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第四章 婚約パーティー
男はおーかみなんだっ
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あの婚約騒ぎから、一週間が立った。
その集中力故に、国一番の書類処理男だと呼ばれるニーナの父により、無事婚約や養子についての書類を通したらしい。していいのか疑問に思うことまで手を出したようだ。
だが、国に彼以上、書類について知り尽くす者はいない
あることないことでっち上げて、爵位剥奪までできるほど、彼の能力に国が依存している。好き好んでサンディ家の恨みを買う者はいないらしく、いたとしても握り潰すと言っていた。
……公爵という爵位は伊達ではないらしい。
「ぎっつぅ……うぇ」
「ほら、腰が曲がっています! しゃんとしてください!」
……。
アイドルやってたくらいだし、体力がないわけではないはずなのに。
そんなバカミヤでさえへたばる『次期公爵用マナーコース』、ヤバい。
広間で数名の教師に囲まれ、みっちりしごかれているバカミヤを横目で見ながら、あたしはあたしでエレンに魔法を教えていた。エレンは飲み込みが早いので楽チンだ。魔力量が少ないため、魔法の練習時間は短くなるが。
「今日はこのくらいにしておきましょうか」
「……おねーさま。明日も教えて!」
「はいはい、そんながっつかなくても教えるわよ」
魔力が枯渇してきついはずなのに、あたしに抱きついてくるエレンの頭を撫でる。
家族から離れ、見知らぬ土地で生きることを強いなければならなかったのに、彼女は強く生きている。
甘やかしてあげたいのに、エレンはそれを望まなかった。代わりに望んだのは、厳しい魔法の訓練ーー。
「……少しいいですか」
「ルーカス」
銀髪の彼が、静かに呼んでいた。
いつにもまして冷気をまとっているような気がする。
「ねぇあんた、具合悪いんじゃないの」
顔が、紙のように白かった。
もともと色素が薄いせいで、今にも倒れそうな人に見えた。
にも関わらず、目だけは深紅。むしろ、会ったときよりも赤くなっているような気がする。
「……私のことはどうでもよいのです。それより……『カルシュ様』からの伝言を預かってきました」
「え!?」
どうやって?
「カルシュ兄の、伝言……!?」
驚いたのは、あたしだけではない。
エレンもだ。目を丸くさせ、ルーカスを見つめている。
「……申し訳ありませんが、貴女にはお聞かせできませんよ。そうですね……そこのエレミヤ様も連れて、三人で少し話しましょう」
「うぅぅ……あんまり意地悪言うと食べるよ!」
「ひゃううううっ」
おいルーカス。
なんだそのかわいい悲鳴は。
お前髪長いし美少年だしチビだし女の子に見えなくもないんだから、加えてかわいいこと言ったらあんたがヒロインみたいになっちゃうじゃないのよ!
