ダークな乙女ゲーム世界で命を狙われてます

夢月 なぞる

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間章(ダイジェスト版)

あたしの王子様

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さあ、仕上げだ!
※この話はコメディです。
※???視点
********************************************

――――あの日のことはあたしにとって運命だったの。

 あれは、中学二年生の時のこと。
 その日あたしは友達に会うため、その子の通う中学の文化祭に遊びに行っていた。
 その子はあたしの小学校時代の友達で、小学校を卒業と同時に引っ越して中学が離れ離れになってしまったのだ。

 久しぶりに会った彼女は元気そうで嬉しかったけど、困ったことがおこった。
 彼女のクラスはメイド・執事喫茶をやっていた。
 彼女はその給仕係をしていたのだが、仕事中に器を割った拍子にその破片で手を切ってしまった。
 結構深いみたいで血が止まらず、すぐに保健室に連れて行きたかったのだが、交代要員がなかなか帰ってこなかった。 
 喫茶は思いのほか繁盛していて、とても抜けられない。
 
 責任感の強い娘だったから仕事を放り出せないとなかなか保健室に行かなかった。
 あたしは彼女を説得するため、給仕役を引き受けた。
 繁盛中だったので付き添いは不要と保健室に心配そうに行った彼女を見送り早速仕事に取り掛かる。
 給仕など初めての経験で不安だったけど、頼めるメニューは2種類のセットしかなく案外すぐ慣れた。
 メイド服も思ったよりも可愛く、お客さんも彼女のクラスメイトもみんな褒めてくれた。

 だから、ちょっとだけ調子に乗りすぎたのかもしれない。
 あたしは注文されたセットをお盆に乗せて運んでいた時だった。
 突然横合いから出された足につまずいて、お盆ごとひっくり返った。
 金属製のお盆は激しい音を立てて、セットメニューを教室の床にぶちまけてしまった。
 その大惨事に顔を青くしていると、横合いから突然肩を掴まれた。

「おいおい、ねえちゃん。痛えじゃねえか!」

 見上げる先にいたのは赤ら顔の中年男性だった。
 無精ひげが伸び、でっぷりとした体は大きく、顔は赤く目はどろんと濁っていた。
 明らかに酒が入ってるらしくその息は酒臭かった。
 なんでそんな酔っぱらいが中学の文化祭に入ってくることができたのか。
 もともとこの文化祭にはあたしを含め部外者の立ち入りを禁止していない。
 近隣の住民も呼ばれており、文化祭に大人の姿は珍しいものではなかった。
 とはいえ安全面の問題から出入り口には警備員が立っていた。
 それなのにどうしてこんな男が入って来れたのか。
 後で聞いた話では、男が入ってきた時間にたまたま警備員が交代の時間で見逃してしまったらしい。
 だが、そんなこと知らないあたしはあまりの恐ろしさに固まってしまった。

「ちょっと、なにがあったの?」

 物音に気付いたメイド喫茶のスタッフの生徒がわらわらと集まってくれた。
 だが、あたしの前の男の存在に気づくと途端、誰も一定の距離以上近寄ってこなかった。そのうち一人のメガネを掛けた、たしかそのクラスの学級委員長で喫茶店のマスターという設定の男子生徒が恐る恐ると言った感じで前に進み出てきた。

「……あ、あの旦那様?一体何がありましたか?」
「ああん?お前が、ここの責任者か?」

 酒臭い男に凄まれて学級委員長は目に見えて顔を青くする。頼りなく即答を避けた言葉にあたしは先程丁寧に接客について教えてくれて頼もしいと思っていた彼の評価を大幅に下げざるを得なかった。なんとか怒鳴られながらも肯定した委員長に男は謝罪と慰謝料を要求した。
 あとから思えば、中学生にむちゃくちゃな話だが、その時は誰も男の勢いに怯えていた。
 男の言い分はあたしが踏んだ男の足の骨にヒビが入り、そしてひっくりかえしたお茶が掛かって火傷したという。
 そんな馬鹿な話はない。
 大体いくらお盆を抱えていたとは言え、あたしは足元くらい見ていた。あの男が故意にあたしの前に脚を出したことなんて、明白だったし。大体真横にいた男に真正面に落ちたお茶がかかるわけがない。
こんなのは明らかに不当要求だ。
 はっきりおかしいと言って突っぱねて、先生か警察に訴えればよいだけ話だ。
 しかし、憤っていたあたしに予想外の展開が待っていた。

「わ、分かりました!」

 あたしは目の前の光景に真っ白になった。
 あろうことか男の威圧に恐れをなした委員長が店の売上金を取りに行ってしまったのだ。
 それを見た他の生徒たちもジリジリとあたしと男から離れていく。
 一体何が起こったのかわからなかった。
 気がつけば喫茶店の中にいた人はみんな逃げていた。
 信じられなかった。その時喫茶室となっていた教室には大勢の男子生徒がいた。
 女子が男に怯えるのは仕方がないとしても、どうして男子の一人もあの男に立ち向かおうとしないのか。
 あたしが助けを求めるように周囲を見ても、目のあった男子という男子はあたしから目を逸した。
 誰もあたしを助けてはくれない。涙が出そうだった。
 さきほどまであたしをちやほやして困ったことがあったらなんでも言えとか言ってたのに。
 
 彼らの中に関わり合いになりたくないとばかりに、こちらを迷惑そうに遠巻きにする視線に気づいて、あたしは不安に襲われた。
 あたしが間違っているのだろうか、とすら思う。
 男の要求は明らかに不当だ。ただ大人を呼んで対応してもらえばよいだけなのに。
 後で知ったことなのだが、たまたまそこに見回りの教員の姿はなく、遠くまで呼びに生徒が走っていたが、人ごみの多さで中々探し当てられなかったということだった。
 色々な不幸が重なってのことだった。
 だが、そんなことを知らないあたしは四面楚歌の状態に思わず涙が出そうになった。
 しかし、状況は待ってくれなかった。
 戻ってきた委員長からお金を受け取った男が突然あたし、手首を掴んだ。

「お前は一緒にこい!特別に俺の酌をするなら許してやる」

 男のまるで舌なめずりせんばかりのいやらしい目にあたしはゾッとした。
 触れられている手首から嫌悪感が押し寄せる。
 だが、中学生の女子でしかないあたしの力は大人の男の力に対抗できるものではない。
 腕を振り回すようにして身をよじるが、男の手は外れない。

「やだ!いや!行かない!」

 抵抗して声を上げているのに周囲の人は見ているだけで何もしてくれなかった。
 さっきまで可愛いとか、仕事ができるとか言ってちやほやしていた男子たちも視線を反らせたまま、何もしてくれない。
 暴れても男の力は弱まることはなく、徐々に引きずられる。
 あたしは状況の悪さに絶望しそうになったときだった。

 「ぎゃっ!」

 突然男が声を上げたかと思うと、あたしを放り出した。 
 あまりに突然のことにそのまま尻餅をついた。
 痛みに一瞬だけ顔をしかめていると、突然上からハスキーな女の声がした。

「…おっさん、そのへんにしときなよ?可愛い女の子に乱暴すると嫌われるぜ?」

 驚いて見上げると男の手をひねり上げる形で立つ派手な衣装の男の背中が見えた。
 スラリと高い身長に青いロングコート、赤のメッシュの入った髪を無造作に逆立て固めた派手な男だ。 化粧もしているらしく真っ赤な唇に濃いアイシャドウが印象的だ。だが不思議とその濃い化粧は男に似合っておりあたしは思わずその美しさに目を奪われた。
 だが、先ほどの女の声は一体どこから聞こえたのか疑問に思っていたら、男が腕をひねられたまま暴れだした。

「な、何なんだおま……ぎゃあ!いてええ!お前、俺にこんなことしてただで済むと…」
「刑法二百三十四条」

 そのハスキーな声は男から、いや長身の女性から発せられていた。
 派手な外見とは裏腹に、余裕すら感じる笑みを浮かべた女は冷たい視線で男を見下ろしている。

「威力を用いて他人の業務を妨害する罪。3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる…偽計業務妨害罪」
「え?」

 男は何を言われているのかわからない顔になった。
 そんな男をゴミでも見る目つきで青年姿の女性は見下ろした。

「わかってんの?おっさん。これ立派な犯罪だぜ?酔っ払ってるからって許されると思ってんの?」
「ええ?」

 その言葉に酔っ払っていたらしい男の顔が一気に青ざめた。

「お、おれはそんなつもりじゃ…」
「それ、警察でも同じこというつもり?」
「ひっ!」

 そこまで言われて男はさすがの事態のまずさに気付いたらしい。
 男は暴れて腕を外すと脱兎のごとく逃げて行った。
 後で聞いた話、逃げようとして教師たちにつかまった男は普段はおとなしいのだが、失業したばかりでやけ酒をあおりたまたま通りかかった中学校の楽しそうな文化祭をめちゃくちゃにしてやりたくて学校に忍び込んでいたらしい。やくざでもなんでもないただの市民だった。
 
