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間章(ダイジェスト版)
希望?
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※智視点
********************************************
「あ、そうだ」
なにか思いついたように瑠依が声をあげた。
突然のことに智士は戸惑う。しかしこちらのことなど完全に無視をして、瑠依は机の引き出しを開けて何かを探し始めた。
「すっかり、忘れてたよ。火澄先生が来たから中断したけど、そもそも君をここに呼んだのは彼との話を聞かせるのが目的じゃないんだ。頼みたいことがあるんだ」
瑠依の言葉に思わず身構える。
智士の経験則上、瑠依のこういった突然の話はあまりよいものであったためしがない。
いつだったか突然休日に呼び出されたかと思えば、別れ話でこじれた女の相手をさせられた。
思い出してゲンナリする。結局泣く女を智士が慰め説得したのだが、何を思ったのか女が今度は智士に迫りだした。慌てて女に暗示をかけて帰したのだが、そんなことが一度や二度ではない。
瑠依は自身の行動の尻拭いを智士にさせることがある。
こちらも立場が弱いため、逆らえない。結局彼の言うことは雇われている以上、どうしても無理でない限り引き受けなくてはならない。
あまり面倒な内容でないことを祈りつつ身構えながら待っていると、瑠衣は引き出しから何かの書類を取り出し、智士に差し出した。
「はい、これ。目を通しておいて。連休明けからすぐにお願いね」
恐る恐る書類を確認する。
だが渡された書類を見て、思わず拍子抜けした。
「……健康診断ですか?」
渡された書類は健康診断の問診票だった。
養護教諭である智士に渡されるにはあまりに普通の物に思わず目を見開くと、心外とばかりにわざとらしくため息を吐かれた。
「なに?その反応。なんか僕がとんでもないことを言い出すとでも思ってたわけ?」
前科がある相手の言葉とは思えなかったが、突っ込んでも面倒なので無視することにした。
「…ですが、確か既に四月に済んでいるはずでは?」
今年の生徒は予め設定された予備日も終え、全校生徒が終えていたと記憶していた。
見事に軽口を無視された瑠依だったが、珍しく茶化しもせず、面倒くさそうに溜息を吐いた。
「うん。実は、急な転入生があってね。
しかもスポーツ特待生だから、念のためコンディション含めて見て欲しいんだ」
瑠衣の言葉に智士は僅かに驚いた。
「スポーツ特待生…ですか。珍しい、というかその枠で入る生徒は何年ぶりですか?」
裏戸学園には一般入試以外にあまり知られていないが一芸入試というものが存在する。
スポーツ、芸能といった分野で一定以上の成果を収めた人間を特待生として入学させる制度だ。
とはいえ、その存在は奨学金制度と同じくらい知名度が低く、利用するものはほとんどいない。
数年前に施行されて以来、その枠で入学した学生の数は片手で足りていた。
「しかし、この時期からですか?今、五月ですよ?
しかもこの生徒、一年生じゃないですか?なんでまた……」
同時に添付されていた生徒に関する資料を見て呆気にとられる。
転入手続きをとられているが、ということは四月から別の高校に進学していたことになる。
前の学校にこれでは一月しかいなかったことになってしまう。
しかも生徒の経歴を見ても、裏戸学園に編入しなければならない特段の事情は見受けられない。
そもそも裏戸学園は進学校であるせいか、軒並み運動部が成績を振るわない。
この生徒が得意だというスポーツの部活も存在はするが、たしか成績は常に予選敗退クラスだ。
なぜこんな経歴の生徒がこんな時期に来ることになったのか、智士には皆目見当もつかなかった。
「んー、ちょっとゴリ押しがあってね。付き合い上断れなかったんだよね」
「推薦者が岩崎になってますね。あそこは寄付金大きいですからね」
「そうなんだよ。寄付で成り立っている学校って本当に面倒だね」
珍しく笑みを薄くし、うんざりと言った体で瑠依が体を背もたれに預ける。
普段面白いことが大好きだと言ってはばからないとはいえ、仕事上では彼も割と真面目だ。
権力側のごり押しなど社会の一員であれば当たり前の話なのだが、彼にはそれがとんでもなくストレスらしく、溜まったそれは大体ロクでもない策略などで発散される。
今回の花嫁の件は割とよいストレスの捌け口になったらしく、実に楽しそうに加担してくれた。
とはいえ、今回の発散も厄介な転入生の件で帳消しになりそうだ。
実に許容量の狭いストレスケージだ。
とはいえ、またストレス発散のネタを提供するつもりもない。
瑠依のストレスのことは思考から追い出し、ぎしりと鳴る理事長椅子の音を聞いているとふと疑問が湧いた。
「……それにしても健康診断をするのはなぜ私なんです?」
裏戸学園に校医は二人いる。
主に一般生徒を見るのは智士ではないもう一人で、健康診断もそちらの仕事だ。
智士は専ら普通の人間の医者に見せられない吸血鬼やその花嫁の体調を管理する役割を担っている。
極稀にもう一人が不在の場合、保健室に在中することはあるが、年に数回程度だ。
「んー、ちょっと来るのが急だったのと、実は校医がちょっと二週間ばかり病欠でねえ。
申し訳ないんだけど、彼女のいない間の保健室もお願いね」
「それは突然ですね。昨日見たときは特別具合が悪そうには見えなかったのですが」
「おや。智君、彼女に会ったの?」
「君付けで呼ばないでください。職場ですよ?できれば苗字でお願いしたところなんですが」
「いいじゃない、同級生なんだし」
「いつの話ですか。それに、職場です」
「相変わらず堅いねえ。古い友達じゃない。僕たち」
張り付いたような笑みを浮かべる瑠依の言葉に顔が引きつる。
たまに瑠依はこう言う意味不明なことを口にする。
瑠依と智士が学園の同級生であったことは事実だ。
しかし、今では完全に立場が逆転してしまっているが、在学当時優等生で月下騎士だった智士と純血でありながら、生活態度などで月下騎士会になれなかった瑠依とはほとんど接点はなかった。
とはいえ、同じ六色家として最低限の接触はしていた。しかしそれもせいぜい一言挨拶を交わした程度で、会話はおろかほとんど彼の姿は遠めで見ていた記憶しかない。
せいぜい知り合い程度だったし、今でも個人的な話はほとんどしない。
たまにこうしてからかってくるが、智士としては雇用者と被雇用者の関係以外に瑠依との関係を表す単語を知らなかった。
思うに瑠依が友達と言う意味を勘違いしているのだと思う。
純血は常に孤独だ。
その力はあまりに強く、同族ですら遠巻きにしてしまう。
ままあるのだが、純血はいろんな物事を勘違いして覚えていたり、物を知らないものが多い。
誰もが彼らを遠巻きにしてその力ゆえに彼らの言葉が間違っていても訂正したりしないのだ。
智士のよく知る純血はその最たる存在で誰も彼に突っ込まなかったし、その言動を正したりしなかった。
その結果、かなり天然で我がままだ。
ちなみに自分がわがままだという自覚もない。空気を読まないスキルと言うのは飛びぬけて高く、相手にしているととても疲れる存在だった。
一部例外はあるが、純血の性質について智士は自身の認識は間違ってはいないと思う。
ある種、可哀想な話なのだが、それを伝える勇気は智士にはない。
「…彼女とはたまたま廊下ですれ違いまして、二週間も休むような体調には思えなかったもので」
「おや、はぐらかすかい?まあいいけどねぇ。でも彼女、突然体調悪くなったらしいよ。顔色すっごく悪かったし心配だよね」
瑠依の言葉に違和感を覚える。
心配。いくら教員とはいえ人間を瑠依が心配などするだろうか。
しかもらしいと伝聞系で言っているが、まるで見たような口調なのも気になる。
智士はもう一人の養護教諭を思い出す。
彼女は小柄だが、肌の白い美人で妙齢の女性だ。。
この学園は吸血鬼が選ぶせいか、教員に美形率が高い。
それはさておき、美人とはいえ人間でしかない彼女を理事長が“心配する”理由とはなにか。
そこまで考え、瞬間出した結論に智士は青ざめた。
「…まさか、理事長。あんた、彼女の血を…」
「…なんの話かな?」
