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言われたことを呑みくだした瞬間、顔から火が出そうだった。
「お、襲いそうって…お前!」
「僕はレオが好きだよ」
あまりにも直接的な言葉。
おかげで再びレオは混乱に突き落とされた。
「う、うう」
「レオはいつも準備するよね。相手の気持ちを予想し、行動して、様子を見る。いくつか用意しているパターンに当てはめて、自分も行動する。だから、相手が予想と違うことをすると、最善の選択ができなくなる」
レオはもう自分が天才でも秀才でもない、ただの凡人だと知っている。目の前のヨアヒムによって理解させられた。凡人に過ぎないレオが足掻くためには準備が必要だ。段階的にやることを整理して、相手の出方を予想する。
父に対してもそうだし、ここに来てからもずっと気を張っていた。
だって、この屋敷に来てから、誤算だらけだった。
知らないことは計算できない。予想を立てても根本が間違っているからすぐに打ち崩される。その原因が今、ここにあった。
ヨアヒムからの好意。
熱烈な愛情を計算できなかったが故に。
レオの予定は狂わされている。
「俺の欠点を挙げて何がしたいんだよ。自分より下だってわからせたいのか」
「可愛いって言ってるんだよ」
ひとつひとつが予想外で、目の前に火花が散る。
「好きだ、好きだよ。ずっと前から、レオの隣にいるのは僕だけがいいって思ってた」
考えすぎでショートした頭が、今までの計画を囁いた。
そうだ、レオはヨアヒムに媚を売って、お金をもらうことが目的だった。
ならば、ヨアヒムの好意は願ってもないものだろう。
ただ、「俺もお前が好きだった」と言えば良い。はく、と口が動く。喉奥に出かかった言葉は、ヨアヒムの渋面に塞がれた。
「君が何を考えているかわかる。僕はそんなこと望んでいない。必要なものがあればハンネスに言って。君も今日からこの家の主人なんだから、誰の顔色も窺わなくて良いし、気を遣わなくて良い」
過去の後輩から告げられる破格の待遇に瞠目する。
「勿論、僕と会いたくなければそうしても良い。君が一言言えば、僕は別荘に移る。ただ、これだけは覚えていてほしい」
ヨアヒムの声が低くなる。
目が鈍く光った。
「僕は、僕以外の誰かが君の隣に立つことを許さない。どんな手を使っても僕は君の隣に立つし、もし他の人間が立てばそいつを八つ裂きにする。手段は選ばない」
恐ろしいまでの執着。
無論、物理的な意味での隣を言っているわけではないだろう。ヨアヒムは浮気を許さないし、レオがヨアヒム以外を自分と対等な相手だと思うことにも嫌悪感を示している。
「ヨアヒム、聞いても良いか? 俺はお前を殴りかけた男だ。そんな俺をどうしてそこまで好きでいるんだ?」
最早夜の雰囲気は霧散している。
ひとまず状況理解に努めることにした。
「僕にとってレオはずっと特別だったから、疑問にすら思ったことがなかった。殴られかけたことも、僕は何とも思ってない。むしろレオになら殴られてみたいかも」
「なっ」
揶揄ってるんじゃないか?
今すぐ逃げ出したくなるような恥ずかしさに身震いした。
「本気だよ。僕の気持ちは本当。同じだけ返さなくてもいいから、ここにいて」
切実な声と共に、あたたかいものに包まれる。
ヨアヒムに抱き締められていた。
腰のあたりに固いものが当たっている。まだ彼のものは萎えていないらしい。
好きだという気持ちは返せないが、レオにもヨアヒムに与えられるものがある。
「ヨアヒム」
父の言いつけ通り、媚を売ろうとしたわけではなかった。
後輩に施される罪悪感を紛らわすための、不誠実な一手だった。
「それ、抜いてやるよ」
「お、襲いそうって…お前!」
「僕はレオが好きだよ」
あまりにも直接的な言葉。
おかげで再びレオは混乱に突き落とされた。
「う、うう」
「レオはいつも準備するよね。相手の気持ちを予想し、行動して、様子を見る。いくつか用意しているパターンに当てはめて、自分も行動する。だから、相手が予想と違うことをすると、最善の選択ができなくなる」
レオはもう自分が天才でも秀才でもない、ただの凡人だと知っている。目の前のヨアヒムによって理解させられた。凡人に過ぎないレオが足掻くためには準備が必要だ。段階的にやることを整理して、相手の出方を予想する。
父に対してもそうだし、ここに来てからもずっと気を張っていた。
だって、この屋敷に来てから、誤算だらけだった。
知らないことは計算できない。予想を立てても根本が間違っているからすぐに打ち崩される。その原因が今、ここにあった。
ヨアヒムからの好意。
熱烈な愛情を計算できなかったが故に。
レオの予定は狂わされている。
「俺の欠点を挙げて何がしたいんだよ。自分より下だってわからせたいのか」
「可愛いって言ってるんだよ」
ひとつひとつが予想外で、目の前に火花が散る。
「好きだ、好きだよ。ずっと前から、レオの隣にいるのは僕だけがいいって思ってた」
考えすぎでショートした頭が、今までの計画を囁いた。
そうだ、レオはヨアヒムに媚を売って、お金をもらうことが目的だった。
ならば、ヨアヒムの好意は願ってもないものだろう。
ただ、「俺もお前が好きだった」と言えば良い。はく、と口が動く。喉奥に出かかった言葉は、ヨアヒムの渋面に塞がれた。
「君が何を考えているかわかる。僕はそんなこと望んでいない。必要なものがあればハンネスに言って。君も今日からこの家の主人なんだから、誰の顔色も窺わなくて良いし、気を遣わなくて良い」
過去の後輩から告げられる破格の待遇に瞠目する。
「勿論、僕と会いたくなければそうしても良い。君が一言言えば、僕は別荘に移る。ただ、これだけは覚えていてほしい」
ヨアヒムの声が低くなる。
目が鈍く光った。
「僕は、僕以外の誰かが君の隣に立つことを許さない。どんな手を使っても僕は君の隣に立つし、もし他の人間が立てばそいつを八つ裂きにする。手段は選ばない」
恐ろしいまでの執着。
無論、物理的な意味での隣を言っているわけではないだろう。ヨアヒムは浮気を許さないし、レオがヨアヒム以外を自分と対等な相手だと思うことにも嫌悪感を示している。
「ヨアヒム、聞いても良いか? 俺はお前を殴りかけた男だ。そんな俺をどうしてそこまで好きでいるんだ?」
最早夜の雰囲気は霧散している。
ひとまず状況理解に努めることにした。
「僕にとってレオはずっと特別だったから、疑問にすら思ったことがなかった。殴られかけたことも、僕は何とも思ってない。むしろレオになら殴られてみたいかも」
「なっ」
揶揄ってるんじゃないか?
今すぐ逃げ出したくなるような恥ずかしさに身震いした。
「本気だよ。僕の気持ちは本当。同じだけ返さなくてもいいから、ここにいて」
切実な声と共に、あたたかいものに包まれる。
ヨアヒムに抱き締められていた。
腰のあたりに固いものが当たっている。まだ彼のものは萎えていないらしい。
好きだという気持ちは返せないが、レオにもヨアヒムに与えられるものがある。
「ヨアヒム」
父の言いつけ通り、媚を売ろうとしたわけではなかった。
後輩に施される罪悪感を紛らわすための、不誠実な一手だった。
「それ、抜いてやるよ」
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