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第一章 幕開け
追憶
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これは夢だろうか
「ねぇ、一緒にあーそーぼー!」
声が聞こえた方に顔を向けると、自分と同じ歳くらいの男の子が満面の笑みを浮かべていた。
「……いいよ」
私は、父さんの仕事の関係で結構頻繁に引越しをしていた。それにハーフだった為か、髪の色は淡い朱色で瞳は碧眼だった。だからだろう、怖がって周りの子供もほとんど寄ってこなかった。
自分から声をかけて行けばよかったのだろうが、今と変わらず当時から緊張しやすかったのだ。
そんな中、一人で砂場で遊んでいるところに、この男の子は私に声をかけてきたのだ。
この公園の近くに住んでいるらしく、よく母親に遊びに連れてきてもらっているそうだ。父親も時々仕事場からここへ来ると言っていた。
何回か遊ぶうちに、私はこの子と遊ぶのが、いつの間にかすごく楽しみになっていた。
「今日は、なにしてあそぶー?」
何しようかなぁと考えていると、ふとそう言えば名前を知らないことに気がついた。
「ねぇ、あなたのお名前って、なんていうの?」
「僕のおなまえは……」
男の子が名前を喋ろうとした瞬間、
「きゃー!」
「なにやってんだあんた! バットなんか振り回して危ねぇだろ!」
「正気じゃねぇぞ! 警察! 警察呼べ!」
大人の人が大きな声で叫んでいるのが聞こえて、そっちに顔を向けるとバットを振り回しながらフラフラこっちに向かってくる人が見えた。
ちょうど私の母親は、バット男を挟む形で反対側ベンチで座っていた為、慌てた顔でこっちに向かっていた。
だけど、すでに私の目の前にはバット男が立っていた。
振り上げたバットが、ゆっくりと近づいてくるのが、見えた。
(あぁ、わたしまたダメなんだ……)
「うわあぁあああ!」
いきなり大きな衝撃と共に、私は横にゴロゴロ転がった。気が付くと一緒にあの男の子も転がっていた。
「ふざけんなよ! なんだよバット男め! 怖くなんかないぞ!」
目の前に、あの男の子の背中があった。
バット男が何か呻きながら、男の子を蹴飛ばしてしまった。
「ぎゃふ!」
男の子はゴロゴロ転がって、動かなくなってしまった。
遠くから、母親の悲鳴が聞こえる。それでも、私の身体は動いてくれなかった。怖くて、全く足も動いてくれない。
再びバットを振り上げた時、目の前の男が苦悶の声を上げた。
「ぐあっ!」
バット男の顔に砂がかけられて、目を抑えていた。
「僕は絶対……倒れないぞ!……わるもんなんかに……倒れてなんかやるもんか!」
男の子が、わたしの前に再び立っていた。私にはその背中がとても大きく見えた。
バット男が目を抑えながら、片手でバットを振り上げて、私達に今度こそ振り下ろそうとした。
「うちの息子に何しとんじゃー!」
いきなり目の前にいたバット男が、横へ吹っ飛んだ。がっしりした筋肉の塊みたいな男の人が、バット男に体当たりしたのだ。
冗談みたいに地面をゴロゴロ転がりボロボロになっていたバット男を、数人の男の人が押さえつけていた。
「大丈夫か!? 病院いくぞ!」
筋肉の塊みたいな人が、ぐったりした男の子を抱えながら、こっちを向いた。
「お嬢ちゃんも、大丈夫かい? 見た感じは怪我はなさそうだが、お父さんかお母さんはいるかい?」
私は、こっちに泣きながら走ってきていた母親を指差した。
「よかったよかった。ったくうちのヒーロー君は無茶しやがってからに」
「ヒロ君?」
「ハハハ! 怪我治ったら、またうちのヒーローとあそんでやってな!」
結局あの事件の後は、親があの公園に連れて行ってくれなくなって、あの男の子とは会えなくなったしまった。あの後、私はすぐに次の場所に親の仕事の都合で引っ越してしまったので、助けてくれたお礼さえ言えなかった。
それから高校ニ年になって、この街に親の転勤でまた戻ってきた。だけどあの公園の場所は覚えてなくて行けていない。
