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終章 LASTBATTLE ON THE EARTH
DEATHGAME-ISLAND⑳
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「艇長(時空戦闘艇内では茉穂美は原則こう呼ばれる)、甚だ失礼ながら、ここでバアルの名を出すのは適当ではないと思われますが…」
早くも獣使将軍の横槍が入ったがこれは想定済みのことであり、茉穂美は構わず続ける。
「実はそうでもないのよ…。
どうやら彼、ある意味我が軍に対してとんでもない背徳行為に出た疑いがあるの…!」
穏やかではないワードが飛び出したことで顔を見合わせる花凛とナハラムであったが、容疑者が容疑者であるためか、その表情に真剣味は窺われない…。
「それは穏やかではありませんね。
ですが、もし艇長が仰っているのが太鬼真護氏の特抜力の大幅低下ということなのでしたら、それは致し方ない事象と申し上げるしかないというのがわたくしの見解なのでございますが…」
「な、何ですって…!?
それは一体どういうことなのかしら…説明してもらえる?」
“面白いことになってきた”と言わんばかりにニヤつく獣使将軍と軽く目配せを交わした念術筆頭師範は、茉穂美と対話する時の常である深い敬意を込めた真剣な眼差しでしっかりと相手の双眸を捉えながらも驚くべき情報を開示する。
「…最初に申し上げておきますが、これは決して聖剣皇様が森藤艇長を蔑ろにしたということではなく、あくまでも聖衛軍の勝利に向けて必要な措置であったのであり、その反動に対しての措置は遠征隊全員が弱体化した太鬼氏を全力で支援せよ、というものであったのです…!」
されどこの簡略化された状況説明を聞き終えると同時に茉穂美の脳内は真っ白、そして顔色は蒼白となり、
「どうして…私だけが総代から指示を受けていないの…!?」
と呟くのがやっとなのであった。
「それは、貴女の心を千々に乱した太鬼を賢明なる総代が徹底して危険視…いいえ、心底敵視されておられるからよ。
茉穂…艇長、冷静になって。
そもそもアイツが誰の系譜に連なるのか考えてみてちょうだい──バラド=グフール…世が世ならペトゥルナワスに悪魔の帝国を築き上げて善良な獣民たちに塗炭の苦しみを味わわせていた可能性がとてつもなく大きい、曰く付きの魔強士族よッ!
しかもナハラムによると、謁見の度に四元総代は仰っていたそうよ──“グフールの危険性は到底シェザードどころではない…もし当主が天助ともいうべき病によって急逝すること無くば、その宿痾ともいうべきとてつもない偏見=優生思想が実現されていた蓋然性は高く、最悪の場合〈獣民人口〉は現在の10万分の1以下になっていたおそれがある”、と…」
これまで茉穂美からただの一度も浴びたことのないキツい視線を向けられたナハラムは悲しげに俯きながら、
「…父もたしかにそう申しておりました…」
と呟くように同意する。
「……」
一方の黒蝶仮面はあたかも聖剣皇が乗り移ったかのごとく一瀉千里といった勢いでその思惑を代弁する。
「つまり、かくのごとき邪悪な魔強士の末裔を本軍に加えることには聖剣皇としても大きなためらいがあるが、とはいえこの鬼っ子を野に放つのはそれに倍する無責任な行為…そこでそれとなく魔霊の意見を聴取したところ、全てではないにせよ特抜力の最も危険な部分の奪取は可能ということであったので、この地上遠征を奇貨として実行に移させると…!」
「……」
表情を凍り付かせたまま無言で虚空を睨む艇長を、ナハラムが気遣わしそうに見つめるのに業を煮やした花凛が一段と声を荒げてまくし立てる。
「しかも、アイツの母親…100%異世界人のクセにヒトの良い八重樫学園長を誑し込んでとんでもない怪物を産み落とし、呆れたことに悪霊みたいに我が母校に取り憑いてかわいい後輩たちの清らかな童貞を片っ端から狩り続ける大女怪…たしか名前は太鬼純華っていったっけ!?
もちろん戦闘的特抜力のカタマリであるセガレが一番ヤバいんだけど、幸いにも今んとこはまだ牙を剥き出しちゃいない…でもあの淫乱BBAがやってることはある意味最もキケンで卑劣な侵略行為よッッ!!」
「──そんなことは訊いてないッッ!!!」
突如発せられた裂帛の叫びに異世界のハイテクメカで埋め尽くされた操縦室は文字通り震撼し、二人の若き軍幹部は呆然と同年代の上司を見つめる。
しかし森藤茉穂美の代名詞ともいうべき、たしかな実力に裏打ちされた威厳ある落ち着きは無残に剥げ落ち、頑是ない幼女のごとく半狂乱になった聖衛軍No.2は艇長席から荒々しく立ち上がって眼下の部下たちを般若の形相で睨み下ろすのであった!
「あたしを誰だと思ってるのッ!?
泣く子も黙る帝界聖衛軍副将の森藤茉穂美情報参謀長よッ!!
そのあたしが、下っ端のアンタたちですら知ってるありふれた情報を何で知らされてないワケッ!?
こんなに…こんなに…それこそ青春の全てを犠牲にしてあの方に尽くしてきたこのあたしがどうしてここまで貶められなくちゃならないのッ!?
ねえ花凛ッ、どうしてなのよッ!?
どう考えても、アンタよりあたしの方が貢献度は上でしょうがッ!?
ちきしょうッ!バカにしやがってッッ!!
もう二度と、あんな人でなしを聖剣皇だなんで崇めてやるもんかッ!
これ以上舐められてたまるかッ!!
えーんッ!えーんッ!!ええ~んッッ!!!」
「茉穂美…」
「参謀長…」
勇躍起立したはいいものの、すぐにくなくなとシートに崩れ落ちて両掌で貌を覆いつつ号泣する茉穂美をなす術もなく見上げる花凛とナハラムは、聖剣皇から直々に命じられた重大任務を実行に移す時が訪れたことを覚ったのである。
先程とは意味合いの違う目配せを獣使将軍から受けた念術師範は小さく頷くと次の刹那には両膝に突っ伏して咽び泣く艇長の背後の空間に漂っていた!
ナハラム十八番の瞬間移動+空中浮遊の複合技である。
むろん、全力で自我の殻に閉じ籠もっている美人艇長がそれに感づくはずもない…。
「参謀長、お赦し下さい…」
白い指先を揃えた小さな左掌が激しく乱打しているであろう心臓の裏あたりに乗せられ、「フンッ!」と術者が〈氣〉を発した瞬間、荒ぶる傷心の女神はあっさりと意識を失ったのである…。
かくてみごとに施術を成し遂げた念術師は慇懃に愛する美女の上体を抱え上げてシートの背凭れに寄りかからせる。
「さすがね…でも、あの“真性クールビューティー”があそこまで感情を剥き出しにするなんて…こんなにおったまげたこと生まれて初めてよ…。
でもムリもないかもね…彼女が日頃抱え込んでるとてつもない仕事量を考えたら、あたしだったらとてもあんな程度のバクハツじゃ済まない…間違いなく発狂して、取り返しのつかない事件を起こすに違いないわ…」
「それを誰よりも理解しておられるからこそ、聖剣皇様はこの遠征を新生帝界聖衛軍発足以来の激務によるストレスの蓄積で精神&肉体の両面で限界を迎えていた参謀長のスペシャルリフレッシュタイムに指定されたのですわッ!
つまり全ては偉大なあのお方の見立て通り進んでいるのであり、バアルによる太鬼の特抜力吸収が完了したことで任務の第一段階は無事終了したことになります。
後は母校の名誉を穢し、あろうことか負極界の走狗と成り果てた不肖の後輩どもへの愛あるお仕置きが残るばかりですが、新たなる負極界仕込みの怪物が出現して当初の予定より大幅にリスクが増した以上、むしろこのまま戦線を離脱して帰界するのが得策と思われますが…。
もとより聖剣皇様も太鬼の弱体化と参謀長のリフレッシュ以外はさほど重視しておらぬご様子でしたし…」
黒蝶仮面の真情の吐露を努めて打ち消すかのように天才念術師が彼女には珍しく強い口調でこう言い放ち、実はそれを待っていたかのようなウキウキした口ぶりで花凛も同意する。
「大賛成ッ!
それに朔丸は最初から地上に残って【星渕浄化作戦】に従事する予定だったんだから怨みに思ったりしないだろうし、アイツと親友のバアルが自前の【遊撃亜空艦】に囲ってる七獣刃衆とやらもそろそろスタンバイOKだろうしねッ!
──よっしゃ決まったッ!
そしたらまずは我ら女性陣の星である麗しき森藤参謀長の日頃の労に満腔の敬意を表して、聖衛軍最高級の【心身超回復美容睡眠槽】へお運びするとしましょうかッ!!」
✦
二人が協働して発動させた強力な念動力によって床上1.5メートルの空間を大きく頤をのけ反らせて浮遊する失神状態の森藤茉穂美を挟むようにして通路に出た花凛とナハラムであったが、数メートル先の空間に淡いクリーム色の艇内灯の光を浴びて佇立する緑衣の剣者を発見して思わず立ち止まる。
「剣者様…」
当然この展開を予期していたらしい白衣の念術師の呼びかけを合図にして、これも予想していたコメントが返された。
「不躾ながら、事情は聞かせてもらった…。
されど皮肉なことに、わしもまた仲間外れにされておったようじゃな…。
無事帰界が叶うならば、ここは一つ聖剣皇にその深慮について念入りな説明を求めねばならんどころじゃて…。
それはともかく、君たちの好判断には全面的な賛意を表明しておこう。
ナハラム嬢が看破したとおり、あの仮面魔人はD‐EYESどころではない、それこそ全盛期の大教帝ババイヴ=ゴドゥエヴンと同等か、或いは凌駕するほどに危険な破壊者じゃ…!
されどそれゆえか実に久々…それこそ数十年ぶりににこの老体の血潮が滾っておるのも事実──誠に勝手ながら出陣させて貰うぞ。
なお、万一この凄まじい戦場にて生き残るという僥倖に恵まれることあらば、引き続き葵拳兵団長の指揮下に入って彼の使命に一臂の力を供する所存ゆえ、諸君は自身と森藤参謀長の安全を第一として、迷うことなく直ちに帰界されんことを衷心から進言させて頂く…!」
早くも獣使将軍の横槍が入ったがこれは想定済みのことであり、茉穂美は構わず続ける。
「実はそうでもないのよ…。
どうやら彼、ある意味我が軍に対してとんでもない背徳行為に出た疑いがあるの…!」
穏やかではないワードが飛び出したことで顔を見合わせる花凛とナハラムであったが、容疑者が容疑者であるためか、その表情に真剣味は窺われない…。
「それは穏やかではありませんね。
ですが、もし艇長が仰っているのが太鬼真護氏の特抜力の大幅低下ということなのでしたら、それは致し方ない事象と申し上げるしかないというのがわたくしの見解なのでございますが…」
「な、何ですって…!?
それは一体どういうことなのかしら…説明してもらえる?」
“面白いことになってきた”と言わんばかりにニヤつく獣使将軍と軽く目配せを交わした念術筆頭師範は、茉穂美と対話する時の常である深い敬意を込めた真剣な眼差しでしっかりと相手の双眸を捉えながらも驚くべき情報を開示する。
「…最初に申し上げておきますが、これは決して聖剣皇様が森藤艇長を蔑ろにしたということではなく、あくまでも聖衛軍の勝利に向けて必要な措置であったのであり、その反動に対しての措置は遠征隊全員が弱体化した太鬼氏を全力で支援せよ、というものであったのです…!」
されどこの簡略化された状況説明を聞き終えると同時に茉穂美の脳内は真っ白、そして顔色は蒼白となり、
「どうして…私だけが総代から指示を受けていないの…!?」
と呟くのがやっとなのであった。
「それは、貴女の心を千々に乱した太鬼を賢明なる総代が徹底して危険視…いいえ、心底敵視されておられるからよ。
茉穂…艇長、冷静になって。
そもそもアイツが誰の系譜に連なるのか考えてみてちょうだい──バラド=グフール…世が世ならペトゥルナワスに悪魔の帝国を築き上げて善良な獣民たちに塗炭の苦しみを味わわせていた可能性がとてつもなく大きい、曰く付きの魔強士族よッ!
