悪役令嬢としての役目を果たしたので、スローライフを楽しんでもよろしいでしょうか

月原 裕

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聞こえない神の声

 巫女姫は、異国の服に身を包み、聖地と呼ばれる場所を巡拝する。
 神の声を聞き、国の吉凶を占ったりする。
 巫女姫が出現したときは、国は豊かになる、この世界を変えるとも言われている
 一度も神の声を聞いたことがないし、神憑りになったこともないために一部からは受けがよくなかった。
 王子が言った巫女姫の務めを果たしていないという糾弾の意味は、このことが原因だとわかっているが、どうすることもできなかった。
 師匠もいない世界で、自分なりに解釈をして勉強を重ねていく。
 これは学園の勉強とは別に行わなければならない。
 自分に続く者が苦労をしないように日記にもしたためたが、これはタチアナの手に渡るべき物ではない。

 このまま王宮に留まることになると、そろそろ巡礼シーズンになる。
 寒い時期には出発したくないのだが、時期が決められているために仕方がなかった。
 巡礼をするとその土地の様子が聞ける。
 王の名のもとに巡礼しているために王の権威が強くなるとみている者も多い。
 地方の貴族は、これを快く思わない者もいた。
 王都から離れれば離れるほどに危険も大きくなる。
 この任を誰かに代わってもらえるのなら、何度も心の中で思っていた。
 護衛に守られながら野宿もしながらの旅は、体力も気力も削いでいく。護衛が強くなかったらどうするのか、自分の剣を持ち、筋肉をつける。
 守られるだけのかわいい女性になりたかった。
 掌にできているまめを見る。
 剣を落とさないように握りすぎている証拠だ。
 もう少し気楽に剣も学べたのなら、楽しかったのかもしれない。
 それは、もうひとつの可能性の自分。
 今の時間軸ではありえない自分だ。
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