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第八章 魔島殲滅戦
宝麗仙宮崩壊⑩
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1週間後、アクメピア最強戦士との復讐戦に挑む3体の人工戦士への強化修復プランをコンソールに向き合って思案中の蒼頭星人は、5面に分割して使用中のスクリーンの中央部が突如暗転したのを受けて“またもやマスクド=カリギュラが乱入してきたのか!?”と一瞬緊張したが、数秒後そこに映し出されていたのは耽美的な意匠の真紅の仮面とマスクを纏った怪人よりも遥かに凶悪で威圧的な、全身をセルリアンブルーの超金属で鎧った魁偉な髑髏戦士のバストアップ映像であった!
「…き、君は一体、何者だッ!?」
この当然の誰何を受け、怪物は意外にも明朗な若者の声色で答えた。
「──はじめまして。
私はアトラス=ソードと申します…以後お見知り置きを。
現在、負極界平定に向けて日夜奮闘中の“超時空革命結社”銀魔星の指導者です」
この耳慣れない組織名に蛸ノ宮が戸惑っていると、青い髑髏仮面は微かに嗤ったように見えた。
「さしもの銀河系有数の大頭脳もわれらをご存じないとは…異世界の一つや二つ制圧した程度でのぼせ上がってはならんという何よりの証左ですな。
そう、勝って兜の緒を締めよとはまさにこのことです…反省しました」
「……?」
「──いえ、こちらの話です。
ところで偉大なる蛸ノ宮博士よ、お忙しい中無礼を承知でお邪魔したのは他でもありません…
あなたはだまされている。
マスクド=カリギュラことリュザーンド星王ザジナスは負極界浄化委員会の内紛により、たった今息を引き取りました…!」
「なッ、何だとッ!?」
淡々と述べられた仰天情報に慄然とする相手をどこか面白がるように銀魔星首領は続ける。
「ほう…やはり噂は真実だった──落ち着いたマリンブルーであった体色が私と同様のセルリアンを経て鮮やかなコバルトへと僅か数秒間で漸進的変化を遂げましたな…。
失敬、些か脱線しました。
お疑いになるのはご尤もですが、これは正真正銘の客観的事実です。
なお、先程は内紛と申し上げましたが、真相はあなたと因縁浅からぬ大教帝ババイヴ=ゴドゥエブンの追放後、負極界を事実上牛耳っているといっても過言ではない怪人物・イルージェ=カイツ星爵──彼の指示を受けたリュザーンド人医師の手によって調合され、愛飲する地酒に混入された強力な脳神経破壊毒によって錯乱状態となった挙句、とうとう自害へと追いやられてしまったのです…」
「ま、待ちたまえッ!
…リュザーンドの医師…まさかそれはケイファーという名の女医ではないのかッ…!?」
激しく取り乱す蛸ノ宮とは対照的に、この反応を予期していたものか、ソードはそっけなく頷いただけであった。
「し、しかしそれこそつい数時間前私はあの二人と対話したが、その時には星王に何らの異常も見受けられなかったぞッ!!」
鋼の髑髏戦鬼の白銀色に輝く機眼が天文学的距離を隔てた画面越しに蒼頭星人の瑠璃色に光る双眸をロックオンしつつ、衝撃の事実を告げる。
「…あれは、ケイファーの助手が成りすました偽者だったのですよ…。
そして、彼女は既にザジナスのアジトを脱出しました──しかもあなたの未来の妻を伴って…!」
「バ、バカなッ!?
ケイファーがルリアを連れ去っただとッ!?
と、ということは…
さっきあの女がいきなり通信してきたのは、私の意識を1週間後の決戦に向けさせることで宝麗仙宮への注意を遮断することにあったのだなッ!?
そ、そしてその間にまんまとルリアをッ…!!」
数秒の間を置いて、ソードは頷いた。
「──そういうことです。
つまり、あくまでも信義を重んじ、正々堂々たる戦いを志向するあなたの騎士道精神を逆手に取った卑劣な欺瞞戦術がまんまと奏功してしまったわけですね…」
既に興奮の極にあった蛸ノ宮だが、そこに凄まじい赫怒が加わったことで大きく波打った十本の触手はあたかも巨人が振るう剛鞭のごとく宇宙合金製の床に何度も叩き付けられ、やむにやまれぬ無念の叫びが飛翔基地内部を押し揺るがした。
「おッ、おのれ女狐めがッ!