「…ま、中学校の文化祭での喫茶でその法律が適応されるかは知らないけどね」

 だがそんなことも知らないあたしはぺろりと舌を出してつぶやいた彼女を呆然と見つめていた。
 彼女のあまりに華麗な撃退劇に誰も動けずにいる中、くるりと男装の女があたしに向いたかと思うと、尻餅をついたあたしに恭しく傅いた。
 それからにっこりと魅力的な笑みを浮かべて手を差し伸べた。

「大丈夫でしたか?お嬢さんシニョリーナ

 その笑みにあたしは見惚れて思わず、顔に熱が集まるのを感じた。
 魅惑的なハスキーボイスと美しく着飾った男装姿にあたしは相手が女性であることを忘れていた。
 彼女は呆然とするあたしの手を取り、起き上がらせてくれた。
 その時に男につかまれて赤くなった手首を目にした男装の麗人は一瞬だけ顔をしかめた。

「……まったく、守るべき女子に怪我をさせるなど、男の風上にも置けないな」

 彼女はそっとあたしの赤くなった手首を手で包み込んでくれた。
 柔らかく暖かな感触に、あたしは思わず涙がぼろりとこぼれた。
 怖かった。誰にも助けてもらえず、あの男に連れて行かれそうになった。
 絶望感に沈んだあの時の感覚が忘れられなくて、体が震えた。
 そんなあたしを一瞬だけ目の前の女性は驚いた顔をしたが、すぐに柔らかな笑みを向けてきた。

「泣かないで、親愛なる人ラ・ミア・カーラ

 優しく囁かれたあと、女性はあたしの頬に流れる涙をぬぐってくれた。
 それから、赤くなった手首を持ち上げ、優しくキスを落とした。
 周りから黄色い悲鳴が上がったが、あたしはそれどころではない。
 その仕草があまりにも色っぽくって、あたしは思わず涙を引っ込め、赤面した。

「あ、あの!」
「ああ、すまない。貴女があまりも可愛いのでつい…」

 歯の浮くような言葉を並べ立てる男装の麗人にあたしはただ見とれるしかなかった。
 一つ一つの仕草が優雅で洗練され、全く無駄がないように思えた。
 女性であるのに男よりも強く優しい。
 まさに完璧な一つの理想像がそこにあった。

「あ、あの。…あなたは?」

 呆然と名を訪ねたとき、女性の眼が一瞬光った気がした。
 まるで待ってましたとばかりに、飛び切りの笑顔で答えた名前は、明らかに外国の名前だった。

 確かに女の姿は、髪色も明るいが、顔だちは日本人だ。
 名前とのギャップが激しく、首をひねってしまうあたしの前でそれまで向き合っていた体をくるりとあたしたちのやり取りを、固唾を飲んで見守っていた観衆に向けた。

「さて、皆様。余興は楽しんでいただけたでしょうか?」

 魅惑的な笑顔の彼女が観衆に向けた言葉に、辺りがざわつく。
 かくいうあたしも意味が分からず、呆然とする。
 置いてけぼりを食らうあたしたちに男装の麗人はきれいな仕草で頭を下げた。

「時は十四世紀。場所はイタリア、ヴェローナ…」

 流れるような説明に呆気にとられる。
 芝居がかかった仕草で、まるで廊下が舞台とでもいうようにゆっくりと歩く彼女の姿に皆が釘付けになる。

「対立を激しくする両家に生まれた悲劇の若き恋人、その名は…ロミオとジュリエット!」

 芝居がかった仕草で群集の一部をかき分けた彼女が一組の男女を引っ張り出した。
 彼女に腕を取られ、同じような姿をした二人が戸惑うように舞台に引き出される。
 迫真の演技の彼女と違い、彼らは素のようで激しく動揺している。
 しかしそんなことお構いなしに、彼らを舞台の中央に進ませた。

