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第七章 悠久
私は
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「それでお主、どうするつもりなのじゃ?」
顔色が少し普通に戻ってきたシェンラが、アリスからの『接続許可』が降りた俺へと話しかけてきた。
「ちょ……ちょっと待ってろ……これは……ぐぅう……頭がぁあああ!」
俺は、アリスから一気に流れ込んでくる感情や情報に、頭が割れそうになるくらいに痛みを感じていた。
「マスター! 人の頭では、もう一人の人生の情報を処理できる容量はなさそうです! 私に『情報統制』の『権限を委譲』して下さい!」
「かはっ……わかった……ヤナビに『移譲』す……る……」
アリスと『接続』した結果、俺は流れ込んでくるアリスの全ての情報を受け止め切れずに、頭が狂いそうになっていた。その為、ヤナビに流れ込んでくる情報の統制を任せた。
「はぁはぁ……大分楽になった……だが……くっ……それでもキツイな……」
「マスター、私の方で今の所は処理出来てますが、『制限解除』が解けると私でも処理が追いつきません。アリス様のいる空間へ突入出来たら直ぐに『回線切断』をお願いします」
「くっ……あぁ……自分自身のスキルとしか『接続』してなかったから……これは気づかなかったな……」
これまで『接続』で俺と意識や情報を繋げたのは、ヤナビとヤナビを『集線』にして、『黒炎の自動人形』や『神火の式神』だけだった。
生きている者に対して『接続』を行うことが、これほど辛いものだとは予想できなかった。
『接続』した瞬間にアリスの色々な情報が、頭の中に流れ込んできた。おそらく本人も覚えていない事もあるだろう。何故なら、生まれた時からの情報だったからだ。
アリスの両親の優しく愛に満ちた表情が、俺の頭の中に映し出さたのだ。
そして、本人の色々な悩みも俺の頭には流れ込んできていた。
「マスター、アリス様の膨大な視覚情報や記憶に関する情報は、今のところ私が統制出来ていますが、『感情』に関しては私では処理出来ないようです」
「あぁ……ぐぅ……わかっている……それでもかなり楽になった……」
俺は再び『天』『地』を、壁に向かって構えた。
「ヤナよ。随分色々と辛そうじゃが、まだ足掻くのかの?」
ヤナは、全身を自分の血で染め、至る所にスキルを発動するために斬られた傷から、少なくない量の血が痛々しく流れ出ている。
しかし表情には一切の迷いがなかった。そして、自分自身を信じる者の顔をしていた。
瞳に映るは、必ず成し遂げるという強い意志のみであり、諦めや絶望の色は一切見えない。
妾は、ここまで驚異的と言える短時間で来れたことだけでも、内心でら驚き、恐れすら抱いていた。
それでも、この者の底はまだ見えていなかった。
「ふ……ふふふ……はははははは! シェンラよ、ソレを聞くのか? 俺と素手喧嘩で殴り合い、魂のぶつけ合いをしたお前が……答えなんて、既にわかっているだろう?」
ヤナは、妾に向かって不敵に嗤っていた。
「確かに、聞いた妾が野暮じゃったの」
ギルドの訓練場でヤナと殴り合いをした時に、妾は確信していた。
この男が、あの人と同じ魂を持つ者だと
妾はその事を伝える事はしなかった
いや、しなかったのではない
恐れたのだ
我だけが、あの約束を想い続けていたとわかってしまうのが、怖いのだ
あの人だって諦めていたではないか
人には人の時間があり
人は長くは生きられない
だから優しい貴方は約束をしてくれた
また来てくれくれると
そして本当に、貴方はこの世界に来てくれていた
もしかしたら、我が最奥に引き篭っている間にも、貴方はこの世界へと来てくれていたのかもしれない
我は貴方を見つけた
悠久の刻を生きる我にとって、これだけで満足するべき事だろう
