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間章(ダイジェスト版)
贖罪
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※智視点
********************************************
桃李が去った理事長室。
一人残った黄土瑠衣は革張りの椅子の背もたれに体重を移し、ぎしりと鳴らした。
「……これでいいかい?智先生?」
ほかに誰もいないはずの空間に瑠衣の声が響くと、窓にかけられたカーテンの一つがふわりと動く。
そこから姿を現したのは白衣の男だ。
「……はい、理事長。」
智先生と呼ばれた男は白衣姿のひょろりと背の高い三十代半ばほどに見えた。
胸に下げられた職員証の名前は日暮智士。
裏戸学園の第二養護教諭であり、天空寮専属の医師だ。
鳥の巣のようなボサボサの頭は伸び放題で、顔を半分覆い隠している。
しかし、口元のみの顔はどこか憂いの表情をたたえ、桃李の去っていった扉を見つめていた。
「……少々彼には悪いことを…」
「…それは最初から承知の上だろう?
君が、
君の望んだことに
君の考えで、彼やなぁんにも罪もない人間を巻き込むんだ
君は君の罪から逃げることは許されないよ?」
実に楽しそうに理事長が告げる。
たまに瑠衣はこういう相手の罪悪感を煽るような残酷な物言いをする。
こうった時の彼は表情こそいつもの張り付いた笑顔だが、普段は冷めたその目が心底面白そうに感情をたたえていることを不本意ながら長い付き合いになっている智士は知っていた。
だが責められるこちら側に非があるのは明らかなため押し黙る。
実は桃李がもう一人の人間の生徒を守るように仕向けたのは智士のシナリオだった。
一見クールだが、中身はなかなかの熱血教師である彼ならああいう言い方をすれば、人間の少女を守るよう動いてくれる。
智士はある目的のために、人間である生徒を巻き込まずにはいられなかった。
だが、その彼女が危険にさらされるのは本意ではない。
しかしあまり大げさに護衛をつければ、その生徒に不信感を与え、何らかの学園の闇に纏わる事情を感づかれる恐れがある。
そのへんの折り合いを付けるために、今回こういう手を取らざるを得なかったのだ。
まったく関係ない桃李や生徒を巻き込むのは、智士の良心に痛いが、譲れないものがあるため心に蓋をする。
「そうですね。何を言われても私にはこうするより他に手がない。
手を貸してくださって感謝します」
「まあ、僕的には面白かったからいいよ。
それに君に貸しができるのも悪くないしねえ」
くすくすと笑う瑠衣の心情は智士には読めない。
彼は貸しだと言うが、智士はその返しを求められたことはない。
過去から智士は彼にいくつもの大きな貸しがある。
その最たるは今ここにいること。
母方の日暮の姓を名乗ってはいるが智士は緑水の人間だ。
同腹の姉とその息子に対する一族の非道さに嫌気がさし出奔したが、もとより育ちの良い智士はすぐに生活に貧した。
そこを拾ってくれたのが、瑠衣だった。
彼はその権限を使って彼に学園の養護教諭の地位をくれた。
それだけではない。一族が再三帰還するよう言っては来るが、それが実力行使でないのは智士が彼の元にいるからだ。
純血の機嫌を損ねるのは命取りだ。
特に現在純血のいない緑水は何が何でも避けたい事態だろう。
智士がここにこうしていられるのは、瑠衣の存在あってこそだ。
しかしそれだけのことをしてもらっていながら、彼から見返りを求められたことはない。
それが智士には不気味で仕方がなかった。
世話になっておいて無礼なのは承知の上だが、瑠衣は決して人格者ではない。
性格的にも破綻しており、人間も吸血鬼も自分自身さえ駒だと思っている。