理事長の顔色はまるで変わらない。
しかし変わってないように見えて、その実まるでこちらを黙らせようとするかのような力の奔流を感じた。そのことで彼が養護教諭の血を吸ったのだと確信した。
彼が彼女に同情的なのもその考えを裏付けている。
吸血鬼は血を貰った相手に情が沸くようにできている。
その情の深さは個体差はある。
血を吸った途端相手しか見えなくなり、一生添い遂げるものもいるが、大抵一時的なものだ。
それは冷徹で人間味のない瑠依も例外ではなく、普通の吸血鬼に比べればかなり薄いものの相手を大事に思っている気配は感じることはあった。
生物学的にどうしてそうなのかはまだ解明されていないが、おそらく彼が彼女を心配するのはその一時的な情を感じているからだろう。
それにしても二週間も休まねば、復帰できないほどの量を吸ったのは明らかにそれは吸いすぎだ。
下手をすれば死んでいる。
だが、それはいい。彼女には悪いが、そんなことはどうでもいいのだ。
「あんた、また勝手に人間の血を吸ったんですね!?」
純血の力をものともせず詰め寄る智士に、さすがの瑠依の顔色が少しだけ動く。
珍しい反応だがそれどころではない。
「あれほど言ってるのに!誰と関係を持っているともわからない人間の血を飲むなんて病気になったらどうすんですか!」
「だって、お腹すいている時に彼女が前を通りかかったんだよ。あちらが悪いと思わない?」
「悪いわけ無いでしょ!大体、定期的に血液パック渡してんのにどうしたんですか!」
「だって、あれまずいんだもん」
いい年こいた男の「だもん」とかなんの冗談かと思ったが、目の前の男なら不思議とにあっているのが手に負えない。
智士は頭を抱えた。
最近エイズなど血液の病気が人間の間で広がったため、そういった悪い血を飲んだ吸血鬼が体調を崩したり、病気を発症したりするケースが増えている。
そのため、吸血鬼には伴侶や安全が保証されている人間以外の血液の摂取は禁止されている。
それなのに瑠衣はその危険を理解せず、その場限りの快楽のためだけに誰彼構わず血を吸う。
伴侶や親族以外からの血の提供を徹底的に禁止されて育った智士には信じられない所業だ。
それでも医者として放っておくことはできない。
校医として雇われている以上、教職員の体調管理も智士の仕事の内だ。
智士はポケットの中にある銀色のケースから中の物を取り出した。
それを見た瑠衣が珍しく笑みを消した。
「ちょ、ちょっと待って!なに、その注射!」
「血液採取ですよ。検査するんです。変なウイルスもらってたら大変でしょう?早期発見で治療もできます」
「ちょ、落ち着いて。大体、吸血鬼から血を取るなんて、なんか変じゃない?」
「変なものですか。ちゃんと管理しますし、検査に参加するのは皆吸血鬼です。
破棄にはもちろん細心の注意を払います」
「そう言う問題じゃないでしょ?」
「そう言う問題です」
瑠依の言葉などものともせず、歩みを進める。
進むたび、瑠依からの威圧は強くなるが、伊達に最強と言われた吸血鬼の傍で育っていない。
智士が進むたびにいつの間にか立ち上がっていた瑠依が後退する。
そうしてとうとう壁際に追い詰め、注射を構える。
「さあ、観念しなさい」
「ね、ねえ。落ち着こうよ。智…日暮先生。僕の健康診断はすでに終わってるし、ここで血を取る意味は…」
「知ってますよ。理事長。あんた、採血ボイコットしたでしょ?」
「う…」
「注射が嫌いなんて言い訳が通用するのは年齢一桁までです」
吸血鬼は血を貰う種族のためか、採血を嫌うものが多い。
その例に漏れない瑠依も何かにつけて、健康診断等を逃げることが多い。
注射が嫌いなど、まるで子供だ。
だが、それを見逃せるほど智士は優しくない。
そもそも、これは瑠依の体調を慮ってのことだ。
いくら体の強い一族であっても一族特有の病と言うものもある。
それを貰えば純血といえど、たちどころに死んでしまうこともある。
緑水の一族はそういった吸血鬼特有の病気に特化した医者の一族だ。
智士は決して吸血鬼の体が強靭などとは思っていない。
内心はどうあれ、これで瑠依は智士にとって恩人であることは変わりない。