「さあ、ロミオ。我が生涯の友よ。皆にうら若き恋人を紹介してはくれまいか?」

 突然のことに引きづり出された二人は困惑していたが、神がかり的な演技を見せる彼女の助けもあって、体育館でするというクラスの演劇の宣伝をたどたどしくも終わらせた。
 それを満足そうに見守り、最後に三人でお辞儀すると、群衆から割れんばかりの拍手が巻き起こった。
 
「それでは皆様、引き続き鞠菜中学文化祭をお楽しみください。
 ですがくれぐれもわが舞台のお時間をお忘れなく」

 男装の麗人のウインクつきの最後の一言で、その場にいた女性陣みんなが声を上げる。
 輪を作っていた群衆が一気に動き出す。
 彼女たちのお目当てはあたしを助けてくれた男装の麗人のようで彼女に向かって人の波が作られていた。

 しかしあたしはその流れに乗れず彼女に近づくことができなくなった。
 呆然としていると、治療を終えて戻ってきた友人に声をかけられた。
 話を聞きつけて慌てて戻ってきたらしい。
 無事を確認されたけれど、それもそこそこに彼女にあの男装の女性のことを聞いた。
 しかし、彼女はあれが誰なのかわからないという。
 話を聞けば、あの演劇をやるクラスはキャストをまったく公開せず行うらしく、役名だけではクラスの誰かわからないということだった。
 その後彼女の演劇を見に行けば、超満員の立ち見まで出るありさまで、入場が遅かったあたしはほとんど豆粒みたいな彼女の姿しか見れなかった。
 衣装やメイク、舞台装置は凝っていたが、演じ手が所詮素人で内容は実はあまり覚えていない。
 しかし、その中で彼女の存在は群を抜いて華やかだった。
 彼女が登場するたびに、体育館の中は黄色い声援に包まれ、たまにそれに答えた彼女の姿はまさにスターだった。
 あたしはそっと恩人の姿にうっとりした。

 誰も助けてくれない絶望的な状況に現れたあたしの王子様。
 彼女はそれまであたしをちやほやしていたのにいざという時には逃げ出した男どもではない、本当の王子様。
 颯爽と現れて、あたしを絶望から救い上げてくれた。
 貴女がいれば、あたしは…。

 ぱちりと目が覚めた。
 見上げるのは見慣れた寮の天井ではない。
 天蓋付のベッドは寮の時より寝心地はいいが、常に聞こえてきたルームメイトの寝息が聞こえない。
 そのことが少し寂しくて、あたしはそっと寝台から起きだし、窓辺に近づいた。

 まだ早すぎる時間らしく、闇夜の帳を降りたままだ。
 今までいた寮より高い位置にある天空寮の窓から見える景色は寮からのそれより雄大だ。
 それでも真夜中に近い早朝に星明りのみでほとんど何も見えない。
 あたしはそっともといた寮のある方角に目を向ける。
 すでに消灯時間は過ぎて久しい時間で建物の明りは見えない。
 だが、その方向に彼女がいることがわかるだけで胸が温かくなった。

「…環ちゃん」

 最初に出会った時はわからなかった。自分でも情けない。
 だって、彼女があまりにも変わっていたから。
 かつて見た華やかさはなく、どこからどう見ても地味な印象の女子高生が彼女だった。

 だから最初は、彼女は別人だって思った。
 だって学園の説明をしてくれたとき、身分差なんて事勿れ主義のことをいうのだ。
 ちょっと失望して、思わず最低なんて言ってしまった。でも最低なのはあたしだ。
 彼女のその言動に隠れた優しさを見逃しておいて、そんなことを言ってしまったんだから。

 昔からあたしは周りから浮いた存在だった。
 天然だと親しい人からは言われるけど、自分ではわからない。
 自覚がないから直しにくいけど、多分彼女はそんなあたしを心配してあんなことを言ってくれたんだ。 いじめを受けないよう苦言を呈してくれたんだ。
 やっぱり彼女は優しい。そして強い。
 ずっと学園での彼女を見ていたけど、この学園の生徒はお金持ちが多いせいなのか、結構陰口を叩く人間が多い。
 人を噂話などで貶め笑うクラスメイトたちの話の中で、彼女だけがそれに加わらず、孤高に存在している。
 そんな高潔な彼女を誤解していた自分が恥ずかしい。

