96 / 165
第五章 刀と竜
契約
しおりを挟む
「酷い目にあった……」
俺は、タケミ爺さんに救出されるまで、光の消えた目の状態のカヤミとディアナに、ボコられ続けたのだ。
アシェリ達三人は、見ているだけで助けてくれないばかりか、ちゃっかりヤナビを俺から奪取し荒ぶる二人の狂人から保護していた。
「あの後、気が済んだカヤミ様とディアナ様のお話を聞いたら、間違いなく主様の自業自得だと思いますが……」
アシェリが、可哀想な子を見る様な目で、俺を見てくる。
「それにあなた、腕輪と指輪外して神火魔法使ったんなら、雑魚竜くらい剣を形状変化で作って露払いすれば良かったじゃない。それをわざわざ避けたのなんて、絶対あなたがまた調子に乗りすぎたんでしょ?」
エディスが、呆れたという顔をしながら、突き放す。
「ヤナ様、驚かすのが好きなのは知っていますが、まさかその後のアレまで含めて好きという事ですか?……それなら言ってくだされば、私がするのに……フフフ」
セアラがスカートの中から金棒を出そうとしたので、全力で食い止めた。
「全く、助けて損したぞ。儂なら問答無用で斬り捨てるところだが、あの二人は優しい心を持っていて助かったな」
タケミ爺さんまで、そんな事を言うが全く納得出来なかった。
「はぁ? あの二人が、優しいだと? アレを見て、よくそんな事が言えるな」
俺は、部屋の窓から見える惨劇の後を指差した。
二人が思いっきり、俺を討伐しようと攻撃を仕掛けてくるために、玄関先から家の庭先まで、地面がボコボコなっていたのだ。
「お前さんのせいだからな、後で直しておけよ。あと、正気に戻って、何故か落ち混んでいる二人の機嫌も治せ。カヤミの部屋に籠って、出てこんのだ」
タケミ爺さんに止められて我に返った二人は、俺の顔を見るなりあわあわとしながら二人してカヤミの部屋に閉じこもったのだ。カヤミの部屋は二人がこの前破壊したが、タケミ爺さんが俺たちがいない間にちゃんと壁や扉を直していたため、きちんと閉じこもる事が出来る様になっていた。
「はぁ、今度は天の岩戸かよ……何だってまたそんな事に、早く『神殺し』の刀を打ってもらいたいってのに」
俺が、二人の様子に呆れて溜息を吐いていると、アシェリ達が心底気の毒そうに呟く。
「ディアナは、人一倍騎士に対する想いが強い事で有名よ。そんな人が、自分があんな状態にさせられたと思うと……言葉がないわね……」
「それに、もし万が一、主様のお節介にお二人が堕ちていたら……そんな相手にあんな状態を見られたと考えたら……不憫すぎます……」
「何処まで意識があったか、分かりませんが……あんな状態で気絶しているところを殿方に見られたと思ったら、同じ女性としては想像を絶しますね……」
三人にそう呟かれながら、『お前が、何とかしろ』という目線を向けられ、渋々カヤミの部屋に向かった。
「お二人さぁん、機嫌直して出てくれないかなぁ? 俺が全部悪かったからさぁ、早く出て来てくださいよぉ」
「「………」」
答えは沈黙だった。
「これ、無理じゃね? 俺にはハードル高すぎるって」
「マスター……普段『俺は、絶対諦めない!』みたいな事言っている癖に、本当に女性が絡むとヘタレですね」
「……やかましいわ。だが、本当にどうしようか」
俺が部屋の前で途方に暮れていると、ヤナビが提案をしてくる。
「マスターが、ゴリ押し以外で解決出来るわけありませんので、私が交渉者となりましょうか? 声だけでも、少女の方が相手の刺激しにくいですよ?」
俺は、その提案に若干の不安を感じたが、確かに今の状況では俺には成す術がない。
「まぁ、しょうがないか。ただし、変な交渉をするなよ? 勝手に変な『契約』なんか結んでも俺は直接了承してないから、無効だからな。全権をヤナビ持たせないからな? あくまで交渉だからな? わかったな?」
「どれだけビビってるんですか、情けないマスターですね。大丈夫ですよ、さぁ、私をドアの前に置いて、離れていてください」
「……俺を売るなよ?」
「……早よ」
「「………」」
俺は、静かにヤナビをおいて、離れた。