自身が検診を怠ったせいで、くだらない病を得て死なせたくなかった。
「さあ、痛いのは一瞬ですからね」
「…なんか、楽しそうだねえ。智君」
「名前で呼ばないでください。それに楽しいわけないでしょう。
いい年して注射が怖くて逃げる男を追い詰めて。私はそんな趣味はない」
理事長の軽口にイラっとした瞬間だった。
「……お前ら、何してんだ?」
突然聞こえた第三者の声に驚いて振り返った。
その人物はいつの間に来ていたのか。
理事長室の真ん中にだるそうに立つ男の姿を見つけ、目を見開いた。
まるで気配がしなかった。確かに瑠依を追い詰めるのに気を取られていたのはあるが、いつからいたのか智士には検討もつかなかった。
「ど、どうして、いつの間に……?」
「俺だって出てきたくなかったがな。……あいつが行けってうるさいんだ」
相変わらず会話が成り立たない。好き勝手なことを言って要領は得ないが、いつものことだ。
それになんとなくだが、言いたいことはわかった。
だが、その内容を思うに智士の心は複雑な思いが去来した。
何もいえなくなった智士の前を動く影があった。
いつの間にか、移動した瑠依だった。
その足元に粉々になった透明なものを発見したとき、初めて智士は自分が持っていた注射器がなくなっているのに気が付いた。
一体いつの間に取られたのか。知ることもできなかったが、第三者のいる今問い詰めるわけにもいかない。
瑠依はいつもの笑みを浮かべたまま、男に近づいた。
「とうとう奥さんに追い出された?この、引きこもりめ」
顔は笑っているが、明らかに視線に敵意を込めている。
口調こそいつもの通りだが、その内容は暴言だ。いつもの余裕ぶっているところもない。
ここまで瑠依が感情を露にするのは珍しい、と智士は傍観する。
流石に純血同士のにらみ合いの間に入る勇気は智士にはない。
純血の瑠依の強い視線に対する男はしかし涼しい顔だ。というより、ほぼ瑠依を見ていない。
「稼いでるんだからいいだろう?妻子養ってるし」
「貴方の場合、稼いでるんじゃないよね?働きもせず、一族の金を当てにして。この、紐め」
「…久しぶりに会って、それか。変わらないな」
「確かに久しぶりだね。……一生会わなくても問題はないけどね」
「そうだな。俺もだ」
「で、本日はどういった用向きで?まさか父兄参観の日取りを間違えたとか?」
「まさか。ただ一応挨拶に行けって言われたからきただけ」
「まあ、そうだね。一度でも貴方がご子息の行事に来たことはないもんね。
奥さん以外少しは見たら。まったく万年色ボケが」
「それは愛妻家という意味か?」
「どういう耳してんの。とうとう引きこもりすぎて耳をやられた?」
「…別に耳は普通だ。まだまだ若いし、今日も朝からあいつを…」
「聞く耐えない話はやめろ!」
瑠依の暴言はエスカレートしていくが、暖簾に腕押しとばかりの男の発言に瑠依が叫んだ。
だが、そのあまりに珍しい光景にも男は反応を示さない。
瑠依から視線を外し、智士に視線を向けてきた。
「…なあ、智士。どうしてこいつ怒ってるんだ?」
心底不思議そうな顔に頭が痛くなる。
絶対今後一週間以上、瑠依の機嫌は悪くなる。
そうなれば、その矛先は学園の教職員になる。
一週間の学園の職員室の空気に憂鬱になった。
だが、対応しないわけにはいかないだろう。
正直相手は智士にとっても複雑な心境しか与えない相手だ。
数年ぶりに会ったというのにまったく変わっていない様子に、ため息が出る。
仕方なく智士は男に向き合った。
「……で、本当にどういう用向きですか?……連」
歴代最強と言われた赤毛の吸血鬼、紅原連は何を考えているのか分からない視線を昔なじみに送っていた。
************************************************
転入生がきますよ。
しかも年下、誰ですかねww
元々理事長たちにはこの話をしてもらうために出てきてもらったんだけど、なんか長くなっちゃいましたね。
(・ω<) てへぺろ
連も出てきて、少しは希望見えましたかね?
え?分からんって?
…うーん、まあ結果はそのうち。
さて、間章はあと一話!
