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「ヨアヒム」
グラウを馬車に繋ぎ、伯爵家をそのまま後にする。
馬車に二人で乗った後も、ヨアヒムはレオの横にぴったりとひっついていて離れなかった。見かねて声をかけると、今にも泣き出しそうな顔をされる。
「レオが、無事で…良かった…」
「心配をかけてごめん」
ヨアヒムが首を横に振る。
「それに、金目のものと馬を盗んで出たんだ。グラウは返せたけど、もう使ってしまったお金は…」
「家の金は好きに使っていい。僕らは結婚しているんだから。例え僕の財産全てを持っていかれたとしても僕は君を非難しないさ」
抱き寄せていいのか迷うヨアヒムの腕の中に自分から収まってみた。
とくりとくりと彼の心臓の音が聞こえる。
「僕は、レオに愛されなくたって良かった。隣にさえいてくれれば良いって思った。でも、レオは僕の手を離れて遠くに行ってしまう」
レオはヨアヒムの些細な願いさえ叶えられなかった。
「でも良いんだ。君が無事でいるなら、それで」
ヨアヒムの深い愛に甘えている。
安心できる場所で、レオは存分に羽を休めていた。
「ヨアヒム、俺は元々よく悪夢を見るんだ。父上と暮らしていた時もだし、ヨアヒムの家から逃げた時も、悪い夢を見た。でも、お前と一緒に寝ると安心して、よく眠れるんだ。俺の幸せは、お前の隣にいることみたいだ」
「散々迷惑をかけたけど、お前が許すなら……まだ、俺と家族でいてくれないか」
ヨアヒムの声が一切聞こえないことに気づく。
背中に回った腕が嫌に熱く、彼の心臓は奇妙なほど早く脈打っている。
「ん、ヨアヒ……ぶっ」
驚いて顔を上げようとしたところを思い切り抱きしめられた。
「み、見ないで…今の僕、とびきり格好悪い顔してるから…」
「え?」
何故そんなに動転しているのか。
意味がわからず、先ほど自分が言った言葉を反芻して──
「なっ! お、俺そんなつもりじゃ! いや、……そんなつもりでもあったかも?」
プロポーズも同然の愛の言葉だった。
意識してのことではなく、思ったことをただそのまま伝えただけなのが余計に恥ずかしい。
「もう喋らないで…」
「俺、格好悪いお前も見てみたいよ、ヨアヒム」
自分より恥ずかしがっている奴がいるとわかると少し元気が出てくるものだ。レオのお願いに弱いヨアヒムは腕の力を弱めてくれた。
顔を真っ赤にして、目元には涙が滲んでいる。
「う、うう~~~」
「あの書類の準備も大変だっただろ、本当にありがとうな」
「あ、あれは…伯爵領の領民たちが快く協力してくれたからだよ。必要経費を出したのと、全体指示は僕だけど、他は全部君が皆に慕われていたおかげだ」
自分の領地の職務もこなしながら、字も満足に書けないだろう平民達に書類を書かせるのは大変だったに違いない。
「それでも、俺がヨアヒムに感謝したい」
「……うん」
コクンと頷く彼が可愛らしい。
「……愛してる」
勇気が出ないせいで、小さな声になってしまった。
もう父への仕送りも何も心配しなくて良い、媚を売る必要も罪悪感を感じる必要もない。ただ、レオがヨアヒムに愛を伝えたかった。
「僕も、レオを愛してる。この世界の誰よりも。……もう、君を離してなんてやれないし、国王陛下がつついてきたって離縁してやらないから」
レオよりも少し大きい声で、ヨアヒムから愛の宣告を受ける。
もう遠い昔のような気がするが、結婚式での宣誓みたいだ。
お互い同じことを思ったのか、目があってちょっと笑う。
自然と距離が近づいて。
唇が重なった。
グラウを馬車に繋ぎ、伯爵家をそのまま後にする。
馬車に二人で乗った後も、ヨアヒムはレオの横にぴったりとひっついていて離れなかった。見かねて声をかけると、今にも泣き出しそうな顔をされる。
「レオが、無事で…良かった…」
「心配をかけてごめん」
ヨアヒムが首を横に振る。
「それに、金目のものと馬を盗んで出たんだ。グラウは返せたけど、もう使ってしまったお金は…」
「家の金は好きに使っていい。僕らは結婚しているんだから。例え僕の財産全てを持っていかれたとしても僕は君を非難しないさ」
抱き寄せていいのか迷うヨアヒムの腕の中に自分から収まってみた。
とくりとくりと彼の心臓の音が聞こえる。
「僕は、レオに愛されなくたって良かった。隣にさえいてくれれば良いって思った。でも、レオは僕の手を離れて遠くに行ってしまう」
レオはヨアヒムの些細な願いさえ叶えられなかった。
「でも良いんだ。君が無事でいるなら、それで」
ヨアヒムの深い愛に甘えている。
安心できる場所で、レオは存分に羽を休めていた。
「ヨアヒム、俺は元々よく悪夢を見るんだ。父上と暮らしていた時もだし、ヨアヒムの家から逃げた時も、悪い夢を見た。でも、お前と一緒に寝ると安心して、よく眠れるんだ。俺の幸せは、お前の隣にいることみたいだ」
「散々迷惑をかけたけど、お前が許すなら……まだ、俺と家族でいてくれないか」
ヨアヒムの声が一切聞こえないことに気づく。
背中に回った腕が嫌に熱く、彼の心臓は奇妙なほど早く脈打っている。
「ん、ヨアヒ……ぶっ」
驚いて顔を上げようとしたところを思い切り抱きしめられた。
「み、見ないで…今の僕、とびきり格好悪い顔してるから…」
「え?」
何故そんなに動転しているのか。
意味がわからず、先ほど自分が言った言葉を反芻して──
「なっ! お、俺そんなつもりじゃ! いや、……そんなつもりでもあったかも?」
プロポーズも同然の愛の言葉だった。
意識してのことではなく、思ったことをただそのまま伝えただけなのが余計に恥ずかしい。
「もう喋らないで…」
「俺、格好悪いお前も見てみたいよ、ヨアヒム」
自分より恥ずかしがっている奴がいるとわかると少し元気が出てくるものだ。レオのお願いに弱いヨアヒムは腕の力を弱めてくれた。
顔を真っ赤にして、目元には涙が滲んでいる。
「う、うう~~~」
「あの書類の準備も大変だっただろ、本当にありがとうな」
「あ、あれは…伯爵領の領民たちが快く協力してくれたからだよ。必要経費を出したのと、全体指示は僕だけど、他は全部君が皆に慕われていたおかげだ」
自分の領地の職務もこなしながら、字も満足に書けないだろう平民達に書類を書かせるのは大変だったに違いない。
「それでも、俺がヨアヒムに感謝したい」
「……うん」
コクンと頷く彼が可愛らしい。
「……愛してる」
勇気が出ないせいで、小さな声になってしまった。
もう父への仕送りも何も心配しなくて良い、媚を売る必要も罪悪感を感じる必要もない。ただ、レオがヨアヒムに愛を伝えたかった。
「僕も、レオを愛してる。この世界の誰よりも。……もう、君を離してなんてやれないし、国王陛下がつついてきたって離縁してやらないから」
レオよりも少し大きい声で、ヨアヒムから愛の宣告を受ける。
もう遠い昔のような気がするが、結婚式での宣誓みたいだ。
お互い同じことを思ったのか、目があってちょっと笑う。
自然と距離が近づいて。
唇が重なった。
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