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第五章 THUNDER⚡️ANGELSの胎動
殲闘霊獣第1号来襲!〈後編〉
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「──越水ルリア、全くいい度胸してるじゃない…さすがに傍流とはいえあのお方の血統に属するだけのことはあるわ…!」
雷の聖使のマンションから北におよそ2キロあまりの県最大の運動公園内の有料駐車場に駐めた、練獣師ノディグが使用しているものよりグレードの高い黒のラージサイズバンの後部座席でリュザーンド星の神霊闘術師・メラミオに憑依された美貌の女子大生・桜城和紗が不敵な微笑を浮かべていた。
むろんスモークガラスに遮られて車内を覗くことは不可能であるため、赤紫に染めた涼やかな紗の生地で誂えたローブを纏った彼女の勇姿を目撃することは叶わぬ。
しかも車内に身を置いているにもかかわらず神霊闘術を行使する時の常としてフードが目深く下ろされ、更に姿勢が前傾しているためその表情は運転席に陣取るベテラン練獣師にも窺う術はなかった──もちろん同志の戦法を熟知するバラムがそんな野暮な振る舞いに及ぶはずもなかったが。
そう、メラミオがかくのごとき姿勢であるのには当然理由があり、彼女は膝の上に乗せた直径20センチあまりの【操霊覇空鏡】を一心に凝視していたのである。
基本的に殲闘霊獣を駆使する〈遠距離戦〉を得意とする彼女にとって覇空鏡は必携であり、傍らに置いた戦闘服と同じカラーの女性用のアタッシュケースから真っ先に取り出した【霊闘具】なのであった。
その形状は意外にも外枠をはじめ装飾といえるものは皆無であり、しかも覇空鏡という名こそ冠されてはいるものの通常の意味での鏡ですらなく、外見上は厚さ1センチほどの赤みがかった紫水晶の円盤に過ぎなかったが、メラミオの霊眼はそこに目下の〈戦場〉である越水ルリアの寝室の光景をありありと視ていたのである…。
「──ふふん、それならお望み通りアンタの自慢の躰を骨の髄までしゃぶり尽くさせて貰おうじゃない…!
さあチェリオル、ここからしばらく自由時間をあげるから、“自惚れ屋さんの淫乱女”を思う存分蹂躙しておやりッ!!」
一昨日の星王ザジナス=立山満寿也との交わりにおいて、それこそ本能の赴くままに青年神のごとき肉体を技倆の限りを尽くしてとことん堪能したことで彼の霊力をも我が物としたと確信する魔天使は、共にシャワーを浴びた後に思いもかけぬ贈り物を与えられたのである。
即ち、20回目の誕生プレゼントを兼ねた〈婚約指輪〉──0.5カラットの最高級ピンクサファイアを…。
かくて徐ろに貌を上げ、同時に紫のマニキュアに染められた指に嵌って煌めく宝石をかざして陶然たる眼差しを注ぎながら、それが約束してくれるであろう輝かしい未来に想いを馳せる和紗=メラミオであった…。
✦
「──はッ、あああッ!
…正体が精霊?である以上、そもそも重さがないはずなのに、本物の赤ん坊を抱いているかのようなこの〈質感〉と〈体温〉は何なのッ!?」
胸にかき抱いた存在のあまりにしたたかな現実感にベッド上で大きくのけ反ることを余儀なくされたルリアであったが、シーツに崩れ落ちて腕の中に目を向けた瞬間、彼の全身が再び青白い燐光に包まれていることを認めて戦慄した!
「くうぅッ、あ、ああ…し、しかもこわいミンチがいなくなったことですっかり安心したのか、生意気にもあたしの肌を小っちゃな舌でしつこくペロペロと舐め回して…はうッ…あ、ありえないッ!
こっ、この越水ルリア…雷の聖使ともあろう者がたかが赤ん坊の…それも実体すらないはずの幻影の愛撫に感じてしまうなんてッッ!!
そ、それにこの子、まるでスッポンみたいにあたしの躰に吸い付いて全く引き剥がせないじゃないのッ!?
で、でもこのままではあたしの生命力が最後の一雫まで吸い取られてしまうッ…!
か、かくなる上は手段を選んではいられない…いくら実体が無いとはいえこんな可愛い坊やに食らわせるのは気が引けるけど、渾身の雷撃を放つしかない──いくわよッッ!!」
されどいくら念じても何も起こらず、むしろ彼女の意図を嘲笑うかのように可憐な魔物の舌は勢いを増した──嗚呼、既に彼女の雷力は殲闘霊獣に吸い尽くされてしまったのであろうか!?