魂は同じでもあの人とこの人は別人なのだから
期待してはいけない
「そうだな、野暮ってもんだ」
ヤナは妾に向かって、楽しそうに笑っていた。
心の中では違うとわかっているのに、その笑顔に心が揺さぶられる。
「今度の俺は、決して諦めない」
ヤナの一片の迷いもない力強い言葉が、心に入り込んでくる。
我に期待を持たせないでほしい
そんな事を言われたら夢を見てしまう
終わりなき者が夢を見るなんて
これほど辛いものはない
だから、妾は心を隠し尊大に言葉を発する。
「ならば、見せて貰うとするのじゃ。お主の底を」
我は貴方の心を見せて欲しい
その言葉が我の口から出る事は決してなかった
「さぁ、初めてだが……うまくいくかな……違うな……絶対上手く行かせてみせる……だ」
俺はここまで来るのに、既に限界を超えるような無茶をしている自覚はあった。
「無茶で済むなら……安いもんだ……」
そして、俺は一際精神を集中し、言葉を紡ぎ出した。
「『創世の火』」
俺が言葉を発した瞬間に、全身から黄金の炎が噴き出し、俺を包み込んだ。
「な……なんじゃその炎は……我でも知らぬぞ!」
俺を目の当たりにしたシェンラが、のじゃロリキャラが崩れるのも構わず、俺に向かって大声をあげていた。
「世の中には、色んな事が起きるんだよ。迷宮の奥に引きこもってないで、外の世界を見るんだな。外の世界ではな、思いもよらない事が起きるものさ」
俺は、シェンラに微笑みかけ、そして目の前の壁に集中する。
「ヤナビ、アリスの部屋のマッピングはいけたか?」
「既に、作成終了しました。かなり大きな空間に数百体の迷宮魔物がひしめきあっています。光闇合成魔法で隠れているアリス様を、探しまわっているようです。マスター、アリス様は魔力切れを起こしかけながらも、気力で耐えているところです。いつ魔法が切れてもおかしくありません」
アリスは光闇合成魔法により、最奥の迷宮魔物から隠れているが、いつ魔力切れを起こしてもおかしくない現状をヤナビから教えられたが、俺は焦らず準備を進める。
「『創世の火』『表面加工』『天叢雲』『塵地螺鈿』」
俺は全身に纏う『創世の火』を『天』『地』に纏わせ『表面加工』を施した。そして、『天叢雲』と『塵地螺鈿』と成った二振りの刀を構えた。
「人の身で斬れぬと言うのであれば……人の身を超えるまで……」
俺は瞳を閉じ、静かに言葉を放ちながら刀を振るう。
「『無念無想』『極致』『有無の二見』」
刻が止まったかのように無音が広がり、ヤナの目の前の壁が空間ごとズレた。
次の瞬間、ズレた空間が爆ぜた。
私は、目の前にうろつく阿修羅男に対して、息を止める勢いで気配を消していた。
ヤナからの『接続承認』をした瞬間に、いきなりヤナのうめき声が聞こえた時はかなり驚いた。
私には、何も変わった事がなかった為に、余計に自分の何かが、ヤナを苦しめているのかも知れないと不安になっていた。
それに加えて、既に魔力切れの症状が身体を襲い始めており、光闇合成魔法により姿を消しているのも限界だった。
私はアリス
彼は怪物
アリスが、怪物に助けられるのを待っている
おかしな話で、思わず笑ってしまう
そして、魔力が完全に枯渇し、私はその場に姿を現した。
すぐさま不気味で醜悪な顔をしたモンスターが私を捉え、その顔に笑みを浮かべた。
ゆっくりと私の元へと、モンスターが近づいてくる。
私は壁に背を預け座り込みながら、そのモンスターの顔を見て笑った。
よくよく見たら、全く怖く見えなかった。
彼の鬼の方が、よっぽど怖い。
私は遠くなる意識を必死に繋ぎ止めていた。
彼の登場シーンだけは、見たかったからだ。
そして、その時は訪れた。
爆音とともに、部屋の壁が空間ごと爆ぜた。
一気に部屋中にいたモンスター達が、爆ぜた方へと目を向け注目していた。
「待たせたな。怪物の登場だ」
