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第一章 地上から来た教軍超兵
ボクは異世界遭難者①
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脈動する琥珀色の空間を一筋の白い流星が突き進んでいた。
されどそれは氷や大気中の塵といった無機物からなる物体ではなく、眩い発光体と化した指月 亘という有機生命体=日本人の少年であったのである!
彼は今、とある密命を帯びてある場所──いや〈世界〉を目指す途上にあった。
『……果たして希望通りに栄えある神牙教軍の総本陣であるダロバスラ山に聳え立つ【極天霊柱】に到着できるかどうか?
尤もそれが叶わなければ、たとえ這ってでも辿り着いてやるがなッ!!
そして何年かかろうが魔神をも拉ぐ戦闘力をこの身に蓄え、オレをこんな地獄に放り込んだアイツらを復讐の焔で焼き尽くしてやるのだッッ!!!』
──それから無限とも錯覚させる時が経過し、光度を増した琥珀の闇の奥の奥にようやく眩い針の点のごとき〈出口〉が視えた!
『この【エグメド空間】の最果てであるあそここそがラージャーラへの入口……!
ついにやって来たぞ……だが、〈着地点〉によっては、すぐに一戦おっ始めなくちゃならないかもしれん……。
ちきしょうっ、上等だッ!
このシヅキワタルは逃げも隠れもせんぞッ!!
かかって来やがれッ、殺して破壊するしか能のねえ異世界のバケモノどもめッッ!!!」
されど必死に掻き立てた闘志も虚しく、謎の空間の出口が近付くに従って輝きを増大させる琥珀色の光にあてられてあっさりと意識を失った17歳の少年は、地獄の門を潜った瞬間を全く記憶に留めてはいなかったのである……。
✦
目覚めた時、亘は森の中にいた。
しかしながら大気の色が濃厚な黄みを帯びているためか、未だ時空移動中なのかと一瞬錯覚させられてしまう。
『……そういや、異世界の森羅万象は空の色を反映していつも黄色えって死んだ爺ちゃんが言ってたな……。
たしかにイエローレンズのグラサンでも掛けたみてえだ……まあいずれ慣れるんだろうが、そうじゃなかったらこの視覚異常だけで発狂しちまうかもな……。
だが、ここは一体どこなんだよ……!?』
悲願であった目的地への一発ビンゴを悪い予感の通りに外してしまったものらしい流刑少年の視界が涙で滲んだまさにその時、頭上をとんでもない怪物の影がゆっくりと過った!
「──げえッ!な、何だよありゃあッ!?」
それは、地上世界には全く存在しない、いわゆる〈怪獣〉であった!
しかも、とびっきり悪趣味でグロテスクな意匠の、どちらかといえば〈妖魔獣〉の呼び名がふさわしい巨大モンスター……。
『いや、待てよ……もしかしたら、あれこそはわが偉大なる教聖の御手によって生み出された【刃獣】なんじゃ……!?
と、いうことは……ひょっとして、オレを迎えに来てくれたのかッ!?
だとしたら、是が非でも見つけてもらわなくっちゃッ!』
俄然奮い立った亘はガバッと跳ね起き、その瞬間に次元酔いが原因と思しき目眩に襲われたものの、文字通り命が懸かっているこの瞬間、そんなものに構っておられるかとばかりに全力ジャンプしながら全身全霊で自己の存在をアピールする!
「オーイッ!オ~イッッ!!
偉大なる教聖から召喚にあずかったシヅキワタルはここですよおォッッ!!!」
されど、喉が裂けんばかりにがなり立てようとも百メートル以上の高空を飛翔する黝い海星そっくりの巨大生物に必死のSOSが届くはずもない──それはたしかにそうなのだが、その巨体にびっしりと埋め込まれた(数百個は超えるのではないか?)の赤い燐光を放つ〈眼球〉が大地へと向けられているからには樹木の間から必死に手を振る自分の姿をキャッチできぬ方が不自然ではないのか?
「オ~イッ!オ~イッッ!!
見えてるんだろッ!?