念のために大人世代と他キャラの関係。
黄土瑠依…黄土統瑠、翔瑠の叔父。彼らの父親の異母弟。
日暮(緑水)智士…緑水絆の叔父。母親の同母弟。
紅原連…紅原円の父親。蒼矢藍子の異母兄。蒼矢透の叔父。
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「あ、そうだ」
なにか思いついたように瑠依が声をあげた。
突然のことに智士は戸惑う。しかしこちらのことなど完全に無視をして、瑠依は机の引き出しを開けて何かを探し始めた。
「すっかり、忘れてたよ。火澄先生が来たから中断したけど、そもそも君をここに呼んだのは彼との話を聞かせるのが目的じゃないんだ。頼みたいことがあるんだ」
瑠依の言葉に思わず身構える。
智士の経験則上、瑠依のこういった突然の話はあまりよいものであったためしがない。
いつだったか突然休日に呼び出されたかと思えば、別れ話でこじれた女の相手をさせられた。
思い出してゲンナリする。結局泣く女を智士が慰め説得したのだが、何を思ったのか女が今度は智士に迫りだした。慌てて女に暗示をかけて帰したのだが、そんなことが一度や二度ではない。
瑠依は自身の行動の尻拭いを智士にさせることがある。
こちらも立場が弱いため、逆らえない。結局彼の言うことは雇われている以上、どうしても無理でない限り引き受けなくてはならない。
あまり面倒な内容でないことを祈りつつ身構えながら待っていると、瑠衣は引き出しから何かの書類を取り出し、智士に差し出した。
「はい、これ。目を通しておいて。連休明けからすぐにお願いね」
恐る恐る書類を確認する。
だが渡された書類を見て、思わず拍子抜けした。
「……健康診断ですか?」
渡された書類は健康診断の問診票だった。
養護教諭である智士に渡されるにはあまりに普通の物に思わず目を見開くと、心外とばかりにわざとらしくため息を吐かれた。
「なに?その反応。なんか僕がとんでもないことを言い出すとでも思ってたわけ?」
前科がある相手の言葉とは思えなかったが、突っ込んでも面倒なので無視することにした。
「…ですが、確か既に四月に済んでいるはずでは?」
今年の生徒は予め設定された予備日も終え、全校生徒が終えていたと記憶していた。
見事に軽口を無視された瑠依だったが、珍しく茶化しもせず、面倒くさそうに溜息を吐いた。
「うん。実は、急な転入生があってね。
しかもスポーツ特待生だから、念のためコンディション含めて見て欲しいんだ」
瑠衣の言葉に智士は僅かに驚いた。
「スポーツ特待生…ですか。珍しい、というかその枠で入る生徒は何年ぶりですか?」
裏戸学園には一般入試以外にあまり知られていないが一芸入試というものが存在する。
スポーツ、芸能といった分野で一定以上の成果を収めた人間を特待生として入学させる制度だ。
とはいえ、その存在は奨学金制度と同じくらい知名度が低く、利用するものはほとんどいない。
数年前に施行されて以来、その枠で入学した学生の数は片手で足りていた。
「しかし、この時期からですか?今、五月ですよ?
しかもこの生徒、一年生じゃないですか?なんでまた……」
同時に添付されていた生徒に関する資料を見て呆気にとられる。
転入手続きをとられているが、ということは四月から別の高校に進学していたことになる。
前の学校にこれでは一月しかいなかったことになってしまう。
しかも生徒の経歴を見ても、裏戸学園に編入しなければならない特段の事情は見受けられない。
そもそも裏戸学園は進学校であるせいか、軒並み運動部が成績を振るわない。
この生徒が得意だというスポーツの部活も存在はするが、たしか成績は常に予選敗退クラスだ。
なぜこんな経歴の生徒がこんな時期に来ることになったのか、智士には皆目見当もつかなかった。
「んー、ちょっとゴリ押しがあってね。付き合い上断れなかったんだよね」
「推薦者が岩崎になってますね。あそこは寄付金大きいですからね」
「そうなんだよ。寄付で成り立っている学校って本当に面倒だね」
珍しく笑みを薄くし、うんざりと言った体で瑠依が体を背もたれに預ける。
普段面白いことが大好きだと言ってはばからないとはいえ、仕事上では彼も割と真面目だ。
権力側のごり押しなど社会の一員であれば当たり前の話なのだが、彼にはそれがとんでもなくストレスらしく、溜まったそれは大体ロクでもない策略などで発散される。
