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第五章 THUNDER⚡️ANGELSの胎動
七獣刃衆参上!〈前編〉
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シャワーで身を清めた蘭奈と隼矢が聖防霊の指示を受けて50坪ほどの庭に出ると、そこには〈隠形態〉を解いた2体の人工戦士が待ち受けていた。
ちなみに舘森家の別宅の敷地は百坪ほどの広さで、もとより周辺環境の閑静さを第一に選択されていることに加え、主が大のガーデンパーティー(しかも自宅ではとても開催を憚られるほどのかなり羽目を外したスペシャル版)好きとあって塀を2メートル超まで増高させたことにより数少ない通行人たちに内部を見咎められる心配は皆無といえた。
とはいえ人目を気にせずに済む代償として、今年免許を取得したばかりの蘭奈が愛車の中古軽自動車で恋人をピックアップして片道40分のロングドライブを強いられているのだが…。
「──あらあ、めっちゃカッコいいじゃんッ!
さすが蛸ノ宮博士、デザインセンスも秀逸だわあッ!」
玄関前で片膝を着いて待っていたのは、薄闇の中でも一際鮮やかなカラーリングを施された、武骨な京龍丸や牙心坊とは対照的に瑰麗なスタイルの人工戦士たちであった。
向かって左側の、いかにも蘭奈とウマが合いそうな腰まで届く鬣と、上半身は胴体及び両肩と肘から手首まで、下半身は腰部と両脛を目の覚めるようなショッキングピンクで染め上げられた超硬金属のプロテクターを装着した真紅のボディも強烈だが、右側の全身濃紫色の、蝶類そのものの頭部と巨大な羽根を有する、蟷螂人間を彷彿とさせる幻護郎と好対照の個体から発する妖しい燐光も決して存在感で負けてはいない──そして2体とも雷の聖使と相棒を搬送するため負極界人と対する時のごとく3メートル近く“プチ巨大化”していた。
蘭奈の嘆賞にも明らかなようにカップルが彼らを目の当たりにするのは初めてであったがもちろんエジュケーには周知の存在であり、依然両者に憑依している彼が簡潔に解説する。
「蘭奈、あまりはしゃぐな…ちなみに左の戦士の名は美沙門、右は天香蝶ということだ──見ての通り両者とも〈女性型〉であるためか何とも華やいだ装いだが、ドクターによれば実は現在8体存在している中でも断トツの“最強ツートップ”であり、特に美沙門は戦士軍の絶対的エースにしてリーダー格らしい…。
ともあれ今後、負極界との戦いが激化するにつれて人工戦士と共闘する機会も増えるだろうから今のうちに積極的にコミュニケーションを取って信頼関係を構築しておくべきだな…うむッ、何者だッ!?」
聖防霊の険しい誰何とほぼ同時に、蘭奈たちもその存在に気付いていた──そう、梯子でも使わない限り常人では到達不可能な高塀にズラリと居並んだ、大時代な鎧兜に身を固め、あたかも忍者か諸国武者修行中の武芸者のごとく自慢の大業物を背負った凶々しい影どもに!
そして次の刹那、ド真ん中で仁王立ちする緋縅の武者が宵闇を切り裂く大音声を張り上げた!
「…甚だ無礼ながら、不測の事態に備えてここから名乗りを挙げさせて頂くッ!
われらこそはこの地球を守護する最強にして最後の砦である戦士共同体、【虹岡霊術団】所属の“最精鋭部隊”【七獣刃衆】であるッッ!!
──それではゆくぞッ!
私は英紅馬ッ、以後お見知り置き頂くッ!!」
間髪入れず、左端のひょろ長い白武者が続く。
「オレは阿久地白鶴というッ!よろしくなッ!!」
簡潔な名乗りが終わると、意表を衝いて?右隣の青武者ではなく右端の精悍な黒武者が叫んだ。
「拙者は三那賀黒彪だッ!
よく間違えられるのだが、くれぐれも言っておくぞッ、くろひょうではない、こくひょうだとッ!!
