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終章 LASTBATTLE ON THE EARTH
虹岡霊術団の逆襲〈前編〉
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「──うッ!?」
突如として背後の怪少年が呻き声を上げたのに驚いたラゼム=エルドが振り返ると、あろうことか両手で頭を抱え、船底に蹲ってしまっているではないか!?
「た、太鬼君、どうしたッ!?」
この呼びかけに返事がもたらされるのにたっぷり5秒を要した。
「…あ、頭が…割れるように痛むんです…!」
「──何だとッ?
さっきまであれほど元気だったのに、いきなりそうなっちまったってことは…まさか神霊闘術師どもの攻撃が早くも開始されたのかッ!?」
「…いえ…それはないでしょう…。
それにこの感覚はどうも外宇宙からの精神攻撃とは違う…あくまでも地球に根ざした勢力から放たれたものです…うわああああッッ!!」
邂逅した数時間前から常に不敵で超然とした態度を一貫してきた真護がはじめて見せる劣勢に、さしもの“ペティグロス最強戦士”も動揺を隠せない。
「おっ、おいッ、しっかりしてくれよッッ!!
と、とにかく今のキミはとても戦える状態じゃないから一旦引き返すぞッ!
神野君はオレが救出し、D‐EYESも独りで殲滅するから安心しろッ!!」
「…い、いえ大丈夫です…こ、このまま宝麗仙宮に向かって下さい…あげえええぇッッ…!」
頭から下腹部に両手をずらし、海老のように上体を折り曲げた怪少年は全身を痙攣させながら先程胃袋に収めた内容物を大量に嘔吐しはじめ、吐瀉物が胃液だけになると同時にガックリと失神してしまったのである!
「…何てこった…いきなりこりゃねえぜ…。
相手は神霊闘術師じゃねえって口走ってたが、錯乱状態で断言されても説得力皆無ってモンだぜ…。
だって連中以外に誰がここまでの…あッ…も、もしかして、虹岡霊術団の仕業かッ!?
そういや志門博士はかつて連中の超能力は一般地球人からすれば文字通り〈怪力乱神〉を地でゆくレベルの超絶的なシロモノだと畏怖を込めて宣ってたが、この惨状を目の当たりにすればたしかに納得だぜ…!
しかもこのタイミングで襲撃してきたということは、連中はウィラーク…いや黒蛇の傘下に組み込まれたとしか思えねえ…となると、それを手引きしたのはやはり総帥の虹岡顕造と若い頃ホ◯関係にあったとかいう志門以外にゃ思い当たらねえぜ…!」
波止場にボートを係留し、車で5分ほどの立山別邸に引き返した網崎詠斗は、黒ジャージの星渕特抜生を肩に担いでいかにも海辺の別荘にふさわしい瀟洒な白塗りの洋館に歩み寄ると、満寿也から支給されていた鍵で邸内に侵入する。
好都合なことに2階の一部屋が滞在用に充てがわれていたため、とりあえずベッドに真護を寝かしつけてからエアコンを起動し、部屋の隅の小型冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターのペットボトルを枕許にそっと置く。
そしてしばらく部屋の中央で思案していた鋼の戦士は机上のメモ帳にさらさらと一筆したためてからボトルのそばにメモ帳ごと残したのだった。
「──じゃ、行ってくるぜ」
右手を上げて〈地球式敬礼〉をキメた負極界戦士はさっと踵を返して改めて決戦の地に向かったのである…。
✦
“いやはや…まあ黙ってはいないだろうとは思ってたけどさ、よりによって大一番の直前に反撃の狼煙を上げてこようとは、さすがのボクも想定外だったぜ…!
しかしそれにしても、キミのやり方って妙齢の女性とはとても思えないほどエグいよねえ…大体さ、御父上の男根に少なくとも今年中は回復不可能なダメージを与えたのはわが依代クンじゃないっちゅーのに…。
なのに初対面の殿方(それも稀に見る美少年!)のタ◯タ◯を意識の手で思いっきし握りしめるなんざ…ブルルル、つくづく肉体が無くてよかったなと命拾いした心境だぜ…”
“あーら、盗人猛々しいとはまさにアンタのためにあるような諺ねッ!
そもそも帝界聖衛軍が卑怯千万にも福◯にある霊術団の本陣の寝込みを襲って七獣刃衆を根こそぎかっさらったのが発端でしょうがッ!
それと言っときますけどね、どうしても認めたくないけど生物学上はたしかにあたしの親父らしいあの色狂いジジイを襲うんだったら、息の根を止めるまでトコトンやり切りなさいってことなのよッ!!
アンタに屋敷を半分燃やされて、今夜の寝床について途方に暮れてるところに岡◯のホテルから「宿泊されていたお父様がチェックアウトタイムにも降りてこられなかったためにお伺いしたところ、浴槽内で失神されてまして…しかも性器に大ケガを…」──いっぺんにこんなメガトン級のダブルパンチを食らった妙齢の女性がそれこそどんな気持ちになるか、洟垂れ小僧の…それも異世界人のガキであるアンタに分かるっていうのかようッッ!!??
だからねえ、どーせこの貧乏学生に賠償なんてできやしないのは分かりきった話だし、されど一番金持ちの立山満寿也はマヌケにも毒酒に悪酔いした挙句おっ死んでピラニアの餌になっちまった…!
となれば、請求書の行き先が名前だけは仰々しい帝界聖衛軍の聖剣皇様とやらになるのは理の当然でしょうがッ!!
さあどうするの聖衛軍No.2さん!?