しかもナハラムによると、謁見の度に四元総代は仰っていたそうよ──“グフールの危険性は到底シェザードどころではない…もし当主が天助ともいうべき病によって急逝すること無くば、その宿痾ともいうべきとてつもない偏見=優生思想が実現されていた蓋然性は高く、最悪の場合〈獣民人口〉は現在の10万分の1以下になっていたおそれがある”、と…」
これまで茉穂美からただの一度も浴びたことのないキツい視線を向けられたナハラムは悲しげに俯きながら、
「…父もたしかにそう申しておりました…」
と呟くように同意する。
「……」
一方の黒蝶仮面はあたかも聖剣皇が乗り移ったかのごとく一瀉千里といった勢いでその思惑を代弁する。
「つまり、かくのごとき邪悪な魔強士の末裔を本軍に加えることには聖剣皇としても大きなためらいがあるが、とはいえこの鬼っ子を野に放つのはそれに倍する無責任な行為…そこでそれとなく魔霊の意見を聴取したところ、全てではないにせよ特抜力の最も危険な部分の奪取は可能ということであったので、この地上遠征を奇貨として実行に移させると…!」
「……」
表情を凍り付かせたまま無言で虚空を睨む艇長を、ナハラムが気遣わしそうに見つめるのに業を煮やした花凛が一段と声を荒げてまくし立てる。
「しかも、アイツの母親…100%異世界人のクセにヒトの良い八重樫学園長を誑し込んでとんでもない怪物を産み落とし、呆れたことに悪霊みたいに我が母校に取り憑いてかわいい後輩たちの清らかな童貞を片っ端から狩り続ける大女怪…たしか名前は太鬼純華っていったっけ!?
もちろん戦闘的特抜力のカタマリであるセガレが一番ヤバいんだけど、幸いにも今んとこはまだ牙を剥き出しちゃいない…でもあの淫乱BBAがやってることはある意味最もキケンで卑劣な侵略行為よッッ!!」
「──そんなことは訊いてないッッ!!!」
突如発せられた裂帛の叫びに異世界のハイテクメカで埋め尽くされた操縦室は文字通り震撼し、二人の若き軍幹部は呆然と同年代の上司を見つめる。
しかし森藤茉穂美の代名詞ともいうべき、たしかな実力に裏打ちされた威厳ある落ち着きは無残に剥げ落ち、頑是ない幼女のごとく半狂乱になった聖衛軍No.2は艇長席から荒々しく立ち上がって眼下の部下たちを般若の形相で睨み下ろすのであった!
「あたしを誰だと思ってるのッ!?
泣く子も黙る帝界聖衛軍副将の森藤茉穂美情報参謀長よッ!!
そのあたしが、下っ端のアンタたちですら知ってるありふれた情報を何で知らされてないワケッ!?
こんなに…こんなに…それこそ青春の全てを犠牲にしてあの方に尽くしてきたこのあたしがどうしてここまで貶められなくちゃならないのッ!?
ねえ花凛ッ、どうしてなのよッ!?
どう考えても、アンタよりあたしの方が貢献度は上でしょうがッ!?
ちきしょうッ!バカにしやがってッッ!!
もう二度と、あんな人でなしを聖剣皇だなんで崇めてやるもんかッ!
これ以上舐められてたまるかッ!!
えーんッ!えーんッ!!ええ~んッッ!!!」
「茉穂美…」
「参謀長…」
勇躍起立したはいいものの、すぐにくなくなとシートに崩れ落ちて両掌で貌を覆いつつ号泣する茉穂美をなす術もなく見上げる花凛とナハラムは、聖剣皇から直々に命じられた重大任務を実行に移す時が訪れたことを覚ったのである。
先程とは意味合いの違う目配せを獣使将軍から受けた念術師範は小さく頷くと次の刹那には両膝に突っ伏して咽び泣く艇長の背後の空間に漂っていた!
