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第二章 かくて【中立教界】は戦場となった
那崎弓葉、絶体絶命!③
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『こ、こりゃ一体どういうことだ?
まるで自分たちが立ち上げた新組織が聖団に取って代わると言わんばかりじゃねえか?こいつは聞きようによっちゃ、立派な宣戦布告だぜ……!
しかもたまげたことに、彼のお仲間たちは我らが無元造房(聖団が要する技術面全般を支える、通称“エグメドの工匠”)とタメを張れるウルトラハイテク集団だという……。
ってことは、にわかには信じ難いが天響神が“第二の聖団”を旗揚げしたと解釈するのが最も自然だが……Dr.ゼドの口ぶりだといかにも「こっちこそが本家」って自負に満ちているから、ひょっとするとエグ神様から直接そういう御託宣が下されたのかもな……。
そして何より意外だったのは、あのお固い“聖団至上主義者”の萩邑がむしろ嬉々として彼氏に与えられた未承認の聖幻晶を身に着けたということ──!
まあ発覚は時間の問題だろうが、はたしてそうなったら一体どんだけのペナルティを課されるのか見当もつかないぜ……!!』
こう推察した“はぐれ錬装者”は、おずおずと上目遣いで改めてゼド=メギンの白い美貌を仰ぎ見ながら、『あぁ、やっぱそーいうことか……』と妙に納得する。
『要するに萩邑のお姉ちゃんはこのお方の類稀な美しい容姿と愛華領次期教率者という地位に完全にのぼせ上がっちまったって訳か……ま、もしゼド氏の方からアプローチしたんなら断る術もねえだろうし、実際お似合いなんだからムリもねえわな……しかもプライドの塊みてえなあの女のことだ、場合によっちゃ古巣と決別してでも“一世一代の異世界ロマンス”を優先するに違いねえ……。
さて、翻ってこの雷堂 玄クンとしてもこのまま絆獣聖団と腐れ縁を持ち続けたところで明るい未来は見えてきそうもねえ──事実ここは思案のしどころだぞ、しかも上手くすりゃあ、あの忌々しい玉朧の因業ジジイとも別れられる千載一遇のチャンスじゃねえか……その一点だけでもこの話に乗るメリットはあるってモンだぜ……!』
眉根を寄せて熟考する玄を穏やかな視線で見下ろしながら、サプライズコメント連発の次期教率者はある意味最も驚嘆すべき言葉を投げかけてトドメを刺そうともくろむ。
「君の人生を文字通り左右するかもしれぬ私の言葉を真剣に考慮してくれているのはうれしく思う──しかし決して強制している訳ではないということだけは念頭に置いてもらいたいのだ。
というのも、二代目聖団長の急逝を経て実質的な聖団指導者となったネフメルス氏はティリールカとの部分的一体化を推進する過程において、少なくとも当教界に駐留する聖団員については愛華領にも指揮権の一部を譲渡してくれているのだよ……とはいえその際にはまず当事者自身の意思を最優先することになっている──つまり今回のケースでいうなら君自身が錬装化能力凍結という本部の処置を甘受するのであれば我々極智の眼(何故か愛華領とは言わない!)の容喙はそもそもが不可能であるということなのだ……。
〈選択権〉はあくまで君にある──どうかじっくり考えて、後悔のない決断を下してくれたまえ……」
──だが、玄の肚は既に固まっていた。
「ボクは……いえ自分は貴方についていきますッ!
何なら星拳鬼會を脱退して、極智の眼の専属錬装者になっても構いませんッ!!