面白いことだけが好きで、そのためなら誰の心情も踏みにじっても気にならない。
『享楽者』と揶揄される彼の心情を智士は理解できない。
いつか、自身だけでなく智士の周囲をも巻き込んだ見返りを求められるのではないかと、内心ビクビクしている。
そんな彼に頼るより他にない自分が智士は情けなかったが、認めないわけにはいかない。
臆病な内面を押し殺し、智士はするりと頭を下げた。
「感謝します。これで時間を稼げる」
「そうだね。そう長くはないだろうけど、<古き日の花嫁>が伴侶を自身で決めるだけの時間はある。
どうして君がそこにこだわるのかはわからないけどね」
理事長が意味ありげに視線を送ってくるが、別に質問されているわけではないので答えたりしなかった。
代わりに別の話にすり替える。
「理事長。彼女がまだ<古き日の花嫁>だと確認されたわけでは…」
「ああ、……ふふ。そうだねえ。君がその確認も任されているんだもんねえ。第一人者だものね?」
笑う理事長の言葉に智士は無表情を貫いた。
智士はかつて緑水内で<古き日の花嫁>の研究を行っていた。
一族内で唯一の女性吸血鬼であった姉の死以降、純血の長く生まれていない緑水は焦っていた。
伝説の存在にすがってしまうほど、一族は追い詰められていた。
そこで幼い頃から天才児ともてはやされ、将来を嘱望されていた智士に白羽の矢が立った。
その頃の智士は一族に反感は持っていてもまだ出奔しておらず、気が進まないなりに研究をしていた。
しかし、その研究を途中で放り出し、智士は一族から出奔した。それまでの研究データを根こそぎ消して。
一族はおそらく疑っているのだろう。智士が<古き日の花嫁>に関する研究を完成させ、その上でその結果をこの世から消したのだと。
確かに智士は人間を<古き日の花嫁>とする方法を突き止めていた。
明確に言えば、幼い少年と少女の交流で発覚したというべきか。
古い道具から出てきた人間を<古き日の花嫁>にするための薬。
僅かにケースに残ったモノを分析した結果と、昏倒した少女の血の鮮やかな変化により、その謎に行き着いた。
その分析した錠剤の成分から行き着いた製法の外道さに目眩がした。
かつてこの製法を作り出したのが緑水だと古い文献で知っていた智士はなんだか妙に納得してしまった。
それと同時に決してこの結果を一族に渡してはいけないと心に決めた。
緑水家の純血への思いは既に妄執といってもいいほどに膨れ上がっている。
そのために人間の子を宿した姉を認めず、腹に宿った子供を生まれる前に殺し、他の男をあてがおうとしたのだ。
吸血鬼の女が子を産むのは危険が伴う。そのため、人間との間の子など産まれる前に流してしまえば、姉が死ぬリスクが減ると思ったらしい。
結局一族の思惑から我が子を守ろうとした心労で彼女は息子を出産してから数ヵ月後黄泉路に旅立った。
智士は姉を殺したのは一族だと思っている。決して許したりはしない。
智士はこの秘密を墓場まで持っていくことを決めている。
智士は持ち得る技術を最大限に使い、あの少女が<古き日の花嫁>であることを隠蔽した。
それは確かにうまくいっていた。彼女の中の血の匂いは限りなく普通の人間に近いはずで、ちょっと気を向けたくらいでは彼女が花嫁であることすら疑うのも難しいほどだろう。智士の人生の中で一番良い仕事をしたと自負できるほどにうまく偽装できていた。
しかし、運命は残酷だ。
智士の偽装で、本来ただ人として人生を謳歌し終えるはずだった少女は成長し、今この学園に姿を現した。
そして彼女は月下騎士会と出会った。
まるで運命が智士の努力すべてをあざ笑うかのように。
結局彼女は吸血鬼絡みの事件でその存在を公にしてしまった。
見つかってしまえば、進める道は限りなく少ない。
ならば智士の勤めは、彼女ができる限り不本意な立場に立たされないように工作することだけだ。