ナハラム十八番の瞬間移動+空中浮遊の複合技である。
むろん、全力で自我の殻に閉じ籠もっている美人艇長がそれに感づくはずもない…。
「参謀長、お赦し下さい…」
白い指先を揃えた小さな左掌が激しく乱打しているであろう心臓の裏あたりに乗せられ、「フンッ!」と術者が〈氣〉を発した瞬間、荒ぶる傷心の女神はあっさりと意識を失ったのである…。
かくてみごとに施術を成し遂げた念術師は慇懃に愛する美女の上体を抱え上げてシートの背凭れに寄りかからせる。
「さすがね…でも、あの“真性クールビューティー”があそこまで感情を剥き出しにするなんて…こんなにおったまげたこと生まれて初めてよ…。
でもムリもないかもね…彼女が日頃抱え込んでるとてつもない仕事量を考えたら、あたしだったらとてもあんな程度のバクハツじゃ済まない…間違いなく発狂して、取り返しのつかない事件を起こすに違いないわ…」
「それを誰よりも理解しておられるからこそ、聖剣皇様はこの遠征を新生帝界聖衛軍発足以来の激務によるストレスの蓄積で精神&肉体の両面で限界を迎えていた参謀長のスペシャルリフレッシュタイムに指定されたのですわッ!
つまり全ては偉大なあのお方の見立て通り進んでいるのであり、バアルによる太鬼の特抜力吸収が完了したことで任務の第一段階は無事終了したことになります。
後は母校の名誉を穢し、あろうことか負極界の走狗と成り果てた不肖の後輩どもへの愛あるお仕置きが残るばかりですが、新たなる負極界仕込みの怪物が出現して当初の予定より大幅にリスクが増した以上、むしろこのまま戦線を離脱して帰界するのが得策と思われますが…。
もとより聖剣皇様も太鬼の弱体化と参謀長のリフレッシュ以外はさほど重視しておらぬご様子でしたし…」
黒蝶仮面の真情の吐露を努めて打ち消すかのように天才念術師が彼女には珍しく強い口調でこう言い放ち、実はそれを待っていたかのようなウキウキした口ぶりで花凛も同意する。
「大賛成ッ!
それに朔丸は最初から地上に残って【星渕浄化作戦】に従事する予定だったんだから怨みに思ったりしないだろうし、アイツと親友のバアルが自前の【遊撃亜空艦】に囲ってる七獣刃衆とやらもそろそろスタンバイOKだろうしねッ!
──よっしゃ決まったッ!
そしたらまずは我ら女性陣の星である麗しき森藤参謀長の日頃の労に満腔の敬意を表して、聖衛軍最高級の【心身超回復美容睡眠槽】へお運びするとしましょうかッ!!」
✦
二人が協働して発動させた強力な念動力によって床上1.5メートルの空間を大きく頤をのけ反らせて浮遊する失神状態の森藤茉穂美を挟むようにして通路に出た花凛とナハラムであったが、数メートル先の空間に淡いクリーム色の艇内灯の光を浴びて佇立する緑衣の剣者を発見して思わず立ち止まる。
「剣者様…」
当然この展開を予期していたらしい白衣の念術師の呼びかけを合図にして、これも予想していたコメントが返された。
「不躾ながら、事情は聞かせてもらった…。
されど皮肉なことに、わしもまた仲間外れにされておったようじゃな…。
無事帰界が叶うならば、ここは一つ聖剣皇にその深慮について念入りな説明を求めねばならんどころじゃて…。
それはともかく、君たちの好判断には全面的な賛意を表明しておこう。
ナハラム嬢が看破したとおり、あの仮面魔人はD‐EYESどころではない、それこそ全盛期の大教帝ババイヴ=ゴドゥエヴンと同等か、或いは凌駕するほどに危険な破壊者じゃ…!
されどそれゆえか実に久々…それこそ数十年ぶりににこの老体の血潮が滾っておるのも事実──誠に勝手ながら出陣させて貰うぞ。
なお、万一この凄まじい戦場にて生き残るという僥倖に恵まれることあらば、引き続き葵拳兵団長の指揮下に入って彼の使命に一臂の力を供する所存ゆえ、諸君は自身と森藤参謀長の安全を第一として、迷うことなく直ちに帰界されんことを衷心から進言させて頂く…!」
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