THUNDER⚡️ANGELS

幾橋テツミ

文字の大きさ
53 / 170
第五章 THUNDER⚡️ANGELSの胎動

七獣刃衆参上!〈前編〉

しおりを挟む
 シャワーで身を清めた蘭奈と隼矢が聖防霊の指示を受けて50坪ほどの庭に出ると、そこには〈隠形態ステルスモード〉を解いた2体の人工戦士が待ち受けていた。

 ちなみに舘森家の別宅の敷地は百坪ほどの広さで、もとより周辺環境の閑静さを第一に選択チョイスされていることに加え、主が大のガーデンパーティー(しかも自宅ではとても開催を憚られるほどのかなり羽目を外したスペシャル版)好きとあって塀を2メートル超まで増高させたことにより数少ない通行人たちに内部を見咎められる心配は皆無といえた。

 とはいえ人目を気にせずに済む代償として、今年免許を取得したばかりの蘭奈が愛車の中古軽自動車で恋人をピックアップして片道40分のロングドライブを強いられているのだが…。

「──あらあ、めっちゃカッコいいじゃんッ!

 さすが蛸ノ宮博士、デザインセンスも秀逸だわあッ!」

 玄関前で片膝を着いて待っていたのは、薄闇の中でも一際鮮やかなカラーリングを施された、武骨な京龍丸や牙心坊とは対照的に瑰麗なスタイルの人工戦士たちであった。

 向かって左側の、いかにも腰まで届くたてがみと、上半身は胴体及び両肩と肘から手首まで、下半身は腰部と両脛を目の覚めるようなショッキングピンクで染め上げられた超硬金属のプロテクターを装着した真紅のボディも強烈だが、右側の全身濃紫色バイオレットの、蝶類そのものの頭部と巨大な羽根を有する、蟷螂人間を彷彿とさせる幻護郎と好対照の個体から発する妖しい燐光も決して存在感で負けてはいない──そして2体とも雷の聖使と相棒を搬送するため負極界人と対する時のごとく3メートル近く“プチ巨大化”していた。

 蘭奈の嘆賞にも明らかなようにカップルが彼らを目の当たりにするのは初めてであったがもちろんエジュケーには周知の存在であり、依然両者に憑依している彼が簡潔に解説する。

「蘭奈、あまりはしゃぐな…ちなみに左の戦士の名は美沙門びしゃもん、右は天香蝶てんこうちょうということだ──見ての通り両者とも〈女性型〉であるためか何とも華やいだ装いだが、ドクターによれば実は現在8体存在している中でも断トツの“最強ツートップ”であり、特に美沙門は戦士軍の絶対的エースにしてリーダー格らしい…。

 ともあれ今後、負極界との戦いが激化するにつれて人工戦士かれらと共闘する機会も増えるだろうから今のうちに積極的にコミュニケーションを取って信頼関係を構築しておくべきだな…うむッ、何者だッ!?」

 聖防霊の険しい誰何すいかとほぼ同時に、蘭奈たちもその存在に気付いていた──そう、梯子でも使わない限り常人では到達不可能な高塀にズラリと居並んだ、に!

 そして次の刹那、ド真ん中で仁王立ちする緋縅ひおどしの武者が宵闇を切り裂く大音声だいおんじょうを張り上げた!

「…甚だ無礼ながら、不測の事態に備えてここから名乗りを挙げさせて頂くッ!

 われらこそはこの地球ほしを守護する最強にして最後の砦である戦士共同体、【虹岡霊術団】所属の“最精鋭部隊”【七獣刃衆しちじゅうじんしゅう】であるッッ!!

 ──それではゆくぞッ!

 私ははなぶさ紅馬こうまッ、以後お見知り置き頂くッ!!」

 間髪入れず、左端のひょろ長い白武者が続く。

「オレは阿久地あくじ白鶴はっかくというッ!よろしくなッ!!」

 簡潔な名乗りが終わると、意表を衝いて?右隣の青武者ではなく右端の精悍な黒武者が叫んだ。

「拙者は三那賀みなが黒彪こくひょうだッ!

 よく間違えられるのだが、くれぐれも言っておくぞッ、!!

 ここまで念押しして、もしも呼びたがえるようなら…斬るッッ!!!」

 ここでようやく淫獣人第1号を連想させるチビデブ体型の青色の番になった。

「それがしは早雲はやくも蒼狼太そうろうたであるッ!

 !!」

 一瞬、他の鎧武者たちから不穏な気配が立ち昇ったが、それを打ち消すかのように鎧の色と意匠を除けば瓜二つのスタイルである右から二番目の紫色が絶叫した。

「わしは早雲紫虎郎しころう──と名乗れば察せられたやも知れんが蒼狼太の双子の弟だッ!

 尤も些か大言壮語の気味のある兄とは大いに異なり謹厳実直を信条としておるゆえ、重大な用向きはわしに依頼した方が安心確実じゃぞ…」

 この放言(挑発?)に面目を潰された蒼狼太が「年少者の分際で兄を愚弄するとは何事かッ!?」と瞬時に激昂し、今にも背中の太刀を引き抜かんとするものの、「蒼狼太うじ、客前であるぞ、控えられいッ!」と統率者らしい紅馬に一喝されて歯軋りしつつも押し黙る。

「──全く、いつもこれだ…。

 英どのと婦女子の人気を二分する七獣刃衆きっての美形にして、色事のわざと経験でははるかに凌駕するこの矢場井やばい巳緑みりょくの値千金の名乗りを台無しにしおってからに…!」

 左から三番目のスマートな長身の緑色の武者はそれだけボヤいて口を噤んでしまった。

「…せっかくの勢いが、いつもここで腰砕けになるのは何とかならんものか…。

 ──それでは気を取り直し、七獣刃衆の名誉のためにもオレ様が締めくくろうッ!

 現代日本の浮薄な空気を代表するかのごとき繊弱なる男女よ、目一杯背筋を伸ばし、耳の穴をかっぽじって聞くがよい──誰あろう、われこそが“七獣刃衆随一の頭脳”を誇る是羽これは黄狗蔵きくぞうだッッ!!」

 小柄な黄色武者が名乗り終えるや、あたかもそれが合図のように「われら七獣刃衆ッッ!!!」と声を合わせて大見得を切った一同が一斉に塀を蹴り、闇に舞った──!

 



 












 



 


 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...