魔人戦界ラージャーラ

幾橋テツミ

文字の大きさ
26 / 42
第二章 かくて【中立教界】は戦場となった

那崎弓葉、絶体絶命!③

しおりを挟む
『こ、こりゃ一体どういうことだ?

 まるで自分たちが立ち上げた新組織が聖団に取って代わると言わんばかりじゃねえか?こいつは聞きようによっちゃ、立派な宣戦布告だぜ……!

 しかもたまげたことに、彼のお仲間たちは我らが無元造房(聖団が要する技術面全般を支える、通称“エグメドの工匠”)とタメを張れるウルトラハイテク集団だという……。

 ってことは、にわかには信じ難いが天響神が“第二の聖団”を旗揚げしたと解釈するのが最も自然だが……Dr.ゼドの口ぶりだといかにも「こっちこそが本家」って自負に満ちているから、ひょっとするとから直接そういう御託宣が下されたのかもな……。

 そして何より意外だったのは、あのお固い“聖団至上主義者”の萩邑がむしろ嬉々として彼氏に与えられたの聖幻晶を身に着けたということ──!

 まあ発覚は時間の問題だろうが、はたしてそうなったら一体どんだけのペナルティを課されるのか見当もつかないぜ……!!』

 こう推察した“はぐれ錬装者”は、おずおずと上目遣いで改めてゼド=メギンの白い美貌を仰ぎ見ながら、『あぁ、やっぱそーいうことか……』と妙に納得する。

『要するに萩邑のお姉ちゃんはこのお方の類稀な美しい容姿と愛華領次期教率者という地位に完全にのぼせ上がっちまったって訳か……ま、もしゼド氏の方からアプローチしたんなら断る術もねえだろうし、実際お似合いなんだからムリもねえわな……しかもプライドの塊みてえなあの女のことだ、場合によっちゃ古巣と決別してでも“一世一代の異世界ロマンス”を優先するに違いねえ……。

 さて、翻ってこの雷堂 玄クンとしてもこのまま絆獣聖団と腐れ縁を持ち続けたところで明るい未来は見えてきそうもねえ──事実ここは思案のしどころだぞ、しかも上手くすりゃあ、あの忌々しい玉朧の因業ジジイとも別れられる千載一遇のチャンスじゃねえか……その一点だけでもこの話に乗るメリットはあるってモンだぜ……!』

 眉根を寄せて熟考する玄を穏やかな視線で見下ろしながら、サプライズコメント連発の次期教率者はある意味最も驚嘆すべき言葉を投げかけてトドメを刺そうともくろむ。

「君の人生を文字通り左右するかもしれぬ私の言葉を真剣に考慮してくれているのはうれしく思う──しかし決して強制している訳ではないということだけは念頭に置いてもらいたいのだ。

 というのも、二代目聖団長の急逝を経て実質的な聖団指導者となったネフメルス氏はティリールカとのを推進する過程において、少なくとも当教界に駐留する聖団員については愛華領われわれにも指揮権の一部を譲渡してくれているのだよ……とはいえその際にはまず当事者自身の意思を最優先することになっている──つまり今回のケースでいうなら君自身が錬装化能力凍結という本部の処置を甘受するのであれば我々(何故か愛華領とは言わない!)の容喙はそもそもが不可能であるということなのだ……。

〈選択権〉はあくまで君にある──どうかじっくり考えて、後悔のない決断を下してくれたまえ……」

 ──だが、玄の肚は既に固まっていた。

「ボクは……いえ自分は貴方についていきますッ!
 退!!

 ですから可能であるならば、今すぐゼド様の超技術によって凍結処分を解いて頂きたいのですッッ!!!」

         ✦

 無二の相棒である“光翼麗鵬”レオーランをあえて温存し、愛弟子の佐原真悠花の“天翔魔鱏”ヴェセアムに共に搭乗した萩邑りさらの胸中はまさに嵐が荒れ狂っていた。

 今朝早く、居室を訪れたゼドから直接伝えられた衝撃的な事実──愛憎半ばしながらもやはり操獣師としての自分にとって絶対的な師であった竹澤夏月の惨死と生涯の好敵手・ジェニファーの負傷(常人ならば確実に死亡していたと恋人は断言した)に打ちひしがれる間もなく神牙教軍の飛翔刃獣の襲来が告げられ、ならばなおさら二人の新人には一刻も早く一人前になってもらわねばとの焦りが、ヴェセアムでの出陣を決断させたのだ。

 なお一体の絆獣に複数の操獣師が搭乗する場合、最も傑出した人物が絆獣の体内から召喚した【操念螺盤】(直径2.5メートル・厚さ10センチのエグメド鋼製円盤で中央に直径1メートル弱の柔らかな操獣座が組み込まれており、そこに結跏趺坐した操獣者が固定されると同時に聖幻晶によって発生させた【融魂波】によって操念螺盤ごと吸収されるのである)には、主にスペースの関係で三人以上の搭乗は厳禁されていた。

「いい?しばらくは私の戦いぶりを黙って見てなさい──それに今回はチェイズ闘士団との共同作戦だから、聖団員なかまオンリーの場合よりも一層の細心の注意が必要……それこそヘタしたら彼らに撃墜されちゃうかもしれないんだから、一瞬の油断も許されないわ……!」

 むろん地下要塞から指揮を執る行動隊長のギーガルと実際に特装戦闘機ガートスの操縦桿を握る現場のリーダー・ウォベルとは聖幻晶を通じて交信が可能だが、りさら自身が慣れぬ新型絆獣を駆ることから事前の打ち合わせで彼らとの連携攻撃は見送られ、彼女は真悠花に手本を見せつつ、地上から破壊光弾発射による刃獣撃破を目論む那崎弓葉を指揮することになっていた。

 当初は教え子を背後に控えさせようとしたりさらであったが、それでは小柄(154センチ)な真悠花が172センチの自分の陰に埋没してしまうことに気付き、苦笑しながら前方へと配置換えしたのだが、その瞬間に真悠花が予想だにしない行動に出た──あたかも幼な子が母親にすがりつくがごとく、今にも泣きそうな顔で白い戦闘服ジャンプスーツに包まれた豊かな胸にむしゃぶりついてきたのだ!

「──ば、ばかッ!
 一体何のつもりなのッ!?
 私たちはこれから命懸けの戦闘に臨むのよッ!?それなのにまるでママにしがみつく赤ちゃんみたいに……いいこと、そんな甘えた考えじゃ二人とも間違いなく死んでしまうわッ、お願いだからピリッとしてちょうだいッ!!」

 本来ならばここで平手打ちでも見舞って喝を入れるべきなのだろうが、弓葉に対しては自然に取れる峻烈な指導者としての姿勢を、この可憐な13歳に向けることがこの上なく困難であることに美しき特級操獣師ドゥルガーは愕然としていた。

 しかも怯えきった潤んだ瞳で自分を見上げる真悠花に瞬間的に鄭 雅桃の面影を認めた彼女は、強烈に突き上げてきた胸と子宮の疼きが命じるままに、渾身の力を込めてその震える頭部をかき抱いてしまったのである!

 

 






 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...