どうしよう、俺の公子様がXXに。

小夜時雨

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加害者Fへの調査報告

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 まるで天使の肖像画から飛び出したかのような金髪青年が、物憂げに調査報告書を取り出してきた。

 「ん」
 「うん」

 最近はこのように、雑なやり取りになってきている。
応接室ではいつものロル茶の香りが蔓延している……。

 「……うめぇけどさ、
  このお茶ばっかり出されるのはどうなの?」
 「ワガママさんですねえ」

 後方から、出涸らしでもいいですか?
とボソリと呟くルフスさんの怒りの声が応接室に篭って聞こえるが、鳩氏は耳が遠いみたいで気にもせずにズズズ、と遠慮なくガバガバ飲んでいる。

 「んで、こいつはどうも、
  一夜限りの……ってやつらしい」
 「へー」

 (鳩氏のお仲間かあ)
金髪の鳩氏も一夜の友である。

 「……なんというか、
  うん、それなりの顔ですね」
 「……俺がいうのもなんだが、
  お前の旦那、なんというか……、
  節操なしだったからなぁ、ぶっちゃけ」
 「ぶっちゃけすぎる」
 「隠してもしゃーないからな」
 「そりゃそうだけど」
 「……そうやって不貞腐れた顔してると、
  年相応だなあ、ガハハ」

 せっかく品のある顔で生まれたというのに大口開けて笑うと見目が見目だけに、なんとも言いようのない感情を抱いてしまう。いや、まあ、ね。加害者Fのみならず、こんなやつにまで手を伸ばしたというフリードの選択が、ね……うん。

 (非常に残念、というか)

 後方から、鳩って濃厚な味で高級食材にもなるんですよリヒト様素晴らしいですよね、などとボソリと口にする僕の使用人。ルフスさんは僕の気分を害する輩に容赦しないのである。茶菓子ですら手抜きをしないし、きっちりと炒ってくれている。まるで鳩が豆鉄砲を喰らったかのような顔をしているローラン・グアラン。

 「この豆うめぇな!」
 



 「まったく……あの鳩は」

 ルフスさん、怒りの片づけを開始。
手際よく、ぱっぱぱっぱと終わらせてお盆のうえにすべてを載せて器用に扉をあけては、また僕のために自室へとともに移動し、寝台を整えてくれている。いつもありがとう。
 今回の件についてはほんわかが常なお兄さんも、さすがにぷんぷこしていたけれども、なんやかんやであの鳩氏はピルク少年とも綺麗さっぱり別れたらしく、経緯は微妙ではあったがきっちりと終わった。その点は評価しているものらしい。

 「できればさっさと……」

 とも言ってはいたけれど、ルフスさんもまあ、渋々、あの状態のピルク少年が、曲がりなりにも貴族階級のグアラン家の鳩を振り払えるかといえばむしろ心残りが強くすがりそうだったので、必要な時間ではあったのかも、と認識をあらためている。生活費を渡さなかった鳩には怒り心頭ではあったけど。ローラン・グアラン曰く、忘れてた、とのこと。ピルク少年も少年で、いじらしくねだることはできなかったものらしい。

 「妾にするなら、妾の立場を思い遣って、ですねえ」

 裏の世界も裏で、なかなか大変のようだ。

 「そういう生き方を選ぶ獣人はいますからね」
 
とは、ルフスさんの言。
 ほへーとした顔をしている僕に、ルフスさんは苦笑気味だ。

 「……実際、俺はリヒト様の愛人に立候補してましたから」
 「え、そうだったの?」 
 「ふふ、気づいていなかったのですか?」

 くすくす笑われてしまった……。
 獣人の、そういった本能に忠実、でもあるということの意味を、僕はまだ理解していなかったのかもしれない。

 「……今だって、俺を好きなようにしていいお立場なんですからね?
  リヒト様は」
 「へ?」
 「ふふ……だから、リヒト様、大好きです」

 ニコニコ、と今度は先ほど少しだけ見えた妖艶な……娼館にいたときの顔が闇深い光が垣間見えたが一瞬で消えたけれど、きっちりとした使用人服のまま僕に爽やかな笑みを残してみせているのだから、ええと。

 (……実際、リヒト様は……俺を、
  客人に差し出してその日の情報を得るための、
  接待として与えたって、
  当然のお立場なのに……このお人は)
 
 嫌だけど鳩にだって差し出されたって、断ることはできない、嫌だけど。
 なんてことをルフスさんが意味深に考えているとは、さすがに僕だって思いもよらない。
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