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第42話 本当の姿があったの?
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『雪に完全に変わる前の、水分を多く含んだみぞれって、雨と雪のハイブリッドな感じでめっちゃ濡れるよね。だからさ、カンも何かとハイブリッドしたら、強くなるかな? 例えば……豆腐とか』
「崩れ易いこと絹ごしの如き、になりそうな予感しかせぬ上に、唐突な話の切り出しに困惑しかないわ!」
とある異世界の魔王城にて、カンは魔王を前にしていきなり大声を出して、文句を言い始めた。
「空き缶よ……疲れておるのか?」
そして、魔王に気遣われる空き缶であった。
「お気遣いなくぅううぅ」
「そうか……して、何故に空き缶が話をしているのだ」
「簡潔に言えば、新種の〝喋る空き缶〟族という事らしいな」
「異世界には、中々色んな種類の空き缶があるものだな……って、そうではないわぁああ!」
威厳たっぷりのマントを翻しながら、魔王は床に立っている空き缶に対し、盛大なノリツッコミをかました。
「お主……なんか、同じ匂いがする魔王であるな。前世は、どこかの空き缶か?」
「空き缶と魔王を、同じに語るでないわ! 次元の狭間に、放り込むぞ!」
そこそこの経験をしてきているカンは、大分スレてしまっており〝魔王〟と言うだけでは、そこまでビビらなくなっていた。
更に魔王から漂う〝残念臭〟をかぎとると、割と舐めた態度を取るようになっていた。
「次元の狭間……どんな所なのだ?」
「くくく、何もない所よ。死ぬまで、出口にない空間を、彷徨うのだ!」
「……死ぬまでだと?」
『カンは空き缶だから、人の寿命とは大きく異なるよ。正確には、未だ分からないけどボディが〝潰れる〟〝砕ける〟〝朽ちる〟などの物理的にどうにかならない限り、死ぬことはないだろうね。だから、次元の狭間で劣化もせず潰されもせず、ただ彷徨う事になればどうなるかと言うと……永遠の刻を、そこで過ごすことになるかな……怖っ』
「まさかのバッドエンドルートが、突然のニアミス過ぎる!」
残念魔王だと舐めプしていたら、生き地獄へと落とされそうになり、ビビるカンであった。
「召喚したら目の前に魔王がいるとか、どんだけハードモードなのカァアアン!?」
『さっき、明らかに目の前の魔王を舐めプしてたよね? それに人生もとい缶生においては、色々と岐路と呼べる選択がある訳だよ』
カンの缶生にも、果たしてそんな岐路が訪れるのかイチカも分かって言っているわけでは無いが、現在の危機的状況に漸く気づいたカンの心には、確かにイチカの言葉は刺さった。
「我は今、唐突にその岐路に立っているカァアァアアアン!?」
そして、そんなカンに同じ部類だと言われ苛立っている魔王が、玉座から立ち上がり、カンに対して威圧を放ちながら見下ろしていた。
「魔王様ぁああぁ次元の狭間だけは、どうかご容赦をぉおぉ 」
「ふん、そんな情けない声を出す空き缶如きに、本気で怒る我輩ではないわ」
「ふぅ……して、この世界の魔王よ。何故、周りに配下が居らぬのだ?」
カンが指摘した通り、玉座に座る魔王の周りにはセクシーな魔族や屈強な全身鎧であるとか、大魔導士ような老人といった、幹部っぽい者は誰もいなかったのだ。
危機を脱したカンはその事に気づき、再び魔王を舐めプすることにした。
「お主、空き缶である癖に、結局態度がでかいのだな……まぁ、良い。我輩の周りに、配下が居らぬ理由か」
嘆息を吐きながら、魔王は玉座に腰掛けると、肘掛けに片腕をのせ頬杖をついた。かの有名な、魔王の待ち姿勢である。
「どこかの国でも攻めておるのか?」
「そうではない。幹部共は全員、勇者にテイムされてしまったのだ……」
「……魔王が、見限られてるのカァアアアアン!? 予想の斜め上の残念さではないか!?」
配下の四天王が全員残らずに、勇者に寝返っていた。その事実だけで、この魔王の気の毒さが分かる。
もとい、情けなさが伝わってくるようだった。
「ふ……だからこちらも異世界から勇者を召喚して、再度その勇者に配下共をテイムして貰おうとしたのだ!」
発想が完全に負け犬のそれである。流石のカンも、嘆息をつかずにはいられなかった。
「己ではなくて、召喚した勇者頼りとか……勇者なんぞ召喚したら、そもそも自らがいきなり討たれるとは思わなかったのか?」
「召喚したばかりであれば、まだ弱い筈だから大丈夫だ!」
「弱かったら駄目ではないか!? なんであろう、この絶対上手くいかない感じは……テイムされたのではなく、本当に見限られて出て行っただけではないのか……?」
「しかし、召喚されたのは喋る空き缶……しかし、我輩は諦めぬ!」
再び玉座から、何を思いついたのか勢いよく立ち上がる魔王。
「ん? やる気をだしたか、流石に腐っても魔王であるな」
「きっと貴様は、空き缶に姿を変えられた元勇者に違いない! 鍛えれば元の姿に戻り、我の味方になってくれる筈だ!」
「……はい? 頭がお花畑カァアン!? そんなご都合主義の展開がある訳ないであろう! 我は正真正銘の、空き缶カァアアアアン!?」
「信じぬ!」
