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海鳴り
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海鳴りが聴こえる
ここは、海辺の民宿。
春から秋に掛けて、釣り船を出してくれる船宿でもある。
その客室で、俺は大の字になって寝転がっている。
周りにはお気に入りのルアーが散らばってる。
「あー…あちぃ…」
さっきコケてばら撒いてしまった。
回収するのが面倒で、そのままにしてる。
暑いからしょうがない。
Tシャツに麻のハーパンというだらしない格好。
なのにまだ暑い。
これは裸にでもならんといかんのか。
「裸はぁ…きっついかあ…?」
一応ここ、民宿だし。俺んちじゃないし。
もう夏の盛りは過ぎているとはいえ、まだ気温は30度を超す日もある。
客室にエアコンはついているのだが、あまり好きじゃなくて窓を開けている。
幸い、海水浴シーズンが過ぎているから民宿の宿泊客は他にいない。
とても静かだ。
だから泊まっている部屋にまで、海鳴りが聞こえてくる。
死のうと思ってる。
社会人になって15年目。
会社で大きなミスを犯した。
それはほんの些細な事だった。
だが会社に与えた損失は大きかった。
生まれて初めて体が震えた。
上司から叱責を受け、俺は部署を移動することになった。
幸いなことに今までの実績を考慮して、馘首にはならなかった。
しかし、移った部署は昼行灯みたいなのが集まってる部署で…
仕事という仕事はない。
それに、俺の頭は思考停止状態で、ちっとも働かないし。
日がな一日、ぼけっと窓際に座ってビルの外を眺めてる。
なんの意味があるんだ
なんで俺はここに居るんだ
なんで…
俺は生きてるんだ
「秋津さーん。お夕飯できましたよー!」
民宿の息子が俺を呼ぶ声で目が覚めた。
どうやら昼過ぎから爆睡してしまったようだ。
「あれ…?」
部屋に昼までなかったはずの扇風機が置いてある。
これのお陰で安眠できたようだ。
「はて…?」
誰かこの部屋に入ったのかな。
ぜんぜんわからなかった。
「秋津さーん!?」
外で怒鳴っている声に我に返った。
「もう夕方かよ…」
呆然と窓から外を見ると、まだ外は明るかった。
「夕飯はええんだよ……」
この宿は夕飯が18時に出る。
まるで年寄りの家のような時間で、夜中腹が減って敵わない。
「秋津 駿さーん?なんだ起きてるんじゃん」
襖を無断で開けて、顔を突っ込んでくる。
日に焼けた顔と髪が暑苦しいのだが、顔は今どきのイケメン。
シュッとしてるから、結構モテるんだろうと思う。
腕や腹の筋肉も凄いしな。
「秋津さん?聞こえないの?」
「お前なあ…俺、客だぞ?」
「10日も泊まってたら、客じゃねえよ」
「てめ…金払わねえぞ?」
「ぶふっ…もう前払いで貰ってますぅー」
「む」
こいつはこの民宿の次男の優也という。
漁師をしながらこの民宿を手伝っているという、今時珍しい勤労青年だ。
最初はチャラチャラしてるから警戒したが、顔の黒さも髪の茶色さも海で仕事してるからだってわかって。
普通に仕事してたら日に焼けるし、帽子を被らないと髪は色が抜けてしまうんだと。
すごく明るくて良いやつなんだと思っている。
しかし、客である俺の部屋にずかずかと入り込んでくる、ずうずうしい奴でもある。
「わ、凄いじゃん!このルアー」
嬉々として畳の上に散らばっているルアーをいじっている。
「あっ…勝手に触んな!」
人生の最後は、せめて好きな釣りをしたいと思って、前から欲しかったルアーを買って持ってきた。
でも、なんだか海に出る気にならなくて、今日まで一回も使ってない。
有給は一ヶ月取った。
