200年級ニートが魔王討伐という名目で厄介払いされる話

盈月

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第二章 遺恨編

遺恨ⅩⅩⅠ 落とし穴

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「アルエット様!ルーグさんも……」

 アムリスは慌ててアルエットを介抱する。

「まさか、ネオワイズ盗賊団ですか?」

 ガステイルの疑問に、ルーグは驚く。

「ええ、ラルカンバラが実は盗賊団の団長だったようで……どうしてそれを?」
「ちょっとね。街の様子は?」
「パニックというか、暴動が起きているわね。毒草と毒キノコでエルフ達を洗脳し操っている。ただ……」

 アルエットが息を整えながら説明する。

「今、ラルカンバラともう一人が、私たちを追いかけてこっちに向かっているわ。もうじき……」
「ラルカンバラ……奴が、ここに来るのか!?」

 部屋の奥からラムディアが、剣を支えにして立ち上がる。

  「なっ、魔族!?」

 ルーグとアルエットはラムディアを見た途端、臨戦態勢を取る。しかしアムリスが手で二人を制する。

「アムリス!?」
「アルエット様、ご無礼お許しください。今はここで争うべきではありません。」

 そう言ったアムリスは、ラムディアの方にも

「ラムディア。今は共通の敵を倒すため、休戦しましょう。」

 と声をかける。ラムディアは変わらずアムリスに鋭い目線を投げている。しかし

「相変わらず頑固ねぇ……一旦休戦しておけばいいじゃないの。よいしょっと。」

 ゼーレンに肩を担がれ、そう諭されると、

「……分かりました。師匠がそう言うのであれば、一旦手を組みましょう。」

 ラムディアは白旗を上げた。広間の入口に立っていたアルエット達も、広間の中央で臨戦態勢を整えることにした。

「勘違いしないでくださいね。人間たちも私の敵であることには変わりませんから。特に……聖剣を持っているだけの人には負けません。」

 素直にならないラムディアに、ゼーレンはため息をつきながら窘める。

「ラムディアちゃん、あんたねぇ……まだ自分が聖剣を抜けなかったこと、引きずってんの?」
「なっ、ちょっと、師匠!!」

 図星を突かれて分かりやすく慌てるラムディア。何かを察したガステイルは、ニヤニヤとラムディアをからかうように言う。

「あらあら、まさかあんなにアムリスさんにこだわってた理由ってもしかして……。ああいや、魔族四天王のラムディア様がそんな器の小さいマネ、するわけないですよねぇ。」

 ラムディアは顔を真っ赤にしながら、

「アンタたち……ラルカンバラの次に絶対殺してやるから!!」

 と半泣きでガステイルを睨みつける。張り詰めた空気が緩んだその瞬間、

「おやおや、随分簡単に言ってくれますねぇ。」

 広間に男の声が響き渡る。全員が声の元手――広間入り口に目線を送る。そこにはラルカンバラとシャックスの二人が立っていた。

「皆様、お久しぶりですねぇ。感動の再開で涙が止まりませんよ。」

 ラルカンバラは笑顔でそう言い放つ。その瞬間、最高速度で間合いを詰めた者が一人。

「殺してやる!!」

 ラムディアはラルカンバラの首元に突きを一閃、放った。しかし、

「がはっ……!」

 突きが命中する寸前。蹴り上げられたラルカンバラのつま先がラムディアの鳩尾に突き刺さる。突きの軌道はズレてしまい、かろうじて首の皮一枚を裂くも虚空へと流れる。

「ごほぉっ、おえぇ……。」

 胸元を押さえて蹲るラムディアを、ラルカンバラはさらに蹴り転がし、頭を踏みつけた。

「殺すっていう割に、逆に俺の右足一本に殺されかけてるんだけど、大丈夫かい?」
「うあああああ!」

 ラルカンバラは少しずつ、右足に込める力を強めていく。しかし、

「おっと」

 ゼーレンが間合いを詰めて斬りかかる。三度斬り結んだところでラムディアはラルカンバラから解放された。

「あんただけは普通に相手取ると分が悪いからな。足止めさせて貰うぜ、『亜空陥穽ディメンションホール』」

 ラルカンバラはそう唱えると、ゼーレンの足元に亜空間の穴が出現し、胸元まで落とされた。

「くっ、これは……!」

 ゼーレンは両腕で落ちないように必死に支える。

「俺の亜空間魔法のお味はどうです?」

 ラルカンバラはゼーレンの前でしゃがんで告げた。

「亜空間魔法……そうか、25年前の!」
「その通り!生きている物体を露出したまま入れることだけはできないが……服や建物で包まれてたら問題ないのでね。こんな使い方もできるのだよ。」
(ぐっ……この空間、引っ張られる!)
「さて、そんじゃこっちがメインの使い方っと。」

 ラルカンバラは手の上に亜空間の穴を作り出し、そこから剣を取り出した。

「そんじゃ、まずは……」

 ラルカンバラがアルエット達の方を向いて品定めするように見回す。その瞬間、

「動くな!!」

 アルエットが叫ぶ。ラルカンバラ、シャックス、アムリス、ルーグの動きが固まる。

「全く、またこれかよ。芸がねぇ」
「アルエット様~予め共有しておいて下さいよ~」

 しかし、

「ルーグさんたち、どうしました?」

 ガステイルやゼーレンは問題なく動けている。

「え……?」
「ガステイル君、動けるんですか?」
「ええ、まあ。」
(どういうこと……?エルフには効かないとか?)

 アルエットは少し思案する。それを見たルーグが

「アルエット様!それよりも早く、ラルカンバラに一撃を!」

 と叫び、アルエットはハッとして突撃する。

「え、ええ!」

 一瞬でラルカンバラとの間合いを詰め、手にした短剣を胸めがけて突き立てる。ラルカンバラが不敵な笑みを浮かべていることに、気付く由もなかった。

「え……なんで……」

 ラルカンバラは手にした剣で、アルエットを袈裟斬りした。アルエットはそのまま、うつ伏せに倒れ込む。ラルカンバラとシャックスは耳栓を取り除き、足元に投げ捨てた。

「お嬢ッ!!!!」
「まあ、知ってたら対策ぐらいするよな。ただの耳栓でほんとに防げるとは思わなかったけどよ。」
「団長、悪い子、お姫様、斬った。」
「はは、今更何を。」

 ラルカンバラとシャックスは会話をしながらルーグたちに近付いてくる。ガステイルの魔法で応戦するが、

「団長、この炎、痛い。」
「質量があるエレメントとは、珍しいねぇ。珍しい魔法使い同士、仲良くなりたいものだよ。」
「くそ、そんなもん願い下げだぜ……全く、涼しげな顔でいなしやがって。」

 まるで足止めにならない。その瞬間、アルエットの言葉の効果が切れた。

「やっと動けるぞ!!」
「違うわルーグさん!動けるってことはアルエット様がまずい!!」
「分かってる!アムリスさんはお嬢を頼みます。俺はガステイル君と二人を足止めしますので!」

 ルーグとアムリスは、それぞれ駆け出した。
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