「お二人共、ヤナビです。今は身体がありませんので、何もする事は出来ません。交渉者として、今は扉の前には私だけです。マスターは、離れて貰いました。お二人の願いを叶えるために、私を部屋の中に入れては、貰えないでしょうか? 決して、悪い様にはしません」
少し、間があった後に扉が少し空いた。
「な!? 開けやがった!?」
俺がヤナビの問いかけで扉が少し空いた事に愕然としていると、ヤナビが隙間から伸ばされた手に掴まれ、部屋の中へと入っていった。
「……何だろう、この言い知れぬ不安感は……」
そして、俺は暫く部屋から少し離れ所で、交渉がうまく行くことを願いながら、待つのであった。
「主様、そろそろ日が暮れますが、お二人の様子は如何ですか?」
ひたすらヤナビの交渉を待っていると、三人が様子を見にきた。
「ヤナビに交渉を任せている所だ。ヤナビが中に引き入れて貰えてからは、俺はひたすら待っている所だな」
「「「ヤナビ様が交渉?」」」
三人が同時に同じ目を、俺に向ける。
「やめろ! そんな『その選択が既に、詰みだろう』みたいな目で、俺を見るな!」
「だって、ねぇ?」
「ヤナビ様ですよ?」
「大事な交渉は、ご自分でしないと……」
「……いや、流石に大丈夫だよな?」
俺は一斉に目を反らされたことに絶句しながら、扉に目をむけると扉の隙間から手が出て来てヤナビを優しく床に置いた。
俺達はヤナビの元へと近づいていった。
「どうだった?」
「マスター、交渉は大詰めです。最後は、マスターご自身でお願いします」
「よし、任せろ。二人とも、ヤナだ。そろそろ出て来てくれる気になったか?」
少し間があった後に、二人の声が聞こえた。
「……えぇ、但し条件があるわ」
「……私もだ」
「何だ、何でも言ってみろ」
「ほんとね、ヤナビ様の言ってた通りの言葉を吐いたわね」
「まさか本当に言うとはな」
「ん? 何だ? 何の話だ?」
「何でもないわ。先ずは私の条件はね『もし私が、弟子を欲しくなったら、作るのを手伝ってほしい』よ」
「弟子を作るのを手伝う? って事は、刀を打つ気になったのか!」
「えぇ、この条件をのんでくれたら、『神殺し』の刀を打つわ。でも……時間が経つと気分が変わるかもねぇ」
俺は、刀を打ってくれるといった言葉を、覆される前に返事をした。
「待て! 別に弟子を作る手伝いくらい、喜んでするさ! だから、『神殺しの刀』を打ってくれ!」
「……『契約成立』……よし」
一瞬背筋が寒くなったが、気のせいだろう。
「あぁあ、また深く考えもせずに」
「目の前の餌に、釣られてろくに考えもせずに」
「四人目の契約者ができましたね」
後ろの三人が、何やら呟いているが、今回は別に大丈夫だろう。弟子を作る手伝いだったら別に問題が起きる罠はないはず。旅しながら、俺が勧誘や宣伝をするくらいだろう。それに、おそらく刀工が鍛治を再開するのあれば、弟子くらいすぐに作れるに違いなかった。
「次は私だ」
「おう、何だ」
「私の条件は『漆黒の騎士様に、私を貰って頂く手伝い』だ」
「……手伝いとは? 何をするんだ?」
「うむ、漆黒の騎士様を見かけたら、私の事を伝えたり、その場に留まる様に説得したり、私が漆黒の騎士様と結ばれるように全ての協力してほしいのだ」
「……少し考えさせてくれ」
俺はその提案を頭の中で吟味した。
『俺』と『漆黒の騎士』はディアナは別人と思っているわけだ。それならば、確実に二人が別人だと思わせておけば、全く問題ないだろう。
「うむ、いいぞ。漆黒の騎士がもし居たら、ディアナと結ばれる様に全力を尽くそう。それでいいか?」
「……『契約成立』……ヤナビ様の言っていた通りになったが、これにどんな意味が……」
ディアナが扉の向こう側でブツブツ言っていたが、扉越しだった為、良く聞こえなかった。
「なんだか、怪しいわね」
「ヤナビ様の指示と、聞こえましたが」
「これで契約者が五人……まだまだ増えるのでしょうか?」
兎に角、二人とも『契約』した為、その後素直に部屋から出てきてくれた。