俺は最初の二週間をここで過ごすことに決めて、前払いで料金を払ってここに滞在してる。
ここは、海辺の民宿。
春から秋に掛けて、釣り船を出してくれる船宿でもある。
その客室で、俺は大の字になって寝転がっている。
周りにはお気に入りのルアーが散らばってる。
「あー…あちぃ…」
さっきコケてばら撒いてしまった。
回収するのが面倒で、そのままにしてる。
暑いからしょうがない。
Tシャツに麻のハーパンというだらしない格好。
なのにまだ暑い。
これは裸にでもならんといかんのか。
「裸はぁ…きっついかあ…?」
一応ここ、民宿だし。俺んちじゃないし。
もう夏の盛りは過ぎているとはいえ、まだ気温は30度を超す日もある。
客室にエアコンはついているのだが、あまり好きじゃなくて窓を開けている。
幸い、海水浴シーズンが過ぎているから民宿の宿泊客は他にいない。
とても静かだ。
だから泊まっている部屋にまで、海鳴りが聞こえてくる。
死のうと思ってる。
社会人になって15年目。
会社で大きなミスを犯した。
それはほんの些細な事だった。
だが会社に与えた損失は大きかった。
生まれて初めて体が震えた。
上司から叱責を受け、俺は部署を移動することになった。
幸いなことに今までの実績を考慮して、馘首にはならなかった。
しかし、移った部署は昼行灯みたいなのが集まってる部署で…
仕事という仕事はない。
それに、俺の頭は思考停止状態で、ちっとも働かないし。
日がな一日、ぼけっと窓際に座ってビルの外を眺めてる。
なんの意味があるんだ
なんで俺はここに居るんだ
なんで…
俺は生きてるんだ
「秋津さーん。お夕飯できましたよー!」
民宿の息子が俺を呼ぶ声で目が覚めた。
どうやら昼過ぎから爆睡してしまったようだ。
「あれ…?」
部屋に昼までなかったはずの扇風機が置いてある。
これのお陰で安眠できたようだ。
「はて…?」
誰かこの部屋に入ったのかな。
ぜんぜんわからなかった。
「秋津さーん!?」
外で怒鳴っている声に我に返った。
「もう夕方かよ…」
呆然と窓から外を見ると、まだ外は明るかった。
「夕飯はええんだよ……」
この宿は夕飯が18時に出る。
まるで年寄りの家のような時間で、夜中腹が減って敵わない。
「秋津 駿さーん?なんだ起きてるんじゃん」
襖を無断で開けて、顔を突っ込んでくる。
日に焼けた顔と髪が暑苦しいのだが、顔は今どきのイケメン。
シュッとしてるから、結構モテるんだろうと思う。
腕や腹の筋肉も凄いしな。
「秋津さん?聞こえないの?」
「お前なあ…俺、客だぞ?」
「10日も泊まってたら、客じゃねえよ」
「てめ…金払わねえぞ?」
「ぶふっ…もう前払いで貰ってますぅー」
「む」
こいつはこの民宿の次男の優也という。
漁師をしながらこの民宿を手伝っているという、今時珍しい勤労青年だ。
最初はチャラチャラしてるから警戒したが、顔の黒さも髪の茶色さも海で仕事してるからだってわかって。
普通に仕事してたら日に焼けるし、帽子を被らないと髪は色が抜けてしまうんだと。
すごく明るくて良いやつなんだと思っている。
しかし、客である俺の部屋にずかずかと入り込んでくる、ずうずうしい奴でもある。
「わ、凄いじゃん!このルアー」
嬉々として畳の上に散らばっているルアーをいじっている。
「あっ…勝手に触んな!」
人生の最後は、せめて好きな釣りをしたいと思って、前から欲しかったルアーを買って持ってきた。
でも、なんだか海に出る気にならなくて、今日まで一回も使ってない。
有給は一ヶ月取った。
俺は最初の二週間をここで過ごすことに決めて、前払いで料金を払ってここに滞在してる。
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