言っとくけど納得のゆく成果を挙げない限り、この虹岡千華乃は何日かかろうがここを一歩も動きませんからねッッ!!!”
突如として背後の怪少年が呻き声を上げたのに驚いたラゼム=エルドが振り返ると、あろうことか両手で頭を抱え、船底に蹲ってしまっているではないか!?
「た、太鬼君、どうしたッ!?」
この呼びかけに返事がもたらされるのにたっぷり5秒を要した。
「…あ、頭が…割れるように痛むんです…!」
「──何だとッ?
さっきまであれほど元気だったのに、いきなりそうなっちまったってことは…まさか神霊闘術師どもの攻撃が早くも開始されたのかッ!?」
「…いえ…それはないでしょう…。
それにこの感覚はどうも外宇宙からの精神攻撃とは違う…あくまでも地球に根ざした勢力から放たれたものです…うわああああッッ!!」
邂逅した数時間前から常に不敵で超然とした態度を一貫してきた真護がはじめて見せる劣勢に、さしもの“ペティグロス最強戦士”も動揺を隠せない。
「おっ、おいッ、しっかりしてくれよッッ!!
と、とにかく今のキミはとても戦える状態じゃないから一旦引き返すぞッ!
神野君はオレが救出し、D‐EYESも独りで殲滅するから安心しろッ!!」
「…い、いえ大丈夫です…こ、このまま宝麗仙宮に向かって下さい…あげえええぇッッ…!」
頭から下腹部に両手をずらし、海老のように上体を折り曲げた怪少年は全身を痙攣させながら先程胃袋に収めた内容物を大量に嘔吐しはじめ、吐瀉物が胃液だけになると同時にガックリと失神してしまったのである!
「…何てこった…いきなりこりゃねえぜ…。
相手は神霊闘術師じゃねえって口走ってたが、錯乱状態で断言されても説得力皆無ってモンだぜ…。
だって連中以外に誰がここまでの…あッ…も、もしかして、虹岡霊術団の仕業かッ!?
そういや志門博士はかつて連中の超能力は一般地球人からすれば文字通り〈怪力乱神〉を地でゆくレベルの超絶的なシロモノだと畏怖を込めて宣ってたが、この惨状を目の当たりにすればたしかに納得だぜ…!
しかもこのタイミングで襲撃してきたということは、連中はウィラーク…いや黒蛇の傘下に組み込まれたとしか思えねえ…となると、それを手引きしたのはやはり総帥の虹岡顕造と若い頃ホ◯関係にあったとかいう志門以外にゃ思い当たらねえぜ…!」
波止場にボートを係留し、車で5分ほどの立山別邸に引き返した網崎詠斗は、黒ジャージの星渕特抜生を肩に担いでいかにも海辺の別荘にふさわしい瀟洒な白塗りの洋館に歩み寄ると、満寿也から支給されていた鍵で邸内に侵入する。
好都合なことに2階の一部屋が滞在用に充てがわれていたため、とりあえずベッドに真護を寝かしつけてからエアコンを起動し、部屋の隅の小型冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターのペットボトルを枕許にそっと置く。
そしてしばらく部屋の中央で思案していた鋼の戦士は机上のメモ帳にさらさらと一筆したためてからボトルのそばにメモ帳ごと残したのだった。
「──じゃ、行ってくるぜ」
右手を上げて〈地球式敬礼〉をキメた負極界戦士はさっと踵を返して改めて決戦の地に向かったのである…。
✦
“いやはや…まあ黙ってはいないだろうとは思ってたけどさ、よりによって大一番の直前に反撃の狼煙を上げてこようとは、さすがのボクも想定外だったぜ…!
しかしそれにしても、キミのやり方って妙齢の女性とはとても思えないほどエグいよねえ…大体さ、御父上の男根に少なくとも今年中は回復不可能なダメージを与えたのはわが依代クンじゃないっちゅーのに…。
なのに初対面の殿方(それも稀に見る美少年!)のタ◯タ◯を意識の手で思いっきし握りしめるなんざ…ブルルル、つくづく肉体が無くてよかったなと命拾いした心境だぜ…”
“あーら、盗人猛々しいとはまさにアンタのためにあるような諺ねッ!
そもそも帝界聖衛軍が卑怯千万にも福◯にある霊術団の本陣の寝込みを襲って七獣刃衆を根こそぎかっさらったのが発端でしょうがッ!
それと言っときますけどね、どうしても認めたくないけど生物学上はたしかにあたしの親父らしいあの色狂いジジイを襲うんだったら、息の根を止めるまでトコトンやり切りなさいってことなのよッ!!
アンタに屋敷を半分燃やされて、今夜の寝床について途方に暮れてるところに岡◯のホテルから「宿泊されていたお父様がチェックアウトタイムにも降りてこられなかったためにお伺いしたところ、浴槽内で失神されてまして…しかも性器に大ケガを…」──いっぺんにこんなメガトン級のダブルパンチを食らった妙齢の女性がそれこそどんな気持ちになるか、洟垂れ小僧の…それも異世界人のガキであるアンタに分かるっていうのかようッッ!!??
だからねえ、どーせこの貧乏学生に賠償なんてできやしないのは分かりきった話だし、されど一番金持ちの立山満寿也はマヌケにも毒酒に悪酔いした挙句おっ死んでピラニアの餌になっちまった…!
となれば、請求書の行き先が名前だけは仰々しい帝界聖衛軍の聖剣皇様とやらになるのは理の当然でしょうがッ!!
さあどうするの聖衛軍No.2さん!?
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