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第三章 凶幻獣戦域の覇者
【空の破壊神】を撃て!⑤
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ゼド=メギンの怒りは頂点に達していた。
「こ、この世に生を受けて以来、これほどの屈辱を味わったことはない……し、しかもラージャーラに全ての面において劣る地上世界出身者ふぜいに……たしかに敵軍首領による強力な深層催眠の影響下から脱し得ておらぬのだろうと推測はできるが、事実として病室を脱け出しナースセンターを占拠するなどという狼藉に及んておることを鑑みても、もはや苦痛を伴う強硬措置が必要なことは明白だッ!
(銀棒のボタンを乱打しつつ)
第8医門機小隊、大至急第11病棟4階のナースセンターに直行せよ──そこは今、超悪質な反逆者たちによって不法占拠されているッ!
よいか、一人残らず拘束するのだぞッ!
そして特にタケザワ隊長殺害の主犯である狐色の戦闘服を纏った操獣師だけは絶対に逃すなッ!そやつに関する限り手加減は無用、抵抗の有無に関わらず死に至らぬ程度に打擲せよッ、内臓破裂程度の損傷ならば全く問題はないッ!!
(背後に立つ2体を荒々しく振り返り)
何を突っ立っているッ!?
さっさと応援に行かんかッ、そしてあのアバズレどもにこのゼド=メギンの恐ろしさを骨の髄まで叩き込んでやるのだッッ!!」
主の命を受けた金属人間たちは一礼するとクルリと回れ右してとてつもないスピードで退室して行った。
『ふふん……掛け声だけは勇ましいが、裏腹にスクリーンに連中の姿を映し出すこともせず通信も断ち切ったところを見ると、奴さん相当堪えてるようだな……ま、ムリもねえか、それでなくても“ラージャーラの奇跡”として、唯一無風状態だった〈中立教界〉の御曹司として何不自由なくヌクヌクと生活してきた自分がこんな目に遭うなんて、今でも信じられねえ思いだろうからな……。
だがまあオレとしては連中に礼を言いてえ気持ちで一杯だぜ──これで部下の大失態から矛先を逸らせられたし、いずれにせよ航空戦隊を失った以上撤退するしかねえんだから、ほとぼりが冷めたところで切り出すとするかな……もういっそのことウォベルの野郎も殺られてくれりゃコイツも綺麗さっぱり諦めて、テメエの方から契約解除を宣告してくれるんじゃねえか?』
不埒な期待に頬を緩めつつ改めて正面の大スクリーンに視線を投じると、空の巨大刃獣は直立したまま断続的に怪光線を発射してはいたものの、聖団機とウォベルはもはやそのリズムを見切ったものか傍目にも余裕を持ってかわしつつ、淡々と熱線&機銃掃射を続けて着実に生ける砲門を潰してゆく。
『うーむ、やるな。
尤もスペンサーの操縦技術については我々の業界でもつとに知れ渡っていたから今更の感があるが、瞠目すべきは大先輩と殆ど同等の働きをやってのけるこのサカマキとかいう少年のセンスと胆力だ……全く末恐ろしいぜ、このまま行ったら5年もかからずにラージャーラでも一、二を争うカリスマパイロットに育つんじゃねえか──もしスペンサーがホントに聖団を出てコイツも追従するんなら、諸手を広げて一気に人員不足に陥った我がチェイズ闘士団に迎え入れたいモンだぜ……!』
✦
ゼドとしては最も現場に近い医門機小隊を起動したつもりであったが、7体の機械戦士が到着した時、そこには失神した三人の看護師が倒れ込んでいるだけであった。
されど高度な人工頭脳を搭載された自律型ロボットである彼らはすぐに主人の指示を仰ぐことはせず、地底要塞内の2千台を超える監視カメラを高速検索して獲物の行方を追う。
しかしながら、外部に出ていない限りこの捜索網から逃れることはできぬはずであったが、意外なことに十数人の操獣師の姿がキャッチされることはなかったのである……。
だがその〈目的地〉ならば予想はつく……ならば、そこに網を張っていればいずれ捕捉に成功するのではないか?
