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第八章 魔島殲滅戦
宝麗仙宮崩壊⑫
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「──いやあ、怖いですね。
このままではD‐EYESとやらは初陣を飾るどころかそもそも討つべき獲物を発見できぬかもしれませんな…うむ、何だスカーレット?」
画面右脇から現れた、一目で女性型と判別できる全身緋色の機械戦士(髑髏面に非ず)が着座している首領にひそひそと耳打ちするが、あまりに人間チックな仕草は逆に白々しさを強く印象付ける。
そしてアトラス=ソードが示した反応も些か過剰であった。
「ほ、本当かッ!?
うう~む、これはえらいことになったな…!
ヤツめ…一気に勝負をかけるつもりなのか…!?
だがこうなると作戦を一から立て直す必要があるな…」
ここでようやく?蒼頭星人の視線を意識した髑髏戦鬼は「や、これは失礼しました」と頭を下げる。
「…何か重大な事態が発生したようであるが、よければ内容を教えてはもらえぬかね…?」
遠慮がちな蛸ノ宮の求めにソードは大きく頷く。
「もちろんですとも。
とはいえ博士ご自身にとってこの一報がいかほど有益かは測りかねますが…。
たった今、アクメピアが負極界からの独立を宣言しました…!!」
──十数光年の距離を隔て、異形の怪物同士に奇妙な沈黙が落ちたが、蒼頭星人が当然の疑問を口にする。
「…それは他の三惑星にとって驚天動地の大異変であることは察せられるが、傍目にはあまりにも無謀なこの試みに果たしていかなる勝算があって踏み切ったのであろうか…!?」
「勝算、ですか…。
いやご尤も──それなくして全星民に多大な影響を及ぼす一大決定を下すのは、負極界で唯一王政を拒み終始集団指導体制を貫いてきたアクメピアの星史を否定するに等しい暴挙でしょうからね。
ただ、彼らの背中を最終的に押した張本人が誰なのかは明白です。
密かに第四惑星との軍事同盟を結び、彼の地を負極界侵攻の前線基地として利用しようともくろむ“帝界聖衛軍の聖剣皇”四元蓮馬──このアトラス=ソードにとっての不倶戴天の仇敵が、ババイヴの不在とザジナスの死に乗じて伸るか反るかの勝負に出たとしか考えられませんッ!
加えてヤツは長年に渡る私との因縁をこの機会に清算する腹積もりなのでしょうが、こちらこそ望むところですッ!!」
この昂然たる宣言に感じるものがあったのか、蛸ノ宮の返事には明らかな共感の響きがあった。
「──“強者の宿命”というべきか、貴君にも己の全てを賭して雌雄を決すべき敵が存在するのだな…!
されど、大教帝後の負極界に君臨するカイツ星爵とやらにとってこれは威信に関わる由々しき事態であろうから、ペティグロスはむろん、少なくともリュザーンドの助力を得て制圧に動くのは間違いあるまい。
そこに貴君の軍団が加わることとなれば、四元とやらが足場にせんとするアクメピアの前途に一筋の光明を見出すことも困難ではないのかな…!?」
意を得たり、とばかりに機械戦士の返答は早かった。
「さすがに鋭いご指摘ですね。
ですが失礼ながら、博士はこの四元蓮馬という人物の正体をご存知ない。
先程私は彼奴が第四惑星を前線基地として使おうと企んでいると言いましたがそれは文字通りの意味であり、四元が負極界最弱と蔑視されるアクメピアと結託したのは義侠心の発露などでは決してなく、真の目的である第三惑星への足がかりとしか考えていないということなのですッ!」
「だがペティグロスといえば問題のイルージェ=カイツの本拠地…。
ということは、聖剣皇とやらはアクメピアから現地に乗り込んで自らカイツの首級を挙げようとしているのでは…!?」
目下のところ、あくまで蓮馬を“異世界の英雄”視しているらしい蒼頭星人が口を挟むが、銀魔星首領は言下に否定した。
「いいえッ、たとえ表面上はそう見えたとしても内実は違いますッ!