「はぁ、やっとか……取り敢えず、今日はもう夜になっちまったから、明日朝にまた来る事にする。神鉄は置いていっていいか?」
「えぇ、いいわよ。それじゃ、明日からよろしくね」
「あぁ、よろしく」
一旦俺たちは、カヤミの家から離れ、村の宿屋へと向かった。
宿屋へと向かっている道中に、思い出した様にディアナに、氷雪竜の事について、尋ねた。
「ディアナ、お前氷雪竜の討伐のことロイド伯爵とかに伝えなくていいのか?」
「……あぁあああ! 色々あって忘れていた! 報告せねば!」
いきなり大声を出して、走り出そうとするので、急いでそれを止めた。
「待て待て! 討伐部位を持っていかないと、証拠にならんだろ! 少し待ってろ、竜の討伐証明部位は確か角だったよなっと……」
俺は鞄から取り敢えず氷雪竜の頭部を引っ張り出し、角をへし折った。
「ほれ、これを持って報告に行け。氷雪竜を表すかの様な見事な氷と雪でできている様な立派な角だ。信じるに足る代物だろう?」
氷雪竜は最後、全身の氷を砕かれ雪外皮も剥がれおちていたが、象徴である角は外側は氷で覆われ、その下に雪が見える状態を保っていた。
「あぁ! 助かった。それでは、私はこれから、北都ノスティに戻る! また闘剣大会には伯爵様達と再び戻ってくる! また、逢おう!」
「これから行くのか? またせっかちだな」
俺は、すぐさま行くというディアナに苦笑しながら、再会を約束して送り出した。
「あぁ、またな」
俺から氷雪竜の角を手渡されるとディアナは、駆け出していった。
そして、俺たちは宿屋へと戻り、扉を開けた。
「あ! ヤナ君大変なの!」
宿屋に入った途端に、ルイが焦りながら俺を呼ぶ声が聞こえた。
「シラユキちゃんが、本当に『契約交渉』しちゃったの!」
「はぁ……話してみろ」
俺はまだ、ゆっくり寝ることは出来ないらしい。
俺は、タケミ爺さんに救出されるまで、光の消えた目の状態のカヤミとディアナに、ボコられ続けたのだ。
アシェリ達三人は、見ているだけで助けてくれないばかりか、ちゃっかりヤナビを俺から奪取し荒ぶる二人の狂人から保護していた。
「あの後、気が済んだカヤミ様とディアナ様のお話を聞いたら、間違いなく主様の自業自得だと思いますが……」
アシェリが、可哀想な子を見る様な目で、俺を見てくる。
「それにあなた、腕輪と指輪外して神火魔法使ったんなら、雑魚竜くらい剣を形状変化で作って露払いすれば良かったじゃない。それをわざわざ避けたのなんて、絶対あなたがまた調子に乗りすぎたんでしょ?」
エディスが、呆れたという顔をしながら、突き放す。
「ヤナ様、驚かすのが好きなのは知っていますが、まさかその後のアレまで含めて好きという事ですか?……それなら言ってくだされば、私がするのに……フフフ」
セアラがスカートの中から金棒を出そうとしたので、全力で食い止めた。
「全く、助けて損したぞ。儂なら問答無用で斬り捨てるところだが、あの二人は優しい心を持っていて助かったな」
タケミ爺さんまで、そんな事を言うが全く納得出来なかった。
「はぁ? あの二人が、優しいだと? アレを見て、よくそんな事が言えるな」
俺は、部屋の窓から見える惨劇の後を指差した。
二人が思いっきり、俺を討伐しようと攻撃を仕掛けてくるために、玄関先から家の庭先まで、地面がボコボコなっていたのだ。
「お前さんのせいだからな、後で直しておけよ。あと、正気に戻って、何故か落ち混んでいる二人の機嫌も治せ。カヤミの部屋に籠って、出てこんのだ」
タケミ爺さんに止められて我に返った二人は、俺の顔を見るなりあわあわとしながら二人してカヤミの部屋に閉じこもったのだ。カヤミの部屋は二人がこの前破壊したが、タケミ爺さんが俺たちがいない間にちゃんと壁や扉を直していたため、きちんと閉じこもる事が出来る様になっていた。
「はぁ、今度は天の岩戸かよ……何だってまたそんな事に、早く『神殺し』の刀を打ってもらいたいってのに」
俺が、二人の様子に呆れて溜息を吐いていると、アシェリ達が心底気の毒そうに呟く。
「ディアナは、人一倍騎士に対する想いが強い事で有名よ。そんな人が、自分があんな状態にさせられたと思うと……言葉がないわね……」
