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第二章 遺恨編
遺恨ⅩⅩⅡ 覚醒?
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アムリスは倒れたアルエットに駆け寄り、聖魔法による治療を開始する。アルエットを仰向けに寝かせ、傷の状態を確認した。
(左肩から腹部までバッサリの斬られてる……傷も深くて出血も多い。助かるのか?)
「いや、助ける!もう私の目の前で誰も死なせない!」
アムリスは迷いを振り切り、手に魔力を込めてアルエットの身体に触れる。
「まずは、とにかく血を止めなきゃ。『滅菌空間』『触診眼』」
アムリスはそう唱え、手からアルエットの体内に少量の魔力を流し込む。魔力は血液に溶けて循環するので、魔力を通して体外に漏れ出す経路を調べることで血管の破損部分を確認することができる。アムリスはそうして浮かび上がった破損部分に修復魔法をかけていく。
(よし……これなら、なんとかなる!)
細かい部分の血管の修復も完了し、あとは皮膚の表面の袈裟斬りの傷を塞ぐだけとなった。アムリスは深呼吸し、左肩の部分に右手を添えて
「いきます……『再現修復』!」
と唱え、ゆっくりと傷跡をなぞるように下ろしていく。手が通過した部分の傷は塞がっていき、ものの5分もしないうちにアルエットの外見は元通りになった。しかし、アルエットはなかなか目を覚まさないでいた。
「はぁ、はぁ……。ここから、身体強化魔法をかけて体力を戻してあげなきゃ……。」
アムリスはフラフラになりながらアルエットに強化魔法をかける。ラムディアとの戦いでのダメージが残っている中、アルエットに聖魔法を使い続けた今、アムリスは限界を迎えていた。
「心臓の動きがちょっと弱い……。嘘、間に合わなかった……?」
アムリスはアルエットの肩を揺さぶりながら声をかけ続ける。
「アルエット様……起きて!!起きてよ!!」
「ぐああっ!」
アムリスの後ろから声がする。振り返り見るとルーグがラルカンバラとシャックスの攻撃を一身に受けていた。
「うぐっ……進ませねえよ!」
「防戦一方、なのに生意気……」
「ああ。シスターの次くらいに鬱陶しいやつだな、コイツ。」
ルーグがガステイルの射撃による援護を貰いながら、ラルカンバラとシャックスを完全に足止めしている。
「ルーグさん!殿下の治療が終わるまで、なんとか耐えてください!!」
「分かってる!だがな……攻撃防ぐだけで限界なんだわ!」
「十分です!」
ルーグとガステイルの戦いを見て、アムリスは焦り始める。
(そうだ……、早くアルエット様が起きなきゃ、二人が押し切られるのも時間の問題……!起きて、起きて!起きて!!)
「起きてよぉぉぉ!!!!」
アムリスはヤケになり、半泣きでアルエットの胸を叩いてしまう。その瞬間、アルエットの身体がビクンと大きく跳ねる。
「え……!?」
アルエットの心臓が強く鼓動を刻み、全身から放出される魔力がアルエットの身体を包む。
「まさか……『妖羽化』!?」
近くで倒れているラムディアが、驚愕の表情で見つめる。
「そんな、『妖羽化』って魔族の技でしょ!?」
そうアムリスが言い返した。
「何故かは分からないが……現にあれは間違いなく『妖羽化』だ。もうすぐ繭が晴れて出てくるぞ。」
ラムディアが言い終わると同時に、アルエットの姿が露わになった。闇夜のごとき長い黒髪、特徴的なオッドアイは無くなり、両目とも紅になっている。四肢の筋肉も明らかに大きくなり、手足の先には鳥のような巨大な硬い爪が付いている。そして何より、右側だけに生えた、烏のような真っ黒な羽。その禍々しい姿に、アムリスは言葉を失う。
「これが、殿下……?」
アルエットはアムリスには目もくれず、虚ろな瞳で獲物を探している。そして、戦っているルーグ達を見つけ、
「!!!」
と音にならない叫びと共に、魔力を放出した。
「ぐおっ、ごほっ!」
「なに、これ……」
「ぐうっ……頭が痛い!」
ラルカンバラ、シャックス、ルーグは叫びと魔力放出で立つのもやっとになるほどのダメージを受けた。至近距離で全て浴びてしまったアムリスは、気絶してしまっていた。
(なんて魔力の圧……そして、さっきの超音波みたいな声は、相変わらず人間にしか効かないのか。)
ガステイルは考察と同時に
「ルーグさん、下がってください!!俺と殿下であいつらを相手しますので、アムリスさんと後ろで休んでください!」
「ああ、そうさせてもらいてえが……正直、意識を保つので精一杯だ、下がれねぇ……」
ルーグはそう言い残し、バタリと倒れた。
「アルエット殿下!!あの二人だ、あの二人が敵だ!!!」
ガステイルはそう叫び、ラルカンバラとシャックスに向かって魔法を畳みかける。ガステイルの声は届いたようで、アルエットは二人に照準を合わせ、突撃した。
「ちくしょう!とんだ人間特攻デバフ女だな!」
「団長、ふざけてる場合じゃない。」
アルエットは巨大な爪の付いた腕を振り回し、ラルカンバラ達を翻弄する。
(ちっ……変身前と違って発する声に直で魔力が乗ってやがる!言葉による効果の指定も無くなって、単純に声を聞くだけで体力も魔力も削られる!)
