126 / 229
加害者Fへの調査報告
しおりを挟む
まるで天使の肖像画から飛び出したかのような金髪青年が、物憂げに調査報告書を取り出してきた。
「ん」
「うん」
最近はこのように、雑なやり取りになってきている。
応接室ではいつものロル茶の香りが蔓延している……。
「……うめぇけどさ、
このお茶ばっかり出されるのはどうなの?」
「ワガママさんですねえ」
後方から、出涸らしでもいいですか?
とボソリと呟くルフスさんの怒りの声が応接室に篭って聞こえるが、鳩氏は耳が遠いみたいで気にもせずにズズズ、と遠慮なくガバガバ飲んでいる。
「んで、こいつはどうも、
一夜限りの……ってやつらしい」
「へー」
(鳩氏のお仲間かあ)
金髪の鳩氏も一夜の友である。
「……なんというか、
うん、それなりの顔ですね」
「……俺がいうのもなんだが、
お前の旦那、なんというか……、
節操なしだったからなぁ、ぶっちゃけ」
「ぶっちゃけすぎる」
「隠してもしゃーないからな」
「そりゃそうだけど」
「……そうやって不貞腐れた顔してると、
年相応だなあ、ガハハ」
せっかく品のある顔で生まれたというのに大口開けて笑うと見目が見目だけに、なんとも言いようのない感情を抱いてしまう。いや、まあ、ね。加害者Fのみならず、こんなやつにまで手を伸ばしたというフリードの選択が、ね……うん。
(非常に残念、というか)
後方から、鳩って濃厚な味で高級食材にもなるんですよリヒト様素晴らしいですよね、などとボソリと口にする僕の使用人。ルフスさんは僕の気分を害する輩に容赦しないのである。茶菓子ですら手抜きをしないし、きっちりと炒ってくれている。まるで鳩が豆鉄砲を喰らったかのような顔をしているローラン・グアラン。
「この豆うめぇな!」
「まったく……あの鳩は」
ルフスさん、怒りの片づけを開始。
手際よく、ぱっぱぱっぱと終わらせてお盆のうえにすべてを載せて器用に扉をあけては、また僕のために自室へとともに移動し、寝台を整えてくれている。いつもありがとう。
今回の件についてはほんわかが常なお兄さんも、さすがにぷんぷこしていたけれども、なんやかんやであの鳩氏はピルク少年とも綺麗さっぱり別れたらしく、経緯は微妙ではあったがきっちりと終わった。その点は評価しているものらしい。
「できればさっさと……」
とも言ってはいたけれど、ルフスさんもまあ、渋々、あの状態のピルク少年が、曲がりなりにも貴族階級のグアラン家の鳩を振り払えるかといえばむしろ心残りが強くすがりそうだったので、必要な時間ではあったのかも、と認識をあらためている。生活費を渡さなかった鳩には怒り心頭ではあったけど。ローラン・グアラン曰く、忘れてた、とのこと。ピルク少年も少年で、いじらしくねだることはできなかったものらしい。
「妾にするなら、妾の立場を思い遣って、ですねえ」
裏の世界も裏で、なかなか大変のようだ。
「そういう生き方を選ぶ獣人はいますからね」
とは、ルフスさんの言。
ほへーとした顔をしている僕に、ルフスさんは苦笑気味だ。
「……実際、俺はリヒト様の愛人に立候補してましたから」
「え、そうだったの?」
「ふふ、気づいていなかったのですか?」
くすくす笑われてしまった……。
獣人の、そういった本能に忠実、でもあるということの意味を、僕はまだ理解していなかったのかもしれない。
「……今だって、俺を好きなようにしていいお立場なんですからね?
リヒト様は」
「へ?」
「ふふ……だから、リヒト様、大好きです」
ニコニコ、と今度は先ほど少しだけ見えた妖艶な……娼館にいたときの顔が闇深い光が垣間見えたが一瞬で消えたけれど、きっちりとした使用人服のまま僕に爽やかな笑みを残してみせているのだから、ええと。
(……実際、リヒト様は……俺を、
客人に差し出してその日の情報を得るための、
接待として与えたって、
当然のお立場なのに……このお人は)
嫌だけど鳩にだって差し出されたって、断ることはできない、嫌だけど。
なんてことをルフスさんが意味深に考えているとは、さすがに僕だって思いもよらない。
「ん」
「うん」
最近はこのように、雑なやり取りになってきている。
応接室ではいつものロル茶の香りが蔓延している……。
「……うめぇけどさ、
このお茶ばっかり出されるのはどうなの?」
「ワガママさんですねえ」
後方から、出涸らしでもいいですか?