「それに、もし万が一、主様のお節介にお二人が堕ちていたら……そんな相手にあんな状態を見られたと考えたら……不憫すぎます……」
「何処まで意識があったか、分かりませんが……あんな状態で気絶しているところを殿方に見られたと思ったら、同じ女性としては想像を絶しますね……」
三人にそう呟かれながら、『お前が、何とかしろ』という目線を向けられ、渋々カヤミの部屋に向かった。
「お二人さぁん、機嫌直して出てくれないかなぁ? 俺が全部悪かったからさぁ、早く出て来てくださいよぉ」
「「………」」
答えは沈黙だった。
「これ、無理じゃね? 俺にはハードル高すぎるって」
「マスター……普段『俺は、絶対諦めない!』みたいな事言っている癖に、本当に女性が絡むとヘタレですね」
「……やかましいわ。だが、本当にどうしようか」
俺が部屋の前で途方に暮れていると、ヤナビが提案をしてくる。
「マスターが、ゴリ押し以外で解決出来るわけありませんので、私が交渉者となりましょうか? 声だけでも、少女の方が相手の刺激しにくいですよ?」
俺は、その提案に若干の不安を感じたが、確かに今の状況では俺には成す術がない。
「まぁ、しょうがないか。ただし、変な交渉をするなよ? 勝手に変な『契約』なんか結んでも俺は直接了承してないから、無効だからな。全権をヤナビ持たせないからな? あくまで交渉だからな? わかったな?」
「どれだけビビってるんですか、情けないマスターですね。大丈夫ですよ、さぁ、私をドアの前に置いて、離れていてください」
「……俺を売るなよ?」
「……早よ」
「「………」」
俺は、静かにヤナビをおいて、離れた。
「お二人共、ヤナビです。今は身体がありませんので、何もする事は出来ません。交渉者として、今は扉の前には私だけです。マスターは、離れて貰いました。お二人の願いを叶えるために、私を部屋の中に入れては、貰えないでしょうか? 決して、悪い様にはしません」
少し、間があった後に扉が少し空いた。
「な!? 開けやがった!?」
俺がヤナビの問いかけで扉が少し空いた事に愕然としていると、ヤナビが隙間から伸ばされた手に掴まれ、部屋の中へと入っていった。
「……何だろう、この言い知れぬ不安感は……」
そして、俺は暫く部屋から少し離れ所で、交渉がうまく行くことを願いながら、待つのであった。
「主様、そろそろ日が暮れますが、お二人の様子は如何ですか?」
ひたすらヤナビの交渉を待っていると、三人が様子を見にきた。
「ヤナビに交渉を任せている所だ。ヤナビが中に引き入れて貰えてからは、俺はひたすら待っている所だな」
「「「ヤナビ様が交渉?」」」
三人が同時に同じ目を、俺に向ける。
「やめろ! そんな『その選択が既に、詰みだろう』みたいな目で、俺を見るな!」
「だって、ねぇ?」
「ヤナビ様ですよ?」
「大事な交渉は、ご自分でしないと……」
「……いや、流石に大丈夫だよな?」
俺は一斉に目を反らされたことに絶句しながら、扉に目をむけると扉の隙間から手が出て来てヤナビを優しく床に置いた。
俺達はヤナビの元へと近づいていった。
「どうだった?」
「マスター、交渉は大詰めです。最後は、マスターご自身でお願いします」
「よし、任せろ。二人とも、ヤナだ。そろそろ出て来てくれる気になったか?」
少し間があった後に、二人の声が聞こえた。
「……えぇ、但し条件があるわ」
「……私もだ」
「何だ、何でも言ってみろ」
「ほんとね、ヤナビ様の言ってた通りの言葉を吐いたわね」
「まさか本当に言うとはな」
「ん? 何だ? 何の話だ?」
「何でもないわ。先ずは私の条件はね『もし私が、弟子を欲しくなったら、作るのを手伝ってほしい』よ」
「弟子を作るのを手伝う? って事は、刀を打つ気になったのか!」
「えぇ、この条件をのんでくれたら、『神殺し』の刀を打つわ。でも……時間が経つと気分が変わるかもねぇ」
俺は、刀を打ってくれるといった言葉を、覆される前に返事をした。