彼奴が第三惑星に固執するのはたった一つの理由しかありません…それは、
ペティグロス史上最高の美少女星主・ミリェリーア=ティリスをわが物にするためなのですッッ!!
星渕特抜生時代から稀代の好色漢…いやこんな表現は生ぬるいッ、“色欲の権化”と白眼視されてきたアイツがここまでのリスクを冒して遠征してきたということは、彼女にそれだけの価値を見出したということ以外に考えられぬ──そして銀魔星に追いやられてペトゥルナワスに居場所を失いつつある現在、ペティグロスを新たな欲望実現の根城と定めたものでしょうッ!
もちろん退路を断ってこれだけの大勝負に出たからにはヤツなりに肚を括ってのことでしょうが、今さらその心得違いを糾しても聞く耳は持たぬでしょう──ならば必ずや立ち塞がるであろうカイツ相手にどう渡り合うか当面はお手並み拝見させてもらい、もしも星爵を打ち負かすことあらば、その時こそ目下の主戦場である第一惑星から現地に乗り込み、この邪悪極まる淫魔の命脈を今度こそ完全に絶ってやるつもりなのですッ!!」
この後、両雄を支配した沈黙は会談中最長となったが、静かに放たれた蛸ノ宮の言葉は切迫感に溢れていた。
「いずれが正義であったか?…それは歴史が証明するであろう…。
だが私個人は貴君にそれが宿っておると信ずる者だッ!
それであるからこそ、一切の虚飾を排してわが心の内奥をさらけ出し、“超時空革命結社”銀魔星の長である貴君に対して今この場で同盟を申し入れたいッ!!
そして共に死力を尽くして勝利するまで戦い抜き、大教帝にはじまる“四惑星艱難の時代”に終止符を打った暁にはようやく平和を実現するに至った負極界の何処かでわが妻ルリアと心安らかに過ごせる幸福を与えてほしいのだ──頼むッ、アトラス=ソードよッッ!!!」
このままではD‐EYESとやらは初陣を飾るどころかそもそも討つべき獲物を発見できぬかもしれませんな…うむ、何だスカーレット?」
画面右脇から現れた、一目で女性型と判別できる全身緋色の機械戦士(髑髏面に非ず)が着座している首領にひそひそと耳打ちするが、あまりに人間チックな仕草は逆に白々しさを強く印象付ける。
そしてアトラス=ソードが示した反応も些か過剰であった。
「ほ、本当かッ!?
うう~む、これはえらいことになったな…!
ヤツめ…一気に勝負をかけるつもりなのか…!?
だがこうなると作戦を一から立て直す必要があるな…」
ここでようやく?蒼頭星人の視線を意識した髑髏戦鬼は「や、これは失礼しました」と頭を下げる。
「…何か重大な事態が発生したようであるが、よければ内容を教えてはもらえぬかね…?」
遠慮がちな蛸ノ宮の求めにソードは大きく頷く。
「もちろんですとも。
とはいえ博士ご自身にとってこの一報がいかほど有益かは測りかねますが…。
たった今、アクメピアが負極界からの独立を宣言しました…!!」
──十数光年の距離を隔て、異形の怪物同士に奇妙な沈黙が落ちたが、蒼頭星人が当然の疑問を口にする。
「…それは他の三惑星にとって驚天動地の大異変であることは察せられるが、傍目にはあまりにも無謀なこの試みに果たしていかなる勝算があって踏み切ったのであろうか…!?」
「勝算、ですか…。
いやご尤も──それなくして全星民に多大な影響を及ぼす一大決定を下すのは、負極界で唯一王政を拒み終始集団指導体制を貫いてきたアクメピアの星史を否定するに等しい暴挙でしょうからね。
ただ、彼らの背中を最終的に押した張本人が誰なのかは明白です。
密かに第四惑星との軍事同盟を結び、彼の地を負極界侵攻の前線基地として利用しようともくろむ“帝界聖衛軍の聖剣皇”四元蓮馬──このアトラス=ソードにとっての不倶戴天の仇敵が、ババイヴの不在とザジナスの死に乗じて伸るか反るかの勝負に出たとしか考えられませんッ!