 初対面、その瞳の強さにどこか懐かしさを覚えて、まさかと思いつつ、彼女の様子を見るためにわざと馴れ馴れしくしたり、追いかけてみた。
 初対面の人と仲良くなるのは得意だけど、彼女はなかなか打ち解けてくれなかった。
 馴れ馴れくするのを嫌がっていたのはわかってたけど、確かめたい思いの方が強かったから、彼女を追いかけて、追いかけた。
 そうして確信した。

 彼女はあの時の王子様だ。確かに外見は変わっていた。
 でもそれは外見だけだって、彼女の行動で確信したの。
 言いがかりをつけてきた上級生の気をそらしてくれたり。
 怒られても仕方がないイタズラを仕掛けても怒らなかった。
 飛んできた何かからあたしをかばってくれたり、数えても数え切れないくらい彼女はあたしを助けてくれた。
 あたしの王子様は変わってなんかいない。

 それに、数日前に起きた誘拐事件。うっすらと覚えている。
 細い光が幾筋も落ちる薄暗い空間で、何かとんでもなく危険な気配を前にこちらを庇うように立っていた姿。
 一瞬で夢みたいな光景だったけど、翔瑠くんも統瑠くんも環ちゃんは一人で逃げたっていうけど。
 あれは夢じゃない。多分彼女が助けてくれたんだ。

 それに比べて男の子は、と思ってしまう。
 やっぱり、男の子なんていざって時に結局助けてなんかくれない。
 三年前と同じだ。
 統瑠くんも翔瑠くんも年下だし、仕方がないとは思うけど、やっぱり男の子は当てにならないことに変わりはない。

 ふと、両親のことを思い出す。
 そもそもこの学園に来たのは両親の意向だ。
 彼らはこの学園の卒業生で、ここで出会って結ばれたらしい。
 娘のあたしもこの学園で運命の相手を見つけろ、とそれとなく言われた。
 普通、娘に彼氏を作れなんて父親がいうものなのか。
 まあ、今でも万年べったりラブラブの二人を見ていると羨ましい気はする。
 でも、ママにとってのパパみたいな人が早々見つかるとは思っていない。
 運命なんて結果論だ。
 これから出会う可能性は否定はしないけど、積極的に動く気はさらさらない。
 もし出会えなくても、今時結婚しない女子も増えてるし、普通に遊び友達ならともかく伴侶としての男の子なんて考えられない。当てにできないもの。

(…やっぱり、女の子の方が頼りになるもの。彼氏なんていらない)

 ――――ちゃり。
 不意に胸元で僅かな金属音が聞こえる。
 それがまるで、自身の思考を否定するように鳴った気がした。
 なぜそう思ったのかはわからない。そっと服の中から取り出す。
 それはかつて出会った外国人の友達からもらったロザリオだ。
 綺麗な金髪に青い目をしたとっても可愛くてとっても優しい女の子・ ・ ・
 おばあちゃんの家に遊びに行った時に連れて行ってもらった縁日。
 屋台や踊りに夢中になったあたしは見事に迷子になった。
 でもそこであの子に出会った。
 とっても綺麗な子であたしはどうしても友達になりたくて、道もわからないのに彼女を連れ回した。
 最初はなんだか不機嫌だったその子も連れまわすうちに笑ってくれたっけ。
 思い出す縁日での記憶は楽しいのだが、その後の記憶は実は曖昧だ。
 どうやらその間、あたしは神隠しにあっていたらしいけど、その間あの子が一緒にいてくれていた気がして全然怖かったという記憶がない。
 一週間ほどして森で見つかった時に手にしていた縁日で買った水風船でも綿菓子でもなく、このロザリオだった。
 なんでかその子からもらって以降、肌身離さずつけているそれにどことなく怒られた気がした。
 本当にどうしてなのかわからないけど。あの子も女の子なのにね。

 そう思った瞬間、あくびが出た。
 再び襲ってきた睡魔にあたしは特に抗うこともなくベッドに戻る。
 あと数日の辛抱だ。寝て起きて、また寝ることを繰り返せば、環ちゃんとまた生活できるのだ。

 待ってるからね。早く来てね。あたしの王子様。
 貴女さえいればあたしは、彼氏なんていらないもん。
************************************************
某男装の麗人wwの語った法律関係はあまり深く突っ込まないでいただきたい。

さて、今回は今まで謎だった彼女の内面でございます。
現状はすべて自業自得でございます。

さあ笑え!

ようやく次回から死亡フラグの来襲開始ですよ!
誤解されて勘違いされて、さて環は生き残れるか!?
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