「面倒くさいのに引っ掛かったカァアアン!?」
カンの叫びは、本当に嫌そうな響きであった。
「崩れ易いこと絹ごしの如き、になりそうな予感しかせぬ上に、唐突な話の切り出しに困惑しかないわ!」
とある異世界の魔王城にて、カンは魔王を前にしていきなり大声を出して、文句を言い始めた。
「空き缶よ……疲れておるのか?」
そして、魔王に気遣われる空き缶であった。
「お気遣いなくぅううぅ」
「そうか……して、何故に空き缶が話をしているのだ」
「簡潔に言えば、新種の〝喋る空き缶〟族という事らしいな」
「異世界には、中々色んな種類の空き缶があるものだな……って、そうではないわぁああ!」
威厳たっぷりのマントを翻しながら、魔王は床に立っている空き缶に対し、盛大なノリツッコミをかました。
「お主……なんか、同じ匂いがする魔王であるな。前世は、どこかの空き缶か?」
「空き缶と魔王を、同じに語るでないわ! 次元の狭間に、放り込むぞ!」
そこそこの経験をしてきているカンは、大分スレてしまっており〝魔王〟と言うだけでは、そこまでビビらなくなっていた。
更に魔王から漂う〝残念臭〟をかぎとると、割と舐めた態度を取るようになっていた。
「次元の狭間……どんな所なのだ?」
「くくく、何もない所よ。死ぬまで、出口にない空間を、彷徨うのだ!」
「……死ぬまでだと?」
『カンは空き缶だから、人の寿命とは大きく異なるよ。正確には、未だ分からないけどボディが〝潰れる〟〝砕ける〟〝朽ちる〟などの物理的にどうにかならない限り、死ぬことはないだろうね。だから、次元の狭間で劣化もせず潰されもせず、ただ彷徨う事になればどうなるかと言うと……永遠の刻を、そこで過ごすことになるかな……怖っ』
「まさかのバッドエンドルートが、突然のニアミス過ぎる!」
残念魔王だと舐めプしていたら、生き地獄へと落とされそうになり、ビビるカンであった。
「召喚したら目の前に魔王がいるとか、どんだけハードモードなのカァアアン!?」
『さっき、明らかに目の前の魔王を舐めプしてたよね? それに人生もとい缶生においては、色々と岐路と呼べる選択がある訳だよ』
カンの缶生にも、果たしてそんな岐路が訪れるのかイチカも分かって言っているわけでは無いが、現在の危機的状況に漸く気づいたカンの心には、確かにイチカの言葉は刺さった。
「我は今、唐突にその岐路に立っているカァアァアアアン!?」
そして、そんなカンに同じ部類だと言われ苛立っている魔王が、玉座から立ち上がり、カンに対して威圧を放ちながら見下ろしていた。
「魔王様ぁああぁ次元の狭間だけは、どうかご容赦をぉおぉ 」
「ふん、そんな情けない声を出す空き缶如きに、本気で怒る我輩ではないわ」
「ふぅ……して、この世界の魔王よ。何故、周りに配下が居らぬのだ?」
カンが指摘した通り、玉座に座る魔王の周りにはセクシーな魔族や屈強な全身鎧であるとか、大魔導士ような老人といった、幹部っぽい者は誰もいなかったのだ。
危機を脱したカンはその事に気づき、再び魔王を舐めプすることにした。
「お主、空き缶である癖に、結局態度がでかいのだな……まぁ、良い。我輩の周りに、配下が居らぬ理由か」
嘆息を吐きながら、魔王は玉座に腰掛けると、肘掛けに片腕をのせ頬杖をついた。かの有名な、魔王の待ち姿勢である。
「どこかの国でも攻めておるのか?」
「そうではない。幹部共は全員、勇者にテイムされてしまったのだ……」
「……魔王が、見限られてるのカァアアアアン!? 予想の斜め上の残念さではないか!?」
配下の四天王が全員残らずに、勇者に寝返っていた。その事実だけで、この魔王の気の毒さが分かる。
もとい、情けなさが伝わってくるようだった。
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発想が完全に負け犬のそれである。流石のカンも、嘆息をつかずにはいられなかった。
「己ではなくて、召喚した勇者頼りとか……勇者なんぞ召喚したら、そもそも自らがいきなり討たれるとは思わなかったのか?」
「召喚したばかりであれば、まだ弱い筈だから大丈夫だ!」
「弱かったら駄目ではないか!? なんであろう、この絶対上手くいかない感じは……テイムされたのではなく、本当に見限られて出て行っただけではないのか……?」
「しかし、召喚されたのは喋る空き缶……しかし、我輩は諦めぬ!」
再び玉座から、何を思いついたのか勢いよく立ち上がる魔王。
「ん? やる気をだしたか、流石に腐っても魔王であるな」
「きっと貴様は、空き缶に姿を変えられた元勇者に違いない! 鍛えれば元の姿に戻り、我の味方になってくれる筈だ!」
「……はい? 頭がお花畑カァアン!? そんなご都合主義の展開がある訳ないであろう! 我は正真正銘の、空き缶カァアアアアン!?」
「信じぬ!」
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追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
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