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第九章 群雄凶戦譜
復讐鬼レイガル⑤
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「ほう…まるで博士と同様の願望を抱いているようだが、本当にそれだけがキミの目的なのかね?
銀魔星としてはどうしても、さっきチラリと洩らしていた負極界の一角を力でモギ取るとかいう勇壮な征服心の方に主眼があるのではと勘繰ってしまうのだが…」
「…まあ、そちらが只の一度も人を愛したことがないのであれば、そう思われても当然だと思うね」
こう言い放ったレイガルは、円盤内で蒼頭星人が身を強張らせるのをハッキリと感知していた。
『うぬぬぬッ…あろうことか此奴もまたルリアを狙っておったとは…!
し、しかし、よもや銀魔星が私を棄ててレイガルと結託しようなどということはあるまいなッ!?
さ、されど相手は文字通り血も涙も喪失した機械人間の群れ…その判断基準はあくまでも最大限の戦果を叩き出すことのみにあると容易に推察できるゆえ、とにかくこの眼前の怪物を消去してのけねばあっさりと掌返しされるおそれが濃厚…』
あたかもこの危機感を肯定するかのごとく、銀魔星副首領の見解が格納庫内にアナウンスされる。
「博士、誠に困った事態になりましたな…。
むろんわれわれとしては偉大なる博士をこそ真の同志としてお迎えしたいのはやまやまなのですけれども、未だ数光年の遠距離を隔てる現状では当然ながらご助力致しかねます…。
ですから何卒この窮境をご自力で凌いで頂きたく希求する次第でありまして…」
だが既に結果を見通しているかのようなその口ぶりが無性に癇に障った蛸ノ宮は、返事もせずにのっそりと迫って来る“負極界第四惑星の怪物”に小型円盤唯一の武器ともいえる2門のパルスレーザー砲を乱射する!
ジュバッ、ジュバッ、ジュババッッ!!
しかし蒼頭星人の発射ボタン連打よりもアクメピア星人の跳躍スピードが上回り、楽々と6メートル近い高さの天井に到達したレイガルは両掌をピタリと張り付けると瞬時に両肘を曲げてショックを吸収する。
「──さて、それでは卵の殻をブチ破らせてもらいますかね」
両足を揃えると同時に両腕を思い切り伸ばして肘関節に蓄積したエネルギーを解放し、プロレス技のミサイルキックの要領で小型円盤の半球型のキャノピーを狙う漆黒の筋肉魔人!
されど蛸ノ宮もさるもの、レイガルの躰が天井を離れるとほぼ同時に愛機を発進させており、命中していれば確実に致命傷を与えていたであろう必殺の肉弾は虚しく床板を撃ったのみであった。
しかし異形の格闘戦士の動きには些かの遅滞も無く、片膝を着いた体勢のまま前方に真っすぐ伸ばした両腕が奇怪にも円盤に追いすがるかのごとく伸長する!
──ここぞという勝負所で繰り出されるレイガルの隠し技=大蛇アーム。
一般的なアクメピア星人の限界リーチを軽く5倍は凌駕する特異体質あってこその離れ業であるが、間一髪及ばず我流の神灰帝屍焔弾が穿った大穴からまんまと脱出するのを許してしまう。
「クソッ、ここで焔弾を撃てれば確実に仕留められたものをッ!
やむを得なかったとはいえ、たて続けに2発も使用してしまった以上、少なくともエネルギー再充填に1時間は必要…。
だが蛸ノ宮よ、空に飛び出したことで逆に墓穴を掘ったなッ!!
そもそもそんなポンコツで一体どこまで逃げ延びれるというのだッ!?
尤も安心しろッ、このレイガルはネチネチと弱者を痛ぶる陋劣な気質とは無縁だッ!
従ってキサマが死の覚悟を固める間もなくキャノピーにのしかかり、一瞬にして自慢の脳髄を抉ってラクにしてやるからなッ!!
──うぬおッッ!?」
さしものレイガルも追跡のみに因われて背後にまで注意が至っておらず、大穴に向かって駆け出そうとした刹那にようやく気配を察したものの時既に遅く、これだけは負極界人共通である心臓の裏側=右広背筋を何者かにザックリと刺し貫かれていたのである!
「ぐおおッ!だ、誰だッ!?
…はッ!?ま、まさかッ!?」
恐怖を知らぬはずの彼の背筋を激痛と共に疾った戦慄──それはあの戦士がそれほどまでに早く復活したのかという驚愕であった!
しかも彼の背中におぶさったソイツは素早く上方へ移動し、両脚で標的の胴体を絞め上げて足場を確保すると同時に両手首から出現した50センチ近い笹型の妖刃を左右から神速で筋肉魔人の太い頸部に叩き付けたのだ!
「──ッッ!!!」
かくて一瞬にして寸断された頸動脈から青紫色の鮮血が夥しく噴出し、がっくりと膝から崩れ落ちた漆黒の戦鬼の首を何度も何度も斬りつける刺客──それは強化改造のため緑色の外皮を丸ごと取り除かれ、逆三角形の頭部をはじめ宇宙合金製の凶々しく底光りするメタリックカラーの全身骨格を剥き出しにした人工戦士=幻護郎であったのである!