転校した高校では、初日の挨拶で緊張していきなり噛んでしまって恥ずかしかったけど、校内を案内してくれた富東君とはちゃんと話せたし、少し安心した。
異変は案内も終わり教室に帰ってきて、富東君と別れた直後だった。
足元から変な模様が浮き出てきて円状に広がり光り出した。
「えっ!? ちょっ!? なになに!?」
私の声で振り返った富東君が叫んだ。
「何かおかしい! そこから離れろ!」
「無理なの! 足が動かない!」
訳がわからない状況に頭が完全にパニックになってしまい、その場に座り込んでしまった。そして、身体がその光の模様の中に沈み始めたのを感じた。
「イヤ!……なに?……どうなってるのよ……」
身体も動かず、どんどん光の中に沈み出し、もう心が折れてしまった。そのせいだろうか。つい呟いてしまった。
「……助けて……ヒロ君……」
「ふっざけるなー! くそったれ! なんなんだよ! 手を出せ柊さん!」
いきなり怒り出した富東君に言われ手を出すと、出した手を掴まれ引っ張られた。すると光の中への身体の沈み込みが止まっていた。だけど富東君が、突然叫びながら吹っ飛んでしまった。
それでも再び立ち上がり、また繰り返した。
「もういいから!……もういいよ……もう起き上がらなくていいから……」
私は、もう諦めていた。だからもう、立ち上がって欲しくなかった。それでも、彼は叫んだ。
「俺がよくねぇんだよ! そんなわけもわからんもんに、俺が倒れるわけねぇだろぉ!」
薄れゆく意識の中で、遠い記憶の中にいた私を護ってくれた男の子と富東君が重なった。再び富東君の叫びが聞こえた直後に激しい光とともに完全に意識を失った。
意識が戻り、何があったのか思い出そうとするも、強い光を受けたショックなのか直前の記憶が曖昧になっている。
富東君が助けてくれようとしてくれたとこは覚えているが、何かとても会いたかった人に会えたような気がする。
誰の事だろうと思った時に、声が聞こえてきた。
「ようこそおいで下さいました、勇者様。魔王を倒しこの世界をお救いください」
私はまだ夢の中にいるのだろうか?
「ねぇ、一緒にあーそーぼー!」
声が聞こえた方に顔を向けると、自分と同じ歳くらいの男の子が満面の笑みを浮かべていた。
「……いいよ」
私は、父さんの仕事の関係で結構頻繁に引越しをしていた。それにハーフだった為か、髪の色は淡い朱色で瞳は碧眼だった。だからだろう、怖がって周りの子供もほとんど寄ってこなかった。
自分から声をかけて行けばよかったのだろうが、今と変わらず当時から緊張しやすかったのだ。
そんな中、一人で砂場で遊んでいるところに、この男の子は私に声をかけてきたのだ。
この公園の近くに住んでいるらしく、よく母親に遊びに連れてきてもらっているそうだ。父親も時々仕事場からここへ来ると言っていた。
何回か遊ぶうちに、私はこの子と遊ぶのが、いつの間にかすごく楽しみになっていた。
「今日は、なにしてあそぶー?」
何しようかなぁと考えていると、ふとそう言えば名前を知らないことに気がついた。
「ねぇ、あなたのお名前って、なんていうの?」
「僕のおなまえは……」
男の子が名前を喋ろうとした瞬間、
「きゃー!」
「なにやってんだあんた! バットなんか振り回して危ねぇだろ!」
「正気じゃねぇぞ! 警察! 警察呼べ!」
大人の人が大きな声で叫んでいるのが聞こえて、そっちに顔を向けるとバットを振り回しながらフラフラこっちに向かってくる人が見えた。
ちょうど私の母親は、バット男を挟む形で反対側ベンチで座っていた為、慌てた顔でこっちに向かっていた。
だけど、すでに私の目の前にはバット男が立っていた。
振り上げたバットが、ゆっくりと近づいてくるのが、見えた。
(あぁ、わたしまたダメなんだ……)
「うわあぁあああ!」
いきなり大きな衝撃と共に、私は横にゴロゴロ転がった。気が付くと一緒にあの男の子も転がっていた。
「ふざけんなよ! なんだよバット男め! 怖くなんかないぞ!」
目の前に、あの男の子の背中があった。