「……エレン。お願い」
「おねーさん……」
カルシュの伝言。それがどういうもので、どうしてルーカスがカルシュの伝言を預かっているのかわからないけど。彼の真剣な目を見たらわかる。
「はぁはぁ……エレン。三人にさせてくれ……はぁはぁ。じゃないと、襲うぞ」
……。
そうだった。
バカミヤは女好きだった。
しかも、稽古を切り上げたばかりで息切れしているせいで。
変態度が格段にアップしている。
「ぎゃあああ! けだものっ! やっぱりカルシュ兄の言う通り、男はおーかみなんだっ」
半泣きで逃げるエレン。
「……ロリコン」
「あぁ!? んなわけねーだろっ! 助けてやったんだよボケ! 困ってるみたいだからな! だ、第一俺はお前しかみ、見てないし……」
「はいはい。ではリーナ様もエレミヤ様も行きますよ。一応大事な伝言なんですから、口説く余裕があったらもっと別のことに気を回してくださいね」
ルーカスに言われて、あたしとバカミヤはバカミヤの部屋に入った。
次期公爵ということもあり、なかなか豪華な部屋だった。
その集中力故に、国一番の書類処理男だと呼ばれるニーナの父により、無事婚約や養子についての書類を通したらしい。していいのか疑問に思うことまで手を出したようだ。
だが、国に彼以上、書類について知り尽くす者はいない
あることないことでっち上げて、爵位剥奪までできるほど、彼の能力に国が依存している。好き好んでサンディ家の恨みを買う者はいないらしく、いたとしても握り潰すと言っていた。
……公爵という爵位は伊達ではないらしい。
「ぎっつぅ……うぇ」
「ほら、腰が曲がっています! しゃんとしてください!」
……。
アイドルやってたくらいだし、体力がないわけではないはずなのに。
そんなバカミヤでさえへたばる『次期公爵用マナーコース』、ヤバい。
広間で数名の教師に囲まれ、みっちりしごかれているバカミヤを横目で見ながら、あたしはあたしでエレンに魔法を教えていた。エレンは飲み込みが早いので楽チンだ。魔力量が少ないため、魔法の練習時間は短くなるが。
「今日はこのくらいにしておきましょうか」
「……おねーさま。明日も教えて!」
「はいはい、そんながっつかなくても教えるわよ」
魔力が枯渇してきついはずなのに、あたしに抱きついてくるエレンの頭を撫でる。
家族から離れ、見知らぬ土地で生きることを強いなければならなかったのに、彼女は強く生きている。
甘やかしてあげたいのに、エレンはそれを望まなかった。代わりに望んだのは、厳しい魔法の訓練ーー。
「……少しいいですか」
「ルーカス」
銀髪の彼が、静かに呼んでいた。
いつにもまして冷気をまとっているような気がする。
「ねぇあんた、具合悪いんじゃないの」
顔が、紙のように白かった。
もともと色素が薄いせいで、今にも倒れそうな人に見えた。
にも関わらず、目だけは深紅。むしろ、会ったときよりも赤くなっているような気がする。
「……私のことはどうでもよいのです。それより……『カルシュ様』からの伝言を預かってきました」
「え!?」
どうやって?
「カルシュ兄の、伝言……!?」
驚いたのは、あたしだけではない。
エレンもだ。目を丸くさせ、ルーカスを見つめている。
「……申し訳ありませんが、貴女にはお聞かせできませんよ。そうですね……そこのエレミヤ様も連れて、三人で少し話しましょう」
「うぅぅ……あんまり意地悪言うと食べるよ!」
「ひゃううううっ」
おいルーカス。
なんだそのかわいい悲鳴は。
お前髪長いし美少年だしチビだし女の子に見えなくもないんだから、加えてかわいいこと言ったらあんたがヒロインみたいになっちゃうじゃないのよ!
「……エレン。お願い」
「おねーさん……」
カルシュの伝言。それがどういうもので、どうしてルーカスがカルシュの伝言を預かっているのかわからないけど。彼の真剣な目を見たらわかる。
「はぁはぁ……エレン。三人にさせてくれ……はぁはぁ。じゃないと、襲うぞ」
……。
そうだった。
バカミヤは女好きだった。
しかも、稽古を切り上げたばかりで息切れしているせいで。
変態度が格段にアップしている。
「ぎゃあああ! けだものっ! やっぱりカルシュ兄の言う通り、男はおーかみなんだっ」
半泣きで逃げるエレン。
「……ロリコン」
「あぁ!? んなわけねーだろっ! 助けてやったんだよボケ! 困ってるみたいだからな! だ、第一俺はお前しかみ、見てないし……」
「はいはい。ではリーナ様もエレミヤ様も行きますよ。一応大事な伝言なんですから、口説く余裕があったらもっと別のことに気を回してくださいね」
ルーカスに言われて、あたしとバカミヤはバカミヤの部屋に入った。
次期公爵ということもあり、なかなか豪華な部屋だった。
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