イセカン!?〜異世界の空き缶に転生した我だけれど、諦めずに魔王に成ってみせるカァアン!〜

イチ力ハチ力

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第91話 尋ね人と出会う

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「日常だと思っていたことが、実は非日常の一部だと分かったとき、驚きは半端ないよね」
  
「ここは……イチカの書斎? と言うことは……転生しておるだと!?」
  
「うん、おかえり。見事な木っ端微塵だったよ。まさに見本とも言えるような、バッドエンドだったね」
  
「ちょ!? 足木先生が我を助けて、部屋を脱出したのではないのカァン!?」
  
「いやいや、見知らぬ喋る空き缶を助ける暇があったら、まず自分が逃げるでしょ。というより、足木先生にカンは敵の死角だとおもわれてたよ、最後」
  
「そうであったカァアァン!?」

 カンは、足木の部屋の爆発に巻き込まれ、予想通りにイチカの書斎の空き缶に転生していた。
  
 ・・・・・・・
 名前:カン
  
 称号:
 風龍に認められし空き缶

 種族:空き缶(Lv.16) 1UP! 
  
 体力:26(最大26) 1UP!
  
 魔力ストック:10(最大10)
  
 ちから:0 
 すばやさ:0 
 かたさ:2
 まりょく:12 
  
 ※補正
 『魔沼ヨゴレ呪い』効果により魔力増加(+2) 
 『風龍に認められし空き缶』効果により魔力増加(+10) 

 技能:
 言語理解(全異世界の誰とでも話が出来る) 
 常時発動M型(Lv.15) 1UP! 
 熱耐性(Lv.2) 
 寒耐性(Lv.2) 
 ヨゴレ耐性(Lv.3) 
 風龍の戯れ(Lv.3) 
 魔力暴走(Lv.2) 
 内部空間保持(潰れた時も空き缶内の空間を保持出来る) 
 魔力属性【風】 
 魔風制御 
 風龍制御(Lv.1) 
 空き缶浮遊(Lv.1) 
  
 状態:
 魔沼ヨゴレの呪い(Lv.2) 
  
 現在地:
 イチカの書斎
 ・・・・・・・
  
「大分、空き缶レベルがあがってきたね。レベルが上がったところで、どうなのかっていう事はあるけども」
  
「それを言っちゃぁお終いカァン。それと、先ほどまでの世界のことは、完全にスルーカァン。割と、衝撃の展開が続いたのカァン」

 カンの成分表示を見ながら、イチカはレベルアップを確認していたが、ふと難しい顔をしながら呟く。
  
「そろそろカンは、他の取得しているレベルも上げるべきじゃないのかと思うんだ」
  
「本気で、さっきの世界はスルーなのカァン? 結構、気になるフリだけ聞くだけ聞いて、帰って来てきてしまったんだが?」

 まだ、先ほどの異世界を気にするカン。
  
「いいよいいよ、そのうちまた喚ばれるか、喚ばれなかったら強制的に転移させるから」
  
「我の心の準備は考慮なしカァン!?」
  
「取り敢えず、先ほどの世界だと今のカンじゃ全く活躍できないしね。もう少し自分を鍛えてもらおうかなと」
  
「と、言うことは?」
  
「こういう事だね。ほぉれ、強制転移ポチッとな!」

 スタタァンとノートパソコンのキーボードをイチカが叩くと、カンの底材の下に魔法陣が出現した。 
  
「やっぱりカァアアアアン!?」

 そして、カンは新たな異世界へと、いつも通りに転生された。
  
「痛っ!?」

 そして、すぐさま何者かに直撃した。
  
「ん? 何かに当たった気がしたカァン? まぁ、そんなことよりもイチカめ! ここはどこなのカァアアン! 毎度毎度、適当な感じに転送しよって!」

 何かに当たったことなど、全く気にせずにカンはイチカへの文句をたれていた。しかし、そこは気にするべきだったのだ。

 何者に当たっていたのかを。
  
「……教えてやろうかい?」
  
「……ん? おぉ、おぬしは誰カァン?」

 カンは、声の聞こえたほうへと視線を向けると、そこには玉座に座る妙齢の女がいた。
  
「ここは、氷の美魔女が支配する国の、玉座の間だよ!」
  
「自分で美魔女って言っちゃうカァン!?」
  
「何か問題でもあるのかい! それに、いきなり美しい私の頭の上に転移して来るとは良い度胸だね。この空き缶風情が! 永久に凍らせてやるか、粉々に砕くかどっちが良いんだい?」

 怒りの表情の中に、嗜虐的な瞳でカンを見下す氷の女王。
  
「どっちも嫌だが、永久に凍らせられるのは勘弁願いたいカァン!」
  
「おや? 砕かれる方良いと言うのかい? 変わった空き缶だね。普通は死ぬ方が、嫌だと思うものだがね」
  
「まぁの。砕かれても、転生するだけだし問題ないカァン」
  
「ほほう」
  
『あちゃぁ……カン、アホなの? 何気に自分の最大のチート能力をバラしてしまって、どうするのさ。しかも、人の嫌がることを喜んでやりそうな氷の女王に教えちゃうなんて……はぁ』
  
「あ……砕かないでほしいカァアアァン! 是非とも砕かないで欲しいカァアアン!」
  
「さすれば、氷漬けにしてやろう!」
  
「そっちじゃないカァアアアアン!?」
  
 そして時は流れ、カンの声が途絶えてから一ヶ月が経ったのだった。



『さて、一ヶ月も魔法で氷漬けにされているんだから、そろそろ寒耐性のレベルも上がったかな?』

 氷漬けにされたカンを、イチカは特に助けることなく放っておいており、時折こうしてカンの様子を観察していた。
  
『どれどれ……おぉ』
  
 "カンは、寒耐性のレベルが1レベル上がっていた!"
  
『たった1レベル……まぁ、アレだよ。ドンマイ!』
  
「…………」
  
『それにしても、返事がないなぁ。ただの屍のようだね』
  
 雪の美魔女の怒りかったカンは、氷の魔法で氷漬けにされた上に、城から投げ捨てられてしまっていた。

 そして、城門の前で無残にも転がっていること一ヶ月、その絶望的な状況に変化が訪れる。

 そこには、カンを見下ろす一人の青年の姿があったのだった。
  
「本当に……本当に占いの通りだ……やっと……やっと会えたね……」
  
「…………」
  
「喋る空き缶ぅううう!」
  
 カンを見下ろしながら、怒りに震える叫び声をあげたのは、かつて自身の魅了の香りでハーレムを築いていたゲス勇者だった。

 しかし、今の姿は勇者とは思えぬような酷く見すぼらしい格好をしており、周りには誰もいなかった。
  
「お前のせいで僕の夢が……ハーレムが……」
  
「……」
  
「聞いているのかい! この空き缶がぁ!」
  
 ゲス勇者は、やっとの思いで探し当てたカンを目の前にして冷静さを欠いてた。

 そして、氷漬けにされているカンが喋る事が出来ないことに気付かずに、思い切り氷漬けのカンに向かって聖剣を振り下ろしたのだった。
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