とボソリと呟くルフスさんの怒りの声が応接室に篭って聞こえるが、鳩氏は耳が遠いみたいで気にもせずにズズズ、と遠慮なくガバガバ飲んでいる。
「んで、こいつはどうも、
一夜限りの……ってやつらしい」
「へー」
(鳩氏のお仲間かあ)
金髪の鳩氏も一夜の友である。
「……なんというか、
うん、それなりの顔ですね」
「……俺がいうのもなんだが、
お前の旦那、なんというか……、
節操なしだったからなぁ、ぶっちゃけ」
「ぶっちゃけすぎる」
「隠してもしゃーないからな」
「そりゃそうだけど」
「……そうやって不貞腐れた顔してると、
年相応だなあ、ガハハ」
せっかく品のある顔で生まれたというのに大口開けて笑うと見目が見目だけに、なんとも言いようのない感情を抱いてしまう。いや、まあ、ね。加害者Fのみならず、こんなやつにまで手を伸ばしたというフリードの選択が、ね……うん。
(非常に残念、というか)
後方から、鳩って濃厚な味で高級食材にもなるんですよリヒト様素晴らしいですよね、などとボソリと口にする僕の使用人。ルフスさんは僕の気分を害する輩に容赦しないのである。茶菓子ですら手抜きをしないし、きっちりと炒ってくれている。まるで鳩が豆鉄砲を喰らったかのような顔をしているローラン・グアラン。
「この豆うめぇな!」
「まったく……あの鳩は」
ルフスさん、怒りの片づけを開始。
手際よく、ぱっぱぱっぱと終わらせてお盆のうえにすべてを載せて器用に扉をあけては、また僕のために自室へとともに移動し、寝台を整えてくれている。いつもありがとう。
今回の件についてはほんわかが常なお兄さんも、さすがにぷんぷこしていたけれども、なんやかんやであの鳩氏はピルク少年とも綺麗さっぱり別れたらしく、経緯は微妙ではあったがきっちりと終わった。その点は評価しているものらしい。
「できればさっさと……」
とも言ってはいたけれど、ルフスさんもまあ、渋々、あの状態のピルク少年が、曲がりなりにも貴族階級のグアラン家の鳩を振り払えるかといえばむしろ心残りが強くすがりそうだったので、必要な時間ではあったのかも、と認識をあらためている。生活費を渡さなかった鳩には怒り心頭ではあったけど。ローラン・グアラン曰く、忘れてた、とのこと。ピルク少年も少年で、いじらしくねだることはできなかったものらしい。
「妾にするなら、妾の立場を思い遣って、ですねえ」
裏の世界も裏で、なかなか大変のようだ。
「そういう生き方を選ぶ獣人はいますからね」
とは、ルフスさんの言。
ほへーとした顔をしている僕に、ルフスさんは苦笑気味だ。
「……実際、俺はリヒト様の愛人に立候補してましたから」
「え、そうだったの?」
「ふふ、気づいていなかったのですか?」
くすくす笑われてしまった……。
獣人の、そういった本能に忠実、でもあるということの意味を、僕はまだ理解していなかったのかもしれない。
「……今だって、俺を好きなようにしていいお立場なんですからね?
リヒト様は」
「へ?」
「ふふ……だから、リヒト様、大好きです」
ニコニコ、と今度は先ほど少しだけ見えた妖艶な……娼館にいたときの顔が闇深い光が垣間見えたが一瞬で消えたけれど、きっちりとした使用人服のまま僕に爽やかな笑みを残してみせているのだから、ええと。
(……実際、リヒト様は……俺を、
客人に差し出してその日の情報を得るための、
接待として与えたって、
当然のお立場なのに……このお人は)
嫌だけど鳩にだって差し出されたって、断ることはできない、嫌だけど。
なんてことをルフスさんが意味深に考えているとは、さすがに僕だって思いもよらない。
15
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
誉コウ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
届かない「ただいま」
AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。
「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。
これは「優しさが奪った日常」の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる