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第一章 地上から来た教軍超兵
ボクは異世界遭難者③
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亘の内心の嘲罵とは裏腹に、カラフルミイラ魔人の方は既に彼を支配下に置いたつもりらしく得意気に講釈を垂れ始めた。
「──いいか、この《ティリールカ愛華領陥落戦》は我が軍にとってこれまで以上に重要な意味合いを帯びた、文字通り天下分け目の一戦だ。
というのも直近の《ルドストン凱鱗領》を舞台にしての攻防では陣頭指揮にあたった龍坊主兄弟があまりに暗愚であったために予想外の苦戦を強いられた末、該教界制圧の切り札として投入された、その時点における“最強刃獣”のガヌーラをも失うハメとなってしまった……。
全く、この煬赫に一任されれば全てを電光石火の迅さでやり遂げたものを…畏れ多いことだが、こればかりは偉大なる教聖にとっても痛恨の人選ミスであったと憚りながら確信しておる……!
まあそれはともかく、“教軍エース格”にして“【執教士長】最有力候補”のオレ様が満を持して臨む今回のミッションでは必勝を当然視されておるゆえ双肩にかかる重圧も並々ならぬものがあるが、先刻キサマも目にしたはずの大刃獣の威容からも我が軍の凄まじいばかりの意気込みが窺えよう……!!」
先程から龍坊主だの執教士長だのと意味不明なおどろおどろしいワードが連呼されるのに閉口していた遭難少年はここで改めて自分がとんでもない危険地帯に足を踏み入れてしまったことを痛感させられて、父と長兄への殺意を新たにしていた。
『──クソッ!アイツら……!!
そもそも幾ら教聖から“記念すべき10人目の素体は♀を送れ”って厳命されたからって、わざわざオレの…いや98%の男子生徒の心のマドンナであるあの飛鳥ちゃんをチョイスするかよッ!?
つまり、それを知ったオレが断固反対するのを予め読んだ上でこの鬼畜計画を立てたってことは、最初からこのオレをラージャーラに追放することが目的だったとしか考えられねえッ!
ちきしょう……しかもこのバケモノどうやら元・地上人らしいから、オレももうすぐこんな醜い姿形に変えられちまうってことなのかよッ!?
だ、だがもしそんなことになってみろッ、たとえどんな困難が伴おうが必ずや地上に逆上陸してテメエらの躰を八つ裂きにしてやるからなッッ!!』
瞳の奥にドス黒い鬼火を揺らめかせつつ唇を噛む聴き手の態度を自身への讃仰と盛大にカン違いしたネオンミイラは大仰に腕を組みつつそっくり返る。
「ふふふ、オマエも神牙教軍の末席を汚す身として大いに昂っておるようだが、物事には順序というものがある……。
何はともあれ現在の無力な地上人の肉体を偉大なる教聖の御手によって全身これ凶器の状態へと変貌させて頂くことだな……全てはそれからだ」
むろん本音としてはまっぴらゴメンだがとりあえず恐怖の未来から目を背け、薄幸の流刑者がこれからの戦局について震え声で質問すると、
どう取り繕っても隠し切れぬ悪党精神の主ながら、生来饒舌らしいミイラ怪人は魔王気取りの尊大な口調でまくし立てるのであった。
「よかろう、それでは予備知識ゼロのキサマにも理解できるように噛み砕いて説明してやろうか……。
実はな、このティリールカという新興教界は、ある意味でラージャーラに存在する総計114もの教界にあって最狂と形容されるにふさわしい特質を持っておる。
即ち、およそ50年前の発足以来一貫して非武装中立の方針を貫いておるのだッ!
しかも地上人であるオマエも即座に想起したであろうスイスとも異なり、〈国民皆兵〉という思想すら放棄しておるッ!!
ならばこれまでいかにして戦乱渦巻くラージャーラにおいて十数万規模の教民の身の安泰を保ってきたのか?