今回の花嫁の件は割とよいストレスの捌け口になったらしく、実に楽しそうに加担してくれた。
とはいえ、今回の発散も厄介な転入生の件で帳消しになりそうだ。
実に許容量の狭いストレスケージだ。
とはいえ、またストレス発散のネタを提供するつもりもない。
瑠依のストレスのことは思考から追い出し、ぎしりと鳴る理事長椅子の音を聞いているとふと疑問が湧いた。
「……それにしても健康診断をするのはなぜ私なんです?」
裏戸学園に校医は二人いる。
主に一般生徒を見るのは智士ではないもう一人で、健康診断もそちらの仕事だ。
智士は専ら普通の人間の医者に見せられない吸血鬼やその花嫁の体調を管理する役割を担っている。
極稀にもう一人が不在の場合、保健室に在中することはあるが、年に数回程度だ。
「んー、ちょっと来るのが急だったのと、実は校医がちょっと二週間ばかり病欠でねえ。
申し訳ないんだけど、彼女のいない間の保健室もお願いね」
「それは突然ですね。昨日見たときは特別具合が悪そうには見えなかったのですが」
「おや。智君、彼女に会ったの?」
「君付けで呼ばないでください。職場ですよ?できれば苗字でお願いしたところなんですが」
「いいじゃない、同級生なんだし」
「いつの話ですか。それに、職場です」
「相変わらず堅いねえ。古い友達じゃない。僕たち」
張り付いたような笑みを浮かべる瑠依の言葉に顔が引きつる。
たまに瑠依はこう言う意味不明なことを口にする。
瑠依と智士が学園の同級生であったことは事実だ。
しかし、今では完全に立場が逆転してしまっているが、在学当時優等生で月下騎士だった智士と純血でありながら、生活態度などで月下騎士会になれなかった瑠依とはほとんど接点はなかった。
とはいえ、同じ六色家として最低限の接触はしていた。しかしそれもせいぜい一言挨拶を交わした程度で、会話はおろかほとんど彼の姿は遠めで見ていた記憶しかない。
せいぜい知り合い程度だったし、今でも個人的な話はほとんどしない。
たまにこうしてからかってくるが、智士としては雇用者と被雇用者の関係以外に瑠依との関係を表す単語を知らなかった。
思うに瑠依が友達と言う意味を勘違いしているのだと思う。
純血は常に孤独だ。
その力はあまりに強く、同族ですら遠巻きにしてしまう。
ままあるのだが、純血はいろんな物事を勘違いして覚えていたり、物を知らないものが多い。
誰もが彼らを遠巻きにしてその力ゆえに彼らの言葉が間違っていても訂正したりしないのだ。
智士のよく知る純血はその最たる存在で誰も彼に突っ込まなかったし、その言動を正したりしなかった。
その結果、かなり天然で我がままだ。
ちなみに自分がわがままだという自覚もない。空気を読まないスキルと言うのは飛びぬけて高く、相手にしているととても疲れる存在だった。
一部例外はあるが、純血の性質について智士は自身の認識は間違ってはいないと思う。
ある種、可哀想な話なのだが、それを伝える勇気は智士にはない。
「…彼女とはたまたま廊下ですれ違いまして、二週間も休むような体調には思えなかったもので」
「おや、はぐらかすかい?まあいいけどねぇ。でも彼女、突然体調悪くなったらしいよ。顔色すっごく悪かったし心配だよね」
瑠依の言葉に違和感を覚える。
心配。いくら教員とはいえ人間を瑠依が心配などするだろうか。
しかもらしいと伝聞系で言っているが、まるで見たような口調なのも気になる。
智士はもう一人の養護教諭を思い出す。
彼女は小柄だが、肌の白い美人で妙齢の女性だ。。
この学園は吸血鬼が選ぶせいか、教員に美形率が高い。
それはさておき、美人とはいえ人間でしかない彼女を理事長が“心配する”理由とはなにか。
そこまで考え、瞬間出した結論に智士は青ざめた。
「…まさか、理事長。あんた、彼女の血を…」
「…なんの話かな?」
理事長の顔色はまるで変わらない。
しかし変わってないように見えて、その実まるでこちらを黙らせようとするかのような力の奔流を感じた。そのことで彼が養護教諭の血を吸ったのだと確信した。
彼が彼女に同情的なのもその考えを裏付けている。
吸血鬼は血を貰った相手に情が沸くようにできている。
その情の深さは個体差はある。
血を吸った途端相手しか見えなくなり、一生添い遂げるものもいるが、大抵一時的なものだ。