ここまで念押しして、もしも呼び違えるようなら…斬るッッ!!!」
ここでようやく淫獣人第1号を連想させるチビデブ体型の青色の番になった。
「それがしは早雲蒼狼太であるッ!
名は体を表すの諺どおり、最重要の剣技に留まらずあらゆる面において七獣刃衆最速を自負しておるッ!!」
一瞬、他の鎧武者たちから不穏な気配が立ち昇ったが、それを打ち消すかのように鎧の色と意匠を除けば瓜二つのスタイルである右から二番目の紫色が絶叫した。
「わしは早雲紫虎郎──と名乗れば察せられたやも知れんが蒼狼太の双子の弟だッ!
尤も些か大言壮語の気味のある兄とは大いに異なり謹厳実直を信条としておるゆえ、重大な用向きはわしに依頼した方が安心確実じゃぞ…」
この放言(挑発?)に面目を潰された蒼狼太が「年少者の分際で兄を愚弄するとは何事かッ!?」と瞬時に激昂し、今にも背中の太刀を引き抜かんとするものの、「蒼狼太氏、客前であるぞ、控えられいッ!」と統率者らしい紅馬に一喝されて歯軋りしつつも押し黙る。
「──全く、いつもこれだ…。
英どのと婦女子の人気を二分する七獣刃衆きっての美形にして、色事の術と経験でははるかに凌駕するこの矢場井巳緑の値千金の名乗りを台無しにしおってからに…!」
左から三番目のスマートな長身の緑色の武者はそれだけボヤいて口を噤んでしまった。
「…せっかくの勢いが、いつもここで腰砕けになるのは何とかならんものか…。
──それでは気を取り直し、七獣刃衆の名誉のためにもオレ様が締めくくろうッ!
現代日本の浮薄な空気を代表するかのごとき繊弱なる男女よ、目一杯背筋を伸ばし、耳の穴をかっぽじって聞くがよい──誰あろう、われこそが“七獣刃衆随一の頭脳”を誇る是羽黄狗蔵だッッ!!」
小柄な黄色武者が名乗り終えるや、あたかもそれが合図のように「われら七獣刃衆ッッ!!!」と声を合わせて大見得を切った一同が一斉に塀を蹴り、闇に舞った──!
ちなみに舘森家の別宅の敷地は百坪ほどの広さで、もとより周辺環境の閑静さを第一に選択されていることに加え、主が大のガーデンパーティー(しかも自宅ではとても開催を憚られるほどのかなり羽目を外したスペシャル版)好きとあって塀を2メートル超まで増高させたことにより数少ない通行人たちに内部を見咎められる心配は皆無といえた。
とはいえ人目を気にせずに済む代償として、今年免許を取得したばかりの蘭奈が愛車の中古軽自動車で恋人をピックアップして片道40分のロングドライブを強いられているのだが…。
「──あらあ、めっちゃカッコいいじゃんッ!
さすが蛸ノ宮博士、デザインセンスも秀逸だわあッ!」
玄関前で片膝を着いて待っていたのは、薄闇の中でも一際鮮やかなカラーリングを施された、武骨な京龍丸や牙心坊とは対照的に瑰麗なスタイルの人工戦士たちであった。
向かって左側の、いかにも蘭奈とウマが合いそうな腰まで届く鬣と、上半身は胴体及び両肩と肘から手首まで、下半身は腰部と両脛を目の覚めるようなショッキングピンクで染め上げられた超硬金属のプロテクターを装着した真紅のボディも強烈だが、右側の全身濃紫色の、蝶類そのものの頭部と巨大な羽根を有する、蟷螂人間を彷彿とさせる幻護郎と好対照の個体から発する妖しい燐光も決して存在感で負けてはいない──そして2体とも雷の聖使と相棒を搬送するため負極界人と対する時のごとく3メートル近く“プチ巨大化”していた。
蘭奈の嘆賞にも明らかなようにカップルが彼らを目の当たりにするのは初めてであったがもちろんエジュケーには周知の存在であり、依然両者に憑依している彼が簡潔に解説する。
「蘭奈、あまりはしゃぐな…ちなみに左の戦士の名は美沙門、右は天香蝶ということだ──見ての通り両者とも〈女性型〉であるためか何とも華やいだ装いだが、ドクターによれば実は現在8体存在している中でも断トツの“最強ツートップ”であり、特に美沙門は戦士軍の絶対的エースにしてリーダー格らしい…。
ともあれ今後、負極界との戦いが激化するにつれて人工戦士と共闘する機会も増えるだろうから今のうちに積極的にコミュニケーションを取って信頼関係を構築しておくべきだな…うむッ、何者だッ!?」
聖防霊の険しい誰何とほぼ同時に、蘭奈たちもその存在に気付いていた──そう、梯子でも使わない限り常人では到達不可能な高塀にズラリと居並んだ、大時代な鎧兜に身を固め、あたかも忍者か諸国武者修行中の武芸者のごとく自慢の大業物を背負った凶々しい影どもに!
