私の運命は高嶺の花【完結】

小夜時雨

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終章・女神

三度目とは

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 人生には一度や二度ぐらいは、まぁ、偶然はあるわけだ。
それがまさかの三度目とは。信じられない。

 あの世の記憶はないが、ここ最近わりとすんなり生まれ変わったクチだから……、今度こそ純粋無垢のまま転生するものとばかり思い込んでいたが、未練たっぷりに生きていたのかもしれない。
 心残り、というか……ないわけじゃないが、わりと好きなように人生を送ってきたはずで……、前世は老衰かと思われる。痛みはさほどなかったし、ただただ怠かった。私は穏やかに目を閉じたはずだ。それなのに、こうして生まれてしまった。

 再び、記憶を持ち、生まれ直して。やっぱり心残りのせいか? 
考えてもわからないことは、考えないに限る。

 三度目の赤ん坊として誕生した私。
性別は女に戻った。

首の座らない赤ん坊ならではの事情により情報収集に勤しむ限りでは、家具や家族の格好や振る舞いからしてこの家、まあまあ中流家庭の一般人みたいだ。前世が商売人だったからな、間違いない。

(なんだ、前世が大当たりなだけか……)

 今後もこうして生まれ直しをしていくのだろうか、と思うとなんともいえない気持ちになるが、あぶあぶハイハイする苦行を今はこなしていくしかない……なぁに、慣れたもんさ。

「おとなしい赤ちゃんねぇ」

 運動するがしかし、だるいし眠い。若すぎるのも大変だ。やはり小さい体というものは不便だ。
苛立ち募りすぎて泣き喚くのも疲れるし。ご不浄訴えるのも辛い。コロンコロンと回ってると世界も回る。うっ。
ジジイの最期もそこそこ人の世話になって歩けない我が身を大いに嘆いたものだが、これはこれで嫌なものだな……金で解決できれば納得できる部分はあるのに、生きる楽しみは乳ばかりだ……はぁ。おっと、女の子なのに口が悪いな……ジジイの前世があるから……皺くちゃで生まれるのもまぁ、仕方のないことか。
これもまた私の人生か。ヤだなぁ……。

「あら、おネムかしら」

第三の母は、とても優しそうな女だった。
おくるみに包まれた私を丁寧に撫でさする。
大きくなれば少しはこの母の負担を減らすことができるだろう、少し、眠ろう。
目を閉じればまた、終わるかもしれないが……そうはならないだろうな……。
まあ、いいか。私……、あぁ、まあいいよ。生きるよ。

「ふふ、たんとお眠り」

おやすみ。
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