THUNDER⚡️ANGELS

幾橋テツミ

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終章 LASTBATTLE ON THE EARTH

虹岡霊術団の逆襲〈中編〉

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“まず、今朝の一件に関しては本当に申し訳ありませんでした。

 そしてこれは決して弁明ではないのですが、七獣刃衆獲得は決して聖剣皇のご指示ではなく、あくまでもわたくしバアル=シェザードの独断専行によるものであることを申し添えさせて頂きます…”

“つッ、つまり結局のところ全部アンタが悪いんじゃないのさッ!

 だからって地上こっちのルールにゃ〈使用者責任〉ってモンがあってね、決して上司が無罪放免ってことにゃならないんだよッ!

 つまりアンタが今回やらかした凶悪犯罪が帝界聖衛軍の戦力増強に直結する行為である以上、聖剣皇サンの関与はゼ~ッタイに、どこどこまでも疑われるってことになるんよッ!!”

“…んじゃ、をそっくり戻せば赦して頂けるのですか…?”

“ンなわきゃねえじゃろうがボケェッッ!!!”

“ひいいいぃッ!!”

 千華乃の怒号とバアルの悲鳴が交錯し、感情のボルテージがMAXに達した“虹岡霊術団の鬼姫”は、あくまでも霊体ではあったがついにその雄姿を顕現するに至った!

“…あわわわッ…な、何てオソロシイ…い、いやオウツクシイ…”

 あたかも彼女の赫怒の凄まじさをヴィジュアル化したかのごとく、たてがみを天に向かって逆巻かせながら両手の長い爪をグワッと広げて今しも掴みかかろうとする〈焔の女神〉を前にして、身の程知らずの大罪人はひたすらひれ伏すのみである…。

“フンッ、おためごかしはどうでもいいから、アンタも姿を見せなさいよッ!

 ──それとも何ッ?

 あまりにも疚しいところがありすぎて、とてもあたしの前に出る度胸がないっていうのッ!?

 だったらそれでもいいわよッ、その代わりアンタの依代にちっとばかり熱い思いをしてもらうことになるけどねッ!!”

 その宣言にウソはなく、スーッと飛ぶように空中を移動して寝台上の怪少年と炎の生霊は、凄まじい微笑を口元に湛えて白い首筋に両手を伸ばす…。

“おっ、お待ち下さいッ!!”

 虚空に魔霊の懇願がこだまし、続けて真偽不明の、そしてどこまでも都合のいい〈弁明〉がくどくどと垂れ流されはじめる。

真護かれはあくまでも今回の件には無関係なのですから、それだけはご容赦下さい…。

 そしてオマエの姿(霊体)を正々堂々現せとのご要請に関しましては、先程からそうしようと鋭意努力中なのでありますが、自身の罪深さへの猛省と貴女様への恐怖があまりにも強烈であるゆえか、どうしても実行致しかねておる模様でありまして、重ねてお詫び申し上げます…。

 さて、肝心要の賠償の件ですけれども、帝界聖衛軍われわれの基盤はあくまでも異世界ペトゥルナワスにございまして、もとより聖剣皇は最大の富貴を誇ったレゼック王から衣鉢を継いだワケですからその財力にも当然端倪すべからざるものがあるのですけれども、それを速やかにこの地上世界の富へと変換することを求められましても甚だ心許ないと申し上げる他ないのでして…”

“…だとしても、王冠とか宝石とか、カネに替えられるモノが何かしらあるはずでしょーが…!?”

 段々勢いを失ってきた鬼姫に、あくまでも低姿勢に、しかしどこまでも我田引水的に魔霊は囁く。

“──いかがでしょうか?

 これもまた宿世すくせの縁と、ここは千華乃様にわが帝界聖衛軍に参画して頂くというのは…。

 といいますのも既にご存知でしょうが聖剣皇の四元蓮馬以下、聖衛軍の中枢は星渕特抜生なる括りはあるにしましても紛うかたなき地上人たちによって構成されておりまして、虹岡様ほどの卓絶した能力をお持ちであれば加入と同時に副将クラスにランクされるであろうことは明白でありましょうから…!

 どうでしょう?

 ここは一つ、御一考しては頂けますまいか…!?”

“ふーん、あたしが帝界聖衛軍にねえ…。

 そんなこと考えもしなかったけど、そうねえ…このせせこましい地上じゃせっかく天から授かったが宝の持ち腐れなのはたしかだし、一念発起して異世界で大暴れするのも面白いかもねえ…”

“そうですともッ!


 何より異世界あちらでは力こそ正義…むろん地上世界とて同断ではありましょうが、世界の隅々に至るまでのペトゥルナワスとは比較にもなりません…。

 何卒、ご自身の人生に悔いなき決断を下して頂きたいものと衷心から希求致す次第であります…”

“ふん、どこまでもC調な小僧だこと…。

 でもさ、ここで確認しときたいんだけど、アンタさっきあたしが聖衛軍入りしたらすぐ副将ポジションになれるって断言したわよね?”

“は、はあ…たしかにそう申し上げましたが…”

“…だとしたら、現在No.2のアンタの立場はどうなるワケ?

 まさか帝界聖衛軍って副将が何人いてもOKなダラけた組織なの?”

“い、いえ、そんなことは決して…”

“そーよねえ…となると自分がしでかした不始末に満足な補償を提供できない代わりにあたしを迎え入れようってんなら、この虹岡千華乃がアンタの下になるってことは100%あり得ないはずってことよね?”

“……”

“都合の悪い時こそ、機転を利かせてウィットに富んだアンサーを繰り出すのが使える交渉人ってモンでしょうに…少なくともソッチ方面じゃ聖衛軍はからっきしのようね…”

“…スミマセン”

“まあ乾いたゾーキンを幾ら絞ったって一雫も得られやしないんだから、あたしも理性あるオトナ(てゆーほどのトシじゃ決してないケド)として程々のところで妥協する必要があるかもねえ…じゃ、部下であるオマエに早速命じることができたんだけど、当然服従できるわね?”

“はっ、はい…”

“おやおや、頼りない返事ねえ…

 そんなこっちゃ聖剣皇に直訴して一兵卒からやり直してもらうことになるけど、いいの?”

“いっ、いいえッ!

 い、一体、わたくしは何をすればよろしいので…?”

“これだからお坊ちゃんはダメなのよ…。

 たまたま最強魔強士族であるシェザード家に生まれたってだけで自分がエラいワケでも何でもないのに根本からカン違いしちゃってる…。

 そこはね、「千華乃様、この下僕しもべに何なりとお言いつけ下さいませ」って返事するのがセオリーよ…ほら、言ってみ?”

“…チカノサマ、コノシモベニナンナリトオイイツケクダサイマセ…”

“…内心の不満がダダ漏れしちゃってるのに気付かないんなら、アンタもこれ以上の出世は望めなさそうね…”

“……”

“ほほほ、グーの音も出んか、この未熟者めが…”

“……”

“まあマナー教育はいずれこってりと叩き込んであげるとして、それじゃ指令第1号を与えるわね。

 アンタ、真護ソイツ内部なかから出てこれなくてもすることはできるでしょ?

 だったら今すぐ邸内を洗いざらいリサーチして金目のモノ──金の延べ棒とかロ◯ック◯とかを掻っ攫っといでッ!

 ──まさかできないってことはないわよねえ…だって生まれつき手クセの悪いコソ泥なんだから…!!”

 

 

 







 


 

 


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