彼女はかつての緑水の罪の結晶であった血清錠剤の最後の犠牲者だ。
その彼女を一族の手からできる限り、遠ざけ救うのは緑水の血を引く自分の勤めだと思った。
だから非道だと思っていても周りを利用して時間を稼いだ。
彼女が彼女の判断で伴侶を選ぶ期間。
半年間、彼女に与えられた時間はたったそれだけだ。普通の人間の女の子であれば決して与えられることのなかった期限のなんと短いことか。
しかし、それが限界であることも智士はわかっていた。
それが過ぎれば、彼女は強制的にどこかの家に嫁がされることになる。
それを止める術は智士は持たない。
だから願わずにはいられない。
この半年の間に彼女が心から信頼しあえる伴侶を自分自身の手で見つけてくれることを。
智士はその間、一族の目を霍乱し続けよう。
仕込みはした。
あとは彼女次第だ。
(……願うことなら、絆を選んでくれるといいのだが)
そう思うのは所詮身内可愛さか。
甥が彼女のことを大切に思っているのは知っている。
その生い立ちから決して他人と馴れ合えない彼が唯一存在を欲した彼女だ。
一度は彼女のことを考えさせ諦めさせたが、再び出会ったことで離れていた分思いが燃え上がっているのは先日会った彼の表情でわかっていた。しかし、その表情の危うさも同時に智士は気づいて心配はしている。
なにせ、彼は自身の思いのために一族も自分の命さえも全て投げ出し果てた姉の血を引いているのだ。
彼が不幸せになる結末だけは避けたいが、こればかりは部外者でしかない智士にはどうすることもできない。
それに智士は決めている。彼女が誰を選んでも結果を受け入れると。
緑水が作った<古き日の花嫁>という存在、それを最後にするのは緑水の者の役目だ。
最後の花嫁が幸せになるよう智士は自身のすべてをかけよう。そう心の中で誓った。
「…できる限り善処はしますよ。私は<古き日の花嫁>の第一人者ですから」
智士の言葉に、瑠衣は相変わらず読めない笑みを浮かべただけだった。
「ま、せいぜい頑張って。さっきも言ったけど僕は面白ければなんでもいい」
「…善処はしますよ」
瑠衣の言う面白いがどういう意味なのか本当の意味で理解することはできないので、曖昧に濁しておく。禄なものではないことだけは想像に難くないが。
嫌な予感に背中に冷たい汗を浮かべるこちらに気づいているのかいないのか、相変わらず瑠衣の表情は読めなかった。
************************************************
相変わらず笑のないシリアスです。
すみません(汗
次回はようやく笑い要素と希望が見えると思います。
重い話で申し訳ない。
でもさ、大人(親)世代書いてて楽しいぞ!作者は!
さーせん!でも自重したくないんだ!
あと二話で間章は終わる予定!
環がでるまでもう少しだけお付き合いお願いします。
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桃李が去った理事長室。
一人残った黄土瑠衣は革張りの椅子の背もたれに体重を移し、ぎしりと鳴らした。
「……これでいいかい?智先生?」
ほかに誰もいないはずの空間に瑠衣の声が響くと、窓にかけられたカーテンの一つがふわりと動く。
そこから姿を現したのは白衣の男だ。
「……はい、理事長。」
智先生と呼ばれた男は白衣姿のひょろりと背の高い三十代半ばほどに見えた。
胸に下げられた職員証の名前は日暮智士。
裏戸学園の第二養護教諭であり、天空寮専属の医師だ。
鳥の巣のようなボサボサの頭は伸び放題で、顔を半分覆い隠している。
しかし、口元のみの顔はどこか憂いの表情をたたえ、桃李の去っていった扉を見つめていた。
「……少々彼には悪いことを…」
「…それは最初から承知の上だろう?
