200年級ニートが魔王討伐という名目で厄介払いされる話

盈月

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第五章 彷徨編

彷徨Ⅹ ヴォリクスの灯火

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 ヴォリクスがエリフィーズに戻ってから三日が経った。ヴォリクスはガステイルの家に居候をしながら、ガステイルを連日振り回すようにエリフィーズの街を巡っていた。その日も二人は朝からエリフィーズの街を散策していた。商業区画の屋台を見て回っていると、

「おお!ガステイルの小僧じゃねえか。」
「パーシンさん!お久しぶりです!」

 肉屋の男に声をかけられた。パーシンと呼ばれたエルフは屋台から出てガステイルに近寄ってくると、大きな手でガステイルの肩をバシバシと叩く。

「全く、相変わらず細い身体してんなぁ!うちの肉をたらふく食え!!」
「ちょ、パーシンさん、痛いですって……」
「魔王討伐の旅に出たっつって聞いたからちょっとは鍛えたのかと思ってたが……ん?」

 パーシンは一歩下がって見つめるヴォリクスに気付き、興味深そうにまじまじと見つめていた。

「お前さん……」
「パーシンさん、ヴォリクスがどうかしたのかい?」
「ヴォリクス……って、行方不明だって言ってたお前の弟のか?」
「はい。俺もびっくりしましたよ……里帰りしてみたらいたんですから。」

 パーシンは相変わらず不審そうにヴォリクスを見つめる。そしてガステイルに再び向き直り、

「腹減ってるだろ?中でご馳走してやるよ……ついてきな。」

 と二人を店内へ促した。パーシンは喜んで店内へ進むガステイルの肩をポンと叩き、ハンドサインと目線で合図を送る。ガステイルはそんなパーシンを訝しみながらも、こくりと頷きそのまま入店した。
 パーシンの肉屋はその裏手に客人用の飲食スペースがあった。ガステイルとヴォリクスはそこへ通され、店の肉を使ったステーキを前に喜びを隠せないでいた。

「流石にパーシンの店だぜ、肉の目利きのための魔法と調理技術に500年使っただけはある!」
「本当に美味しそうに食べるんだね、兄さん。」
「ん?お前は食わねえのか?ガステイル。」
「え、ああ、食べるよ!」

 ヴォリクスは慌ててナイフとフォークを持ち、ステーキに手を付けようとする。そこへパーシンが現れ、背後からヴォリクスの腕を掴み目を閉じ首を振った。

「ヴォリクス……もういい加減、ガステイルに本当のことを言ってやったらどうだ。」
「パーシンさん?どういう意味だ……俺に本当のことを言えって……」
「ガステイル、お前気付いてなかったのか?あのなぁ、こいつは……」

 ヴォリクスはパーシンの口を手で制しながら、口を開いた。

「分かりました。自分で言いますから、パーシンさんもそちらに座っていただけますか?」
「……ああ、分かったぜ。」

 パーシンは裏から自分用の椅子を持って来る。そしてヴォリクスと向かい合うように座っていたガステイルの隣に座る。

「さて、何から話せばいいか……うん。やっぱり、結論から言うしかないね。」
「結論……?」
「ああ、それがいいと思うぜ。」
「兄さん、先に謝っておく……ごめんね。兄さんの知っているヴォリクス・ジェレミアは、死んだんだ。」
「は……死んだ……?」

 思いもよらないヴォリクスの告白に、ガステイルは顔を真っ青にしながら口をぽかんと開く。パーシンは目を瞑り首を振っていた。ヴォリクスはさらに驚愕の事実を告げる。

「うん。それも、150年前のあの日に。」
「は……?どういうことだよ!お前はあの日、妙な男に連れ去られて……」

 混乱するガステイルを後目に、ヴォリクスはパーシンの方へ向き尋ねる。

「パーシンさんはなぜ分かったんです?」
「……俺の魔法だよ。肉質を見極める魔法だが、まあ研究に使う時間が無限にあったんでな。それを応用して生物の肉質もある程度見抜けるようになってるんだ。そいつでお前を視たときに違和感を覚えた……肉じゃねえ、ってな。」
「ああ、そういうことでしたか。流石にプロの目はごまかせないようですね。」
「ちょっと待て、肉じゃねえってなんだよ!だってヴォリクスはそこに居て……そりゃ最近食事の量は減ったなとかは思ったけど、俺にも分かるように言ってくれよ!!」

 ガステイルは二人に必死に懇願していた。ヴォリクスは柔らかく微笑みながら、ガステイルの方を向いて言う。

「デステールの子分の人形達は、兄さんも見たことあるだろ?」
「ああ……人型結界刻印装置、だったっけか?」
「うん、そんな感じの名前のやつ。中身は俺の魂そのものだから厳密には違うけど、系統としては似ているかな。」
「デステールのやつが一枚噛んでるのか!?だったら……」
「違うよ。魔法の発動者はデステールじゃない……あんただよ、ガステイル兄さん。」
「は……?」

 ガステイルのキャパシティがオーバーし、完全に動きが固まってしまう。ヴォリクスはふっと息を吐いて、改めてガステイルに向かって言い直した。

「150年前のあの日……俺と兄さんはあの大穴に落ち、俺は死に兄さんは生き残った。兄さんは俺が死んだことを受け入れられず、周囲の土を核として俺の身体をガワだけ作ったんだ。だがあくまで作ったのは意思の宿らないただの人形、その魔法で魔力を使い果たした兄さんはそのまま気を失った……。これが、あの日の真相なんです。」
「……そうか。」

 ガステイルは無理やり声を絞り出した。本当は嘘だと食ってかかりたかったが、あの状況で生きている可能性の方が限りなく低いことを直感で受け入れてしまい、否定するほどの自信が湧いてこなかった。ガステイルは下唇を噛み俯きながら、一つの疑問点を明るみにする。

「だが、俺が作ったのはただの土の人形だろう?今のお前は魂が通ったエルフに見えるが、それはどういう仕組みなんだ?」
「ああ。俺がおかしいのはガワだけだ。魂は俺そのものだよ。つまり、この体に俺の魂を入れた男が別で存在する。」
「まさか……!!」

 ガステイルはガタッと勢いよく立ち上がり、ヴォリクスに詰め寄る。ヴォリクスは動じずにこくりと頷き、言葉を続けた。

「その男の名はフラーヴ・アルノルディー。魔族四天王筆頭の死霊術師にして、兄さんがあの日最後に会った男だ。」
「フラーヴ……死霊術……」

 ガステイルは拳を強く握り、驚きに打ち震えていた。
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