そして次の刹那、ド真ん中で仁王立ちする緋縅の武者が宵闇を切り裂く大音声を張り上げた!
「…甚だ無礼ながら、不測の事態に備えてここから名乗りを挙げさせて頂くッ!
われらこそはこの地球を守護する最強にして最後の砦である戦士共同体、【虹岡霊術団】所属の“最精鋭部隊”【七獣刃衆】であるッッ!!
──それではゆくぞッ!
私は英紅馬ッ、以後お見知り置き頂くッ!!」
間髪入れず、左端のひょろ長い白武者が続く。
「オレは阿久地白鶴というッ!よろしくなッ!!」
簡潔な名乗りが終わると、意表を衝いて?右隣の青武者ではなく右端の精悍な黒武者が叫んだ。
「拙者は三那賀黒彪だッ!
よく間違えられるのだが、くれぐれも言っておくぞッ、くろひょうではない、こくひょうだとッ!!
ここまで念押しして、もしも呼び違えるようなら…斬るッッ!!!」
ここでようやく淫獣人第1号を連想させるチビデブ体型の青色の番になった。
「それがしは早雲蒼狼太であるッ!
名は体を表すの諺どおり、最重要の剣技に留まらずあらゆる面において七獣刃衆最速を自負しておるッ!!」
一瞬、他の鎧武者たちから不穏な気配が立ち昇ったが、それを打ち消すかのように鎧の色と意匠を除けば瓜二つのスタイルである右から二番目の紫色が絶叫した。
「わしは早雲紫虎郎──と名乗れば察せられたやも知れんが蒼狼太の双子の弟だッ!
尤も些か大言壮語の気味のある兄とは大いに異なり謹厳実直を信条としておるゆえ、重大な用向きはわしに依頼した方が安心確実じゃぞ…」
この放言(挑発?)に面目を潰された蒼狼太が「年少者の分際で兄を愚弄するとは何事かッ!?」と瞬時に激昂し、今にも背中の太刀を引き抜かんとするものの、「蒼狼太氏、客前であるぞ、控えられいッ!」と統率者らしい紅馬に一喝されて歯軋りしつつも押し黙る。
「──全く、いつもこれだ…。
英どのと婦女子の人気を二分する七獣刃衆きっての美形にして、色事の術と経験でははるかに凌駕するこの矢場井巳緑の値千金の名乗りを台無しにしおってからに…!」
左から三番目のスマートな長身の緑色の武者はそれだけボヤいて口を噤んでしまった。
「…せっかくの勢いが、いつもここで腰砕けになるのは何とかならんものか…。
──それでは気を取り直し、七獣刃衆の名誉のためにもオレ様が締めくくろうッ!
現代日本の浮薄な空気を代表するかのごとき繊弱なる男女よ、目一杯背筋を伸ばし、耳の穴をかっぽじって聞くがよい──誰あろう、われこそが“七獣刃衆随一の頭脳”を誇る是羽黄狗蔵だッッ!!」
小柄な黄色武者が名乗り終えるや、あたかもそれが合図のように「われら七獣刃衆ッッ!!!」と声を合わせて大見得を切った一同が一斉に塀を蹴り、闇に舞った──!
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