私は、その怪物が登場したのを見て確信した。
アリスは怪物に恋をしたのだ
顔色が少し普通に戻ってきたシェンラが、アリスからの『接続許可』が降りた俺へと話しかけてきた。
「ちょ……ちょっと待ってろ……これは……ぐぅう……頭がぁあああ!」
俺は、アリスから一気に流れ込んでくる感情や情報に、頭が割れそうになるくらいに痛みを感じていた。
「マスター! 人の頭では、もう一人の人生の情報を処理できる容量はなさそうです! 私に『情報統制』の『権限を委譲』して下さい!」
「かはっ……わかった……ヤナビに『移譲』す……る……」
アリスと『接続』した結果、俺は流れ込んでくるアリスの全ての情報を受け止め切れずに、頭が狂いそうになっていた。その為、ヤナビに流れ込んでくる情報の統制を任せた。
「はぁはぁ……大分楽になった……だが……くっ……それでもキツイな……」
「マスター、私の方で今の所は処理出来てますが、『制限解除』が解けると私でも処理が追いつきません。アリス様のいる空間へ突入出来たら直ぐに『回線切断』をお願いします」
「くっ……あぁ……自分自身のスキルとしか『接続』してなかったから……これは気づかなかったな……」
これまで『接続』で俺と意識や情報を繋げたのは、ヤナビとヤナビを『集線』にして、『黒炎の自動人形』や『神火の式神』だけだった。
生きている者に対して『接続』を行うことが、これほど辛いものだとは予想できなかった。
『接続』した瞬間にアリスの色々な情報が、頭の中に流れ込んできた。おそらく本人も覚えていない事もあるだろう。何故なら、生まれた時からの情報だったからだ。
アリスの両親の優しく愛に満ちた表情が、俺の頭の中に映し出さたのだ。
そして、本人の色々な悩みも俺の頭には流れ込んできていた。
「マスター、アリス様の膨大な視覚情報や記憶に関する情報は、今のところ私が統制出来ていますが、『感情』に関しては私では処理出来ないようです」
「あぁ……ぐぅ……わかっている……それでもかなり楽になった……」
俺は再び『天』『地』を、壁に向かって構えた。
「ヤナよ。随分色々と辛そうじゃが、まだ足掻くのかの?」
ヤナは、全身を自分の血で染め、至る所にスキルを発動するために斬られた傷から、少なくない量の血が痛々しく流れ出ている。
しかし表情には一切の迷いがなかった。そして、自分自身を信じる者の顔をしていた。
瞳に映るは、必ず成し遂げるという強い意志のみであり、諦めや絶望の色は一切見えない。
妾は、ここまで驚異的と言える短時間で来れたことだけでも、内心でら驚き、恐れすら抱いていた。
それでも、この者の底はまだ見えていなかった。
「ふ……ふふふ……はははははは! シェンラよ、ソレを聞くのか? 俺と素手喧嘩で殴り合い、魂のぶつけ合いをしたお前が……答えなんて、既にわかっているだろう?」
ヤナは、妾に向かって不敵に嗤っていた。
「確かに、聞いた妾が野暮じゃったの」
ギルドの訓練場でヤナと殴り合いをした時に、妾は確信していた。
この男が、あの人と同じ魂を持つ者だと
妾はその事を伝える事はしなかった
いや、しなかったのではない
恐れたのだ
我だけが、あの約束を想い続けていたとわかってしまうのが、怖いのだ
あの人だって諦めていたではないか
人には人の時間があり
人は長くは生きられない
だから優しい貴方は約束をしてくれた
また来てくれくれると
そして本当に、貴方はこの世界に来てくれていた
もしかしたら、我が最奥に引き篭っている間にも、貴方はこの世界へと来てくれていたのかもしれない
我は貴方を見つけた
悠久の刻を生きる我にとって、これだけで満足するべき事だろう
魂は同じでもあの人とこの人は別人なのだから
期待してはいけない
「そうだな、野暮ってもんだ」
ヤナは妾に向かって、楽しそうに笑っていた。
心の中では違うとわかっているのに、その笑顔に心が揺さぶられる。