それは冷徹で人間味のない瑠依も例外ではなく、普通の吸血鬼に比べればかなり薄いものの相手を大事に思っている気配は感じることはあった。
生物学的にどうしてそうなのかはまだ解明されていないが、おそらく彼が彼女を心配するのはその一時的な情を感じているからだろう。
それにしても二週間も休まねば、復帰できないほどの量を吸ったのは明らかにそれは吸いすぎだ。
下手をすれば死んでいる。
だが、それはいい。彼女には悪いが、そんなことはどうでもいいのだ。
「あんた、また勝手に人間の血を吸ったんですね!?」
純血の力をものともせず詰め寄る智士に、さすがの瑠依の顔色が少しだけ動く。
珍しい反応だがそれどころではない。
「あれほど言ってるのに!誰と関係を持っているともわからない人間の血を飲むなんて病気になったらどうすんですか!」
「だって、お腹すいている時に彼女が前を通りかかったんだよ。あちらが悪いと思わない?」
「悪いわけ無いでしょ!大体、定期的に血液パック渡してんのにどうしたんですか!」
「だって、あれまずいんだもん」
いい年こいた男の「だもん」とかなんの冗談かと思ったが、目の前の男なら不思議とにあっているのが手に負えない。
智士は頭を抱えた。
最近エイズなど血液の病気が人間の間で広がったため、そういった悪い血を飲んだ吸血鬼が体調を崩したり、病気を発症したりするケースが増えている。
そのため、吸血鬼には伴侶や安全が保証されている人間以外の血液の摂取は禁止されている。
それなのに瑠衣はその危険を理解せず、その場限りの快楽のためだけに誰彼構わず血を吸う。
伴侶や親族以外からの血の提供を徹底的に禁止されて育った智士には信じられない所業だ。
それでも医者として放っておくことはできない。
校医として雇われている以上、教職員の体調管理も智士の仕事の内だ。
智士はポケットの中にある銀色のケースから中の物を取り出した。
それを見た瑠衣が珍しく笑みを消した。
「ちょ、ちょっと待って!なに、その注射!」
「血液採取ですよ。検査するんです。変なウイルスもらってたら大変でしょう?早期発見で治療もできます」
「ちょ、落ち着いて。大体、吸血鬼から血を取るなんて、なんか変じゃない?」
「変なものですか。ちゃんと管理しますし、検査に参加するのは皆吸血鬼です。
破棄にはもちろん細心の注意を払います」
「そう言う問題じゃないでしょ?」
「そう言う問題です」
瑠依の言葉などものともせず、歩みを進める。
進むたび、瑠依からの威圧は強くなるが、伊達に最強と言われた吸血鬼の傍で育っていない。
智士が進むたびにいつの間にか立ち上がっていた瑠依が後退する。
そうしてとうとう壁際に追い詰め、注射を構える。
「さあ、観念しなさい」
「ね、ねえ。落ち着こうよ。智…日暮先生。僕の健康診断はすでに終わってるし、ここで血を取る意味は…」
「知ってますよ。理事長。あんた、採血ボイコットしたでしょ?」
「う…」
「注射が嫌いなんて言い訳が通用するのは年齢一桁までです」
吸血鬼は血を貰う種族のためか、採血を嫌うものが多い。
その例に漏れない瑠依も何かにつけて、健康診断等を逃げることが多い。
注射が嫌いなど、まるで子供だ。
だが、それを見逃せるほど智士は優しくない。
そもそも、これは瑠依の体調を慮ってのことだ。
いくら体の強い一族であっても一族特有の病と言うものもある。
それを貰えば純血といえど、たちどころに死んでしまうこともある。
緑水の一族はそういった吸血鬼特有の病気に特化した医者の一族だ。
智士は決して吸血鬼の体が強靭などとは思っていない。
内心はどうあれ、これで瑠依は智士にとって恩人であることは変わりない。
自身が検診を怠ったせいで、くだらない病を得て死なせたくなかった。
「さあ、痛いのは一瞬ですからね」
「…なんか、楽しそうだねえ。智君」
「名前で呼ばないでください。それに楽しいわけないでしょう。
いい年して注射が怖くて逃げる男を追い詰めて。私はそんな趣味はない」
理事長の軽口にイラっとした瞬間だった。
「……お前ら、何してんだ?」
突然聞こえた第三者の声に驚いて振り返った。
その人物はいつの間に来ていたのか。
理事長室の真ん中にだるそうに立つ男の姿を見つけ、目を見開いた。
まるで気配がしなかった。確かに瑠依を追い詰めるのに気を取られていたのはあるが、いつからいたのか智士には検討もつかなかった。
「ど、どうして、いつの間に……?」