先程とは打って変わってラルカンバラたちが防戦一方となる展開が続き、ついに
「がはっ!」
アルエットの巨大な爪が、シャックスの身体を引き裂いた。
(左肩から腹部までバッサリの斬られてる……傷も深くて出血も多い。助かるのか?)
「いや、助ける!もう私の目の前で誰も死なせない!」
アムリスは迷いを振り切り、手に魔力を込めてアルエットの身体に触れる。
「まずは、とにかく血を止めなきゃ。『滅菌空間』『触診眼』」
アムリスはそう唱え、手からアルエットの体内に少量の魔力を流し込む。魔力は血液に溶けて循環するので、魔力を通して体外に漏れ出す経路を調べることで血管の破損部分を確認することができる。アムリスはそうして浮かび上がった破損部分に修復魔法をかけていく。
(よし……これなら、なんとかなる!)
細かい部分の血管の修復も完了し、あとは皮膚の表面の袈裟斬りの傷を塞ぐだけとなった。アムリスは深呼吸し、左肩の部分に右手を添えて
「いきます……『再現修復』!」
と唱え、ゆっくりと傷跡をなぞるように下ろしていく。手が通過した部分の傷は塞がっていき、ものの5分もしないうちにアルエットの外見は元通りになった。しかし、アルエットはなかなか目を覚まさないでいた。
「はぁ、はぁ……。ここから、身体強化魔法をかけて体力を戻してあげなきゃ……。」
アムリスはフラフラになりながらアルエットに強化魔法をかける。ラムディアとの戦いでのダメージが残っている中、アルエットに聖魔法を使い続けた今、アムリスは限界を迎えていた。
「心臓の動きがちょっと弱い……。嘘、間に合わなかった……?」
アムリスはアルエットの肩を揺さぶりながら声をかけ続ける。
「アルエット様……起きて!!起きてよ!!」
「ぐああっ!」
アムリスの後ろから声がする。振り返り見るとルーグがラルカンバラとシャックスの攻撃を一身に受けていた。
「うぐっ……進ませねえよ!」
「防戦一方、なのに生意気……」
「ああ。シスターの次くらいに鬱陶しいやつだな、コイツ。」
ルーグがガステイルの射撃による援護を貰いながら、ラルカンバラとシャックスを完全に足止めしている。
「ルーグさん!殿下の治療が終わるまで、なんとか耐えてください!!」
「分かってる!だがな……攻撃防ぐだけで限界なんだわ!」
「十分です!」
ルーグとガステイルの戦いを見て、アムリスは焦り始める。
(そうだ……、早くアルエット様が起きなきゃ、二人が押し切られるのも時間の問題……!起きて、起きて!起きて!!)
「起きてよぉぉぉ!!!!」
アムリスはヤケになり、半泣きでアルエットの胸を叩いてしまう。その瞬間、アルエットの身体がビクンと大きく跳ねる。
「え……!?」
アルエットの心臓が強く鼓動を刻み、全身から放出される魔力がアルエットの身体を包む。
「まさか……『妖羽化』!?」
近くで倒れているラムディアが、驚愕の表情で見つめる。
「そんな、『妖羽化』って魔族の技でしょ!?」
そうアムリスが言い返した。
「何故かは分からないが……現にあれは間違いなく『妖羽化』だ。もうすぐ繭が晴れて出てくるぞ。」
ラムディアが言い終わると同時に、アルエットの姿が露わになった。闇夜のごとき長い黒髪、特徴的なオッドアイは無くなり、両目とも紅になっている。四肢の筋肉も明らかに大きくなり、手足の先には鳥のような巨大な硬い爪が付いている。そして何より、右側だけに生えた、烏のような真っ黒な羽。その禍々しい姿に、アムリスは言葉を失う。
「これが、殿下……?」
アルエットはアムリスには目もくれず、虚ろな瞳で獲物を探している。そして、戦っているルーグ達を見つけ、
「!!!」
と音にならない叫びと共に、魔力を放出した。
「ぐおっ、ごほっ!」
「なに、これ……」
「ぐうっ……頭が痛い!」
ラルカンバラ、シャックス、ルーグは叫びと魔力放出で立つのもやっとになるほどのダメージを受けた。至近距離で全て浴びてしまったアムリスは、気絶してしまっていた。
(なんて魔力の圧……そして、さっきの超音波みたいな声は、相変わらず人間にしか効かないのか。)
ガステイルは考察と同時に
「ルーグさん、下がってください!!俺と殿下であいつらを相手しますので、アムリスさんと後ろで休んでください!」
「ああ、そうさせてもらいてえが……正直、意識を保つので精一杯だ、下がれねぇ……」
ルーグはそう言い残し、バタリと倒れた。
「アルエット殿下!!あの二人だ、あの二人が敵だ!!!」
ガステイルはそう叫び、ラルカンバラとシャックスに向かって魔法を畳みかける。ガステイルの声は届いたようで、アルエットは二人に照準を合わせ、突撃した。
「ちくしょう!とんだ人間特攻デバフ女だな!」
「団長、ふざけてる場合じゃない。」
アルエットは巨大な爪の付いた腕を振り回し、ラルカンバラ達を翻弄する。
(ちっ……変身前と違って発する声に直で魔力が乗ってやがる!言葉による効果の指定も無くなって、単純に声を聞くだけで体力も魔力も削られる!)
先程とは打って変わってラルカンバラたちが防戦一方となる展開が続き、ついに
「がはっ!」
アルエットの巨大な爪が、シャックスの身体を引き裂いた。
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