「今度の俺は、決して諦めない」
ヤナの一片の迷いもない力強い言葉が、心に入り込んでくる。
我に期待を持たせないでほしい
そんな事を言われたら夢を見てしまう
終わりなき者が夢を見るなんて
これほど辛いものはない
だから、妾は心を隠し尊大に言葉を発する。
「ならば、見せて貰うとするのじゃ。お主の底を」
我は貴方の心を見せて欲しい
その言葉が我の口から出る事は決してなかった
「さぁ、初めてだが……うまくいくかな……違うな……絶対上手く行かせてみせる……だ」
俺はここまで来るのに、既に限界を超えるような無茶をしている自覚はあった。
「無茶で済むなら……安いもんだ……」
そして、俺は一際精神を集中し、言葉を紡ぎ出した。
「『創世の火』」
俺が言葉を発した瞬間に、全身から黄金の炎が噴き出し、俺を包み込んだ。
「な……なんじゃその炎は……我でも知らぬぞ!」
俺を目の当たりにしたシェンラが、のじゃロリキャラが崩れるのも構わず、俺に向かって大声をあげていた。
「世の中には、色んな事が起きるんだよ。迷宮の奥に引きこもってないで、外の世界を見るんだな。外の世界ではな、思いもよらない事が起きるものさ」
俺は、シェンラに微笑みかけ、そして目の前の壁に集中する。
「ヤナビ、アリスの部屋のマッピングはいけたか?」
「既に、作成終了しました。かなり大きな空間に数百体の迷宮魔物がひしめきあっています。光闇合成魔法で隠れているアリス様を、探しまわっているようです。マスター、アリス様は魔力切れを起こしかけながらも、気力で耐えているところです。いつ魔法が切れてもおかしくありません」
アリスは光闇合成魔法により、最奥の迷宮魔物から隠れているが、いつ魔力切れを起こしてもおかしくない現状をヤナビから教えられたが、俺は焦らず準備を進める。
「『創世の火』『表面加工』『天叢雲』『塵地螺鈿』」
俺は全身に纏う『創世の火』を『天』『地』に纏わせ『表面加工』を施した。そして、『天叢雲』と『塵地螺鈿』と成った二振りの刀を構えた。
「人の身で斬れぬと言うのであれば……人の身を超えるまで……」
俺は瞳を閉じ、静かに言葉を放ちながら刀を振るう。
「『無念無想』『極致』『有無の二見』」
刻が止まったかのように無音が広がり、ヤナの目の前の壁が空間ごとズレた。
次の瞬間、ズレた空間が爆ぜた。
私は、目の前にうろつく阿修羅男に対して、息を止める勢いで気配を消していた。
ヤナからの『接続承認』をした瞬間に、いきなりヤナのうめき声が聞こえた時はかなり驚いた。
私には、何も変わった事がなかった為に、余計に自分の何かが、ヤナを苦しめているのかも知れないと不安になっていた。
それに加えて、既に魔力切れの症状が身体を襲い始めており、光闇合成魔法により姿を消しているのも限界だった。
私はアリス
彼は怪物
アリスが、怪物に助けられるのを待っている
おかしな話で、思わず笑ってしまう
そして、魔力が完全に枯渇し、私はその場に姿を現した。
すぐさま不気味で醜悪な顔をしたモンスターが私を捉え、その顔に笑みを浮かべた。
ゆっくりと私の元へと、モンスターが近づいてくる。
私は壁に背を預け座り込みながら、そのモンスターの顔を見て笑った。
よくよく見たら、全く怖く見えなかった。
彼の鬼の方が、よっぽど怖い。
私は遠くなる意識を必死に繋ぎ止めていた。
彼の登場シーンだけは、見たかったからだ。
そして、その時は訪れた。
爆音とともに、部屋の壁が空間ごと爆ぜた。
一気に部屋中にいたモンスター達が、爆ぜた方へと目を向け注目していた。
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アリスは怪物に恋をしたのだ
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