天よ、何故に私を見捨てたもうか(アルファポ版)

小夜時雨

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目録(作者用途 辞典的なもの) 番外編

竜王の系譜 番外編

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 獣足を持っていたはずの獣耳一族が王となったのは、竜王との会談が成功したからとも、巡る邂逅がかみ合ったともいわれている。獣耳たちのずば抜けたその身体能力の高さは、元から持ち合わせていた先祖の能力が代々受け継がれていった結果だ。付け加えると、幸運。神人という知己との遭遇も。

 「……どうして」

 ただ、不運としか言えない巡り合わせもある。

 「どうして、わたしは出会えなかったのか」

 神人の物語は、ありとあらゆる種族に伝わっている。
 北の人間にはもはや忘れ去られ、南の人間には大事なものだと粗雑にされるも、やはり生まれるものは生まれるのだ。

 「なぜ……」

 ぽつり、と舌の上にのせる疑問は数えきれないほど数えた。
かの者の名を何度も想像したし、姿形を眼裏で。しかし、どうしても得られるものはなく。
 仕方なく旅をした。
旅路の果ては、何もなかった。
 ある者は世界中をいつまでも流離い、得難い飢を常に抱えて眠り死ぬ。

 今回もまた、そのような者が悲しげに枕を濡らす。

 耳長の子は、旅に出て帰ってきた。
その顔色は旅に出る前とは異なり、この世の辛苦のすべてを舐めとったかのごとき苦しみに彩られ、昔のような華やかさは陰り、しかし、その美貌はいつまでたっても消えずにへばりついている。

 耳長の子は、人間たちに揉まれ苦しい目に遭ったものらしい。

 かつての人々と同じように、息苦しそうに喘ぎ、じっと目をつぶり、一日を終えることに終始していた。
 




 「……まるで地獄よ」

 小さかったマスティガは、そっと具合の悪い耳長のところへとひょこりと顔を覗かせる。
村長は祖母だ。祖母は、最近具合が悪く、しかし、気力を持ってして精力的に跡とりになるであろう子孫へあらゆる話を言って聞かせた。

 「……あの子は、苦しみ抜いて死んでしまったわ」

 息もしづらそうに寝台からのそりと起き上がり、眉根を寄せながらも気にかけているのは、自分と同じく性別のない存在として生まれてしまったあの子のことだ。祖母にとっての親戚であったという。

 「……なにやら騒がしいわね」
 「あいつがきてる、あの神鳥の」

 マスティガが素直にそう伝えると、耳長の長はその長い耳を震わせて澄んだ空気の端から、騒がしい現況をみた。なるほど、神鳥が。彼らは歌い踊る。物静かな耳長たちの村が騒がしいのも、彼らがいるおかげだ。歌も踊りも、耳長たちにとっては歓迎すべきものであった。つまりは楽しみにしていたのである。代々友誼を結んでいた。

 「そう……ああ、あの子も」
 
 うんざりした顔でいるマスティガに、祖母であるところの耳長は微笑む。
マスティガが面倒そうにしてしまうのは、神鳥たちの面倒をみなければならない、という使命感を持ち合わせているからである。神の鳥たちは、妙に方向音痴が多いのも特徴だ。歌は上手なのに、ふらふらと興味が膨れるとそこへ飛び立ってしまう。真面目な神鳥もいるのでなんとかなっているが、それにしては割合がひどい。無事に耳長の村に来れるのもほぼ奇跡のようなものだとも思える。空を飛べるから天敵となるたけ逢うこともないのだろう。

 「ふふ、そう、でもね、マスティガ」
 「わかっている。あいつを守れ、だろう?」
 「そうよ」

 ふふふと笑うと、孫である小さな耳長エルフはため息をついた。
 性別の定まらないエルフ。
 村で一番の別嬪だったかの耳長での教訓から、耳長たちもまた学んだのだ。

 「あんな伝説で苦しめるのは、もう、恩寵なのだから仕方のないことだけれども」
 
 あらゆるルールを作った。
 そしてそれはあの子にも反映される。昔からの習いでもあったが、しかしそれでも反発する性の定まらないものたちがほとんどであった。

 「……神人とは、一体なんなのかしらね」
 
 静かに目を瞑りながら、楽しそうに笑い声をあげるかの神鳥の子。小さな雛鳥の嬉しげな羽ばたきから、かつての幼なじみの、静まりかえった湖のほとりで紡ぐ愛の讃歌を聞いた。
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