この結論に至った瞬間、医門機たちは一斉に駆け出していた──神霊薬花園の最も死角になる一隅に設けられた【絆獣待機ゾーン】に!
その途上で第11病棟からの最短ルートにサーチを集中した結果、ついに連中の姿を捉えることに成功したのであるが、同時に手間取った理由も明らかとなった。
あろうことか“はぐれ操獣師”どもは獣のごとく四つん這いとなり、更に護衛絆獣最速を誇ったラズンに匹敵する迅さで要塞内を疾走していたのである!
これは明らかに医門機のスペックを凌駕するものであり、既に目的地手前まで接近しているとあって、このまま絆獣に搭乗させたなら確実に逃亡を許してしまうであろう……!
✦
誰よりも早く覚醒したはずであるのに、数時間を経てようやく躰を起こすことができた自身の不甲斐なさに玉朧拳師は深刻な衝撃を覚えていた。
『寄る年波には勝てぬというが、オレはまだ50になったばかり……まだまだ老け込むトシではないとタカをくくっていたが現実はそうではなかったということか……!
まあ他に考えられる要因として、“精神的夫婦”などと揶揄されてきた夏月をあのような形で喪ったショックは否定できぬにしても情けない限りだ……!
ところで現在外の状況はどうなっておるのか?
むろん病室内にそれを知る手立ては無いが、かすかに聞こえたガートスの発進音は、訓練によるものとは異なる緊迫感を帯びていたようだが……!
しかしそれも当然か、幻影とはいえ鏡の教聖本人が教界内へと直々に攻撃を仕掛けてくる異常事態が発生しているのであるから、刃獣を使った大規模な侵攻が開始されていても驚くことではあるまい……。
うむ?扉の外に気配がする──覚醒時に心苦しいながら、看護師たちの入室は当面ご遠慮願いたいと申し出たはずだが……!?』
訝しげな視線を白い自動ドアに向けた刹那、それが開き、昨日と同じく白銀の狼戦士を象った錬装磁甲を身に纏ったヘルムート・ベルガーが姿を現したのであった!
「こ、この世に生を受けて以来、これほどの屈辱を味わったことはない……し、しかもラージャーラに全ての面において劣る地上世界出身者ふぜいに……たしかに敵軍首領による強力な深層催眠の影響下から脱し得ておらぬのだろうと推測はできるが、事実として病室を脱け出しナースセンターを占拠するなどという狼藉に及んておることを鑑みても、もはや苦痛を伴う強硬措置が必要なことは明白だッ!
(銀棒のボタンを乱打しつつ)
第8医門機小隊、大至急第11病棟4階のナースセンターに直行せよ──そこは今、超悪質な反逆者たちによって不法占拠されているッ!
よいか、一人残らず拘束するのだぞッ!
そして特にタケザワ隊長殺害の主犯である狐色の戦闘服を纏った操獣師だけは絶対に逃すなッ!そやつに関する限り手加減は無用、抵抗の有無に関わらず死に至らぬ程度に打擲せよッ、内臓破裂程度の損傷ならば全く問題はないッ!!
(背後に立つ2体を荒々しく振り返り)
何を突っ立っているッ!?
さっさと応援に行かんかッ、そしてあのアバズレどもにこのゼド=メギンの恐ろしさを骨の髄まで叩き込んでやるのだッッ!!」
主の命を受けた金属人間たちは一礼するとクルリと回れ右してとてつもないスピードで退室して行った。
『ふふん……掛け声だけは勇ましいが、裏腹にスクリーンに連中の姿を映し出すこともせず通信も断ち切ったところを見ると、奴さん相当堪えてるようだな……ま、ムリもねえか、それでなくても“ラージャーラの奇跡”として、唯一無風状態だった〈中立教界〉の御曹司として何不自由なくヌクヌクと生活してきた自分がこんな目に遭うなんて、今でも信じられねえ思いだろうからな……。
だがまあオレとしては連中に礼を言いてえ気持ちで一杯だぜ──これで部下の大失態から矛先を逸らせられたし、いずれにせよ航空戦隊を失った以上撤退するしかねえんだから、ほとぼりが冷めたところで切り出すとするかな……もういっそのことウォベルの野郎も殺られてくれりゃコイツも綺麗さっぱり諦めて、テメエの方から契約解除を宣告してくれるんじゃねえか?』
不埒な期待に頬を緩めつつ改めて正面の大スクリーンに視線を投じると、空の巨大刃獣は直立したまま断続的に怪光線を発射してはいたものの、聖団機とウォベルはもはやそのリズムを見切ったものか傍目にも余裕を持ってかわしつつ、淡々と熱線&機銃掃射を続けて着実に生ける砲門を潰してゆく。
『うーむ、やるな。
尤もスペンサーの操縦技術については我々の業界でもつとに知れ渡っていたから今更の感があるが、瞠目すべきは大先輩と殆ど同等の働きをやってのけるこのサカマキとかいう少年のセンスと胆力だ……全く末恐ろしいぜ、このまま行ったら5年もかからずにラージャーラでも一、二を争うカリスマパイロットに育つんじゃねえか──もしスペンサーがホントに聖団を出てコイツも追従するんなら、諸手を広げて一気に人員不足に陥った我がチェイズ闘士団に迎え入れたいモンだぜ……!』
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ゼドとしては最も現場に近い医門機小隊を起動したつもりであったが、7体の機械戦士が到着した時、そこには失神した三人の看護師が倒れ込んでいるだけであった。
されど高度な人工頭脳を搭載された自律型ロボットである彼らはすぐに主人の指示を仰ぐことはせず、地底要塞内の2千台を超える監視カメラを高速検索して獲物の行方を追う。
しかしながら、外部に出ていない限りこの捜索網から逃れることはできぬはずであったが、意外なことに十数人の操獣師の姿がキャッチされることはなかったのである……。
だがその〈目的地〉ならば予想はつく……ならば、そこに網を張っていればいずれ捕捉に成功するのではないか?
この結論に至った瞬間、医門機たちは一斉に駆け出していた──神霊薬花園の最も死角になる一隅に設けられた【絆獣待機ゾーン】に!
その途上で第11病棟からの最短ルートにサーチを集中した結果、ついに連中の姿を捉えることに成功したのであるが、同時に手間取った理由も明らかとなった。
あろうことか“はぐれ操獣師”どもは獣のごとく四つん這いとなり、更に護衛絆獣最速を誇ったラズンに匹敵する迅さで要塞内を疾走していたのである!
これは明らかに医門機のスペックを凌駕するものであり、既に目的地手前まで接近しているとあって、このまま絆獣に搭乗させたなら確実に逃亡を許してしまうであろう……!
✦
誰よりも早く覚醒したはずであるのに、数時間を経てようやく躰を起こすことができた自身の不甲斐なさに玉朧拳師は深刻な衝撃を覚えていた。
『寄る年波には勝てぬというが、オレはまだ50になったばかり……まだまだ老け込むトシではないとタカをくくっていたが現実はそうではなかったということか……!
まあ他に考えられる要因として、“精神的夫婦”などと揶揄されてきた夏月をあのような形で喪ったショックは否定できぬにしても情けない限りだ……!
ところで現在外の状況はどうなっておるのか?
むろん病室内にそれを知る手立ては無いが、かすかに聞こえたガートスの発進音は、訓練によるものとは異なる緊迫感を帯びていたようだが……!
しかしそれも当然か、幻影とはいえ鏡の教聖本人が教界内へと直々に攻撃を仕掛けてくる異常事態が発生しているのであるから、刃獣を使った大規模な侵攻が開始されていても驚くことではあるまい……。
うむ?扉の外に気配がする──覚醒時に心苦しいながら、看護師たちの入室は当面ご遠慮願いたいと申し出たはずだが……!?』
訝しげな視線を白い自動ドアに向けた刹那、それが開き、昨日と同じく白銀の狼戦士を象った錬装磁甲を身に纏ったヘルムート・ベルガーが姿を現したのであった!
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