THUNDER⚡️ANGELS

幾橋テツミ

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第八章 魔島殲滅戦

宝麗仙宮崩壊⑳

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 これ以上進行すると身動きに支障をきたすと判断したか、5メートル近くまで達した所で大教帝の巨大化は停止した。

 ──グギギッ、ゴギギギッ…!

 当然ながらこれによって両手の握力も爆増し、破壊光弾砲の台座は数分前の美沙門の左足甲のようにひしゃげてゆくではないか!

 それに逆らうかのようにひたすら爪攻撃を続行する青獅子だが、巨大化に比例して皮膚の硬度もアップしたらしく、もはや焦茶色の表面を引っ掻くのみというありさま。

「ふぬわははははッ!

 もはやオマエの爪ごときが余の不死身の肉体に何度撃ち込まれようがひたすらこそばゆいだけだわッ!!

 よいか蒼頭星人ッ、そろそろ茶番は切り上げさせてもらうぞッッ!!」

 後ろに回されていた左手が外された次の刹那、砲座を掴んだままの右手がもがく青獅子を強引に背中から引き剥がす。

「ぬおりゃああああああッッ!!!」

 そのまま前方に思い切り放り投げ、神灰帝屍焔弾の発射態勢に入るババイヴ──しかしそれよりも早く、くるくると回転しながら獣型人工戦士が放った起死回生のプラズマ弾が疾った!

「猪口才なッ!

 だがこれを見ろッッ!!」

 ──ジュジャジャジャッッ!!!

 中腰となった大教帝が思い切り突き出した左拳に激突した青白い光弾は微塵に砕けて眩い粒子を撒き散らす。

 続いて撃たれた金色の火焔弾が落下寸前の青獅子の土手っ腹に命中し、破砕孔から赤い火花が噴き出しながら廊下の端まで滑ってゆく──!

 そして両手で美沙門の両足首を握りしめたババイヴは、死せる人工戦士を軽々と持ち上げると、リュザーンド星人の凄惨な屍を無造作に踏み潰しながら足掻く青獅子へと接近し、咆哮しながら思い切り振り下ろす!

「ぬわありゃあああああッッ!!」

 ──グワッシャアアアンンッッ!!!

 同じ硬度の装甲板がぶつかり合った結果として双方がダメージを負い、手応えを得た攻撃者は何度も何度もそれを繰り返すのであった。

「この辺でよかろう──ではトドメだッ!!」

 グシャグシャのスクラップ状態となった美沙門を放り出した大教帝は殴打前より3倍は広がった裂孔を渾身の力を込めた右足裏でバキバキバキと踏み潰す!

 それに伴い、勢いを増して噴き上がるスパークと白煙をものともせずにグリグリグリと足を捻り続けるババイヴ…どうやらこの個所は急所だったらしく、途轍もない圧力をかけてくる巨足に爪を立てる最後の抵抗も虚しく、青獅子の動きは徐々に弱まってゆくのであった…。

 一方、勝者は10メートル近い距離を保ちながら惨状を克明に送信し続ける記録装置のカメラを凝視しながらこう嘯く。


「どうやら決着はついたようだな…。

 さて負け犬よ、これからどうするつもりだ?

 これで勝敗は五分イーブン──もはや汚名挽回にはキサマ自身が余と対峙するしかないのではないか?

 ふっくふふふふッ!

 いぎゃっはははははッ!!

 ひぎいっひひひひひひッッ!!!

 いや悪かったッ、ムダに頭でっかちなだけで銀河一肝っ玉の小さい哀れな弱小生物にそのような勇気があるはずもなかったなッ!

 ぎっけけけけけッ…それではこの無意味な会話も打ち切らせてもらうが…」

 ここで終始嘲弄気味であった口調がガラリと変わり、銀河系を恐怖一色で染め上げた“最凶暴君”の血も凍らせる大音声が画面をビリビリと震わせた!

「──よいかッ、ここでハッキリと申し渡しておくぞッ!

 これからすぐに向かって来ぬのなら、二度と余に関わってくるなとなッ!!

 一時はキサマの宇宙船を奪った上で帰星を試みようとしたが、気力体力共に完調した今、そんな愚策が脳裡に掠めたことすら恥辱だわッ!

 実はわが凶祭華同盟にはキサマを遥かに凌駕する天才技術者が存在しておるゆえに、ともうしばらくこの異星での滞在を娯しんだ後、負極界へは彼の手になるスペースシップで凱旋するッ!!

 それではとっとと消え失せいッ、この敗残者めがッ!!!」

 大教帝が左人差し指でレンズ越しに蛸ノ宮を指すと同時に金色の爪が発射され、一瞬にして記録装置を粉砕してのける。

 かくてスクリーンは完全に暗転し、重苦しい空気に閉ざされた飛翔基地の指令室内には再び恋人の胸に顔を埋めた行平蘭奈の嗚咽のみが響いていた…。

 およそ1分ほどもそれが続いた後、破ったのは舘森隼矢であった。

「…こんなことをお訊ねするのはとても失礼なことは分かってます…でも言わせて下さい。

 ドクターならババイヴを斃すための爆弾をびーちゃんたちに搭載することは簡単にできたはずなのに、それをしなかったのは何故ですか…?

 それはやっぱり、彼らがだったからなのですか…!?」

 消えた画面を凝視したまま、蛸ノ宮が静かに答える。

「…むろん、それもある。

 だが、相手は銀河系屈指の魔物だ。

 美沙門らに自爆装置が内蔵されているか否かぐらいは生来の洞察力か歴戦の勘で瞬時に判断できたはず…」

 ここでくるりと二人を振り返った蒼頭星人は他の八本より明らかに長い二本の主腕を掲げて昂然と宣言した──

「もちろん美沙門らの勝利を望んでいたし、事実その可能性はあったはすだ…。

 だが同時に決意していたのだよ。

 ババイヴとの戦いに最終決着をつけるには、私自身が出陣するしかないのだと…!」

 ここで言葉を切った蛸ノ宮は、彼の決死の想いを察した蘭奈が顔を上げ、潤んだ視線を向けてくるまで待った上で普段の穏やかな口調に戻ってこう告げた。

「しかしこの危険な決闘に、この惑星の未来を担う君たちを巻き込むわけには断じていかぬのだ…!!」

 

 

 

 
 
 

 

 

 

 



 

 



 

 







 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 
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