イセカン!?〜異世界の空き缶に転生した我だけれど、諦めずに魔王に成ってみせるカァアン!〜

イチ力ハチ力

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第47話 強気な姿は維持する

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『一週間の仕事が始まる月曜日。年中無休で働いているから、月曜日が来ても落ち込まなくて、ラッキィイイイイイ!! って言ったら、どうする?』
  
「それをラッキーという時点で、大分キテおるぞ?」
  
『大丈夫さ。カンがグシャグシャになるところを見て、精神落ち着かせてるから。それはそうと、ヤカン。どうだい、ヤカンの身体方の様子は? 結構、時間経ってるけど身体に変化はあるかい?』
  
「空き缶が悲鳴を上げて潰れている映像を見て、精神を落ち着かせている時点で、大分精神的に病んでいるではないか。それに我はヤカンだが、ヤカンではない』
  
『哲学かな?』
  
「ただの訂正ヤカン」
  
『なんだかんだかやけに落ち着いて話をしているけど、勇者はまだまだそのままって感じなの?』

 イチカとカンは、割とまったりと余裕を持ちながら、いつもの緩い会話をしていた。
  
「勇者はまだ必死に我を魅了しようと、踊っているぞ」

 〝勇者〟天翔龍はカンを、〝魔王ヤカン〟と認識したまま、仲間の美女達同様に自身のチートスキルである〝魅惑チャーム〟で、手駒にしようとしていた。

 そして勇者の〝魅惑チャーム〟の術は、天翔龍の〝踊りダンス〟が発動条件であった様で、カンの目の前で言葉では言い表せられないような、独創的でダサい踊りを続けていた。
  
『どうやら、ヤカンには勇者のチートである魅了の香りが、一切効かないみたいだね。さて、何故だろう?』
  
「まさか、某野菜戦士の親友の様に、鼻がないから効かないみたいな事をいわぬだろうな。それと、我の名はカンだからな」
  
『……』
  
「図星なのヤカァアァアアアン!?」

『は!? 何の話してたっけ。カンだかヤカンだが、よくわかんない事になっている君、教えてくれないかな?』
  
「これほど酷い話の変え方も無いぞ。その為に、酷い事を言うのをやめような」
  
『どうでも良いけど、ヤカンの水大丈夫? そろそろ空焚きになりそうだし、そっちの話を進めるとかなんとかしなよー』
  
「軽いな!? そしてその指摘は、的確につき、本当に水が無くなるヤカァアアン!?」
  
空焚きとなる事を恐れ、焦り出すカン。

 一方、カンが自身の魅了の香りに反応しない事から勇者は若干焦りながらも、引き続き香りを放出する踊りを続けた。

その為、カンの中のお湯はどんどん蒸発していき、本当に空焚きになる直前となっていた。
  
「のう、勇者よ。そろそろ良いかの? 我は、空焚きにじきになりそうなんだが? 諦めて、魔王軍幹部及び取り巻きの美女達の洗脳を解くのだな」
  
「……何でだよ! 何で僕の魅了の香りが、ヤカンに効かないんだよ!」
  
「ふっ、そんな事なら分かりきったことだ」
  
カンは勇者に対して、まるで全てを悟っているかのように声を出した。
  
「魔王に、不思議な踊りが効くと思うな!」

『いやいや、〝ヤカン〟だからでしょ』
  
「確かに……魔王に即死魔法が効かないように、魅了なんていう術が効くわけがない……そんなこと、RPGの常識じゃないか……ハハハ……僕は何て間抜けだったんだ」

 踊りをやめた勇者は、思わず乾いた笑いを口からこぼす。

 カンはその様子を見て、この戦いに勝ったと何故か思ってしまった。勇者は、ほんの少し恥をかいただけであっただけだと言うのに。
  
「そうであろう。分かったなら、先ずは我の下の火を止めるのだ。そろそろヤカンの底が黒くなってきそうなのだ」
  
「やはり魔王には、小細工無しの勇者の全力、即ち〝会心の一撃〟がお約束だよね……みんな! 僕に力を!」
  
「ん? 心が折れた訳では、なかったのか?」
  
 勇者は叫びながら、天高く聖剣を掲げた。そして聖剣に向かってハーレムメンバー達は、何も言わずに自身の魔力を注ぎ始めた。

そして、全ての魔力を注ぎ込んだ者から順にその場に倒れこんでしまった。
  
「お主、一体何を……」
  
「勇者の一撃と言ったら、仲間の力を合わせたものがお約束でしょ? 浪漫だよねぇ、こう言うのってさ」

 カンに向けて嗤う勇者。
  
「仲間はその代わりに、全員倒れておるようだが? しかも泡吹いている者や、吐血している者すらいるではないか」
  
「当たり前だろ? 全部の魔力を捧げるように、命令したんだから」
  
 勇者は笑いながら、仲間をまるで道具としてしか見ていないかのように、言い捨てた。

『召喚されて、そこまで間もない上に、特にそっちの世界で闇堕ちイベントは、その勇者君には発生されていないみたいだね。と言うことは、初めから異世界召喚前から、既に堕ちていたみたいだよ。カミペディア情報ね』

「貴様……」

 イチカの言葉がまるで聞こえていないかの如く、カンは目の前の勇者に集中していた。

 そして、その怒りを表す如く、ボディはカタカタを震えていた。
  
「それが勇者のすることかぁあああ! 腐れ外道がぁぁあああ!?」
  
「勇者だからね! 僕は、この世界においての救世主! 何をしたって、許される! 今度は、跡形もなく消しとばしてやる! そうすれば、耐えられないでしょ!」
   
 勇者は、聖剣に集めた仲間の魔力を天に向かい放った。すると天より激しい雷が聖剣に落ちた。
  
「これで終わりだぁあああ! 〝雷鳴轟光覇王天撃僕が考えた最高にカッコいい技名〟!」
  
 勇者の渾身の一撃を前にして、カンは呟く。

魔王のヤカンをあ、これあかんヤツ……舐めるなよ?マジどうしよう
  
 そして、勇者の一撃は振り下ろされる。
 

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