君が、
君の望んだことに
君の考えで、彼やなぁんにも罪もない人間を巻き込むんだ
君は君の罪から逃げることは許されないよ?」
実に楽しそうに理事長が告げる。
たまに瑠衣はこういう相手の罪悪感を煽るような残酷な物言いをする。
こうった時の彼は表情こそいつもの張り付いた笑顔だが、普段は冷めたその目が心底面白そうに感情をたたえていることを不本意ながら長い付き合いになっている智士は知っていた。
だが責められるこちら側に非があるのは明らかなため押し黙る。
実は桃李がもう一人の人間の生徒を守るように仕向けたのは智士のシナリオだった。
一見クールだが、中身はなかなかの熱血教師である彼ならああいう言い方をすれば、人間の少女を守るよう動いてくれる。
智士はある目的のために、人間である生徒を巻き込まずにはいられなかった。
だが、その彼女が危険にさらされるのは本意ではない。
しかしあまり大げさに護衛をつければ、その生徒に不信感を与え、何らかの学園の闇に纏わる事情を感づかれる恐れがある。
そのへんの折り合いを付けるために、今回こういう手を取らざるを得なかったのだ。
まったく関係ない桃李や生徒を巻き込むのは、智士の良心に痛いが、譲れないものがあるため心に蓋をする。
「そうですね。何を言われても私にはこうするより他に手がない。
手を貸してくださって感謝します」
「まあ、僕的には面白かったからいいよ。
それに君に貸しができるのも悪くないしねえ」
くすくすと笑う瑠衣の心情は智士には読めない。
彼は貸しだと言うが、智士はその返しを求められたことはない。
過去から智士は彼にいくつもの大きな貸しがある。
その最たるは今ここにいること。
母方の日暮の姓を名乗ってはいるが智士は緑水の人間だ。
同腹の姉とその息子に対する一族の非道さに嫌気がさし出奔したが、もとより育ちの良い智士はすぐに生活に貧した。
そこを拾ってくれたのが、瑠衣だった。
彼はその権限を使って彼に学園の養護教諭の地位をくれた。
それだけではない。一族が再三帰還するよう言っては来るが、それが実力行使でないのは智士が彼の元にいるからだ。
純血の機嫌を損ねるのは命取りだ。
特に現在純血のいない緑水は何が何でも避けたい事態だろう。
智士がここにこうしていられるのは、瑠衣の存在あってこそだ。
しかしそれだけのことをしてもらっていながら、彼から見返りを求められたことはない。
それが智士には不気味で仕方がなかった。
世話になっておいて無礼なのは承知の上だが、瑠衣は決して人格者ではない。
性格的にも破綻しており、人間も吸血鬼も自分自身さえ駒だと思っている。
面白いことだけが好きで、そのためなら誰の心情も踏みにじっても気にならない。
『享楽者』と揶揄される彼の心情を智士は理解できない。
いつか、自身だけでなく智士の周囲をも巻き込んだ見返りを求められるのではないかと、内心ビクビクしている。
そんな彼に頼るより他にない自分が智士は情けなかったが、認めないわけにはいかない。
臆病な内面を押し殺し、智士はするりと頭を下げた。
「感謝します。これで時間を稼げる」
「そうだね。そう長くはないだろうけど、<古き日の花嫁>が伴侶を自身で決めるだけの時間はある。
どうして君がそこにこだわるのかはわからないけどね」
理事長が意味ありげに視線を送ってくるが、別に質問されているわけではないので答えたりしなかった。
代わりに別の話にすり替える。
「理事長。彼女がまだ<古き日の花嫁>だと確認されたわけでは…」
「ああ、……ふふ。そうだねえ。君がその確認も任されているんだもんねえ。第一人者だものね?」
笑う理事長の言葉に智士は無表情を貫いた。
智士はかつて緑水内で<古き日の花嫁>の研究を行っていた。
一族内で唯一の女性吸血鬼であった姉の死以降、純血の長く生まれていない緑水は焦っていた。
伝説の存在にすがってしまうほど、一族は追い詰められていた。
そこで幼い頃から天才児ともてはやされ、将来を嘱望されていた智士に白羽の矢が立った。
その頃の智士は一族に反感は持っていてもまだ出奔しておらず、気が進まないなりに研究をしていた。
しかし、その研究を途中で放り出し、智士は一族から出奔した。それまでの研究データを根こそぎ消して。
一族はおそらく疑っているのだろう。智士が<古き日の花嫁>に関する研究を完成させ、その上でその結果をこの世から消したのだと。
確かに智士は人間を<古き日の花嫁>とする方法を突き止めていた。
明確に言えば、幼い少年と少女の交流で発覚したというべきか。
古い道具から出てきた人間を<古き日の花嫁>にするための薬。
僅かにケースに残ったモノを分析した結果と、昏倒した少女の血の鮮やかな変化により、その謎に行き着いた。