ですから可能であるならば、今すぐゼド様の超技術によって凍結処分を解いて頂きたいのですッッ!!!」
✦
無二の相棒である“光翼麗鵬”レオーランをあえて温存し、愛弟子の佐原真悠花の“天翔魔鱏”ヴェセアムに共に搭乗した萩邑りさらの胸中はまさに嵐が荒れ狂っていた。
今朝早く、居室を訪れたゼドから直接伝えられた衝撃的な事実──愛憎半ばしながらもやはり操獣師としての自分にとって絶対的な師であった竹澤夏月の惨死と生涯の好敵手・ジェニファーの負傷(常人ならば確実に死亡していたと恋人は断言した)に打ちひしがれる間もなく神牙教軍の飛翔刃獣の襲来が告げられ、ならばなおさら二人の新人には一刻も早く一人前になってもらわねばとの焦りが、ヴェセアムでの出陣を決断させたのだ。
なお一体の絆獣に複数の操獣師が搭乗する場合、最も傑出した人物が絆獣の体内から召喚した【操念螺盤】(直径2.5メートル・厚さ10センチのエグメド鋼製円盤で中央に直径1メートル弱の柔らかな操獣座が組み込まれており、そこに結跏趺坐した操獣者が固定されると同時に聖幻晶によって発生させた【融魂波】によって操念螺盤ごと吸収されるのである)には、主にスペースの関係で三人以上の搭乗は厳禁されていた。
「いい?しばらくは私の戦いぶりを黙って見てなさい──それに今回はチェイズ闘士団との共同作戦だから、聖団員オンリーの場合よりも一層の細心の注意が必要……それこそヘタしたら彼らに撃墜されちゃうかもしれないんだから、一瞬の油断も許されないわ……!」
むろん地下要塞から指揮を執る行動隊長のギーガルと実際に特装戦闘機の操縦桿を握る現場のリーダー・ウォベルとは聖幻晶を通じて交信が可能だが、りさら自身が慣れぬ新型絆獣を駆ることから事前の打ち合わせで彼らとの連携攻撃は見送られ、彼女は真悠花に手本を見せつつ、地上から破壊光弾発射による刃獣撃破を目論む那崎弓葉を指揮することになっていた。
当初は教え子を背後に控えさせようとしたりさらであったが、それでは小柄(154センチ)な真悠花が172センチの自分の陰に埋没してしまうことに気付き、苦笑しながら前方へと配置換えしたのだが、その瞬間に真悠花が予想だにしない行動に出た──あたかも幼な子が母親にすがりつくがごとく、今にも泣きそうな顔で白い戦闘服に包まれた豊かな胸にむしゃぶりついてきたのだ!
「──ば、ばかッ!
一体何のつもりなのッ!?
私たちはこれから命懸けの戦闘に臨むのよッ!?それなのにまるでママにしがみつく赤ちゃんみたいに……いいこと、そんな甘えた考えじゃ二人とも間違いなく死んでしまうわッ、お願いだからピリッとしてちょうだいッ!!」
本来ならばここで平手打ちでも見舞って喝を入れるべきなのだろうが、弓葉に対しては自然に取れる峻烈な指導者としての姿勢を、この可憐な13歳に向けることがこの上なく困難であることに美しき特級操獣師は愕然としていた。
しかも怯えきった潤んだ瞳で自分を見上げる真悠花に瞬間的に鄭 雅桃の面影を認めた彼女は、強烈に突き上げてきた胸と子宮の疼きが命じるままに、渾身の力を込めてその震える頭部をかき抱いてしまったのである!
まるで自分たちが立ち上げた新組織が聖団に取って代わると言わんばかりじゃねえか?こいつは聞きようによっちゃ、立派な宣戦布告だぜ……!
しかもたまげたことに、彼のお仲間たちは我らが無元造房(聖団が要する技術面全般を支える、通称“エグメドの工匠”)とタメを張れるウルトラハイテク集団だという……。
ってことは、にわかには信じ難いが天響神が“第二の聖団”を旗揚げしたと解釈するのが最も自然だが……Dr.ゼドの口ぶりだといかにも「こっちこそが本家」って自負に満ちているから、ひょっとするとエグ神様から直接そういう御託宣が下されたのかもな……。
そして何より意外だったのは、あのお固い“聖団至上主義者”の萩邑がむしろ嬉々として彼氏に与えられた未承認の聖幻晶を身に着けたということ──!
まあ発覚は時間の問題だろうが、はたしてそうなったら一体どんだけのペナルティを課されるのか見当もつかないぜ……!!』
こう推察した“はぐれ錬装者”は、おずおずと上目遣いで改めてゼド=メギンの白い美貌を仰ぎ見ながら、『あぁ、やっぱそーいうことか……』と妙に納得する。
『要するに萩邑のお姉ちゃんはこのお方の類稀な美しい容姿と愛華領次期教率者という地位に完全にのぼせ上がっちまったって訳か……ま、もしゼド氏の方からアプローチしたんなら断る術もねえだろうし、実際お似合いなんだからムリもねえわな……しかもプライドの塊みてえなあの女のことだ、場合によっちゃ古巣と決別してでも“一世一代の異世界ロマンス”を優先するに違いねえ……。
さて、翻ってこの雷堂 玄クンとしてもこのまま絆獣聖団と腐れ縁を持ち続けたところで明るい未来は見えてきそうもねえ──事実ここは思案のしどころだぞ、しかも上手くすりゃあ、あの忌々しい玉朧の因業ジジイとも別れられる千載一遇のチャンスじゃねえか……その一点だけでもこの話に乗るメリットはあるってモンだぜ……!』
眉根を寄せて熟考する玄を穏やかな視線で見下ろしながら、サプライズコメント連発の次期教率者はある意味最も驚嘆すべき言葉を投げかけてトドメを刺そうともくろむ。
「君の人生を文字通り左右するかもしれぬ私の言葉を真剣に考慮してくれているのはうれしく思う──しかし決して強制している訳ではないということだけは念頭に置いてもらいたいのだ。
というのも、二代目聖団長の急逝を経て実質的な聖団指導者となったネフメルス氏はティリールカとの部分的一体化を推進する過程において、少なくとも当教界に駐留する聖団員については愛華領にも指揮権の一部を譲渡してくれているのだよ……とはいえその際にはまず当事者自身の意思を最優先することになっている──つまり今回のケースでいうなら君自身が錬装化能力凍結という本部の処置を甘受するのであれば我々極智の眼(何故か愛華領とは言わない!)の容喙はそもそもが不可能であるということなのだ……。
〈選択権〉はあくまで君にある──どうかじっくり考えて、後悔のない決断を下してくれたまえ……」
──だが、玄の肚は既に固まっていた。
「ボクは……いえ自分は貴方についていきますッ!