その答は、どこよりも先んじて実践された教界全体の“地下要塞化”にあったッ!
そしてこれは最も賢明にして、見方を変えればこの上なく狡猾な自衛手段にあった──つまり、愛華領という名称にも窺えるように教界全体を医療特区に設計して他教界からも病者を積極的に受け容れたのに留まらず、我が軍と交戦下にある複数の教界へも生命の危険をものともせずに積極的に医療団を派遣して尊敬を勝ち取り、“未来永劫、ティリールカのみは侵すべからず”との不文律を全ての教率者に刻み込むことに成功したことだ……」
「……」
「従って偉大なる教聖の当初の構想では“安牌”である愛華領に攻め込むのは最後…つまり114番目のはずだった。
されどおよそ70教界を落とした現段階で攻略に踏み切ったのにはワケがあるのだ。
──ところでキサマ、指月の縁者を自称するからには我が軍の天敵というべき【絆獣聖団】は当然、既知の存在であろうな?」
「は、はい、名前くらいは……。
で、ですが組織の実態等につきましては何らの知識も父から与えられておりません……」
これにはさすがの怪人も驚いたらしく、呆れ果てたといわんばかりの口調で返答する。
「──何だとォ……?
だとしたら、オマエよっぽど愛されてねえんだな……ハッキリ言って、犬猫にも劣る扱いじゃねえか……。
こりゃ純度120%の〈虐待〉だぜ。
それとも全てはめでたくいっぱしの教軍超兵に成り遂せてからの話で、枝葉の知識はその後現地調達すりゃいいとでも軽く考えてやがったか?
いずれにしろとんでもねえ横着野郎だぜ、こりゃ間違いなく教聖への〈報告案件〉だな……。
しゃーねえ…全く七面倒臭えが作戦開始までもう少し時間があるみてえだから、この煬赫様が地上人の風上にも置けねえ憎っくきドグサレ集団についてカンタンにレクチャーしてやるとするか……いいか、ついでに教軍構成員としての最低限の心得も伝授しといてやるから耳の穴かっぽじってよ~く空ッポの頭ン中に叩き込んどくんだぜ……!」
「──いいか、この《ティリールカ愛華領陥落戦》は我が軍にとってこれまで以上に重要な意味合いを帯びた、文字通り天下分け目の一戦だ。
というのも直近の《ルドストン凱鱗領》を舞台にしての攻防では陣頭指揮にあたった龍坊主兄弟があまりに暗愚であったために予想外の苦戦を強いられた末、該教界制圧の切り札として投入された、その時点における“最強刃獣”のガヌーラをも失うハメとなってしまった……。
全く、この煬赫に一任されれば全てを電光石火の迅さでやり遂げたものを…畏れ多いことだが、こればかりは偉大なる教聖にとっても痛恨の人選ミスであったと憚りながら確信しておる……!
まあそれはともかく、“教軍エース格”にして“【執教士長】最有力候補”のオレ様が満を持して臨む今回のミッションでは必勝を当然視されておるゆえ双肩にかかる重圧も並々ならぬものがあるが、先刻キサマも目にしたはずの大刃獣の威容からも我が軍の凄まじいばかりの意気込みが窺えよう……!!」
先程から龍坊主だの執教士長だのと意味不明なおどろおどろしいワードが連呼されるのに閉口していた遭難少年はここで改めて自分がとんでもない危険地帯に足を踏み入れてしまったことを痛感させられて、父と長兄への殺意を新たにしていた。
『──クソッ!アイツら……!!
そもそも幾ら教聖から“記念すべき10人目の素体は♀を送れ”って厳命されたからって、わざわざオレの…いや98%の男子生徒の心のマドンナであるあの飛鳥ちゃんをチョイスするかよッ!?
つまり、それを知ったオレが断固反対するのを予め読んだ上でこの鬼畜計画を立てたってことは、最初からこのオレをラージャーラに追放することが目的だったとしか考えられねえッ!