「待て! 別に弟子を作る手伝いくらい、喜んでするさ! だから、『神殺しの刀』を打ってくれ!」
「……『契約成立』……よし」
一瞬背筋が寒くなったが、気のせいだろう。
「あぁあ、また深く考えもせずに」
「目の前の餌に、釣られてろくに考えもせずに」
「四人目の契約者ができましたね」
後ろの三人が、何やら呟いているが、今回は別に大丈夫だろう。弟子を作る手伝いだったら別に問題が起きる罠はないはず。旅しながら、俺が勧誘や宣伝をするくらいだろう。それに、おそらく刀工が鍛治を再開するのあれば、弟子くらいすぐに作れるに違いなかった。
「次は私だ」
「おう、何だ」
「私の条件は『漆黒の騎士様に、私を貰って頂く手伝い』だ」
「……手伝いとは? 何をするんだ?」
「うむ、漆黒の騎士様を見かけたら、私の事を伝えたり、その場に留まる様に説得したり、私が漆黒の騎士様と結ばれるように全ての協力してほしいのだ」
「……少し考えさせてくれ」
俺はその提案を頭の中で吟味した。
『俺』と『漆黒の騎士』はディアナは別人と思っているわけだ。それならば、確実に二人が別人だと思わせておけば、全く問題ないだろう。
「うむ、いいぞ。漆黒の騎士がもし居たら、ディアナと結ばれる様に全力を尽くそう。それでいいか?」
「……『契約成立』……ヤナビ様の言っていた通りになったが、これにどんな意味が……」
ディアナが扉の向こう側でブツブツ言っていたが、扉越しだった為、良く聞こえなかった。
「なんだか、怪しいわね」
「ヤナビ様の指示と、聞こえましたが」
「これで契約者が五人……まだまだ増えるのでしょうか?」
兎に角、二人とも『契約』した為、その後素直に部屋から出てきてくれた。
「はぁ、やっとか……取り敢えず、今日はもう夜になっちまったから、明日朝にまた来る事にする。神鉄は置いていっていいか?」
「えぇ、いいわよ。それじゃ、明日からよろしくね」
「あぁ、よろしく」
一旦俺たちは、カヤミの家から離れ、村の宿屋へと向かった。
宿屋へと向かっている道中に、思い出した様にディアナに、氷雪竜の事について、尋ねた。
「ディアナ、お前氷雪竜の討伐のことロイド伯爵とかに伝えなくていいのか?」
「……あぁあああ! 色々あって忘れていた! 報告せねば!」
いきなり大声を出して、走り出そうとするので、急いでそれを止めた。
「待て待て! 討伐部位を持っていかないと、証拠にならんだろ! 少し待ってろ、竜の討伐証明部位は確か角だったよなっと……」
俺は鞄から取り敢えず氷雪竜の頭部を引っ張り出し、角をへし折った。
「ほれ、これを持って報告に行け。氷雪竜を表すかの様な見事な氷と雪でできている様な立派な角だ。信じるに足る代物だろう?」
氷雪竜は最後、全身の氷を砕かれ雪外皮も剥がれおちていたが、象徴である角は外側は氷で覆われ、その下に雪が見える状態を保っていた。
「あぁ! 助かった。それでは、私はこれから、北都ノスティに戻る! また闘剣大会には伯爵様達と再び戻ってくる! また、逢おう!」
「これから行くのか? またせっかちだな」
俺は、すぐさま行くというディアナに苦笑しながら、再会を約束して送り出した。
「あぁ、またな」
俺から氷雪竜の角を手渡されるとディアナは、駆け出していった。
そして、俺たちは宿屋へと戻り、扉を開けた。
「あ! ヤナ君大変なの!」
宿屋に入った途端に、ルイが焦りながら俺を呼ぶ声が聞こえた。
「シラユキちゃんが、本当に『契約交渉』しちゃったの!」
「はぁ……話してみろ」
俺はまだ、ゆっくり寝ることは出来ないらしい。
0
あなたにおすすめの小説
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛
タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。
しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。
前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。
魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。
異世界の花嫁?お断りします。
momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。
そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、
知らない人と結婚なんてお断りです。
貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって?
甘ったるい愛を囁いてもダメです。
異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!!
恋愛よりも衣食住。これが大事です!
お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑)
・・・えっ?全部ある?
働かなくてもいい?
ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です!
*****
目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃)
未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。
魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います
町島航太
ファンタジー
異常なお人好しである高校生雨宮良太は、見ず知らずの少女を通り魔から守り、死んでしまう。
善行と幸運がまるで釣り合っていない事を哀れんだ転生の女神ダネスは、彼を丁度平和な魔法の世界へと転生させる。
しかし、転生したと同時に魔王軍が復活。更に、良太自身も転生した家系的にも、人間的にもあり得ない闇の魔法属性を持って生まれてしまうのだった。
存在を疎んだ父に地下牢に入れられ、虐げられる毎日。そんな日常を壊してくれたのは、まさかの新魔王の幹部だった。
薬師だからってポイ捨てされました!2 ~俺って実は付与も出来るんだよね~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト=グリモワール=シルベスタは偉大な師匠(神様)とその脇侍の教えを胸に自領を治める為の経済学を学ぶ為に隣国に留学。逸れを終えて国(自領)に戻ろうとした所、異世界の『勇者召喚』に巻き込まれ、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
『異世界勇者巻き込まれ召喚』から数年、帰る事違わず、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居るようだが、倒されているのかいないのか、解らずとも世界はあいも変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様とその脇侍に薬師の業と、魔術とその他諸々とを仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話のパート2、ここに開幕!
【ご注意】
・このお話はロベルトの一人称で進行していきますので、セリフよりト書きと言う名のロベルトの呟きと、突っ込みだけで進行します。文字がびっしりなので、スカスカな文字列を期待している方は、回れ右を推奨します。
なるべく読みやすいようには致しますが。
・この物語には短編の1が存在します。出来れば其方を読んで頂き、作風が大丈夫でしたら此方へ来ていただければ幸いです。
勿論、此方だけでも読むに当たっての不都合は御座いません。
・所々挿し絵画像が入ります。
大丈夫でしたらそのままお進みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる