魔人戦界ラージャーラ

幾橋テツミ

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第二章 かくて【中立教界】は戦場となった

那崎弓葉、絶体絶命!⑤

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 朝食後に入念なブリーフィングを行った三人の操獣師とチェイズ闘士団(スペンサーら錬装者チームはを帯びて既に出動していた)が出撃してからおよそ1時間後、ゼド=メギンに導かれた謎の一室において謎のカプセル内に立たされ、およそ2分間の断続的な“怪電流の拷問”という試練を経た雷堂 玄は、約束通り漆黒の鋼人への錬装を無事完了させた後、ゼドとガーギル隊長から昨日の岩眼魔のごとく教界内に侵入してきた教軍超兵を発見次第排除せよと命じられて勇躍飛び出したのであったが、その時既に広大な神霊薬花園の十数ヶ所から火の手が上がっていた。

「ぬううッ、やりやがったなッ!

 だ、だが刃獣どもが空中から熱光線で薬花園を火の海にするっていう作戦だと、この段階フェーズで教軍超兵が投入されてるとも思えねえが……!?

 全くいくら広えからって、こんな所をウロチョロしてると灼熱地獄に巻き込まれちまうのは時間の問題だ。

 しかも星拳鬼會ウチ戦闘機デルタスライダーは既に出陣してるだろうとは分かってても、イザ置いてけぼりを食らってみるとなかなかミジメな気分に浸れるもんだな……とはいえ何故か機影が見当たらんから、今んとこの上から嘲笑われてる怖れもなさそうだが……。

 しかし玄翔刀を投げてもあのキメえヒトデ型の刃獣にゃとても届きそうもねえし、いい加減引き上げたくなってきたぜ……んっ、おおッ、ありゃ弓葉タンのメレゼスじゃねえかッ!?
 
 あぁっ、こりゃマジぃ……急降下してきたヒトデどもが顔や手足にベッタリ張り付いて動きを止めちまいやがったッ!

 これじゃ唯一の飛び道具である破壊光弾も吐き出せねえ……もし強行しちまうと敵もろとも自分の顔を焼いちまうからなッ!!」

 もはや絆獣からの操獣師脱出を確信した玄が弓葉を救護すべく、およそ500メートル前方で展開される修羅場に向けて駆け出そうとした刹那、その20メートルほど右横を凄まじい速さで突進するオレンジ色の影があった!

「──ラ、ラズンかッ!?

 て、てめえケダモノのくせに一丁前に騎士ナイトを気取ってお姫様の救出に現れたってのかよッ!?

 そうはいくかっての、弓葉タンを救うのはであるオレの役目だッッ!!」

 高らかに宣言して追跡にかかるものの、さすがに最高時速150キロを誇る護衛絆獣の凄まじい脚力にみるみる距離を離された錬装者は、殺意を込めた玄翔刀の投擲を一瞬考えるがすぐに思い直す。

『アイツとやり合うのはとりあえず彼女を教軍の魔手から救い出してからだッ!

 だがこの圧倒的な戦力差をどうすればいいッ!?」

 しかしその時、耳元の通信機からチェイズ闘士団航空戦隊長・ウォベルから頼もしいメッセージが飛び込んできた!

「ゲン、刃獣どもは部下たちに任せろッ!
 ナザキ操獣師には無防備な【飛煌球】での長距離逃亡を避けて速やかに着陸し、君に身を委ねるよう連絡しておくから後は頼むぞッ!!」

「了解しましたッ!感謝致しますッ!!」

 やっぱ百戦練磨のプロフェッショナルは違うぜ──と感激する少年錬装者であったが、あたかも瞬間移動したかのごとく頭上に出現した2機の深緑色のガートスが大の字となった人型絆獣に殺到し、触腕で飛煌球を捕まえようとした仔ザヌザどもを全長80センチ・直径1.5センチの裂針弾の猛射で串刺しにする!

 かくて命拾いした弓葉はラズンを発見したものか疾風のごとく駆け寄ってきた愛獣の下に着陸するが、何らかのダメージを負ってしまったものか漆黒の光球から出てくる気配がない……。

「グルルルルルッ……」

 戸惑ったように飛煌球の周囲を回る護衛絆獣──そしてそこに黒い鋼人が魔鉈を振り上げて背後から襲いかかってきた!

「──くたばれド畜生がッ!!

 弓葉はオレのものだぁァッッ!!!」

 しかし鮮やかな黄色の花弁を散らしつつ刃先がザックリと抉ったのは薬花草が根付く腐植土であり、瞬時に反撃に出たラズンは鋭い鉤爪をギラつかせて中腰となった錬装者に飛びかかる!

「ちいッ、そうはいくかッ!」

 玄翔刀の柄から手を離し、下から貫手を築き上げようとした雷堂 玄であったが、ラズンの前足が彼の頭部に激突する方が一瞬早く、揃えた指は虚しく空を切って後方にのけ反る──ギリギリ踏み留まったのは錬装者の、そして絆獣聖団員としての誇りが成せる業であったのであろうが、間髪入れず宙に舞った朱色の魔獣に頭上からのしかかられると、勢いのままに背中から地面に叩き付けてしまう!

『げぇッ、何てスピードだッ!

 だ、だがよ、テメエの爪がいかに鋭かろうと、エグメド鋼製の錬装磁甲を切り裂くことなんてできっこねえ(ハズだ)ッ!

 そして畜生の悲しさで玄翔刀がオレの意のままにコントロールできることを知らねえようだなッ!!

 カワイソウっちゃカワイソウだが、人間サマを舐めた報いだ、来世はも少し賢い生き物に生まれてくるんだなッッ!!!』

 予想どおり、唸りを上げる前足による乱撃を敢行するラズンであったが、十数発を見舞ったところでガッという鈍い音が響くと同時にその動きが急に止まり、赤紫色の血液が漆黒の鋼人の上半身にドバッとぶちまけられるのであった!

「やれやれ、どうやら殺っちまったらしいな……」

 覆い被さってきた絆獣の屍骸を静かに払いのけながら上半身を起こした玄は、磁甲から発せられる念動パワーによって一旦10メートル近く上昇し、そこから猛回転しつつ急降下して標的の脳天を叩き割り、顎先あたりまで食い込んで停止した魔鉈を右手で引き抜きつつ、「アー◯ン」と厳粛に呟きながら左手で十字を切る。

 すると、この祈りは飛煌球から操獣波を消去して愛しの弓葉を露わにしてくれたのである!

「ありがてえッ!
 もう大丈夫だぜ弓葉タンッ!!」

 されど仔ザヌザに絡みつかれた際に何らかの放射攻撃を受けてしまったものか、黒衣の美少女操獣師は操念螺盤上で横向きに倒れ込んでしまっているではないか!

『チキショーめ、さすが神牙教軍、どこまでもタチがわりいぜッ!
……だがそのおかげでペットの惨殺現場を目撃されずに済んだんだから、オイラの悪運も相当だな……』

 と半ばほくそ笑みながら毟った葉っぱで磁甲の汚れを拭い去り、念願の美ボディににじり寄る“はぐれ錬装者”であったが、ここで持ち前の邪心がムクムク(ムラムラ)と黒雲の様に湧き上がってくる。

『このまま要塞に戻るのは……!

 そうともッ、これは極智の眼の一員として記念すべき一歩を踏み出したオレ様に対して、エグ神様が与えて下さった激励を込めた祝福の贈り物なのだッ!

 ──そういや、愛華領の外れににゃもってこいの、白老森とかいうラージャーラ版の樹海があったな……我ながらコワくなるが、一体どこまでツイてるんだよ今日のオレ!?』

 そうと決まったら善は急げ、証拠隠滅のため全速力で穿ほじくった申し訳程度の浅穴に屍を蹴落とすようにして葬ると、失神した那崎弓葉を抱えた雷堂 玄は脱兎のごとく駆け出した──そこに一匹の教軍超兵が待ち構えていることも知らずに……。

  ──────────────

※ここから「凶幻獣戦域ラージャーラ」の冒頭へと繋がります。そこでは雷堂 玄VS戸倉一志のバトルが後者優勢の場面で突如断ち切られて那崎弓葉の紹介に移り、その流れで萩邑りさらによる前ミッションの回想へと物語がシフトしてしまうのですが(おかしな構成でまことにスミマセン!自分でもずっと引っかかっておりました💧)、本作でティリールカ攻防戦の全貌が描かれますので、よろしければお付き合いくださいませ🙇



 





 

 

 







 

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