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ティア
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「神託が下り、右も左もわからないまま、宮殿に連れてこられ、巫女姫として勉強を頑張りました」
「その髪は魔法を使ったとした証言があった」
「髪を染める魔法は使えません」
「巫女姫として来たのに責務を果たしていない」
「何の責務があったのでしょう。何も説明されなかったのは、そちらの落ち度ではないでしょうか」
「ああ、かわいくない!」
唇を噛みしめながら王子が呟く。
隣で一緒に立っている女性は笑っている。
唇の横にあるほくろが印象的で、分厚い唇をさらにセクシーに見せてくれる。
あれ、書いてあるほくろよね。
少し汗でにじんでいるのがわかる。
「麗しのエドモンド王子様、二年間、お世話になりました。今日限りで王宮を去ることをお許しください」
芝居を見に来ているような気持ちになり、わざと役者のような大仰な口調で彼に許しを請う。
「許す!」
その言葉と共に巫女姫としての立場も婚約者という立場も放棄するという意味である。
さらにこの学園も本日限りで退学をする。
ここにいる何人の人が気がついたであろうか。
「ただし、ティアは置いていってくれ」
「ティアは私に懐いています! それは無理です」
「ティアは元々私の猫だ!」
王子の猫は、私のベッドで眠り、学園から帰ってくると私の側から離れない。
王宮の庭で緑の中に囲まれているときは、膝の上にちゃっかりと座っている。
お茶会の時もテーブル下で、ひらひらと揺れるリボンを見てかじりつく。
誰かが近づいてくると、低い声でうなり、フーッという威嚇の声をあげる。
まるでその様子は、姫を守るナイトのようだ。
銀色の毛並み、長いすらりとした足、彼の瞳は琥珀色に輝いている。
その彼を手放せるのかというともう手放せないところまで来ていた。
王子との婚約破棄よりもティアと会えなくなることの方が大問題だ。
「何もなくなった私に対して、あんまりではありませんか」
顔を覆うと泣いているのかどうかさえ不明である。
周りから「少し可哀想」という同情の声が聞こえてきた。
少し可哀想頂きました!
ガッツポーズしそうになるのをぐっとこらえる。
「王子様に最後のお願いです。元婚約者である私を哀れに思うならば、ティアは連れていってもよいとおっしゃってください」
「その髪は魔法を使ったとした証言があった」
「髪を染める魔法は使えません」
「巫女姫として来たのに責務を果たしていない」
「何の責務があったのでしょう。何も説明されなかったのは、そちらの落ち度ではないでしょうか」
「ああ、かわいくない!」
唇を噛みしめながら王子が呟く。
隣で一緒に立っている女性は笑っている。
唇の横にあるほくろが印象的で、分厚い唇をさらにセクシーに見せてくれる。
あれ、書いてあるほくろよね。
少し汗でにじんでいるのがわかる。
「麗しのエドモンド王子様、二年間、お世話になりました。今日限りで王宮を去ることをお許しください」
芝居を見に来ているような気持ちになり、わざと役者のような大仰な口調で彼に許しを請う。
「許す!」
その言葉と共に巫女姫としての立場も婚約者という立場も放棄するという意味である。
さらにこの学園も本日限りで退学をする。
ここにいる何人の人が気がついたであろうか。
「ただし、ティアは置いていってくれ」
「ティアは私に懐いています! それは無理です」
「ティアは元々私の猫だ!」
王子の猫は、私のベッドで眠り、学園から帰ってくると私の側から離れない。
王宮の庭で緑の中に囲まれているときは、膝の上にちゃっかりと座っている。
お茶会の時もテーブル下で、ひらひらと揺れるリボンを見てかじりつく。
誰かが近づいてくると、低い声でうなり、フーッという威嚇の声をあげる。
まるでその様子は、姫を守るナイトのようだ。
銀色の毛並み、長いすらりとした足、彼の瞳は琥珀色に輝いている。
その彼を手放せるのかというともう手放せないところまで来ていた。
王子との婚約破棄よりもティアと会えなくなることの方が大問題だ。
「何もなくなった私に対して、あんまりではありませんか」
顔を覆うと泣いているのかどうかさえ不明である。
周りから「少し可哀想」という同情の声が聞こえてきた。
少し可哀想頂きました!
ガッツポーズしそうになるのをぐっとこらえる。
「王子様に最後のお願いです。元婚約者である私を哀れに思うならば、ティアは連れていってもよいとおっしゃってください」
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