加えてヤツは長年に渡る私との因縁をこの機会に清算する腹積もりなのでしょうが、こちらこそ望むところですッ!!」
この昂然たる宣言に感じるものがあったのか、蛸ノ宮の返事には明らかな共感の響きがあった。
「──“強者の宿命”というべきか、貴君にも己の全てを賭して雌雄を決すべき敵が存在するのだな…!
されど、大教帝後の負極界に君臨するカイツ星爵とやらにとってこれは威信に関わる由々しき事態であろうから、ペティグロスはむろん、少なくともリュザーンドの助力を得て制圧に動くのは間違いあるまい。
そこに貴君の軍団が加わることとなれば、四元とやらが足場にせんとするアクメピアの前途に一筋の光明を見出すことも困難ではないのかな…!?」
意を得たり、とばかりに機械戦士の返答は早かった。
「さすがに鋭いご指摘ですね。
ですが失礼ながら、博士はこの四元蓮馬という人物の正体をご存知ない。
先程私は彼奴が第四惑星を前線基地として使おうと企んでいると言いましたがそれは文字通りの意味であり、四元が負極界最弱と蔑視されるアクメピアと結託したのは義侠心の発露などでは決してなく、真の目的である第三惑星への足がかりとしか考えていないということなのですッ!」
「だがペティグロスといえば問題のイルージェ=カイツの本拠地…。
ということは、聖剣皇とやらはアクメピアから現地に乗り込んで自らカイツの首級を挙げようとしているのでは…!?」
目下のところ、あくまで蓮馬を“異世界の英雄”視しているらしい蒼頭星人が口を挟むが、銀魔星首領は言下に否定した。
「いいえッ、たとえ表面上はそう見えたとしても内実は違いますッ!
彼奴が第三惑星に固執するのはたった一つの理由しかありません…それは、
ペティグロス史上最高の美少女星主・ミリェリーア=ティリスをわが物にするためなのですッッ!!
星渕特抜生時代から稀代の好色漢…いやこんな表現は生ぬるいッ、“色欲の権化”と白眼視されてきたアイツがここまでのリスクを冒して遠征してきたということは、彼女にそれだけの価値を見出したということ以外に考えられぬ──そして銀魔星に追いやられてペトゥルナワスに居場所を失いつつある現在、ペティグロスを新たな欲望実現の根城と定めたものでしょうッ!
もちろん退路を断ってこれだけの大勝負に出たからにはヤツなりに肚を括ってのことでしょうが、今さらその心得違いを糾しても聞く耳は持たぬでしょう──ならば必ずや立ち塞がるであろうカイツ相手にどう渡り合うか当面はお手並み拝見させてもらい、もしも星爵を打ち負かすことあらば、その時こそ目下の主戦場である第一惑星から現地に乗り込み、この邪悪極まる淫魔の命脈を今度こそ完全に絶ってやるつもりなのですッ!!」
この後、両雄を支配した沈黙は会談中最長となったが、静かに放たれた蛸ノ宮の言葉は切迫感に溢れていた。
「いずれが正義であったか?…それは歴史が証明するであろう…。
だが私個人は貴君にそれが宿っておると信ずる者だッ!
それであるからこそ、一切の虚飾を排してわが心の内奥をさらけ出し、“超時空革命結社”銀魔星の長である貴君に対して今この場で同盟を申し入れたいッ!!
そして共に死力を尽くして勝利するまで戦い抜き、大教帝にはじまる“四惑星艱難の時代”に終止符を打った暁にはようやく平和を実現するに至った負極界の何処かでわが妻ルリアと心安らかに過ごせる幸福を与えてほしいのだ──頼むッ、アトラス=ソードよッッ!!!」
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