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ソレは深い深い闇の中で揺蕩っていた。
いずれ来るであろう破滅の音が聞きやすいように。
いずれあがるであろう疫病神の断末魔が聞こえやすいように。
アレさえ居なくなればあの世界は容易く壊れる。
なに、しょせんは人で女。
身目の良い者を送り魅了すればコロリと行くだろう――そう思っていた。
だがその思惑はすぐさまとん挫しする。
『あの娘に魅了は効きません」
送った者からの報告に闇の空間が波立つ。
『私』の怒りが空間を震わせ、その空間が悲鳴をあげる。
『アンリル様…!』
「その名で呼ぶな!!」
とうの昔、あの世界を壊した時に同時に捨てた名を呼ばれカッと怒りを爆発させる。
闇が散り、空間にひびが入る。
荒くなった息遣いだけが聞こえる世界。
なぜこうも上手く事が動かないのか。
なぜこうも苛立つのか。
これというのも全部あの存在のせいで―――。
「潰せ」
短く言えば使いは『是』とだけ言い残し消える。
早く、早く『私』にこの世界が壊れる音を聞かせてほしい。
早く、早く――――。
早く、彼の世界を壊してしまった絶望の音を上書きするために新たな破壊の音を『私』に聞かせておくれ―――。
いずれ来るであろう破滅の音が聞きやすいように。
いずれあがるであろう疫病神の断末魔が聞こえやすいように。
アレさえ居なくなればあの世界は容易く壊れる。
なに、しょせんは人で女。
身目の良い者を送り魅了すればコロリと行くだろう――そう思っていた。
だがその思惑はすぐさまとん挫しする。
『あの娘に魅了は効きません」
送った者からの報告に闇の空間が波立つ。
『私』の怒りが空間を震わせ、その空間が悲鳴をあげる。
『アンリル様…!』
「その名で呼ぶな!!」
とうの昔、あの世界を壊した時に同時に捨てた名を呼ばれカッと怒りを爆発させる。
闇が散り、空間にひびが入る。
荒くなった息遣いだけが聞こえる世界。
なぜこうも上手く事が動かないのか。
なぜこうも苛立つのか。
これというのも全部あの存在のせいで―――。
「潰せ」
短く言えば使いは『是』とだけ言い残し消える。
早く、早く『私』にこの世界が壊れる音を聞かせてほしい。
早く、早く――――。
早く、彼の世界を壊してしまった絶望の音を上書きするために新たな破壊の音を『私』に聞かせておくれ―――。
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