嘘吐きは復讐の引き金

レティシア

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第3章 望月

十重奏

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話には聞いていたがTOHOシネマズの周辺はやはり想像より酷かった。少なくとも居場所の無い者が集まっているが私のような綺麗な流浪人には居場所はやはりなかった。体を売る少女、喧騒に呑まれて狂って行く少年、見回りに引っかかり涙を流す子ども。光が強くなれば影は濃くなる。その影はここなどの場所に残っていた。そんな風景を脇目に私は誰もいない暗い路地で身を潜めながらひたすら日の目を待った。
そして夜が明け、看守だった者に再び言葉を送った。
「この伝える事の意味が理解出来たらそっちに向かってあげる。」
「あなた達は道を違えた。」
「支配する夢を一つ失ったと判れば理解できる筈。」
今日突き立てる凶器は『選択肢』だ。
「あなた達も私も道を間違い続けた。」
「そんな間違った『選択肢』を重ねた結果、私達は決裂した。」
「選ばされた『選択肢』を恨む私と、」
「それをねじ伏せようとするあなた達」
「人間なら誰しも間違える。」
「でもある程度取り繕うことはできる。」
「実際私はこの『選択肢』を選んで修繕を試みている。」
「でもあなた達は悪化させた。」
「『仕方ないから。』、『お金の都合があるから。』と言い訳して。」
「反論はないはず。何もしなかったのだから。」
「努力でなんでも解決すると思うな。」
「だから私は全て戻す為に平和的な方法を取った。」
「不条理に異を唱える者がいなくなれば安泰だと。」
「でもそれにすら異を唱えるあなた達は何?」
「3歳児でもないから、環境活動家みたいな者?」
けれどそんなことは関係なかった。それらが答える内容も知っていた。そして予想通りに返事が返ってきた。それに予め作った言葉を吹っ掛けた。
「違えた道の正当化をする時間があるなら、今を変えればいいじゃない。」
「少なくとも私はそうした。数十年経験積んだあなた達と違って。」
そして再び交信は途絶した。私は再びメッセージを送信した。
天高く浮かぶ月に覚悟を誓って、望みを明日に託した。
「今日のヒントは『dandelion』と『狂うシンパサイザー』。」
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