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第一章 仕事確保は最優先!
病院はじめました
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「ユノ、レノ、包帯を持ってきて頂戴」
「はーい」
「うるせぇ、命令すんな!」
廃墟の前で病院を始めて二日目。
一日目は細々と来ただけだったが、患者の皆さんが広めてくれたのだろう。
包帯は一日目の反省を活かして少し多めに仕入れてある。
手伝いぶんのお金を払えばユノとレノを貸してくれるという太っ腹カルシュをあのナルシストも見習ってほしいものである。
風邪をひいた子供には凍ったタオルを与え、前世の頃に冷たいものをあてられていたのが額だけではなかったことを思い出し、脇の下に当てるのもよいとアドバイスしたり、軽い怪我なら簡単な治癒魔法で癒す。
といっても、この治癒魔法というのは厄介なもので、いっきにすべてを治すにはめちゃくちゃ長い呪文を唱える必要があるし、魔力を死ぬほど食う。患者への負担も大きいため、体の治す力を活性化させる簡単な治癒魔法と、消毒魔法をかけ、清潔な包帯などで手当てするくらいだ。
重い患者や大きな怪我をした人がやってくるが、もとよりあたしは医者でもなければ治癒魔法が得意とおうわけでもない。微かな期待を抱いてやってきた患者を追い返すことになるのは、胸が苦しかった。
そんなこんなで一週間が過ぎようとしたときーー。
「お嬢さん、『病院』のお嬢さんですよな?」
町を歩いていると、あるおじいさんから声をかけられた。
あたしは、医者紛いの仕事のおかげで、町の人達とそれなりに仲が良いし、うまく付き合っているつもりだ。
しかしーーこのようなおじいさんを看た記憶はない。
残念なあたしの記憶力にあまり期待するのもおかしいけれど……。
「えぇ、そうですけど」
「孫がお世話になりました……お礼といってはなんですけど、少し我が家によってくれませんか」
すぐ近くなので、お邪魔することにした。
うん。お礼と感謝は大好きだ。ぜひ受けとりたい。
「! これは……」
あがってみて驚いた。それなりの富裕層の家ではあったが、本がびっしりとつまっていたのだ。そのほとんどが魔法に関するものである。
「儂はガランというのですがな、遠い国から来たものですが、魔法に憧れがありまして。魔法に関する本を集めていました……どれだけ頑張っても、魔法は使えるようになりませんでしたが」
自嘲するように笑うと、ガランというおじいさんはあたしに向き直った。
「いつでもこの書庫を使ってもらって構いません……この本たちも、魔法が使える人に読んでもらうべきでしょうから」
正直、魔法学校では魔力量に依存するばかりで、あまり呪文も知らないし、おじいさんの申し出はありがたかった。
「ありがとう存じます。読ませていただきますね」
そんな風にーー安定し、そして着々と幸せな生活に近づいているように見えるだろう。
端から見れば。
だが、あたしにもプライドというものがある。
公衆の面前で裏切られた挙げ句、貴族の位を剥奪されて下町に放り出されたのだ。
ちょこーっとくらい、仕返ししてもよくないか?
できることなら吠え面かかせてやりたいが。
あたしは、いつか。
あたしをおとしめたや奴等に目にものを見せてやるんだ。
「ん? 急に黙りこんだかと思ったら、おっかない魔王みたいな顔をして、どうしたのかね?」
「な、なんでもありませんわ!」
魔王って……失礼すぎる。
あたし、そんなにおっかない顔をしてただろうか。
ダメね、うんうん。
笑顔が一番!
「どうしたのかね? 急に気味の悪い笑顔を浮かべて」
「気味の悪い笑顔ですってぇ!? あたしの笑顔は天使の笑顔でしょーがああああ!」
「はーい」
「うるせぇ、命令すんな!」
廃墟の前で病院を始めて二日目。
一日目は細々と来ただけだったが、患者の皆さんが広めてくれたのだろう。
包帯は一日目の反省を活かして少し多めに仕入れてある。
手伝いぶんのお金を払えばユノとレノを貸してくれるという太っ腹カルシュをあのナルシストも見習ってほしいものである。
風邪をひいた子供には凍ったタオルを与え、前世の頃に冷たいものをあてられていたのが額だけではなかったことを思い出し、脇の下に当てるのもよいとアドバイスしたり、軽い怪我なら簡単な治癒魔法で癒す。
といっても、この治癒魔法というのは厄介なもので、いっきにすべてを治すにはめちゃくちゃ長い呪文を唱える必要があるし、魔力を死ぬほど食う。患者への負担も大きいため、体の治す力を活性化させる簡単な治癒魔法と、消毒魔法をかけ、清潔な包帯などで手当てするくらいだ。
重い患者や大きな怪我をした人がやってくるが、もとよりあたしは医者でもなければ治癒魔法が得意とおうわけでもない。微かな期待を抱いてやってきた患者を追い返すことになるのは、胸が苦しかった。
そんなこんなで一週間が過ぎようとしたときーー。
「お嬢さん、『病院』のお嬢さんですよな?」
町を歩いていると、あるおじいさんから声をかけられた。
あたしは、医者紛いの仕事のおかげで、町の人達とそれなりに仲が良いし、うまく付き合っているつもりだ。
しかしーーこのようなおじいさんを看た記憶はない。
残念なあたしの記憶力にあまり期待するのもおかしいけれど……。
「えぇ、そうですけど」
「孫がお世話になりました……お礼といってはなんですけど、少し我が家によってくれませんか」
すぐ近くなので、お邪魔することにした。
うん。お礼と感謝は大好きだ。ぜひ受けとりたい。
「! これは……」
あがってみて驚いた。それなりの富裕層の家ではあったが、本がびっしりとつまっていたのだ。そのほとんどが魔法に関するものである。
「儂はガランというのですがな、遠い国から来たものですが、魔法に憧れがありまして。魔法に関する本を集めていました……どれだけ頑張っても、魔法は使えるようになりませんでしたが」
自嘲するように笑うと、ガランというおじいさんはあたしに向き直った。
「いつでもこの書庫を使ってもらって構いません……この本たちも、魔法が使える人に読んでもらうべきでしょうから」
正直、魔法学校では魔力量に依存するばかりで、あまり呪文も知らないし、おじいさんの申し出はありがたかった。
「ありがとう存じます。読ませていただきますね」
そんな風にーー安定し、そして着々と幸せな生活に近づいているように見えるだろう。
端から見れば。
だが、あたしにもプライドというものがある。
公衆の面前で裏切られた挙げ句、貴族の位を剥奪されて下町に放り出されたのだ。
ちょこーっとくらい、仕返ししてもよくないか?
できることなら吠え面かかせてやりたいが。
あたしは、いつか。
あたしをおとしめたや奴等に目にものを見せてやるんだ。
「ん? 急に黙りこんだかと思ったら、おっかない魔王みたいな顔をして、どうしたのかね?」
「な、なんでもありませんわ!」
魔王って……失礼すぎる。
あたし、そんなにおっかない顔をしてただろうか。
ダメね、うんうん。
笑顔が一番!
「どうしたのかね? 急に気味の悪い笑顔を浮かべて」
「気味の悪い笑顔ですってぇ!? あたしの笑顔は天使の笑顔でしょーがああああ!」
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