだし御前試合であたしが勝ったら今晩好きにさせてよって頼んだら……。」
ロマリアの顔が真っ赤になる。
「キャー!!!」
ラムディアはテンションが最高潮になり、ロマリアに抱きついた。
「あんた……よくやったよ!あんた!!」
「うぐ……ラムディア、苦しい。」
「静かにしてください、淫乱ウサギ。」
「なっ、い、淫乱じゃないもん!!」
ラムディアは慌ててロマリアから離れる。
「でもさ、それなら絶対アイツに勝たなきゃね!」
「ロマリアなら余裕ですよ、余裕。」
「あはは……二人とも、ありがとね。」
三人は一息ついて、飲み物を口にする。投影魔法のモニターを見ると、ちょうど第8試合が始まった頃合いだった。
「セリバ、遅いわねぇ。」
「便秘かしら、変なものは食べさせてないと思うんだけど。」
「ロマリア、汚いです。」
「まあまあ、そろそろ武舞台の裏に行って準備しときましょ。セリバもそのうち来るでしょ!」
「......」
楽観的なラムディアに対し、眉をひそめて何かを考えているロマリア。
「どうしたの?」
「え!ああいや、ちょっと嫌な予感がしただけ。大丈夫よ!行きましょう!」
ロマリアはそう言って、懐から出したふたつの鉄の塊に血を垂らし、
「導け、『武器変化』」
と唱える。鉄の塊は二振りの剣に変化し、それを腰に差してロマリアは控え室を出た。
(武器変化……クラウディの秘伝の魔法まで使うなんて、ロマリアも本気ね)
「というか、どんだけセリバに首輪つけたいのよ……」
「生まれて初めて、アイツに同情します。」
「あはは、そりゃ今日はとんでもないことが起きるかもね。」
「ふふ……でしょうね。」
「それじゃ、私たちも行こうか。」
ラムディアとカトレアも控え室を後にした。
闘技場内武舞台。第8試合はとっくに終わり第9試合の始まる時間を大きく過ぎている。武舞台に立っているのはロマリア一人であった。
「どういうこと……セリバは何をしているの!?」
裏でラムディアが慌てふためく。試合を見に来た群衆も動揺を見せており、それは主賓席の魔族たちも同じであった。
「デステール、お前の部下が随分と遅刻しているようだが?」
「さぁ、腹でも壊したんですかねぇ?」
魔王ネカルクはみるみる不機嫌になり、
「……興醒めだな。帰るぞ、フラーヴ、デステール。」
「承知しました。」
「分かりましたよっと。」
席を立ち上がるネカルクとフラーヴ。それを見たロマリアは
「お待ちください、陛下!フラーヴ様!!」
と叫ぶが、聞く耳を持たず一瞬で姿を消した。
「あららぁ。残念だね。」
デステールはロマリアに笑顔で言い放った。
「まあでも、こうなっちゃったら仕方ないよね。ああ言ってることだし、僕も帰らなきゃ。」
デステールは懐から謎の塊を取り出し、足元に投げ捨てる。
「この結界の核だけは置いていくから……あ、そうそう。君の対戦相手に伝えておいてくれよ。帰ったら殺すってさ。」
「ひっ……はい。」
デステールの変わらぬ笑顔の中の恐怖が、ロマリアの心臓に刻まれた。
「それじゃあね。試合頑張ってね。」
デステールもそう言い残し、姿を消した。
「どうなってるのよ!セリバちゃん、どこにいるの!?」
ゼーレンはロマリアに駆け寄り、問い詰めた。カトレアとラムディアも追って武舞台に登る。
「分からないです……トイレに行くと言ったきり、帰ってこなくて……」
「トイレ?トイレなのね!分かった、アタシが呼んでくるから!」
ゼーレンは急いで武舞台から出て、内部のトイレまで駆け出した。
「一体何が起きてるの……?」
「分かんない……セリバは大丈夫なの?」
「とりあえず、師匠が連れてくるはずです。」
「……いや、あたしも行くわ。」
「「えっ!」」
「結局二人揃わないなら意味ないのでしょう?だったらあたしも行く。二人は待っててちょうだい!」
ロマリアはそう言って武舞台の出口に走り出した。しかし、
「あぶなーい!!」
「うぐっ」
出口に駆け込む直前、急にドアが閉まる。ロマリアは駆け込む直前に腕を捕まれ、挟まれずに済んだ。
「閉まっている途中のドアに駆け込んじゃ危ないじゃないか!それに……」
ロマリアは自らの腕を掴んだ男――ラルカンバラ・ネオワイズの顔を見上げる。
「え、人間……?」
ラルカンバラはロマリアを意に介さず、ラムディアを見て舌なめずりをする。
「ようやく捕まえたんだ。妖精種ともども逃げられるわけにはいかないのだよ……『クラウディ』のダークエルフちゃん。」
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