その分析した錠剤の成分から行き着いた製法の外道さに目眩がした。
かつてこの製法を作り出したのが緑水だと古い文献で知っていた智士はなんだか妙に納得してしまった。
それと同時に決してこの結果を一族に渡してはいけないと心に決めた。
緑水家の純血への思いは既に妄執といってもいいほどに膨れ上がっている。
そのために人間の子を宿した姉を認めず、腹に宿った子供を生まれる前に殺し、他の男をあてがおうとしたのだ。
吸血鬼の女が子を産むのは危険が伴う。そのため、人間との間の子など産まれる前に流してしまえば、姉が死ぬリスクが減ると思ったらしい。
結局一族の思惑から我が子を守ろうとした心労で彼女は息子を出産してから数ヵ月後黄泉路に旅立った。
智士は姉を殺したのは一族だと思っている。決して許したりはしない。
智士はこの秘密を墓場まで持っていくことを決めている。
智士は持ち得る技術を最大限に使い、あの少女が<古き日の花嫁>であることを隠蔽した。
それは確かにうまくいっていた。彼女の中の血の匂いは限りなく普通の人間に近いはずで、ちょっと気を向けたくらいでは彼女が花嫁であることすら疑うのも難しいほどだろう。智士の人生の中で一番良い仕事をしたと自負できるほどにうまく偽装できていた。
しかし、運命は残酷だ。
智士の偽装で、本来ただ人として人生を謳歌し終えるはずだった少女は成長し、今この学園に姿を現した。
そして彼女は月下騎士会と出会った。
まるで運命が智士の努力すべてをあざ笑うかのように。
結局彼女は吸血鬼絡みの事件でその存在を公にしてしまった。
見つかってしまえば、進める道は限りなく少ない。
ならば智士の勤めは、彼女ができる限り不本意な立場に立たされないように工作することだけだ。
彼女はかつての緑水の罪の結晶であった血清錠剤の最後の犠牲者だ。
その彼女を一族の手からできる限り、遠ざけ救うのは緑水の血を引く自分の勤めだと思った。
だから非道だと思っていても周りを利用して時間を稼いだ。
彼女が彼女の判断で伴侶を選ぶ期間。
半年間、彼女に与えられた時間はたったそれだけだ。普通の人間の女の子であれば決して与えられることのなかった期限のなんと短いことか。
しかし、それが限界であることも智士はわかっていた。
それが過ぎれば、彼女は強制的にどこかの家に嫁がされることになる。
それを止める術は智士は持たない。
だから願わずにはいられない。
この半年の間に彼女が心から信頼しあえる伴侶を自分自身の手で見つけてくれることを。
智士はその間、一族の目を霍乱し続けよう。
仕込みはした。
あとは彼女次第だ。
(……願うことなら、絆を選んでくれるといいのだが)
そう思うのは所詮身内可愛さか。
甥が彼女のことを大切に思っているのは知っている。
その生い立ちから決して他人と馴れ合えない彼が唯一存在を欲した彼女だ。
一度は彼女のことを考えさせ諦めさせたが、再び出会ったことで離れていた分思いが燃え上がっているのは先日会った彼の表情でわかっていた。しかし、その表情の危うさも同時に智士は気づいて心配はしている。
なにせ、彼は自身の思いのために一族も自分の命さえも全て投げ出し果てた姉の血を引いているのだ。
彼が不幸せになる結末だけは避けたいが、こればかりは部外者でしかない智士にはどうすることもできない。
それに智士は決めている。彼女が誰を選んでも結果を受け入れると。
緑水が作った<古き日の花嫁>という存在、それを最後にするのは緑水の者の役目だ。
最後の花嫁が幸せになるよう智士は自身のすべてをかけよう。そう心の中で誓った。
「…できる限り善処はしますよ。私は<古き日の花嫁>の第一人者ですから」
智士の言葉に、瑠衣は相変わらず読めない笑みを浮かべただけだった。
「ま、せいぜい頑張って。さっきも言ったけど僕は面白ければなんでもいい」
「…善処はしますよ」
瑠衣の言う面白いがどういう意味なのか本当の意味で理解することはできないので、曖昧に濁しておく。禄なものではないことだけは想像に難くないが。
嫌な予感に背中に冷たい汗を浮かべるこちらに気づいているのかいないのか、相変わらず瑠衣の表情は読めなかった。
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相変わらず笑のないシリアスです。
すみません(汗
次回はようやく笑い要素と希望が見えると思います。
重い話で申し訳ない。
でもさ、大人(親)世代書いてて楽しいぞ!作者は!
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