何なら星拳鬼會を脱退して、極智の眼の専属錬装者になっても構いませんッ!!
ですから可能であるならば、今すぐゼド様の超技術によって凍結処分を解いて頂きたいのですッッ!!!」
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無二の相棒である“光翼麗鵬”レオーランをあえて温存し、愛弟子の佐原真悠花の“天翔魔鱏”ヴェセアムに共に搭乗した萩邑りさらの胸中はまさに嵐が荒れ狂っていた。
今朝早く、居室を訪れたゼドから直接伝えられた衝撃的な事実──愛憎半ばしながらもやはり操獣師としての自分にとって絶対的な師であった竹澤夏月の惨死と生涯の好敵手・ジェニファーの負傷(常人ならば確実に死亡していたと恋人は断言した)に打ちひしがれる間もなく神牙教軍の飛翔刃獣の襲来が告げられ、ならばなおさら二人の新人には一刻も早く一人前になってもらわねばとの焦りが、ヴェセアムでの出陣を決断させたのだ。
なお一体の絆獣に複数の操獣師が搭乗する場合、最も傑出した人物が絆獣の体内から召喚した【操念螺盤】(直径2.5メートル・厚さ10センチのエグメド鋼製円盤で中央に直径1メートル弱の柔らかな操獣座が組み込まれており、そこに結跏趺坐した操獣者が固定されると同時に聖幻晶によって発生させた【融魂波】によって操念螺盤ごと吸収されるのである)には、主にスペースの関係で三人以上の搭乗は厳禁されていた。
「いい?しばらくは私の戦いぶりを黙って見てなさい──それに今回はチェイズ闘士団との共同作戦だから、聖団員オンリーの場合よりも一層の細心の注意が必要……それこそヘタしたら彼らに撃墜されちゃうかもしれないんだから、一瞬の油断も許されないわ……!」
むろん地下要塞から指揮を執る行動隊長のギーガルと実際に特装戦闘機の操縦桿を握る現場のリーダー・ウォベルとは聖幻晶を通じて交信が可能だが、りさら自身が慣れぬ新型絆獣を駆ることから事前の打ち合わせで彼らとの連携攻撃は見送られ、彼女は真悠花に手本を見せつつ、地上から破壊光弾発射による刃獣撃破を目論む那崎弓葉を指揮することになっていた。
当初は教え子を背後に控えさせようとしたりさらであったが、それでは小柄(154センチ)な真悠花が172センチの自分の陰に埋没してしまうことに気付き、苦笑しながら前方へと配置換えしたのだが、その瞬間に真悠花が予想だにしない行動に出た──あたかも幼な子が母親にすがりつくがごとく、今にも泣きそうな顔で白い戦闘服に包まれた豊かな胸にむしゃぶりついてきたのだ!
「──ば、ばかッ!
一体何のつもりなのッ!?
私たちはこれから命懸けの戦闘に臨むのよッ!?それなのにまるでママにしがみつく赤ちゃんみたいに……いいこと、そんな甘えた考えじゃ二人とも間違いなく死んでしまうわッ、お願いだからピリッとしてちょうだいッ!!」
本来ならばここで平手打ちでも見舞って喝を入れるべきなのだろうが、弓葉に対しては自然に取れる峻烈な指導者としての姿勢を、この可憐な13歳に向けることがこの上なく困難であることに美しき特級操獣師は愕然としていた。
しかも怯えきった潤んだ瞳で自分を見上げる真悠花に瞬間的に鄭 雅桃の面影を認めた彼女は、強烈に突き上げてきた胸と子宮の疼きが命じるままに、渾身の力を込めてその震える頭部をかき抱いてしまったのである!
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