THUNDER⚡️ANGELS

幾橋テツミ

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終章 LASTBATTLE ON THE EARTH

DEATHGAME-ISLAND②

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 突進を開始したエルドは、3秒後には到達するであろう100メートルほど先の芝が次々と不自然に盛り上がってゆくのを察知して無意識に銃を腰だめに構えていた。

『出てきやがったな鋼帝エンペラーッ!!』

 7メートルほどの間隔を置き、土埃を跳ね飛ばしながら一瞬にして直立した6本もの高さ1.5メートル・直径30センチ超の黒と金の斑模様の奇怪な鉄柱──その先端は鉄槍のごとく40センチ近い円錐状となっており、不気味な機械音を伴って凄まじい高速回転を持続している!

 ビュグッ!ビュグッ!ビュグッ!
 ビュグッ!ビュグッ!ビュグッ!

 星龍爪団屈指の狙撃手の本領を発揮して正確に6発の青白い熱光弾を発射したラゼム=エルドだが、6体の鋼蛇はそれよりも迅く機体をくの字に折り曲げ、あたかも魔王のビックリ箱から飛び出した凶器付きのバネ仕掛けのように襲いかかってきた!

「ちいいッッ!!」

 肉眼での識別など絶対不可能な隠形化を嘲笑うかのように迫る6個の死のドリルを背中に実装された八角形の反重力飛翔装置を起動させ、僅か0.08秒で約15メートル跳躍することで回避して、その間にもアストロブレイカーを連射モードでブッ放す!

 少なくとも何発かは命中し、ペティグロス戦士を鋭い頭部で抉り、或いは強靭な胴体で締め上げようとした全長2メートル(ドリル部分を除く)の殺戮機械は一旦吹き飛ばされたものの、高速で機動しているせいもあってか直撃を免れたらしく、今のところ損傷した気配はない。

「喰らえ喰らえ喰らえ喰らええぇッッ!!!」

 飛翔装置に過剰な負荷をかけることを懸念しつつもやむを得ずジグザグ飛行に移行し、更なる猛射を浴びせるエルド──されど反重力装置を内蔵した鋼蛇どもにも飛行能力は備わっており、しかも縦横無尽に乱れ飛びながらドリルの中心軸から金色のレーザー光線を次々に発射してくる…そしてその狙いは正確無比であった!

「おッ、おのれッ!」

 四惑星中最硬度を誇るペティグロス製軽合金の装甲によって貫通こそ免れたものの苛烈極まる衝撃による痛みからは逃れる術もなく、一瞬鈍った動きを鋼蛇たちは見逃さなかった。

 まず右足首にグルグルと巻き付いた1体を吹き飛ばすべく銃口を向けた途端に上方から落下してきた1匹に右上腕が銃身ごと緊縛されてしまう。

 この状況にパニックを起こしかけたエルドが左手を伸ばして右手の鋼蛇を引き剥がそうとした瞬間に左肩にも巻き付かれて完全に動きを止められ、それと同時に突如視界が暗黒に閉ざされた──いうまでもなく顔面を蛇体によって塞がれたのだ!

 そして残りの2体が取った行動が最も危険なものであった──即ち、猛回転するドリルを八角形の一辺毎に一基ずつ埋め込まれた反重力発生装置に突き立てはじめたのである!

「やッ、やめろおおおぉッッ!!」

 恐怖に慄く戦士の悲鳴が虚空に響くがむろん冷徹な殺人機械に届くはずもなく、悪魔のダブルドリルによって装置は次々と破壊されてゆく…。

「うわあああッ!たッ、助けてくれえええッッ!!」

 頭部に巻き付いた鋼蛇の集音機能をMAXにして“ペティグロス最強戦士”の絶叫を堪能するビドゥロは、文字通り腹を抱えて呵々大笑していた。

「ぬわっはははははッ!

 全く何たるザマだラゼム=エルドよッ!!

 そもそもアストロブレイカーごときで六鋼蛇シックスピーシーズを捉えきれると自惚れた時点でキサマは終わっていたのだッ!

 いいかッ!私は王立幼年学校に通いはじめた頃には既に〈人型兵士〉の致命的脆弱性と〈蛇型兵器〉の絶対的優位性に気付いていたのだぞッ!!

 それから実に三十数年の星霜を経たことになるが、その間ただの一度もこの信念が揺らぐことはなかった──つまりこの結果もやる前から分かりきっていた茶番にすぎんッ!

 とはいえザジナスがやたらと“第三惑星ペティグロス最強”などと吹聴していたこともあって多少身構える部分があったのはたしかだが、実際は何のことはない…その程度の戦闘力で果たしてどんな奇策を用いればレイガルを葬れたのか見当もつかんが、所詮あのアクメピア星人も見かけ倒しフェイクであったとすれば、どうやらキサマら二人は世間知らずのザジナスを愚弄するためだけに浄化委員会が遠征隊にネジ込んできた、とんだ一杯食わせものだったようだなッ!!」

 かくて8基の飛翔装置を全て破壊されたエルドは無残に墜落して後頭部を痛打、半失神となった躰を執拗に絡みついたままの鋼蛇たちによって操られ、大の字の体勢で地面に縛められるに至る。

「──勝負あったな。

 果たして私の声を把握できているのか怪しいものだが、一応このメッセージ…いや宣告を下しておこうか。

 ラゼム=エルドよ、もしもまだ生き続けたいのであれば、凶祭華同盟に加わるしかオマエの選択肢は無いぞ。

 尤も実力もないくせにさんざん強者風を吹かせてきた当然の罰として、われわれ〈正規メンバー〉の奴僕としてのスタートになるがな…!」



 

  


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