要石の巫女と不屈と呼ばれた凡人

イチ力ハチ力

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第六章 偽り

その男は

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「負けフラグが、何だというのかな? たかが人間に、が負ける筈がないでしょ」

「ぐぅう……言ってろよ……大体、悪神だなんてまさに悪役みたいな……ダセェ名前でよくそんな事がぐぁあああ!」

「はぁ、もういいよ君。何だか五月蝿いし。もうコレの身体が崩れちゃうから、直接殺せないのは残念だけど、そのまま瘴気に呑まれちゃいなよ。そしたら君の魂で遊んであげるから、ふふふ」

 悪神がそう言うなり、更に瘴気が俺の体内へと侵入してくる。

「ぐは……かはっ……はぁはぁ……おかわり……」

「は?」

「もっと……瘴気持って来いって言ってるんだよ!……はぁはぁ……こんな時化た量で、俺が倒れると思っているのか?」

「随分強がるんだね。女の前だからかな? んぅ、そうだ。アイラス、この男を助けたいかい?」

「ぐぬは……お前……何を言って……」

 悪神が俺ではなく、ライに向かってそう告げた。

「何を言ってるの?」

「強がっているが、この男はこのままだと瘴気に魂まで侵食され、終わる・・・よ。お前を助けようとした男が、お前の所為でまた・・死ぬよ? いいのかい?」

 悪神にそう言われたライは、顔を青くしながら俺と悪神を見ていた。

「アイラスが、僕の元へと戻れば、瘴気からその男を解放してあげよう」

 ライは、悪神の言葉に揺れている様子だった。

 無理も無いことだろう。これまでの自分を見せられ、その度に、大事な人を失っていたのだ。

 そして、ライは俺の事をよく知らない・・・・のだから。

「そんな男に、騙されちゃいけないよ。さぁ、こっちにおいで」

 悪神は、ケンシーの顔で優しく微笑む。

「……ごめんね……わたしが悪いの……」

 そして、抱きしめていた俺の腕を振りほどき、ライはそっと俺から離れ悪神の元へと歩き出す。

「え?」

 そして、俺はそんなライの腕を掴んだ。

「おやおや、女が自ら離れようとしているのに、実にみっともないなぁ。ほら、僕の女から手を離しなよ」

 悪神がそう言った瞬間、瘴気の侵食が激しさをました。

「ぐぉぉおおおお……はは……そんなもんか? 神のチカラなんて大したことねぇな……俺はまだ倒れてねぇぞ」

 俺は悪神を、睨めつけながら言葉を吐き出す。

「ははは、本当に君は倒れないんだね。スキルの力のおかげかな、どんなスキルなんだい?」

「誰が……言うかよ……」

「まぁ、なんでもいいけどね。どうせなら、そのまま立ちながら死んじゃったらどう? 絵になりそうだよ」

 俺が、ライの腕を掴んだままでいると、ライが俺を見ながら呟く。

「もういいよ……」

 ライの目には、何も映っていなかった。

「何がもういいよ……だ……どいつもこいつもお前ら・・・は……それ・・ばっかり言いやがって・・・・・・……」

 俺は、真っ直ぐライの目を見ながら叫ぶ。

「俺が、お前を神から奪うと言った! どいつもこいつも、俺を舐めすぎだ! こんなチンケな瘴気で、俺が倒れるかぁあああ!」

 俺は、瘴気に身体を侵食されながら、この世界に来た時に初めから持っていたスキルの名を、自分の名と共に天に向かって叫ぶ。

「俺は『不撓不屈折れない心』のヤナだぁあああ!」

 そして、俺の頭の中にスキル獲得のアナウンスが流れる。



【『死中求活死地覚醒』を取得しました】

【『死中求活死地覚醒』の発動を確認しました】

【『死中求活死地覚醒』の発動により『制限覚醒』を取得しました】

【『起死回生窮地:能力倍増』は『捲土重来死地能力累乗増加』へ制限覚醒しました】

【『死神の危険/気配慟哭自動感知』は『死神の祝福全気配掌握』へ制限覚醒しました】

【『生への渇望致命傷回避』は『我死なず即死無効』へ制限覚醒しました】

【『天下身体能力/魔力無双増幅増強』は『天下無敵筋力魔力激烈激増』へ制限覚醒しました】

【『威風堂々物理魔法耐性倍増 』は『完全無欠全耐性耐久適応』へ制限覚醒しました】

【『正確魔法完全制御無比無詠唱 』は『完全支配能力完全制御』へ制限覚醒しました】

【『疾風迅雷早く速く疾く』は『神速最速』へ制限覚醒しました】

【『神出鬼没隠蔽/隠密/偽装』は『変幻自在姿形気配自由自在』へ制限覚醒しました】

【『神殺し限界超越』は『神成り限界無効』へ制限覚醒しました】

【『明鏡止水精神統一』は『無念無想無我の境地』へ制限覚醒しました】

【『神火魔法 』は『創世始まりの火』へ制限覚醒しました】



 そして、俺を侵食していた瘴気は、全て消え去った。



「何!? あの光は!」

 エディスは岩山を駆け下りた麓で、天を照らす黄金の光の柱が、荒野のある方角に見え叫んだ。

「主様? でも、ここまで神々しい気配はなかったはず」

 アシェリは、その天を突く光にヤナの気配を感じながらも、これまでに感じたことの無い程に神々しい気配を感じていた。

「これは、絶対にヤナ様です! これほど温かく優しい光を放つ人は、ヤナ様以外にはおりません!」

 セアラは、光を見ながら思わず大声で叫んだ。そして、優しく慈愛に満ちた表情で再度口を開いた。

「きっとまた、誰か・・を救うために、絶望に抗っているのでしょう」

 そのセアラの言葉に、アシェリとエディスも微笑む。

「ふふ、きっとそうね。あの人は、いつも誰かを救う為に強くなるもの」

「はい、いつも主様は口癖の様に言いますからね」

 そして息を合わせた様に、三人の言葉が重なる。



ヒーローは、倒れない』



 そして、三人は光の元へと駆け出した。



「なんだい……その姿は?」

 悪神が俺の姿を見ながら、呟いた。

 俺の身体からは、天を突くように黄金の光が全身から迸っていた。

「お前は、誰だ」

 悪神の声色が低くなり口調が変わる。

「言っているだろう、さっきから」

「誰だと聞いている」

 悪神が再び、俺の名を問う。



「俺の名は、ヤナ。不屈のヒーロー



 お前を討ちに異世界から来た、只の凡人だよ


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