だったら救けてくれよォッッ!!!」
──しかし非情にも?空の大怪物は何事もなかったかのように悠然と不幸な遭難者の頭上を横切り、彼だけには分かっているのであろう目的地に向かって姿を消してしまったのである……。
『ちきしょうめ、話が違うじゃねえか……いや、待てよ……!
ひょっとしたら、ありゃ刃獣じゃなくて敵の絆獣だったんじゃね?
だとしたら、攻撃されずに済んだだけでもメッケもんだったのかもしれん……いや、きっとそうだッ!
大体よ、あの偉大なる教聖があんなシュミのワリいキメえ生命体をデザインするはずがねえ……しかも聞くところによると絆獣の内部にゃ全員女である操獣師ってのが乗り込んでるらしいが、あんなバケモン操ってんのは間違いなくとんでもねえド△スだろうぜッ!
……ま、それはそれとして、あんなのを目の当たりにするといよいよオレ様も危険極まる異世界に足を踏み入れたんだと実感させられるな……。
だが絆獣息づく所刃獣在りとの言い伝え通り、ここらをウロついてりゃゼッタイ味方に遭遇するはずだ……!』
ここで改めて我が身をしげしげと見回した指月 亘は、異世界云々は抜きにしても自分が置かれた立場のあまりの危うさに不覚にも小さな悲鳴を上げた。
終生の忠誠を誓った教軍に指定された地上のとある地点から旅立った時に身に着けていたサバゲー用の戦闘服が所々裂けているのはやむを得ぬとしても、何より痛恨なのは3日分の食糧(ギリギリ切り詰めれば1週間は保つはずだ)と全財産をはたいてかき集めた携帯用サバイバルグッズを収めた命綱というべきザックが跡形も無く紛失してしまっていることにようやく気付いたのである!
「ヤ、ヤベえ……!
あれを無くしちまったら今この瞬間からオレっちの命は風前の灯火だ……。
しかもこの森ん中にゃ木の実一個すら落っこちちゃいねえじゃねえか……!
い、一体今は何の季節なんだよ?
不幸中の幸いで寒さこそ感じねえから冬じゃなさそうだが……」
──次の刹那、異世界遭難少年の十数メートル前方の木陰から七色の妖光を放つ異様な物体が出現した!
されどそれは氷や大気中の塵といった無機物からなる物体ではなく、眩い発光体と化した指月 亘という有機生命体=日本人の少年であったのである!
彼は今、とある密命を帯びてある場所──いや〈世界〉を目指す途上にあった。
『……果たして希望通りに栄えある神牙教軍の総本陣であるダロバスラ山に聳え立つ【極天霊柱】に到着できるかどうか?
尤もそれが叶わなければ、たとえ這ってでも辿り着いてやるがなッ!!
そして何年かかろうが魔神をも拉ぐ戦闘力をこの身に蓄え、オレをこんな地獄に放り込んだアイツらを復讐の焔で焼き尽くしてやるのだッッ!!!』
──それから無限とも錯覚させる時が経過し、光度を増した琥珀の闇の奥の奥にようやく眩い針の点のごとき〈出口〉が視えた!
『この【エグメド空間】の最果てであるあそここそがラージャーラへの入口……!
ついにやって来たぞ……だが、〈着地点〉によっては、すぐに一戦おっ始めなくちゃならないかもしれん……。
ちきしょうっ、上等だッ!
このシヅキワタルは逃げも隠れもせんぞッ!!
かかって来やがれッ、殺して破壊するしか能のねえ異世界のバケモノどもめッッ!!!」
されど必死に掻き立てた闘志も虚しく、謎の空間の出口が近付くに従って輝きを増大させる琥珀色の光にあてられてあっさりと意識を失った17歳の少年は、地獄の門を潜った瞬間を全く記憶に留めてはいなかったのである……。
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目覚めた時、亘は森の中にいた。
しかしながら大気の色が濃厚な黄みを帯びているためか、未だ時空移動中なのかと一瞬錯覚させられてしまう。
『……そういや、異世界の森羅万象は空の色を反映していつも黄色えって死んだ爺ちゃんが言ってたな……。
たしかにイエローレンズのグラサンでも掛けたみてえだ……まあいずれ慣れるんだろうが、そうじゃなかったらこの視覚異常だけで発狂しちまうかもな……。
だが、ここは一体どこなんだよ……!?』
悲願であった目的地への一発ビンゴを悪い予感の通りに外してしまったものらしい流刑少年の視界が涙で滲んだまさにその時、頭上をとんでもない怪物の影がゆっくりと過った!