よ、よくもだましおったなッッ!!
うぬぬぬぬぬッ、ゆッ、許せんッッ!
ぜ、絶対に逃がさんぞッ!!
先程宝麗仙宮を発ったというのならまだ月面の忍者艦隊には到達してはおるまいッ、これからすぐ追跡して必ずや捕獲してやるわッッ!!!」
されど、静かに投げかけられたアトラス=ソードの言葉がこの灼熱の決意を一気に冷却させてしまう。
「お怒りはご尤もですが、あれはおそるべき女です。
あなたに屈するぐらいなら、ためらうことなく掌中の珠である雷の聖使を道連れに宇宙の塵となる道を選ぶでしょう…!」
「うぐッ…!」
文字通り冷水を浴びせかけられたかのように硬直する蒼頭星人を再び奮起させるべく?銀魔星首領が新たな爆弾を投下する。
「…博士、カイツをはじめとする負極界新支配層はババイヴのごとき怪物的肉体を持たぬがゆえに、大教帝時代のゴリ押しパワープレイとは真逆の緻密で陰険な頭脳戦を基本戦術としております。
奥様のことはさぞご心配でしょうが、ルリア嬢を女神のごとく崇めるケイファーがその美身を危殆に瀕せしめる懸念は万に一つも無いでしょうから、奸智に長けた連中との闘争は入念に戦備を調えた上での長期戦で臨まれるのが賢明かと…。
それよりも、この情報こそが博士ご自身にとって喫緊の最重要性を帯びているものと考えますが、いかがでしょうかね?
──大教帝ババイヴ=ゴドゥエブンⅥ世がたった今、目覚めたようです。
やはり、驚かれたようですね。
ですがザジナスが死した今、その復活は時間の問題といえたでしょう。
はあ、彼の現在の状態ですか?
そうですね…あなたの分身である人工戦士が見舞った会心の一撃によって飛行能力こそ失ったままのようですが、それ以外は負極界に君臨した時と同レベルか、或いはそれ以上に超回復している模様です…。
と、いうことは──もしや追放前に施された精神改造手術はケイファーの手によって無効化され、いやむしろ更なる魔改造が加えられた可能性すら考えられるではありませんか…!?」
「…き、君は一体、何者だッ!?」
この当然の誰何を受け、怪物は意外にも明朗な若者の声色で答えた。
「──はじめまして。
私はアトラス=ソードと申します…以後お見知り置きを。
現在、負極界平定に向けて日夜奮闘中の“超時空革命結社”銀魔星の指導者です」
この耳慣れない組織名に蛸ノ宮が戸惑っていると、青い髑髏仮面は微かに嗤ったように見えた。
「さしもの銀河系有数の大頭脳もわれらをご存じないとは…異世界の一つや二つ制圧した程度でのぼせ上がってはならんという何よりの証左ですな。
そう、勝って兜の緒を締めよとはまさにこのことです…反省しました」
「……?」
「──いえ、こちらの話です。
ところで偉大なる蛸ノ宮博士よ、お忙しい中無礼を承知でお邪魔したのは他でもありません…
あなたはだまされている。
マスクド=カリギュラことリュザーンド星王ザジナスは負極界浄化委員会の内紛により、たった今息を引き取りました…!」
「なッ、何だとッ!?」
淡々と述べられた仰天情報に慄然とする相手をどこか面白がるように銀魔星首領は続ける。
「ほう…やはり噂は真実だった──落ち着いたマリンブルーであった体色が私と同様のセルリアンを経て鮮やかなコバルトへと僅か数秒間で漸進的変化を遂げましたな…。
失敬、些か脱線しました。
お疑いになるのはご尤もですが、これは正真正銘の客観的事実です。
なお、先程は内紛と申し上げましたが、真相はあなたと因縁浅からぬ大教帝ババイヴ=ゴドゥエブンの追放後、負極界を事実上牛耳っているといっても過言ではない怪人物・イルージェ=カイツ星爵──彼の指示を受けたリュザーンド人医師の手によって調合され、愛飲する地酒に混入された強力な脳神経破壊毒によって錯乱状態となった挙句、とうとう自害へと追いやられてしまったのです…」
「ま、待ちたまえッ!
