神運営と魔王様〜ゲームのバグは魔王様!? ここが何処であろうと、我は魔王なのである!〜

イチ力ハチ力

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始まりの日

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「異世界の勇者よ……貴様も道連れだな……」

「……俺は……絶対に……帰るんだ……」

 神の一柱と、異世界から召喚されし勇者の男は、共にお互いの胸を貫き絶命した。

 そして、この世界は救われた。

 一人の異世界から来た男の命と引き換えに、この世界に平和が訪れたのだった。



〝異世界の勇者よ、よくぞこの世界を救ってくれました〟

 青年の魂を掌に浮かせ、穏やかな笑顔で女神は語りかける。

〝貴方は【神殺し】に至った。そして貴方の力は既に、神の領域に足を踏み入れています。その為に貴方の魂は、元の世界の輪廻の輪には、もう戻れることは出来ません〟

 神殺しを成した男の魂は、普通の人間の位階ではなくなっていた。

〝その為、今回の世界を救った見返りとして、その高まった魂の力を完全に神の領域まで引揚げましょう。そして、新たなる創造神として自分の世界を創ることを、女神レカの名の下に許可します〟

 そして、男は新しき創造神へと至り、自分の世界を創造した。



「魔王様ぁ、また挑戦しているんですかぁ?」

「あぁ、もうこれは日課みたいなものだからな」

 男は、自分の世界を創造して一万年後、何故か〝魔王様〟になっていた。



 世界初のフルダイブ型VRMMORPG『the Creation Online』が世界中で同時に発売され、瞬く間に全世界へと広がった。

 このゲームは全世界単一サーバーでプレイすることができ、言語は同時翻訳でゲーム内は単一言語で会話をしているかの様だった。

 更にゲーム中は、現実世界の肉体は完全休養状態となった為、就寝時にVRゲーム内へとログインし、朝に起床するというサイクルでプレイすると、翌朝にゲームによる疲労は残らなかった。結果として、学生のみならず社会人も仕事に差し支えなくプレイする事が出来たことから、発売時から社会現象を起こした。

 the Creation Onlineの世界は、正に神が創造したかのような世界であり、五感全てが現実と全く同じ感覚でプレイすることが出来た。

 また痛覚に関しては、感じる段階を設定で変えることが出来た為に、誰でも安心してプレイする事が出来る上に、 敢えて痛覚を残しリアルさを追求するプレイヤーが現れたりと、様々な人達に人気は浸透していった。

 そして、このゲームを始めたプレイヤーは、ある事を体験すると総じて驚いた。

 リアルな世界もさる事ながら、驚くべき事にゲーム内のNPC非プレイヤーも、まるで生きているかのように受け答えを行い、自立した行動をとっている様に見えたのだ。

 その為、ファンタジー溢れる剣と魔法の世界に、プレイヤーは現実を忘れ酔いしれた。

 更には、ゲームの運営においても、この時代においてはあり得ない程の完璧なシステムだった。

 チート不正行為は不可能であり、アップデートは都度行われるが、メンテナンス後にバグの発生も起きず、豊富なイベントの開催。

 様々なジョブとスキルや魔法で、他のVRMMORPGの追随を許さない圧倒的な人気の高さを保ち続けていた。

 この『神の創りし遊戯』とまで呼ばれるフルダイブ型VRゲーム『the Creation Online』は、発売からすでに30年が経過しながらも、全世界で未だに人気が衰える事のない化け物VRMMORPGとなっていた。

 その為、プレイヤーはこのゲームの運営を〝神運営〟と呼んだ。



「さて、今度は上手く世界の壁を超えられるといいが……『異世界間転移魔法陣』『起動条件設定』『転移目標:人型生命の居る異世界』『帰還目印アンカー:魔王城』『帰還時間設定:転移時同時刻』『誤差範囲:五分』『異世界生存条件自動適応』『起動』」

「魔王様、いってらっさぁいぃ」

 魔王様と呼ばれた黒髪黒目でボサボサ頭の目つきだけは鋭い男は、自身配下である獣人の少女に見送られながら、スーツ・・・姿で魔方陣の光に包まれ、消えていった。



「黒羽本部長! システムに対する不正アクセスを検知したとの連絡がありました! 何処からか、〝the Creation〟へ正規ログイン以外の方法で、入り込んだとの事です!」

「なんだと!? そんな事、これまで起こった事もなかったぞ!」

 都内某所、〝the Creation Online〟の運営会社ゴッズの運営本部では、創立以来の事件発生に慌しくなっていた。

「しかも、不正ログイン後、反応が消失し、正規ログインプレイヤーに紛れ込んだ模様です!」

〝the Creation Online〟の運営本部では、初めて不正ログインを許した事に対する確認作業に追われていた。

「おい! 技術保全部の見解はどうなっている!」

 黒羽本部長と呼ばれた四十代程のロマンスグレーの髪の男が、部下に確認を取っていた。

「黒羽本部長、奴ら技術保全部が、まともな返答して来た事ありました? 奴ら淡々と、今起きている事を、機械のように報告してくるだけですよ」

「そう言えば、そうだったな……取り敢えず、奴ら技術保全部に引き続き不正ユーザーの捜索を続ける様に依頼を出しておけ。システム管理以外の事は、依頼せんと何もしようとせんからな」

「分かってますよ、上井! さっき、依頼書の出し方教えたろ! 依頼書作成して、黒羽本部長と射内統轄Mgr.に承認依頼出しておけ!」

「はい! 分かりました!」

 上井と呼ばれた眼鏡をかけた新入社員の女性は、先ほど先輩社員に教えられた通りに、パソコンで依頼書の作成を始めた。

「さぁ、不正ユーザーさん。目立って、さっさと通報されてくれないかな?」

 新入社員の女性に指示を出した二十代後半に見える長髪の男性社員は、ゲーム内やネット上の掲示版や、通報情報等を横目でチェックしながら呟いていた。



「……異世界に、着いたのか……?」

 魔王は、転移魔法陣から外へ出ると一人呟いた。転移魔法陣は、魔王が魔法陣から出ると跡形もなく消えていった。

「やけに魔力濃度が高い所だな。そのおかげだろうが、身体は寧ろ調子が良いくらいか。魔法は使えるか? 『火の理』『灯し火』」

 自身の指先にきちんと制御された火が灯っている事から、魔王はこの世界においても、魔法が使える事を確認していた。

「スキルはどうだ?……『我強靭成り身体強化』」

 今度は術者の身体を強化するスキルを唱えると、全身に力が隅々まできちんと力が漲り、少し試しに動きながら、徐々に激しさを増していったが、魔王の術の制御は完璧に出来ていた。

「ふむ、スキルも問題なしと。取り敢えず、人型のいる所まで、転移してみるか……『検索転移魔法陣』『起動条件設定』『転移目標:の多く集まる場所』『起動』」

 そして異世界を訪れた魔王は、何処かの草原から、人型生命体が多く集まる場所に、検索転移魔法陣を用いて転移を行ったのだった。



「……ここは……」

「ようこそ! 『the Creation Online』の世界へ! 初めてログインされた『冒険者』の方は、こちらのチュートリアルクエストを受けて下さいね!」

 魔王が転移したこの世界は、人気VRMMORPG『the Creation Online』のなのであった。
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