「──げえッ!な、何だよありゃあッ!?」
それは、地上世界には全く存在しない、いわゆる〈怪獣〉であった!
しかも、とびっきり悪趣味でグロテスクな意匠の、どちらかといえば〈妖魔獣〉の呼び名がふさわしい巨大モンスター……。
『いや、待てよ……もしかしたら、あれこそはわが偉大なる教聖の御手によって生み出された【刃獣】なんじゃ……!?
と、いうことは……ひょっとして、オレを迎えに来てくれたのかッ!?
だとしたら、是が非でも見つけてもらわなくっちゃッ!』
俄然奮い立った亘はガバッと跳ね起き、その瞬間に次元酔いが原因と思しき目眩に襲われたものの、文字通り命が懸かっているこの瞬間、そんなものに構っておられるかとばかりに全力ジャンプしながら全身全霊で自己の存在をアピールする!
「オーイッ!オ~イッッ!!
偉大なる教聖から召喚にあずかったシヅキワタルはここですよおォッッ!!!」
されど、喉が裂けんばかりにがなり立てようとも百メートル以上の高空を飛翔する黝い海星そっくりの巨大生物に必死のSOSが届くはずもない──それはたしかにそうなのだが、その巨体にびっしりと埋め込まれた(数百個は超えるのではないか?)の赤い燐光を放つ〈眼球〉が大地へと向けられているからには樹木の間から必死に手を振る自分の姿をキャッチできぬ方が不自然ではないのか?
「オ~イッ!オ~イッッ!!
見えてるんだろッ!?
だったら救けてくれよォッッ!!!」
──しかし非情にも?空の大怪物は何事もなかったかのように悠然と不幸な遭難者の頭上を横切り、彼だけには分かっているのであろう目的地に向かって姿を消してしまったのである……。
『ちきしょうめ、話が違うじゃねえか……いや、待てよ……!
ひょっとしたら、ありゃ刃獣じゃなくて敵の絆獣だったんじゃね?
だとしたら、攻撃されずに済んだだけでもメッケもんだったのかもしれん……いや、きっとそうだッ!
大体よ、あの偉大なる教聖があんなシュミのワリいキメえ生命体をデザインするはずがねえ……しかも聞くところによると絆獣の内部にゃ全員女である操獣師ってのが乗り込んでるらしいが、あんなバケモン操ってんのは間違いなくとんでもねえド△スだろうぜッ!
……ま、それはそれとして、あんなのを目の当たりにするといよいよオレ様も危険極まる異世界に足を踏み入れたんだと実感させられるな……。
だが絆獣息づく所刃獣在りとの言い伝え通り、ここらをウロついてりゃゼッタイ味方に遭遇するはずだ……!』
ここで改めて我が身をしげしげと見回した指月 亘は、異世界云々は抜きにしても自分が置かれた立場のあまりの危うさに不覚にも小さな悲鳴を上げた。
終生の忠誠を誓った教軍に指定された地上のとある地点から旅立った時に身に着けていたサバゲー用の戦闘服が所々裂けているのはやむを得ぬとしても、何より痛恨なのは3日分の食糧(ギリギリ切り詰めれば1週間は保つはずだ)と全財産をはたいてかき集めた携帯用サバイバルグッズを収めた命綱というべきザックが跡形も無く紛失してしまっていることにようやく気付いたのである!
「ヤ、ヤベえ……!
あれを無くしちまったら今この瞬間からオレっちの命は風前の灯火だ……。
しかもこの森ん中にゃ木の実一個すら落っこちちゃいねえじゃねえか……!
い、一体今は何の季節なんだよ?
不幸中の幸いで寒さこそ感じねえから冬じゃなさそうだが……」
──次の刹那、異世界遭難少年の十数メートル前方の木陰から七色の妖光を放つ異様な物体が出現した!
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