イセカン!?〜異世界の空き缶に転生した我だけれど、諦めずに魔王に成ってみせるカァアン!〜

イチ力ハチ力

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第51話 無理矢理蓋を閉めたら大体潰れるよね

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「アルミ箔では、形が定まらないハクゥウウ。むしろ、何故立っていられるか不思議でしょうがないでハクゥウウ」
  
「形状によって、語尾まで変わるの? ヤカンの時もそうだったけど」

「そこは、単なるノリだな」

「……吹いたりすると、どうなるかな? フー!」

 カンの言い方に、若干の苛立ちを感じたイチカは、おもむろにカンのアルミ箔ボディの中に向かって、息を吹きかけた。
  
「ぼふぁ!? 我のボディを、膨らますでないわ!? 見た目が紙風船の様に、なっておえるではないカァアアン!?」
  
「からのぉスゥ!」

 そして、ボディの中の空気を吸い出すと、カンの身体は、齧られたリンゴの芯の如き姿と化した。
  
「吸うでないぃいペコペコカァアン」
  
「自分をしっかり持て! カンは、空き缶としての矜持はないのか!」
  
「貴様が、遊んでいるからだろうが! 空き缶としての矜持を説くのであれば、我を早く元の空き缶に戻すのだ!」
  
「え? 元に……戻す?」

 カンの言葉に、イチカは首を傾げる。
  
「……え? 何なのだ、その反応は」
  
「だって、100万MP支払い終わったの?」
  
「……ガチ設定だったのカァアアアアン!? そこは、いつもの冗談で済まさないのカァアン!?」

 何だかんだと言って、イチカの悪ふざけだとたかを括っていたカンは、風龍召喚の代償となる100万MPの支払いが、割とガチっぽい雰囲気をイチカからだされると、情けない声をだしていた。

「まったく、しょうがない空き缶だなぁ。そんなペコペコするなよ」

「へこへこであろう、そこは。だがしかし、何とかして欲しいのだ!」

「反省の色が見えない空き缶だなぁ。ただ、たしかにそのままじゃ、次の転生に耐えられるかどうかわからないよね」

 少し考え込むイチカは、唐突に立ち上がると、書斎を出て行った。そして、数分後に再び書斎へ戻ってくると、手にはクーラーボックスが握られていた。
  
「何のだそれは?」

「クーラーボックスだよ?」

「それは見れば分かる。それを持ってきた意味を、我は聞いておるのだ」

「このクーラーボックスの中には、かき氷用にふっわふわに削った氷が入ってるんだよ」

 カンに見えるようにクーラーボックスの蓋をイチカが開けると、確かにふっわふわのかき氷を作るのに良さそうな、削られた氷が満杯まで詰められていた。
  
「今、削ってきたのか?」

「そうだよ」
  
「それは、ご苦労だな。しかし、かき氷を食すのであれば、器とシロップが無い上に、そもそもクーラーボックスにそこまで入れる必要ないのではないか? いやいや、そんなことより、我のボディと100万MP支払いの件をだな」
  
「そんな事だとぉおおお!?」

 突然、イチカ激昂。
  
「その貧弱ボディにサラサラ氷でも詰め込んで、寒耐性のレベル上げてやんよ!」
  
「ちょ!? やめべぶし!? やめよぉおおごばごばごばぁあぁぁ……」
  
 "カンは、寒耐性がLv.2にレベルアップした!"
  
「レレレレレベル嗚呼嗚呼ップぅううしておるぅうう」

 内部にふわふらの氷を、これでもかと詰められた上に、カンはクーラーボックスの中の氷の上に乗せられた。

ガタガタとボディを震わせながらも、世界の声が知らせてきた〝レベルアップ〟の知らせは、しっかりとカンに響いた。
  
「凍えてるの? 寒耐性のレベルが上がったってのに、情けないなぁ」

「身体の内部に氷を詰められるという、言葉だけで聞いたら、猟奇的な事をしておいて良く言うカァアァン」
  
「唐突に〝アイスクラッシュ〟!」

 イチカは、本当に唐突にカンが入っているクーラーボックスをの蓋を閉めた。
  
 「けぺらアイスゥウウウウウウン!?」

 実はふわふわな氷で満杯に見えたクーラーボックスの中には、嵩上げの為に冷却剤が見えないように入れられており、イチカが蓋を閉めると、カンは冷却剤と蓋に挟まれ見事に潰れた。
  
 "カンは、アイスクラッシュにより100ダメージ!"
 "カンは、体力が0になった!"
 "カンは、常時発動M型(Lv.9)の効果により体力が9に戻った!"
  
「いきなりすぎる上に、最初から我を潰すつもりであったなぁああ! それはもう、いろいろ砕けたカァアァン!」
  
「ボディのアルミ箔が、ズタズタだね」
  
「ボディがぁああ破れてるぅうう。そして100万MPの負債に関して、話が何も進まないカァアアン」
 
 ズタボロになりんがら、嘆くカン。

「そもそもが、空き缶の蓋材と底材に、アルミ箔を円筒にしてテープで止めただけじゃ、容器とは言えないよねぇ」
  
「そんな雑な作りだったのカァアアン!? そんな事当たり前な上に、テープで止めてただけだったとは……」
  
「それはそうと、風龍の力を具現化した代償として、100万MPが払い終えないとペナルティアルミ箔ボディは消えないんだけども、カンはコツコツ返していくつもり?」
  
「三分で1MPしかストック出来ないんじゃ、一体何日かかる事やら……実質無理では?」
  
「諦めたら、それまでずっと、アルミ箔ボディテープ止めVer.だけどね」
  
「空き缶より、遥かに貧弱ぅうう!?」
  
「そこでだ、まだまだいろんな世界へと旅立つのにそのボディでは心許ないだろ?」

 ニヤリと含み笑いをしながら、イチカは尋ねる。
  
「それはそうなのだが?」
  
「カンの代わりに、こちらで100万MPを肩代わりしてあげようか?」
  
「なぁにぃいい!? と、言うとでも思うてか。そもそもあの声はお主だった上に、この空き缶アルミ箔ボディも適当にお主が作ったと、吐いておったではないか。お主が、我で遊んでいるだけなのであろう? さっさと我を戻せば良いのだ」
  
「支払いが滞ると、次のペナルティではボディがティッシュになるみたいだよ」
  
「どんな職人技カァアアアアン!? 意地になって、その設定をゴリ押ししようとするでないわ!」
  
「さぁ、どうする?」

 あくまでしらばっくれるイチカに、カンは選択を迫られる。
  
「選択肢が、なさ過ぎるが……兎に角、先ずはアルミ缶ボディに戻らぬ事にはどうにもならんし、お主に任せることにするしかなさそうだな」
  
「ふ、チョロいな」
  
「ん? 今なんと?」

 しっかり難聴系空き缶なカンである。
  
「なんでもないさ。では100万MPを肩代わりしてあげるから、次に転生した時にはアルミ缶ボディだよ」
  
「そうか、今すぐ戻れるわけじゃないのだな」
  
「何言ってるの? 今すぐ戻れるよ」
  
「ん?……って事は」
  
メタルクラッシュクーラーボックスの蓋を閉めた!」
  
「ぺきゃらカァン!?」

 今度は、しっかりトドメを刺されたカンであった。
 
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