ちきしょう……しかもこのバケモノどうやら元・地上人らしいから、オレももうすぐこんな醜い姿形に変えられちまうってことなのかよッ!?
だ、だがもしそんなことになってみろッ、たとえどんな困難が伴おうが必ずや地上に逆上陸してテメエらの躰を八つ裂きにしてやるからなッッ!!』
瞳の奥にドス黒い鬼火を揺らめかせつつ唇を噛む聴き手の態度を自身への讃仰と盛大にカン違いしたネオンミイラは大仰に腕を組みつつそっくり返る。
「ふふふ、オマエも神牙教軍の末席を汚す身として大いに昂っておるようだが、物事には順序というものがある……。
何はともあれ現在の無力な地上人の肉体を偉大なる教聖の御手によって全身これ凶器の状態へと変貌させて頂くことだな……全てはそれからだ」
むろん本音としてはまっぴらゴメンだがとりあえず恐怖の未来から目を背け、薄幸の流刑者がこれからの戦局について震え声で質問すると、
どう取り繕っても隠し切れぬ悪党精神の主ながら、生来饒舌らしいミイラ怪人は魔王気取りの尊大な口調でまくし立てるのであった。
「よかろう、それでは予備知識ゼロのキサマにも理解できるように噛み砕いて説明してやろうか……。
実はな、このティリールカという新興教界は、ある意味でラージャーラに存在する総計114もの教界にあって最狂と形容されるにふさわしい特質を持っておる。
即ち、およそ50年前の発足以来一貫して非武装中立の方針を貫いておるのだッ!
しかも地上人であるオマエも即座に想起したであろうスイスとも異なり、〈国民皆兵〉という思想すら放棄しておるッ!!
ならばこれまでいかにして戦乱渦巻くラージャーラにおいて十数万規模の教民の身の安泰を保ってきたのか?
その答は、どこよりも先んじて実践された教界全体の“地下要塞化”にあったッ!
そしてこれは最も賢明にして、見方を変えればこの上なく狡猾な自衛手段にあった──つまり、愛華領という名称にも窺えるように教界全体を医療特区に設計して他教界からも病者を積極的に受け容れたのに留まらず、我が軍と交戦下にある複数の教界へも生命の危険をものともせずに積極的に医療団を派遣して尊敬を勝ち取り、“未来永劫、ティリールカのみは侵すべからず”との不文律を全ての教率者に刻み込むことに成功したことだ……」
「……」
「従って偉大なる教聖の当初の構想では“安牌”である愛華領に攻め込むのは最後…つまり114番目のはずだった。
されどおよそ70教界を落とした現段階で攻略に踏み切ったのにはワケがあるのだ。
──ところでキサマ、指月の縁者を自称するからには我が軍の天敵というべき【絆獣聖団】は当然、既知の存在であろうな?」
「は、はい、名前くらいは……。
で、ですが組織の実態等につきましては何らの知識も父から与えられておりません……」
これにはさすがの怪人も驚いたらしく、呆れ果てたといわんばかりの口調で返答する。
「──何だとォ……?
だとしたら、オマエよっぽど愛されてねえんだな……ハッキリ言って、犬猫にも劣る扱いじゃねえか……。
こりゃ純度120%の〈虐待〉だぜ。
それとも全てはめでたくいっぱしの教軍超兵に成り遂せてからの話で、枝葉の知識はその後現地調達すりゃいいとでも軽く考えてやがったか?
いずれにしろとんでもねえ横着野郎だぜ、こりゃ間違いなく教聖への〈報告案件〉だな……。
しゃーねえ…全く七面倒臭えが作戦開始までもう少し時間があるみてえだから、この煬赫様が地上人の風上にも置けねえ憎っくきドグサレ集団についてカンタンにレクチャーしてやるとするか……いいか、ついでに教軍構成員としての最低限の心得も伝授しといてやるから耳の穴かっぽじってよ~く空ッポの頭ン中に叩き込んどくんだぜ……!」
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