…リュザーンドの医師…まさかそれはケイファーという名の女医ではないのかッ…!?」
激しく取り乱す蛸ノ宮とは対照的に、この反応を予期していたものか、ソードはそっけなく頷いただけであった。
「し、しかしそれこそつい数時間前私はあの二人と対話したが、その時には星王に何らの異常も見受けられなかったぞッ!!」
鋼の髑髏戦鬼の白銀色に輝く機眼が天文学的距離を隔てた画面越しに蒼頭星人の瑠璃色に光る双眸をロックオンしつつ、衝撃の事実を告げる。
「…あれは、ケイファーの助手が成りすました偽者だったのですよ…。
そして、彼女は既にザジナスのアジトを脱出しました──しかもあなたの未来の妻を伴って…!」
「バ、バカなッ!?
ケイファーがルリアを連れ去っただとッ!?
と、ということは…
さっきあの女がいきなり通信してきたのは、私の意識を1週間後の決戦に向けさせることで宝麗仙宮への注意を遮断することにあったのだなッ!?
そ、そしてその間にまんまとルリアをッ…!!」
数秒の間を置いて、ソードは頷いた。
「──そういうことです。
つまり、あくまでも信義を重んじ、正々堂々たる戦いを志向するあなたの騎士道精神を逆手に取った卑劣な欺瞞戦術がまんまと奏功してしまったわけですね…」
既に興奮の極にあった蛸ノ宮だが、そこに凄まじい赫怒が加わったことで大きく波打った十本の触手はあたかも巨人が振るう剛鞭のごとく宇宙合金製の床に何度も叩き付けられ、やむにやまれぬ無念の叫びが飛翔基地内部を押し揺るがした。
「おッ、おのれ女狐めがッ!
よ、よくもだましおったなッッ!!
うぬぬぬぬぬッ、ゆッ、許せんッッ!
ぜ、絶対に逃がさんぞッ!!
先程宝麗仙宮を発ったというのならまだ月面の忍者艦隊には到達してはおるまいッ、これからすぐ追跡して必ずや捕獲してやるわッッ!!!」
されど、静かに投げかけられたアトラス=ソードの言葉がこの灼熱の決意を一気に冷却させてしまう。
「お怒りはご尤もですが、あれはおそるべき女です。
あなたに屈するぐらいなら、ためらうことなく掌中の珠である雷の聖使を道連れに宇宙の塵となる道を選ぶでしょう…!」
「うぐッ…!」
文字通り冷水を浴びせかけられたかのように硬直する蒼頭星人を再び奮起させるべく?銀魔星首領が新たな爆弾を投下する。
「…博士、カイツをはじめとする負極界新支配層はババイヴのごとき怪物的肉体を持たぬがゆえに、大教帝時代のゴリ押しパワープレイとは真逆の緻密で陰険な頭脳戦を基本戦術としております。
奥様のことはさぞご心配でしょうが、ルリア嬢を女神のごとく崇めるケイファーがその美身を危殆に瀕せしめる懸念は万に一つも無いでしょうから、奸智に長けた連中との闘争は入念に戦備を調えた上での長期戦で臨まれるのが賢明かと…。
それよりも、この情報こそが博士ご自身にとって喫緊の最重要性を帯びているものと考えますが、いかがでしょうかね?
──大教帝ババイヴ=ゴドゥエブンⅥ世がたった今、目覚めたようです。
やはり、驚かれたようですね。
ですがザジナスが死した今、その復活は時間の問題といえたでしょう。
はあ、彼の現在の状態ですか?
そうですね…あなたの分身である人工戦士が見舞った会心の一撃によって飛行能力こそ失ったままのようですが、それ以外は負極界に君臨した時と同レベルか、或いはそれ以上に超回復している模様です…。
と、いうことは──もしや追放前に施された精神改造手術はケイファーの手によって無効化され、いやむしろ更なる魔改造が加えられた可能性すら考えられるではありませんか…!?」
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