バット男が何か呻きながら、男の子を蹴飛ばしてしまった。
「ぎゃふ!」
男の子はゴロゴロ転がって、動かなくなってしまった。
遠くから、母親の悲鳴が聞こえる。それでも、私の身体は動いてくれなかった。怖くて、全く足も動いてくれない。
再びバットを振り上げた時、目の前の男が苦悶の声を上げた。
「ぐあっ!」
バット男の顔に砂がかけられて、目を抑えていた。
「僕は絶対……倒れないぞ!……わるもんなんかに……倒れてなんかやるもんか!」
男の子が、わたしの前に再び立っていた。私にはその背中がとても大きく見えた。
バット男が目を抑えながら、片手でバットを振り上げて、私達に今度こそ振り下ろそうとした。
「うちの息子に何しとんじゃー!」
いきなり目の前にいたバット男が、横へ吹っ飛んだ。がっしりした筋肉の塊みたいな男の人が、バット男に体当たりしたのだ。
冗談みたいに地面をゴロゴロ転がりボロボロになっていたバット男を、数人の男の人が押さえつけていた。
「大丈夫か!? 病院いくぞ!」
筋肉の塊みたいな人が、ぐったりした男の子を抱えながら、こっちを向いた。
「お嬢ちゃんも、大丈夫かい? 見た感じは怪我はなさそうだが、お父さんかお母さんはいるかい?」
私は、こっちに泣きながら走ってきていた母親を指差した。
「よかったよかった。ったくうちのヒーロー君は無茶しやがってからに」
「ヒロ君?」
「ハハハ! 怪我治ったら、またうちのヒーローとあそんでやってな!」
結局あの事件の後は、親があの公園に連れて行ってくれなくなって、あの男の子とは会えなくなったしまった。あの後、私はすぐに次の場所に親の仕事の都合で引っ越してしまったので、助けてくれたお礼さえ言えなかった。
それから高校ニ年になって、この街に親の転勤でまた戻ってきた。だけどあの公園の場所は覚えてなくて行けていない。
転校した高校では、初日の挨拶で緊張していきなり噛んでしまって恥ずかしかったけど、校内を案内してくれた富東君とはちゃんと話せたし、少し安心した。
異変は案内も終わり教室に帰ってきて、富東君と別れた直後だった。
足元から変な模様が浮き出てきて円状に広がり光り出した。
「えっ!? ちょっ!? なになに!?」
私の声で振り返った富東君が叫んだ。
「何かおかしい! そこから離れろ!」
「無理なの! 足が動かない!」
訳がわからない状況に頭が完全にパニックになってしまい、その場に座り込んでしまった。そして、身体がその光の模様の中に沈み始めたのを感じた。
「イヤ!……なに?……どうなってるのよ……」
身体も動かず、どんどん光の中に沈み出し、もう心が折れてしまった。そのせいだろうか。つい呟いてしまった。
「……助けて……ヒロ君……」
「ふっざけるなー! くそったれ! なんなんだよ! 手を出せ柊さん!」
いきなり怒り出した富東君に言われ手を出すと、出した手を掴まれ引っ張られた。すると光の中への身体の沈み込みが止まっていた。だけど富東君が、突然叫びながら吹っ飛んでしまった。
それでも再び立ち上がり、また繰り返した。
「もういいから!……もういいよ……もう起き上がらなくていいから……」
私は、もう諦めていた。だからもう、立ち上がって欲しくなかった。それでも、彼は叫んだ。
「俺がよくねぇんだよ! そんなわけもわからんもんに、俺が倒れるわけねぇだろぉ!」
薄れゆく意識の中で、遠い記憶の中にいた私を護ってくれた男の子と富東君が重なった。再び富東君の叫びが聞こえた直後に激しい光とともに完全に意識を失った。
意識が戻り、何があったのか思い出そうとするも、強い光を受けたショックなのか直前の記憶が曖昧になっている。
富東君が助けてくれようとしてくれたとこは覚えているが、何かとても会いたかった人に会えたような気がする。
誰の事だろうと思った時に、声が聞こえてきた。
「ようこそおいで下さいました、勇者様。魔王を倒しこの世界をお救いください」
私はまだ夢の中にいるのだろうか?
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