「俺だって出てきたくなかったがな。……あいつが行けってうるさいんだ」
相変わらず会話が成り立たない。好き勝手なことを言って要領は得ないが、いつものことだ。
それになんとなくだが、言いたいことはわかった。
だが、その内容を思うに智士の心は複雑な思いが去来した。
何もいえなくなった智士の前を動く影があった。
いつの間にか、移動した瑠依だった。
その足元に粉々になった透明なものを発見したとき、初めて智士は自分が持っていた注射器がなくなっているのに気が付いた。
一体いつの間に取られたのか。知ることもできなかったが、第三者のいる今問い詰めるわけにもいかない。
瑠依はいつもの笑みを浮かべたまま、男に近づいた。
「とうとう奥さんに追い出された?この、引きこもりめ」
顔は笑っているが、明らかに視線に敵意を込めている。
口調こそいつもの通りだが、その内容は暴言だ。いつもの余裕ぶっているところもない。
ここまで瑠依が感情を露にするのは珍しい、と智士は傍観する。
流石に純血同士のにらみ合いの間に入る勇気は智士にはない。
純血の瑠依の強い視線に対する男はしかし涼しい顔だ。というより、ほぼ瑠依を見ていない。
「稼いでるんだからいいだろう?妻子養ってるし」
「貴方の場合、稼いでるんじゃないよね?働きもせず、一族の金を当てにして。この、紐め」
「…久しぶりに会って、それか。変わらないな」
「確かに久しぶりだね。……一生会わなくても問題はないけどね」
「そうだな。俺もだ」
「で、本日はどういった用向きで?まさか父兄参観の日取りを間違えたとか?」
「まさか。ただ一応挨拶に行けって言われたからきただけ」
「まあ、そうだね。一度でも貴方がご子息の行事に来たことはないもんね。
奥さん以外少しは見たら。まったく万年色ボケが」
「それは愛妻家という意味か?」
「どういう耳してんの。とうとう引きこもりすぎて耳をやられた?」
「…別に耳は普通だ。まだまだ若いし、今日も朝からあいつを…」
「聞く耐えない話はやめろ!」
瑠依の暴言はエスカレートしていくが、暖簾に腕押しとばかりの男の発言に瑠依が叫んだ。
だが、そのあまりに珍しい光景にも男は反応を示さない。
瑠依から視線を外し、智士に視線を向けてきた。
「…なあ、智士。どうしてこいつ怒ってるんだ?」
心底不思議そうな顔に頭が痛くなる。
絶対今後一週間以上、瑠依の機嫌は悪くなる。
そうなれば、その矛先は学園の教職員になる。
一週間の学園の職員室の空気に憂鬱になった。
だが、対応しないわけにはいかないだろう。
正直相手は智士にとっても複雑な心境しか与えない相手だ。
数年ぶりに会ったというのにまったく変わっていない様子に、ため息が出る。
仕方なく智士は男に向き合った。
「……で、本当にどういう用向きですか?……連」
歴代最強と言われた赤毛の吸血鬼、紅原連は何を考えているのか分からない視線を昔なじみに送っていた。
************************************************
転入生がきますよ。
しかも年下、誰ですかねww
元々理事長たちにはこの話をしてもらうために出てきてもらったんだけど、なんか長くなっちゃいましたね。
(・ω<) てへぺろ
連も出てきて、少しは希望見えましたかね?
え?分からんって?
…うーん、まあ結果はそのうち。
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念のために大人世代と他キャラの関係。
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紅原連…紅原円の父親。蒼矢藍子の異母兄。蒼矢透の叔父。
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100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
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2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
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