雷の聖使のマンションから北におよそ2キロあまりの県最大の運動公園内の有料駐車場に駐めた、練獣師ノディグが使用しているものよりグレードの高い黒のラージサイズバンの後部座席でリュザーンド星の神霊闘術師・メラミオに憑依された美貌の女子大生・桜城和紗が不敵な微笑を浮かべていた。
むろんスモークガラスに遮られて車内を覗くことは不可能であるため、赤紫に染めた涼やかな紗の生地で誂えたローブを纏った彼女の勇姿を目撃することは叶わぬ。
しかも車内に身を置いているにもかかわらず神霊闘術を行使する時の常としてフードが目深く下ろされ、更に姿勢が前傾しているためその表情は運転席に陣取るベテラン練獣師にも窺う術はなかった──もちろん同志の戦法を熟知するバラムがそんな野暮な振る舞いに及ぶはずもなかったが。
そう、メラミオがかくのごとき姿勢であるのには当然理由があり、彼女は膝の上に乗せた直径20センチあまりの【操霊覇空鏡】を一心に凝視していたのである。
基本的に殲闘霊獣を駆使する〈遠距離戦〉を得意とする彼女にとって覇空鏡は必携であり、傍らに置いた戦闘服と同じカラーの女性用のアタッシュケースから真っ先に取り出した【霊闘具】なのであった。
その形状は意外にも外枠をはじめ装飾といえるものは皆無であり、しかも覇空鏡という名こそ冠されてはいるものの通常の意味での鏡ですらなく、外見上は厚さ1センチほどの赤みがかった紫水晶の円盤に過ぎなかったが、メラミオの霊眼はそこに目下の〈戦場〉である越水ルリアの寝室の光景をありありと視ていたのである…。
「──ふふん、それならお望み通りアンタの自慢の躰を骨の髄までしゃぶり尽くさせて貰おうじゃない…!
さあチェリオル、ここからしばらく自由時間をあげるから、“自惚れ屋さんの淫乱女”を思う存分蹂躙しておやりッ!!」
一昨日の星王ザジナス=立山満寿也との交わりにおいて、それこそ本能の赴くままに青年神のごとき肉体を技倆の限りを尽くしてとことん堪能したことで彼の霊力をも我が物としたと確信する魔天使は、共にシャワーを浴びた後に思いもかけぬ贈り物を与えられたのである。
即ち、20回目の誕生プレゼントを兼ねた〈婚約指輪〉──0.5カラットの最高級ピンクサファイアを…。
かくて徐ろに貌を上げ、同時に紫のマニキュアに染められた指に嵌って煌めく宝石をかざして陶然たる眼差しを注ぎながら、それが約束してくれるであろう輝かしい未来に想いを馳せる和紗=メラミオであった…。
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「──はッ、あああッ!
…正体が精霊?である以上、そもそも重さがないはずなのに、本物の赤ん坊を抱いているかのようなこの〈質感〉と〈体温〉は何なのッ!?」
胸にかき抱いた存在のあまりにしたたかな現実感にベッド上で大きくのけ反ることを余儀なくされたルリアであったが、シーツに崩れ落ちて腕の中に目を向けた瞬間、彼の全身が再び青白い燐光に包まれていることを認めて戦慄した!
「くうぅッ、あ、ああ…し、しかもこわいミンチがいなくなったことですっかり安心したのか、生意気にもあたしの肌を小っちゃな舌でしつこくペロペロと舐め回して…はうッ…あ、ありえないッ!
こっ、この越水ルリア…雷の聖使ともあろう者がたかが赤ん坊の…それも実体すらないはずの幻影の愛撫に感じてしまうなんてッッ!!
そ、それにこの子、まるでスッポンみたいにあたしの躰に吸い付いて全く引き剥がせないじゃないのッ!?
で、でもこのままではあたしの生命力が最後の一雫まで吸い取られてしまうッ…!
か、かくなる上は手段を選んではいられない…いくら実体が無いとはいえこんな可愛い坊やに食らわせるのは気が引けるけど、渾身の雷撃を放つしかない──いくわよッッ!!」
されどいくら念じても何も起こらず、むしろ彼女の意図を嘲笑うかのように可憐な魔物の舌は勢いを増した──嗚呼、既に彼女の雷力は殲闘霊獣に吸い尽くされてしまったのであろうか!?
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