銀魔星としてはどうしても、さっきチラリと洩らしていた負極界の一角を力でモギ取るとかいう勇壮な征服心の方に主眼があるのではと勘繰ってしまうのだが…」
「…まあ、そちらが只の一度も人を愛したことがないのであれば、そう思われても当然だと思うね」
こう言い放ったレイガルは、円盤内で蒼頭星人が身を強張らせるのをハッキリと感知していた。
『うぬぬぬッ…あろうことか此奴もまたルリアを狙っておったとは…!
し、しかし、よもや銀魔星が私を棄ててレイガルと結託しようなどということはあるまいなッ!?
さ、されど相手は文字通り血も涙も喪失した機械人間の群れ…その判断基準はあくまでも最大限の戦果を叩き出すことのみにあると容易に推察できるゆえ、とにかくこの眼前の怪物を消去してのけねばあっさりと掌返しされるおそれが濃厚…』
あたかもこの危機感を肯定するかのごとく、銀魔星副首領の見解が格納庫内にアナウンスされる。
「博士、誠に困った事態になりましたな…。
むろんわれわれとしては偉大なる博士をこそ真の同志としてお迎えしたいのはやまやまなのですけれども、未だ数光年の遠距離を隔てる現状では当然ながらご助力致しかねます…。
ですから何卒この窮境をご自力で凌いで頂きたく希求する次第でありまして…」
だが既に結果を見通しているかのようなその口ぶりが無性に癇に障った蛸ノ宮は、返事もせずにのっそりと迫って来る“負極界第四惑星の怪物”に小型円盤唯一の武器ともいえる2門のパルスレーザー砲を乱射する!
ジュバッ、ジュバッ、ジュババッッ!!
しかし蒼頭星人の発射ボタン連打よりもアクメピア星人の跳躍スピードが上回り、楽々と6メートル近い高さの天井に到達したレイガルは両掌をピタリと張り付けると瞬時に両肘を曲げてショックを吸収する。
「──さて、それでは卵の殻をブチ破らせてもらいますかね」
両足を揃えると同時に両腕を思い切り伸ばして肘関節に蓄積したエネルギーを解放し、プロレス技のミサイルキックの要領で小型円盤の半球型のキャノピーを狙う漆黒の筋肉魔人!
されど蛸ノ宮もさるもの、レイガルの躰が天井を離れるとほぼ同時に愛機を発進させており、命中していれば確実に致命傷を与えていたであろう必殺の肉弾は虚しく床板を撃ったのみであった。
しかし異形の格闘戦士の動きには些かの遅滞も無く、片膝を着いた体勢のまま前方に真っすぐ伸ばした両腕が奇怪にも円盤に追いすがるかのごとく伸長する!
──ここぞという勝負所で繰り出されるレイガルの隠し技=大蛇アーム。
一般的なアクメピア星人の限界リーチを軽く5倍は凌駕する特異体質あってこその離れ業であるが、間一髪及ばず我流の神灰帝屍焔弾が穿った大穴からまんまと脱出するのを許してしまう。
「クソッ、ここで焔弾を撃てれば確実に仕留められたものをッ!
やむを得なかったとはいえ、たて続けに2発も使用してしまった以上、少なくともエネルギー再充填に1時間は必要…。
だが蛸ノ宮よ、空に飛び出したことで逆に墓穴を掘ったなッ!!
そもそもそんなポンコツで一体どこまで逃げ延びれるというのだッ!?
尤も安心しろッ、このレイガルはネチネチと弱者を痛ぶる陋劣な気質とは無縁だッ!
従ってキサマが死の覚悟を固める間もなくキャノピーにのしかかり、一瞬にして自慢の脳髄を抉ってラクにしてやるからなッ!!
──うぬおッッ!?」
さしものレイガルも追跡のみに因われて背後にまで注意が至っておらず、大穴に向かって駆け出そうとした刹那にようやく気配を察したものの時既に遅く、これだけは負極界人共通である心臓の裏側=右広背筋を何者かにザックリと刺し貫かれていたのである!
「ぐおおッ!だ、誰だッ!?
…はッ!?ま、まさかッ!?」
恐怖を知らぬはずの彼の背筋を激痛と共に疾った戦慄──それはあの戦士がそれほどまでに早く復活したのかという驚愕であった!
しかも彼の背中におぶさったソイツは素早く上方へ移動し、両脚で標的の胴体を絞め上げて足場を確保すると同時に両手首から出現した50センチ近い笹型の妖刃を左右から神速で筋肉魔人の太い頸部に叩き付けたのだ!
「──ッッ!!!」
かくて一瞬にして寸断された頸動脈から青紫色の鮮血が夥しく噴出し、がっくりと膝から崩れ落ちた漆黒の戦鬼の首を何度も何度も斬りつける刺客──それは強化改造のため緑色の外皮を丸ごと取り除かれ、逆三角形の頭部をはじめ宇宙合金製の凶々しく底光りするメタリックカラーの全身骨格を剥き出しにした人工戦士=幻護郎であったのである!
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